ジュラシックな島に取り残された件。   作:むりー

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「………んっ。」

 

 ホテルの警備室、その床の上で目が覚める。

身体は鉛の様に重い。

それが連日非日常の中に身を置いている疲労せいなのか、はてまたろくな食事も睡眠もとれてないせいなのか判断がつかない。

 

 ポケットから、一枚の写真を取り出して話しかける。

 

「必ず帰るからな、アイリーン………」

 

 そして、写真に軽く口づけようとして………やっぱり止める。

もしこの写真の元の持ち主が、口づけしていたら間接チューになってしまうからだ。

この写真の持ち主は恐らくむつけき野郎だからだ、ビアンな女性かつ俺好みのワガママボディーの持ち主である可能性も微粒子レベルで存在しているが………そんな可能性に賭ける必要はない。

俺は警備室のロッカーからパチッた無駄に晴れやかな笑顔を浮かべる際どい水着のチャンネーの写真をそっとポケットに仕舞った。

 

「よっこいせ………よし、今日は何をしようか?」

 

 写真相手に無駄に悲壮感を漂わせるごっこを終えて立ち上がる。

アホな事をしているが、まだバレーボールに顔を書いて話しかける程追い詰められては居ない。

『キャスト・アウェイ』は良い映画だよ。みんな、見よう。

 

 さて、現状は非常に俺に厳しいと言わざるを得ない。

安全で、安心出来る寝床………見つかってない。

生き延びる為に必要な食糧………見つかってない。

外部への救援を求める方法………さっぱりっすわー。

 

 ぐだぐたうじうじと考えていても埒があかん。取り敢えず今日この時を生き延びるのだ!と意思をあらたにしていたら、胃がキュッと締まり空腹を訴えた。

うん。今日も生き延びる為に、チョコバーを拾いに行こう。

 

 そっと警備室のドアを開ける。

右に左に………よし、異常無し。

しずしずと、極力音を立てないように気を付けながら俺はホテルを出て、廃墟となった売店通りに向かった。

 

 

「うーむ、相変わらず廃墟。夢の跡状態。」

 

 売店通りに到着して、諸行無常を感じている。

さてと、チョコバー拾ったのは、右側二件目だったから………よし、来た、見た、食った。

予備も拾っとこ。ひゅー、ポッケの中がパンパンだぜぇ!

と、空腹が落ち着いた所で胃の中とポケットにチョコバーを詰め込み思案する。

このあと、俺は何をすれば明日も生きていられるか。

本日の天気は晴れ。ポカポカの陽気に晒されて、何となく倒れた安っぽい椅子を整えて座り、タバコに火をつける。

 

ン゛ッフ!!ゴッホっ!!!

 

 噎せた。なんかクソださい。

肺の中の空気と煙を吐き出しきってから再度煙を吸い込む。

少し、自分のペースを取り戻せた。落ち着いた。冷静になった。

うむ、俺はこの島をよく知らない。

恐竜が居るテーマパーク………いや、サファリパークだなぁ、程度の知識しかない。

前世の記憶のお陰で一般の来園者よりも少しだけここのバックヤードについて知っているのだが、それでもここの職員程ではない。

だがしかし今の俺には心強い味方が居る、グレートティーチャー『ガイドブック』先生である。

メッセンジャーバッグから、そのティーチャー先生を取り出して、煙草を吸いつつ目を通し………俺は崩れ落ちた。

 

「………シェルターとか、あったんすネ。」

 

 先生曰く、恐竜が逃げた時や嵐の時そして火山が噴火した時等の避難場所として島内に複数用意されているらしい。火山弾の直撃にも耐えられる素敵防御力の施設で、保存食やらトイレやらベッドやらちょっとした発電機なんかまで備えている素敵無敵施設らしい………

 

い゛ち゛ば゛ん゛ひ゛つ゛よ゛う゛た゛っ゛た゛し゛せ゛つ゛し゛ゃ゛ん゛!!!

 

 俺は藤原竜也ばりに慟哭した。

もしも、もっと早く気付いていれば昨日、一昨日は安眠できたかも知れない。

そう考えると非常に、こう………惜しかったし、悔しい気がするのだ。

 

「………とは言え、そうなっちゃったもんは仕方がない。」

 

 世の中は「こんな筈じゃなかった!」や、「こうなるとは思わなかった!」で溢れている。

それが、自分の番になっただけ。

俺のミスでは決してなく、運が悪かっただけ。

だから仕方がないよネ!

ここでくよくよしてても何の意味もないから、その後悔はこの世界の巡り合わせの悪さに押し付けてしまおう。

 

「俺が悪いんやない!全部世界が悪いんや!!」

 

 ………と、ストレスを大いなる何かにぶつけてから俺は最寄りのシェルターへと向かった。

 

 

 最寄りのシェルターは、案外呆気なく見つかった。

コンクリート製の外壁に、鋼鉄製の頑丈そうな水密扉みたいなドアを備えた建物だった。

ただし、いったい何があったのかその扉は中心部が思いっきり凹み歪んで開いたまま動かなくなり、ドアとしての用を成さなく成っていた。内側から砲弾でも直撃したかな?

 

 このシェルターは一階平屋建て………と言って良いのだろうか?頑丈そうなコンクリート打ちっぱなしの建物に、周囲の景観を損ねないような多少の何だろう、テクノロジックとも言うべき装飾がある一軒家のようだ。

ひしゃげたドアから、こっそりと中を覗く。

よし、取り敢えず何も居な………

 

「うおっ!?」

 

 足元を小さな二足歩行肉食竜(コンプソグナトゥス)が、逃げるように駆け抜けていった。

乱れた心音を整えてから改めて中を覗く。

うん。危ない奴は居ないが、かなり荒れている。

簡易ベッドは真っ二つ。非常食は荒らされ放題。色んな物が床に散乱している。壁には血痕がベッタリ。

 

 人間大の恐竜が侵入して大暴れ、ミニマム恐竜が更に中を荒らしたって容易に想像出来る。

幸か不幸か、今は生き物の気配は全く無い。

中に侵入、はいじゃぁ、まぁおじゃまします。

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