ファイトレつめ合わせ   作:Takosan007

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私が日本とアイルランドの親善大使を務めることになってから… 何年か経った。

トレーナーと一緒に駆けた、トゥインクル・シリーズ。 最初は走ることさえ出来なかったのに… キミのおかげで、どんどん出来ることが増えていって……。

私の常識を壊してくれたキミには、いくら感謝しても有り余るくらい… いろいろ助けて貰った。 まるでキミの周りは、全てが叶うような夢の場所で… 一生忘れることは無いのだろう。

それも今は引退して… 私は日本で、親善大使としての役割をまっとうしている。 キミとも、たまに連絡を取り合いながら… ゆっくりと日本の日常を楽しんでいた。

そんなある日の事…… 何の前触れも無く、私の日常は崩れ始めていく。







Last Fantasy
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“ 気軽 ” な集まりの中… 私は仮面を被り、来てくれた方々に挨拶をして回る。 これも私の日常の一つ。

 

仮面を被ったままでいるのは、少し疲れることもあるけれど… これが私の使命で。 無理を言って通してもらった、私の “ わがまま ” だから… 気を抜く訳にはいかない。

 

集まりも終わり、夜も更けてきた頃… 今日はまだやるべき事が残っている。 少し重くなった足を引きずりながら、大使館へと戻る。

 

すっかりと自分のモノになったデスクにつき、その上に積まれている書類に目を通す。 そうしている内に… 後ろから、馴染みのある声が聞こえてきた。

 

 

「殿下… 国王陛下からのお達しが来ております。」

 

「分かりました。 後で目を通しますので… そこに置いておいてくださる?」

 

「はっ…。」

 

 

何が書いてあるんだろう……? そう… 気になった私は、急いで目の前の作業を終わらせ… 手紙を手に取る。

 

『お父さまが手紙を寄越すなんて… 何かあったのかな…?』 …などと不安になりながら、中を見ると…。

 

そこには… 今の私には受け入れ難いことが書いてあった。

 

 

「許嫁候補との “ お見合い ” かぁ……。」

 

 

私ももうすぐ二十代後半になるし、予想していなかった訳ではないけれど…。 どうして、こんなに胸が痛くなるのだろう……。

 

頭の中に… トレーナーと過ごした数々の日々が、フラッシュバックする。 キミのことが好きだった三年間。 忘れようと努力をした…… その後の日々も。

 

それを思い出してしまうのは… 忘れきれなかった証拠で…。 結局今でもまだ… キミのことが好きなんだ……。

 

その瞬間… 大使館の24時を告げる鐘が鳴った。 その音を聞いて… 私はいてもたっても居られなくなって…… 何の準備もせずに大使館を飛び出す。

 

 

「殿下……! もう夜も遅いですから……っ!」

 

 

後ろから聞こえる、隊長の声には聞こえないふりをして……。 私が “ ファインモーション ” になってしまう魔法が、届かない場所まで駆けていく。

 

目的地は… トレセン学園。 キミはきっと、そこにいるだろうから。

 

 

 

⏰⏰⏰

 

 

 

消灯時間をとっくに過ぎ、暗くなっている廊下を駆け… ある部屋へと向かう。 何年間も過ごした場所ということもあって… 視界に入るだけで、思い出が蘇ってくる。

 

キミとの思い出も、色味を増して思い起こされるから…。 “ 今すぐ会いたい ” って気持ちが抑えきれなくなる。

 

目的地には、当たり前のように明かりがついていた。 呼吸を整えようとするが… 私の手は考えるより先にドアを開けていた。

 

 

「……誰だ!?」

 

「…サプラーイズ! トレーナー、久しぶり♪」

 

「ファイン…!? こんな時間にどうしたんだ……?」

 

「ふふっ、昔の事を思い出してたら… キミに会いたくなっちゃって♪」

「トレーナーだって… こんな時間に何してるの……?」

 

