ファイトレつめ合わせ   作:Takosan007

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時は、シニア級の夏、夏合宿。

この夏が終わり…… 冬を越えたら、私は国に帰らなければならない。 それが、私の使命。 それが…… 私の宿命。 私の心を、全てキミにさらけ出せたのなら… どんなに楽なんだろう…………。
なんて、深く考えるのはもうやめよう。 最後…… そう、“ 最後 ” までキミとの思い出を作らなくちゃ……!

せめて… 私のことを覚えていてくれるように…………。







ホタルはいなかった。
ホタルはいなかった。


「トレーナー! 今日から夏合宿だね♪」

 

「あぁ、そうだな。 それがどうかしたのか…?」

 

「ふふっ♪ トレーナーには私の “ 夏休みお楽しみ計画 ” に協力してもらうからね! 拒否権はないよ♪」

 

「はは… ずいぶん強引だな。」

 

「ダメ… かな……?」

 

「っ……! 別に良いが… トレーニングもちゃんとするんだぞ?」

「ここで遊びまくって、肝心のレースが散々でした〜 とかなったら、ファインのお父さんに合わせる顔がないからな。」

 

「うん、分かったよ♪ じゃあ、さっそく遊びに行こっ?」

 

「本当に分かってるのか……?」

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

「やっぱり日本の夏はそうめんだよね♪」

 

「いや… まぁそれは合ってるんだけどな……?」

 

 

確かこの前、麺類と言ったらラーメン以外ないって答えてなかったか? ていうか去年は、夏といったらラーメンだよねって… さも当然かのように言ってたしな……。

 

 

「むっ…! 今、ラーメンじゃないんだ〜って思ったでしょ?」

 

「そりゃ、去年はバリバリラーメンだったからな…。 今年はどんな心境の変化があったんだ?」

 

「それは…… 今年の夏が、日本にいられる最後の夏… だからかな。」

 

 

時が… 止まったような気がした。

そりゃそうだ。 三年間のみ許されたレース。普通のトレーナーとウマ娘という関係が、永遠に続く訳なんてないのだから…。

 

 

「日本の夏、いっぱい味わうためにたくさん用意してきたんだ〜。 線香花火に、浴衣… スイカもあるし、風鈴も部屋につけたんだよ?」

 

「………確かに楽しそうだな。」

 

「ふふっ、何他人事みたいに言ってるの…? もちろんトレーナーもやるんだよ?」

 

「本当に俺でいいのか? ファインだって、友達がいっぱい合宿に来てるだろう…?」

 

「キミがいいの。 それに、トレーナーじゃなきゃダメだよ。」

 

「…なっ……! それって…「これ、食べないならもらうね!」」

 

「あっ、俺の玉子!」

 

「だって、キミならこういうことしても… 許してくれるでしょ?」

 

「はぁ… いつから俺の担当はこんな悪い子に育っちまったんだ……?」

 

「ふふっ、私は悪い子だからね。 今年のトレーナーの夏は私の物にするんだ♪」

 

「はいはい、殿下様の仰せのままにー。」

 

「殿下じゃなくて、ファインって呼んでよ!」

 

「俺の玉子、返してくれたら考えてもいいぞ。」

 

「あっ…… それは…その…… 半分だけなら残ってるよ?」

 

「はい、今後は殿下ねー。」

 

「そんなぁ〜……。」

 

 

 

────────────────────

 

 

 

夜。 日本の夏の夜は、風情があるよね。 お祭りとか、屋台とか♪ そういえば… ホタルも綺麗ってトレーナーが言ってたかも。 うん、ホタルも見に行きたいな。 予定に追加しとこっと。

 

 

「ねぇ、シャカール。 ホタルってどこで見られるのかな?」

 

「アァ? ホタルか? ホタルにとってココらは明るすぎる。 少なくとも近くにはいねェな。」

 

「そっか…… でも、遠くに行けば見れるってことだよね♪」

 

「いや、夜中にそんな遠くに行けねェだろ。 何かアテでもあンのか?」

 

「トレーナーに着いてきてもらうから大丈夫! で、何時ぐらいに飛ぶのかな?」

 

「そりゃ… 8時から9時辺りだな。 けど、今日はやめといた方がいい。 曇りン時の方が大勢飛ぶからな。」

 

「へぇ〜… ありがと、シャカール! それじゃ、今の内に用意しちゃおうっと♪ 懐中電灯でしょ〜…。」

 

「あ、オイ。ホタルは光が苦手だから、絶対に懐中電灯は当てンなよ?」

 

