ファイトレつめ合わせ   作:Takosan007

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日曜。 本来は休日のはずのその日…。 俺はいつもと変わらず、トレーナー室で雑務をこなしていた。

ファインモーションのトレーナーになってからの二年間。 休みの日も、たいていはこうやってなにかの作業をしている。 勿論そんな中で、趣味の時間なんて取れる訳もなく。


「はぁ……。 ゲームが恋しいな…。」


ゲーム。 それは最高で最強な “ 暇つぶしツール ” のうちの一つだ。 俺もトレーナーになる前は、寝不足になるくらい夢中になってたっけ。

ゲームの中では、やっぱりRPGが一番お気に入りだ。 装備などを整え、レベルを上げるなどしてキャラクターを強くするシステムが、とても楽しくて癖になる。

そういえば、あの頃やっていた “ DRAGON TALE ” も、今ではかなりナンバリングが進んでるらしい。


「いつか… 休みが出来たら、“ DRAGON TALE ” の新作タイトルをやってみるのもいいかもな…。」


そんな、いつ叶うかも分からないような願いを口にするが、目の前に転がった雑務が、いつだって俺を現実に引き戻してくる。


「はぁ〜……。 仕方ない、ファインの為になる事だ。 手を抜くわけにはいかないしな…。」


手元にあるコーヒーを飲み、作業へと戻る。 途中でドアの方から物音がした気がするが… 気のせいだろう。



────────────────────



「らんらら〜ん♪」


桜の咲いている道を歩き、トレーナー室を目指す。

今日は休みだから、別にトレーニングがある訳じゃないけれど。 それでもキミと話すだけで楽しいし、少しでも私の事を覚えていて欲しいから。

そんなことを考えながら鼻歌まじりに歩を進めていると、既に目的地の前についていたことに気がつく。

高まる鼓動を落ち着かせるように、ゆっくりとドアノブに手をかける。 中をのぞき込むと、パソコンの前で作業をしているトレーナーの姿が目に映った。


「はぁ……。 ゲームが恋しいな…。」


ゲーム…。 確か、トレーナーはゲームが大好きだって事、お義母さんも教えてくれたっけ。 私はゲームセンターで遊べるような物しか遊んだことがないから、前から少し興味がある。

今度、トレーナーと一緒にやってみるのもいいかも…?


「いつか… 休みが出来たら、“ DRAGON TALE ” の新作タイトルをやってみるのもいいかもな…。」


“ DRAGON TALE ” かぁ…。 やったことはないけれど、一人用のロールプレイングゲームだってことだけは知っている。

二人で一緒に遊べるようなゲームがしたいんだけど… う〜ん……。 何か良い物が無いか、隊長達に相談してみようかな?

そう思い、足早にトレーナー室を後にする。


『隊長? お願いしたいことがあるのだけれど…』





Fairy Tale
プロローグ


5月になり、そろそろゴールデンウィークも近くなってきた。 もちろんゴールデンウィークと言っても、俺達の場合は2、3日だけなのだが…。

 

とは言っても、ゲームをやる分にはそれだけあれば十分だ。 何をやるかは決めていないけれど、休みが楽しみで待ちきれない。

 

……って、トレーニングの最中は気を抜かないようにしないと。 ファインに何かおきたらいけないしな。

 

 

 

⏰⏰⏰

 

 

 

「ふぅ〜っ! 今日もトレーニングありがとね、トレーナー♪」

 

「こちらこそ、厳しめのトレーニングをこなしてくれてありがとな。」

 

「ふふっ、キミが組んでくれたトレーニングですもの。 どんなトレーニングでもこなしてみせるよ♪」

 

「ははは、信頼してくれてるようで嬉しいよ。」

 

 

いつものやりとりをしつつ、ちらりと日付を見る。 …どうやら思っていたより休みは近く、明日からゴールデンウィークに突入するようだ。

 

帰りに何か買って帰ろうか……? いや、でもダウンロード版の方が何かと遊びやすいって聞くしな…。 そういやパソコン版でも出てるんだっけ…?

 

 

「トレーナー、何だかワクワクしてるね♪」

 

「えっ? 俺… もしかして顔に出てたか?」

 

「うん、もう明日が楽しみで仕方ないって感じに!」

 

 

…マジか、そんなに分かりやすく顔に出ていたのか。 何か、少し恥ずかしいな。

 

 

「もしかして、何か予定があるの?」

 

「いや、そういう訳じゃないんだけれど…。 ゲームが出来るなって思うと、嬉しくなっちゃってさ。」

 

「ゲーム…!」

 

「その反応… もしや、ファインもゲームとかするのか?」

 

「ううん、あまりしないんだけれど…。 でもね、最近SP達がゲームを作ってくれたの!」

 

「それは凄いな…!」

 

 

SPさん達って、そんな事まで出来たのか……。 一国の姫の為に作られたゲーム。 少し興味がわくな…。

 

 

「でしょう? だけどそのゲーム、勇者側と姫側の人が必要なんだよね…。」

「姫側を遊んでみたいのだけれど… どこかに勇者側をプレイしてくれるトレーナー、居ないかな〜…?」

 

「うわっ… クソ下手な誘導だな…!」

 

「ふふっ、でもちょうど良かったでしょ?」

 

「まぁ… そうだけどさ。」

 

「それじゃ… 明日の朝10時、体育館前で待ってるからね♪」 ガチャ !!