「あー… ファインが引退してから、他のチームのサブトレーナーを引き受けまくったんだけどな……。」

「少し、やることが多くなっちゃってさ。 こうやって夜も作業をしてるんだよ。」

 

「も〜っ、トレーナー……。 別にサブトレーナーなんだからさ… 自分だけで全部、やり切ろうとしなくたって良いのに…。」

 

「ははは、そうかもしれないな。」

「でもさ、俺が頑張ることによって… メインのトレーナーへの負担が減る……。 それによって皆が輝く姿が見れるのなら… 俺はこの作業を苦になんて感じないんだ。」

 

「トレーナー……。」

「ふふっ、キミはずっと… 変わってないね♪」

 

 

本当に、変わっていない…。 優しかったキミのまま… ずっと隣から見ていた、あの頃のキミのままで……。

 

ここに居ると… 自然と心が落ち着いていく。 やっぱりキミのことも、キミのそばにいる時の “ 私 ” も…… 私は大好きだ。

 

 

「そうか……?」

「今年は結構色んな人に関わってきたんだけどな……。」

 

「変わらないっていうのは… ちゃんと “ 自分 ” を持ってるって事でしょ…?」

「それって… とても素敵な事だよ♪」

 

「ははっ、相手のことを見てないだけかもしれないだろ…?」

 

「トレーナーなのに、相手の事を見てないなんて… 悪いトレーナーだね〜……。」

 

「ははは、冗談だって。」

 

 

キミが相手の事をよく見ているってことは… 私が一番知っている。 誰にも言わなかった、私の心からの願いを… キミは見透かしちゃって。 それだけじゃなく、叶えてまでくれて……。

 

だから私は、キミの周りでは… 誰にも見せない “ 私 ” を見せるの。 キミだけの “ ファインモーション ” を……。

 

けれど… 許嫁候補とのお見合いが終わって、結婚することになってしまったら……?

 

きっと私は… “ 私 ” にさよならをして、“ ファインモーション ” でいなければいけなくなる。

 

そんなのは嫌だけど… 仕方ないのかな……。 どんなファンタジーでも… プリンセスと結ばれるのは、王子様だと決まっているから。

 

お願いだから、私が “ 私 ” じゃなくなる前に… 抱きしめてよ。 キスをしてよ…。 キミの温もりで、全てを忘れさせてよ……。 ……なんて、もちろん言い出せないけれど。

 

こんな悪いファンタジーなんか… 消えて無くなっちゃえばいいのに。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

結局何も出来ないまま… お見合いの日がやって来てしまった。

 

 

「私… どうすればいいんだろ……。」

 

 

誰も居ない部屋で一人… お見合い向けのドレスで着飾った私は、鏡に問いかける。

 

もちろん、答えなんて返ってこない。 おとぎ話のように、なんでも答えてくれる鏡は… そこにはないから。

 

いつも、困った時は… キミに助けてもらっていた。 これから先は… 一人で生きていかなきゃダメなのかな。 そんなの、無理だよ……。

 

 

 

⏰⏰⏰

 

 

 

席に座り…… 相手が来るのを待つ。

 

将来の相手と顔を合わせるというのに、どうしてだろう…。 今私は、“ ファインモーション ” になりたくないな… なんて思ってしまっている。

 

ずるいかな。 キミだったら笑ってくれるかな……。 なんでだろ、今でもずっと… キミの事しか考えられてないみたい。

 

忘れなきゃいけないものだったけど…。 それでも、私の人生を彩ってくれる大切なものだから…。 こんなの絶対… 忘れたくないよ……!