「じゃあ、懐中電灯は持ってかないことにするね!」

 

「そうしとけ、忠告も忘れて当てそうだしな。」

 

「あっ、シャカール… 今のは聞き捨てならないよっ!」

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ふふっ、やっと曇りの夜がやってきた♪ トレーナーを呼びに行かなくちゃね。 え〜っと、トレーナーの宿泊施設は… だいぶ端っこの方なんだ。 懐中電灯もないし、迷わないように気をつけないと。

 

 

「ふんふふ〜ん♪」

 

 

自然と足が弾む。 まるで逢瀬みたい。 夜中に、キミと私… 二人だけの密会。 この前読んだ本にそんな内容の本があったな。 確か… 身分の違う惹かれ合う男女が、毎晩人目を忍んで会うっていう話だっけ。 あれ、なんかそう考えると… ちょっと誘うのが恥ずかしくなってきたかも……?

 

そんなことを思っている内に、トレーナーの宿の近くまで来ていることに気がついた。 端っこの方だからなのか、灯りが少なくすこし暗い。 ふと、建物の前に看板が立っていることに気がついた。

 

 

「なになに… 『一般人、及びウマ娘の立ち入りを禁ず』……って、えっ〜!?!?」

 

 

完全に忘れてた。 トレセン学園の寮のことを考えると、普通にそうなっていることは当たり前だったのに。 気分も落ちこんでしまった私は、近くにあったベンチに座った。

 

はぁ… 先にトレーナーに言っておくべきだったかな……。 まさか会うことも出来ないなんて…。

 

こうやって1人で考える時間が出来ると、私はいつもトレーナーのことを考えている気がする。 もし… 生まれ変われたら、キミと同じトレーナーになりたいなぁ。 身分の差なんて気にせずにラーメン屋巡りとかしちゃったり……? あ、それは今でも出来てるか。

 

ふふっ♪ 想像するだけで自然と気持ちも上がってくる。 あぁ、これが恋をするってことなんだろうな…。 寂しくて、でも愛おしくて。 でも、自覚するにはとても遅すぎて。

 

今さら自覚して失恋するよりも… 無自覚のままお別れがしたい。 だってそれが一番… 二人にとって幸せな結末のはずなのだから……。

 

でもせめて… 最後にキミとの思い出を作りたい。 迎えに来てほしい。 私を見つけてほしい。 キミに… 隣にいてほしい。 ………なんて、願っちゃうのは悪いことなのかな。

 

……色々なことを考えていたら、8時半を過ぎていた。 今日はもう諦めよう。 またいつか… 合宿中に、キミが私を見つけてくれたのなら。 ホタルはその時までとっておくことにしよう。

 

でもやっぱり…… キミとホタルが… 見たかったな……。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

「ふわぁ… よく寝た。」

 

 

今の時間は… 6時か。 たしか昨日の夜は、風呂に入るのも面倒だったからそのまま布団で寝た気がする。 流石にファインに会うというのに、風呂に入ってないっていうのは少しマズイな。

 

仕方ない。 せっかく早く起きれたことだし… 朝っ風呂にでも行ってみることにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「案外朝でも外って暑いんだな…。」

 

 

別に涼しいのを期待していた訳じゃないが、暑いだけというのも気分が下がる。 晴れやかな気持ちで外に出たはずなのに… 一瞬で無へと帰されるのには一通り文句も並べたくなるもんだ。

 

 

「お、誰もいない。」

 

 

これが早起きはなんちゃらの得というやつだろうか。 名前も知らない熟語に感謝しつつ、脱衣所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ… 落ち着く。」

 

 

普段から落ち着かない訳じゃないが… いや、落ち着かないと言えば落ち着いてはいない方だけど。

 

我らが殿下様の… 夏休み… なんだっけ? まぁ、そんな感じのやつに強制参加となった俺は、なんだかんだ楽しい夏を過ごせている。

 

しかし、ファインが走れるのは今年が最後。 トレーナーとしては… 最後まで悔いのない走りをさせてやりたいのだが…。

 

 

「はぁ… どうしたもんかな…。」

 

 

第一、今までのファインの功績は… 他ならぬファイン自身の努力と才能によるものでしかない。 そんな中… たまたまあの場面にいて、成り行きでトレーナーになっただけの俺が…… 出来ることなんて何があるのだろうか。

 

大口だけは叩くのが得意で、それでも心は追いついてなくて。 君に何回引っ張ってもらったか… もう覚えてない。

 