 

「えっ、まだどんなあらすじとか聞いてないんだけど…!」

 

 

……行ってしまった。 確か、勇者側と姫側とか言っていたな…。 おそらくRPGであるのは間違いないとは思うのだが……。 体育館前で待ち合わせというのが引っかかる。

 

……考えても分からないし、今日はもう帰るか。 SPさん達も真面目な人だ。 変なゲームではないのは確かだし、素直に楽しめばいい。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

翌朝。 何を持ってくれば良いのかを聞いていなかったから、携帯ゲーム機を色々持ってきたけれど…。

 

 

「あっ、やっと来たね♪」

 

「やっと……? 時間通りに来たと思うんだけれど…。」

 

「ふふっ、そう言えばそうだったね。 もうセッティングは済んでるよ。 ほら、中に中に♪」

 

「セッティング……?」

 

 

 

⏰⏰⏰

 

 

 

「もしかして、VRウマレーターを使うのか!?」

 

「そうだよ?」

 

「よくオリジナルゲームを作れたな……。」

 

「ふふっ、私のSP達は凄いでしょ?」

 

「でしょう。」

 

「……ん? 隊長さん!?」

 

 

ファインの声に続いて、誰かの声が聞こえてくる。 音の出処を探していると、ウマレーターの後ろから隊長さんが出てきた。

 

 

「はい、開発者代表です。」

 

「あ、そういう立場なんですね…。」

 

「今回私達が作りました作品は、元々のRPGに加え、わが祖国の要素を加えた物となります。」

「詳しくは旅をする内に分かっていくと思うので、ここでは説明を省かせていただきます。」

 

「…あらすじとかって無いんですか……?」

 

「ゲーム内で全て完結しているため、外で解説することは無いかと。」

 

 

…遊んでみれば分かるってことか。 そういえば、VRのゲームはほぼやった事がないな…。

 

しかも、ウマレーターは最新の技術が詰め込まれていて、直感的な操作がしやすいとか。

 

 

「……始めるか。」

 

「ふふっ♪ 楽しみだね!」

 

「まぁ、そうだな。」

 

「それじゃ、向こうで会おうね♪」

 

 

そう言い、ファインは鉄の塊の中に入っていく。 それを見て俺も、ゆっくりと入るが…。

 

 

「うわっ!!」 チカッ !!

 

 

入った瞬間、まばゆい光に包まれた。

 

 

 

⚔️⚔️⚔️

 

 

 

「…ぉ……なさ……」

 

 

声が… 聞こえる……。

 

 

「ぉき…なさぃ…」

 

 

どこか… 懐かしさのある声だ……。

 

 

「起きなさい…!!」 バサッ !!

 

「うわっ! って、お母さん!?」

 

 

目を開けると、そこには実家にいるはずのお母さんの姿が映りこんだ。 ……って、何でゲームに登場してるんだ……?

 

 

「アンタ、今日は王様に呼ばれてる日だよ! 遅刻したらマズイじゃない!」

 

「王様……? 俺、何か呼ばれるような事でもしたっけ?」

 

「…何言ってるんだい? アンタは勇者の証を持ってるじゃないか。」

 

 

そう言われ、指さされた所を見ると “ 赤い炎のような紋章 ” が体に浮かび上がっていた。

 

 

「アンタ… 寝ぼけてるのかい? はやく目を覚まして、王様の所に行きな!」

 

「はぁ… 分かったよ。」

 

 

布団から出て、部屋を見回す。 流石に見慣れた配置とまではいかないが、ある程度見知った物が置かれていてビックリする。

 

ふと視界に、無造作に置かれている壺が映った。

 

…RPGでよくある壺。 割れば中から金が出てくるため、他人の家に入っては割るという事をしていたっけ。

 

 

「でも、流石にこれはな……。」

 

 

VRウマレーターの中ということもあり、感触までリアルで。 持ち上げることすらためらわれるレベルだ。 何も出来ず、壺から離れる。

 

ひと通り見渡して、やる事が無いのを確認した俺は、外に出ることにした。

 

 

 

〔 Tips:勇者の証とは炎の魔法を使える者の証。 人の中で炎魔法を使えるのは勇者だけと言われている。〕

 

 

 

────────────────────

 

 

 

「うわ… 凄いな……!」

 

 

外に出た瞬間、鮮やかな自然が目に入る。 見回してみると、大聖堂や、酒場などがあった。 ところどころ石造りである事から、中世の雰囲気の街だということが分かる。

 

 

「にしても… “ 王様に会いに行け ” って言われてもな……。」

 

 