 

その衝動に突き動かされるように、その場を逃げ出す。 今日もまた、後ろからの制止の声は聞かないふりをして。 “ お父さまに怒られちゃうかな ” なんて、もう駆け出しているのに… 頭によぎり始める。

 

私がいばらの道を走っているのは… この胸の痛みが、嫌なほど語っている。 それでも、この痛みも全て… 忘れたくないものだから。

 

 

 

⏰⏰⏰

 

 

 

気がついたら、キミとクローバー探しをよくしていた… 河川敷まで来ていた。 夕日が落ち… 黄金色に染まる景色。 ……すごく綺麗で、見惚れてしまう。

 

そんな気持ちに浸っていると… 後ろから、私を現実へと引き戻す声がした。

 

 

「殿下… 困ります。 この様なこと… 陛下に知られでもしたら……。」

 

「すみません… 隊長。」

「私も、気持ちの整理がついていないのです……。 自分でもどうしたらいいのか… 全く分からなくなってしまって。」

 

「………今回は、相手方の都合が悪くなってしまったようなので、陛下に知られることはありません。」

「ですが、決断をなされるのなら… お早めの方がよろしいかと。」

 

 

決断をする…。 つまり、お父さまが見繕った人と結婚するか… それともそれ以外かを、選ぶということで。 それ以外を取るという事は… 実質お父さまに歯向かってしまうことにもなる。

 

 

「………隊長。 少し一人にしてくださるかしら…。」

 

「…ダメです。」

 

「………そう、ですか…。」

 

「と、普段の私ならそう言うでしょう……。 ですが “ 今の殿下には、決断をなされるための時間が必要ではないか ” …と私は考えました。」

「今日だけは… 見逃すことにします。」

 

「……隊長っ!」

 

「やめてください…。 その名前で呼ばれると、見逃せなくなりますよ?」

 

「……ありがとね。」

 

「いえ…。 心に従っただけですから。」

 

 

……隊長にも、ここまでしてもらったんだ。 必ず今日中に、この気持ちにケリをつけないと。

 

 

 

⏰⏰⏰

 

 

 

ダメだ…。 “ 忘れたくない ” という思いと、“ お父さまを裏切りたくない ” という思いが…… どうあがいても正反対の場所にあって。 どっちも取れないという事実に… 涙が溢れてしまう。

 

お父さまは… 私が日本に居られるように、手配してくれたり…… 私の事を陰ながら支えてくれている。 それなのに、これ以上わがままを言って… 恩を仇で返す様なことをしていいのか……。

 

うぅ、結局… 一人じゃ何も決められない。 こんな弱い私が嫌になる。 どこにも行けず… 檻の中で泣いているだけで。

 

日が落ちるのと一緒に、このまま消えてなくなれたらいいのに… なんて思ってしまう。 いけない、隊長がせっかく作ってくれた機会なのに… 私がこんなんじゃダメだよね…。

 

あの頃と同じように… 四つ葉のクローバーを探して、気分を落ち着かせる。 キミと二人で… 頑張って探したっけ。

 

必死に記憶を思い起こしていると、頭の中だけじゃなく… 後ろの方からも声が聞こえてきて。

 

 

「……ファイン?」

 

「と、トレーナー……っ!?」

 

「お、懐かしいな。 確かここでクローバーを探してたっけ。」

 

「どうしてここに!?」

 

「え? ファインが呼んだんじゃなかったのか……?」

 

 

まさか……。 隊長… 本当にお節介なんだから……。 でも確かに… 最初からそうすれば良かったんだ。

 

考えるよりも… 行動に移した方が早い。 私が “ ファインモーション ” になってしまう前に…… キミに伝えないと。

 

 

「……ふふっ、来てくれてありがとね。」

 

「なんか、今日のファイン…。 いつもより大人に見えるな……。」

 

「隊長達におめかししてもらったからね♪ ……今日は… お見合いがあったから。」

 

「そうだったのか。 通りでいつもより綺麗に見える訳だ。」

 

 

……キミにそんな事を言われたら、もう抑えられないよ…。 クローバーをクッションにし… キミを押し倒す。

 

 

「……ファイン!?」

 

「…トレーナー。 私はね… ずっと前からキミの事が好きだったんだ。」

 