君にとって… 俺は普通以上になれているのだろうか。

 

せめて、聞ける範囲で “わがまま” に付き合うことにしよう…。 メンタル面でのケア…… それが、俺が君にしてあげられるたった一つのことだから。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

「あれ… もしかしてホタル?」

 

 

あれから何日が経った、いつものベンチで…。 今日は少し珍しいお客さんがいるみたい。 おどかさないように、ゆっくりと座る。

 

 

「わぁ……。 一匹でもすごく綺麗だなぁ…。」

 

 

ホタルって、確か命がすごく短いんだっけ。 死ぬためだけに成虫になって… 私はココだよって精一杯叫んでるんだ。 まるで、私の恋心みたい。

 

もし生まれ変われたら、このホタルみたいになりたい。 どこからでもキミが私を見つけてくれるように… まばゆく光っていたいんだ。

 

そんなことを思っていると、いつの間にかホタルが二匹に増えていた。

 

 

「あなたは… 見つけて貰えたんだね。」

 

 

私も… お願いだから見つけてほしい。 いつもの時刻、8時半。 今日はもう少し遅くまでいてみよう。 ホタルの逢瀬なんて… 滅多に見れないから。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

「はぁ………。 お風呂行くのに宿出なきゃ行けないっていつの時代だよ…。」

 

 

また一つ、ため息を吐く。 トレーナーの宿は、ウマ娘側に資金を注ぎ込むことを理由としてお風呂が削られているのだ。

 

それに加え、俺の宿は一番遠いところにある。 薄暗く、寝るのには適しているが… 作業をするには明かりが少し足りない。

 

 

「くじ引きの時休んだからって、貧乏くじを押し付けられるとは思わなかったな…。」

 

 

口を開けば文句しか出てこないような合宿。 それでも俺が頑張れるのは… 愛バ、ファインモーションのおかげだ。 はぁ… メンタルケアをするのは、トレーナーの役割のはずなのに…… 気がつけばいつもファインに救われてる。

 

そんなことを考えてしまうような、気だるい帰路に光があった。 二匹のホタルが戯れてるそばに、物憂げな表情をする君はとても…

 

 

「綺麗だ…。」

 

 

つい、言葉が口をついて出てしまった。 それに気づいたファインは、今まで見たことの無いくらいの笑顔になって……

 

 

「トレーナー…… 待ってたよ♪」

 

 

その光は、俺には眩しすぎて。 直視するのが耐えられなくなった俺は、ゆっくりと隣に座った。

 

 

「待ってた……? 何か約束でもしてたっけ?」

 

「キミも言ってたでしょ? ホタルが綺麗だ…って。」

「だから、大勢飛んでいるのも見てみたいなって思ったの。」

 

 

そういえば、夏の風物詩を聞かれた時に答えた気がする。 しかし、ホタルが大勢飛ぶ場所か…… 心当たりがないな。

 

 

「まぁそれはおいといて… 門限とか危うくな「あっ、ホタルが!!」」

「えっ…?」

 

 

気がつくと、2匹のホタルが遠くの方に行っていた。

 

 

「追いかけないと!」

 

 

そう言って、君は俺の手を握る。 柔らかさと体温、いろんなものが伝わってくるが… 恥ずかしいと思う暇もなく。

 

 

「ちょっ、ファイン! 速い! もう少しスピード落としてくれ! 俺の脚が死ぬ!」

 

「あっ、ごめんね! 追いかけるのに夢中で…。」

 

「と言いつつ全く止まる気は無いんだな。 そろそろキツくなって来たんだが…。」

 

「だって、ホタルに出逢えたの… 今日が初めてだから。 絶対見失いたくなくて♪」

 

 

あぁ…もう汗をかき始めてる。 宿から風呂まで結構遠いんだぞ? ファインには後でしっかり副会長に怒られてもらうことにしよう。

 

 

「仕方ないな……。 夏の思い出作りだっけ? 手伝うから… 手は離してくれないか?」

 

「ふふっ♪」

 

「………えっ?」

 

 

 

────────────────────

 

 

 

ふふっ、やっと来てくれた。 ずっと… 待ってたんだよ?

 

キミが来てくれただけで、もう嬉しくて… 嬉しすぎて。 こういうのって“ 骨抜きにされる ”って言うらしいけど、本当に… 力を入れてないとふにゃふにゃになりそうだよ……。

 

だからごめんね? 走るのをやめられないんだ。 でも、私をこんなになるまで待たせたキミが悪いんだよ? …………なんて、言えるわけないけど。

 

そんな事を考えながら、私の前に飛んでいる二匹のホタルへと目を移す。 寮周辺を抜けて、坂を下り、小川の流れに沿って進む。

 

気が付いたら… 帰り道も分からないくらい遠くまで来ちゃった…。 ここ辺りでなら、本心をさらけ出しても迷惑にならないよね… なんて思ってしまう。

 

今なら言える。けど、私には王族としての責務があって。 果たすべき務めがあって。 こんな重すぎる物は… 絶対にキミに背負わせる訳にはいかない。 この十字架の重みを知る人は、少ない方がいいから。

 

それに、キミには笑っていて欲しいから。

 

進むにつれ、木々も少なくなり… だんだんと視界も広がってきた。 ふと周りを見渡すと、点々とした光がそこら中に広がっていた。

 

 

「綺麗……。 綺麗だよ! ほらっ! 」

 

「はァッ…… そうだけどっ… ゼェッ…… 少し… 休憩させてくれっ……。」

 

 

そう言ってキミは地面に座り込む。 む〜っ。 そりゃキミと私じゃ体力の差は歴然だけど…。

 

 

「む〜っ… 貴様〜! この景色が見れぬと申すのか〜!」

 

「ゼェッ…… 無茶苦茶だ…。」

「ただ… 確かに綺麗だな。 ホタルってあまり群れでいるもんじゃないって思ってた。」

 

「ふふっ♪ きっと、あのホタル達が導いてくれたんだよ。 まるで妖精みたい!」

 

「それじゃ、妖精達を仕えてたファインは… 妖精使いってことになるな。」

 

「そう見える? じゃあ… 妖精たち、集まれ〜! ……なんてね♪」

 

 

そう言って私は宙に手を掲げてみる。 でも… ホタルがいっぱい寄ってくるなんて、物語のお姫様みたいなこともあるわけ無く。

 

 

「あははっ、何そのポーズ。 なんか可愛いことになってんぞ。」

 

「か、可愛いなんてそんな……///」

 

「褒めてんじゃなくてバ鹿にしてんの。」

 

「ふふっ♪ 照れちゃって〜! 私も座ろ〜っと… 背中借りるね?」

 

 

キミと… 背中合わせに座る。 キミの体温… 鼓動…… 全てが伝わってきてるみたいで、なんだか気恥ずかしい。

 

 

「トレーナーは… 私が居なくなった後どうするの?」

 

 

上がっていく心音を誤魔化す為の… 重い話題。 けれど、私の鼓動はそんなのも関係なしに加速していく。

 

 

「そうだな… ファインが帰った後か……。 特に何も考えてなかったな。」

「普通に行けば、他の子達の担当を任されることになると思う。 君が残してくれた功績があるからな。」

 

 

そう…だよね。 もしかしたら…… 私だけのトレーナーでいてくれるかもって思ってた…。 けど、そんなに世の中は都合良くできてなくて。

 

それに、キミは優しいから… 他の子達の中からもトレーナーを好きになっちゃう子が現れるかもしれない…。 そんなのは… 嫌だよ……。

 

 

「もうっ、私だけの功績じゃないでしょ? キミと私。 二人で掴んだ勝利なんだから。」

 

「それでも、ファインが凄かったっていうのは絶対にあると思うよ。 俺はただ… 他のトレーナーにでも出来ることをやっただけに過ぎないからね。」

 

 

もう、気づいてないのかな。 金とか権力とかに怯えずに…… 私の夢を叶えたいってだけで全てを捧げる覚悟が出来るなんて。 そんな優しいトレーナーだから… 好きになっちゃったのに。

 

 

「トレーナーは… 自分が思っているよりず〜っと、カッコいいんだからね?」

 

「ははっ、担当の子にそう思ってもらえるなんて… トレーナー冥利に尽きるな。」

 

 

ごめんね、やっぱりこの気持ちに逆らうこと… 出来そうにないよ……。 隠していたいのに、絶対に迷惑かけちゃうのに。 キミに一つ… 夢を叶えて貰えたのに。

 

でも、このまま消し去るにはとても… この感情は綺麗すぎて。

 

 

「私… トレーナーのことが好きなの。」

 

「………っ!」

 

「ごめんね…! 抑えなきゃいけない感情なのに… 結局私、弱くてっ…!」

 

「そんなことない。」

 

「私、キミに迷惑をかけることになるって… 分かってたのに…!」

 

「迷惑なんかじゃない…!」

 