「でも、君にはお見合いの相手がいるんだろ…!?」

 

「ううん、まだ会ってないの。 今ならまだ間に合うから…。 私を… キミだけのモノにしてくれないかな……?」

「私… キミ以外と結婚するなんて、考えられなくて。」

 

「ファイン……。」

 

「この前だって… 言おうと思ってたの……っ! でも… 私が選んだ道は、わがままの上に成り立った道だから……。」

「でも… わがままを言う “ 私 ” が、もう止まらなくて……っ!」

 

「……一度、確認させてくれ…。 これは、君がよく考えて決めた事なのか?」

 

「うん…。 ずっとずっと考えて、やっぱりキミとの思い出だけは… 消したくなかったから……。」

 

 

ここまで考えてきたことが頭の中を周り…… 何が何だか分からなくなってきて。 言葉がきちんと紡げているか不安になってくる。

 

涙が自然とこぼれ… キミの服を濡らす。

 

 

「それならいいんだ。」 ダキッ

 

 

急に… キミの温もりを感じて。 気がつくと抱き寄せられていた。

 

 

「トレーナーっ… それって……!」

 

「あぁ、俺は構わない。」

「それに… やっぱりファインが苦しそうなのは嫌だからさ……。 わがままをいう手伝い… 一人くらい出来る人が居た方がいいだろ?」

 

 

あぁ、やっぱり優しい理由で…。 ずっと、キミの優しさに甘えてるみたい。 ……でも、キミに一生甘えていいのなら… それでもいいや。

 

 

「うん……! ありがとね……っ!」

 

 

嬉しくて… 顔を上げ、キミの顔を見る。 私とは違って… 余裕のある表情をしていた。 つい、わがままな心が働き… 崩したくなってしまって。

 

 

「……んっ…。」 チュッ

 

「………!?」

 

 

そっと、キミに口づけを落とす。 たちまち表情が崩れてくキミは… 少しおかしくて。

 

 

「ふふっ、これが私のファーストキス… だよ……♪」

 

「はは…… やられたな…。」

 

「トレーナーがそんな顔をしてるのが悪いんだよ♪」

 

「何を……!」 チュッ

 

「…………っ!?!?」

 

 

仕返しにとキミにされたキスは… 私からしたキスよりもずっと幸せになれて…。 仕掛けられたら… やり返す。 その流れがずっと続き、長い間… 私達はキスをしあっていた。

 

 

 

 

 




「殿下… そろそろ帰る時間なのですが……。」


急に聞こえてきたその声に… はっとなり立ち上がる。 も、もうっ…。 良いところだったのに……。


「た、隊長!? 何ですか…?」

「トレーナー様といちゃつくのはそこまでにして… そろそろ帰ってください。 きちんと帰らせないと、陛下に怒られますので。」

「ファイン……!? これって見つかって大丈夫なやつなのか…?」

「あ、ああそうだった…!」
「隊長… 今回も見逃してくださる……?」


あはは… つい願いが叶った後だから、わがままが癖になってきてるかも……。


「…ダメです。」

「………普段の私なら…?」

「今回は本当にダメですからね?」
「お見合い相手にも断りを入れる必要がありますし… 第一、陛下に伝えなければならないでしょう?」

「そうだった……。」

「まぁ、ファイン。 俺は君の味方であり続けるから… 困ったら呼んでくれ。」

「……トレーナーっ!」 ダキッ


ファンタジーでは… 絶対にありえない結末かもしれないけれど、私はリアルを生きているのだから。 それに、キミがそばに居てくれるなら… きっと、この先の事も乗り越えられるだろう。


「……殿下。 今すぐ連絡を入れることも出来るんですよ…。」

「……分かりました。すぐ帰りますから…。」

「じゃあ、ファイン。 またな。」

「うん…… またね、トレーナー!」


私は今日も… リアルを生きていく。 辛いことも全部、逃げずに受け止めて。




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