「また、わがまま言っちゃうね。 一度… キミには叶えてもらったのに…。」

 

 

止まらない。 言葉が口から次々出てくる。 心に栓をするのは… 得意だったはずなのに……。 一度漏れてしまったから… もう止められない。

 

 

「俺の話を聞いてくれ!」 ダキッ

 

「きゃっ!」

 

 

暖かい。 ずっと欲しかった… 温もり。 嬉しいのに… 全然喜べない。

 

 

「先に言っておくが、ファインの気持ちに今… 答えることは出来ない。」

 

「うん………。」

 

 

分かっていたんだ…。 絶対に断られるって。 私だってそんなにバ鹿じゃない。 でも、悲しい… 悲しいよ……。

 

 

「ただ、国に帰ってもまだ… 俺のことを想っててくれるなら… 絶対迎えに行くから。」

 

「えっ… なんで……? 私… 王族なのに? そんなの… 絶対に苦しくなるだけだよ……。」

 

「覚悟なら出来てる。 君のわがままも全部聞くから…。 それ以上… 自分の事を追い詰めないで欲しい。」

「王族だからとか関係ない。 ファインだって… ここに来たからには、幸せになる権利があるはずだから。」

 

「権利があるって言っても… 私が対峙してる問題は、義務なんだよ? 使命なの…。 だから、到底太刀打ちできなくて…!」

 

「理由なんかいらない! 気持ちが大事ってこと… 君はよく知ってるはずだ…!」

 

 

あぁ、そうだった。 キミはそういう人間なんだよね。 大事なところでいつも… 私の気持ちを引き出してくれる。 お姫さまをお城から連れ出してくれる妖精のように。

 

 

「私も… 恋していいのかな…?」

 

「あぁ、気持ちを止めることが出来る人間なんか… 居ていいものか。」

 

「この先… いろいろな壁があるって分かってるのに…?」

 

「越えられるって… 示してきたじゃないか。 もし越えられなかったら、俺が駆けつけるから。 二人でなら大丈夫だろ…?」

 

「………ふふっ、ここまで言われちゃ… もう諦めるしかないね。」

「私、ファインモーションは… キミのことが好きです。 だから、私のこと… 覚えていてくれますか?」

 

「あぁ、もちろん。 その気持ちを待ってたんだ。」

 

 

 

 

 




あぁ… なんか重大なことを勢いに任せて言ってしまった気がする…! ファインの悲しむ顔が見たくなくて、つい衝動的に言葉が出てきたが……。 これ実質婚約だろ…!!


「トレーナー、ありがとね? 私の気持ちを救ってくれて。」

「いや… ホタルが綺麗で、雰囲気に乗せられたというか… なんというか……。」

「それでも、嘘じゃないでしょ?」

「………そうだ。」

「なら良かった♪ ……約束だよ。 私は今日の日のことを… ずっと、胸にしまっておくから…。 キミも、忘れないでね?」

「あぁ…。 けど、今日のことは二人だけの秘密にしよう。」
「担当のことを急に口説き出したとかバレたら… マジで仕事が無くなる。」

「アイルランドに来れば大丈夫だよ?」

「そこに行くためのお金が足りなくなるんだって!」

「じゃあ、私が迎えに行くね?」

「なんか、それは違うだろ…。何とは言えんが……。」

「トレーナーって… 案外ロマンチスト?」

「うっ…… さっきの出来事がもう黒歴史になりそう…。」

「ふふっ♪ 大丈夫、私だけしか知らないから!」


あぁ、君が笑っているから。 これで良かったのだろう。 きっと。



────────────────────



私にとってこの夏は… 一生消えない思い出になるのだろう。 ホタルが導いてくれた一つの結末。 あの二匹には、本当に感謝しなきゃね。


「オイ、聞こえてンのか?」

「わっ、シャカール! どうしたの?」

「質問してンの聞こえてねェのかよ…。 ホタル、見れたのかって質問してンだよ。」

「あっ、ホタル! そういえば見れてないや♪」


……なんて、嘘だけど。 あの夜は… 二人だけの秘密だから。 ふふっ、なんだかワクワクする。


「何で見れてねェのに嬉しそうなンだよ……。」

「ふふっ♪ この夏はいろんな楽しいことが出来たな〜って!」

「はァ……。 そりゃァ良ォござンした、殿下サマー。」


そういえば、四つ葉のクローバーには… 約束って意味もあるんだっけ…。 帰ったら二人で探してみるのもいいかも♪




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