地図も無いのに、こんな広い街を歩けるのだろうか……? そう思って頭を悩ませていると、目の前に何かが現れた。

 

 

「妖精……?」

 

 

よく見ると、白いホタルのようなものが飛んでいた。 試しに飛んでいる方に向かってみると、城が見える通りへと辿り着く。

 

 

「もしかして… 目的地まで導いてくれるのか……?」

 

 

だとしたらとてもお洒落だな。 とりあえず城も見えた事だし、それを目指して通りを進む。 妖精もそっちの方に向かっているし、どうやら思っていた通りみたいだ。

 

にしても… 平和そうな街なのに、何故勇者が呼び出されているのだろうか。 そんな違和感を抱きつつ、城にたどり着く。

 

城の前には、見慣れたSPの方達が、黒服ではなく鎧を纏っていた。 でも… 数十名も配置するなんて、城を守るにしては厳重過ぎないだろうか…?

 

 

「貴方様は…! お待ちしておりました!」

 

「陛下がお待ちです。 さぁ、どうぞ中へ。」

 

 

そう考えていると、SP… いや、兵士達が扉を開けてくれた。 招かれるまま城へと入る。

 

 

 

〔 Tips:ガイド妖精は、勇者の証の恩恵である。 ちなみにモチーフはモンハンワールドの導虫 〕

 

 

 

────────────────────

 

 

 

「……よく来てくれた。 勇者よ。」

「さっそく頼みがあるのだが… 聞いてくれるだろうか?」

 

──────

▷はい

ㅤいいえ

──────

 

 

…選択肢とか出るんだな。 それにしても、国王はやっぱりファインのお父さんなんだな。

 

 

「感謝する。 …実は、我が妻… 即ちこの国の女王が、何者かによって連れ去られたのだ。」

 

「なっ……!?」

 

「この事はまだ… 公にはしていない。 それ故、いまだこの国は平穏を保てている。」

「…が!! 私はこの孤独に耐えきれない…! 妻が居ないのに何が手につくものか…!」

 

「王……。」

 

「……すまない、見苦しい姿を見せたな。」

「つまり、勇者であるそなたに… 女王の居場所をつきとめ、取り戻してきて欲しいのだ。」

「報酬はたんとはずもう。 どうか、我が妻を助けてはくれないだろうか?」

 

 

──────

ㅤはい

ㅤいいえ

──────

 

 

……つまり、居場所も分からず、生死も分からない女王を助け出してこいと言われてるわけか…。

 

現実世界だったら、こう言われたらすぐ無理って考えてしまうけれど……。 今の俺は、勇者なんだよな。 普通に考えて “ いいえ ” は選べない。

 

それに、ファインのお父さんの叫びは真に迫るものがあった。 普通に言われたとしても心が動かされていただろう。

 

 

──────

▷はい

ㅤいいえ

──────

 

 

「……感謝する。 本当にありがとう。」

 

「いえ、まだ見つけてないんですから、感謝なんてしなくていいですよ。」

 

「この申し出を受けてくれただけで、気持ちが楽になった。 それに感謝せずして、何に感謝をすればいいのだ…。」

 

「あれ? お父さま…? いったい何を話しているの?」

 

「……!?」

 

 

突然後ろから聞こえてくる、聞きなれた声。

 

 

「そちらの方は… あっ、トレ… 勇者様!?」

「お父さま、遂にお母さまを探してくださる人を見つけたのね!」

 

「そうだ、こちらが我が妻を助けてくださるお方だ。」

 

 

いや、助けられるかは分からないですけどね… とはもちろん言えない。 娘の前で笑顔になっている王様の前では… とても。

 

 

「ふふっ、素敵ね♪ …そうだ! 私もこの方についていくのはどうかs」

 

「駄目だ。」

 

「ええっ、そんな…。 私だって風の精霊と仲良しなんだよ? 自分の身ぐらい自分で守れます。」

 

「……駄目なものは駄目だと言っている…。 これ以上、私に失わせないでくれ……。」

 

 

そりゃそうだよな…。 王は今、妻を失っている状態。 妻を失っただけでさっきの荒れ様なのだから、娘まで失うわけにはいかないのだろう。

 

……ファインには気の毒だが、俺が行くしかない。

 

 

「王様、女王陛下を探すというお願い… しかと承りました。 では、私は… 」

 

「待ってくれ、この装備を譲ろう。」

 

 

そう言われ振り向くと、兵士達が装備を渡してきた。 見た目は重めに見えたが、着てみるとそうでも無く、むしろ動きやすい。

 

 

「近衛兵の装備に魔法で加工を加えた。 これでは到底足りないが、私の気持ちだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「…お父さま。 本当にダメ……?」

 

「すまない。 だがもう失う訳にはいかないのだ……。」

 

「トレ… 勇者様の方からもなんとか言ってよ〜!」

 

「……絶対に、連れて帰りますから。」

 

「まずは、街の門を抜けた先に神殿が見える。 そこには勇者の力を引き出す何かがあるそうだ。 そこに行ってみるのがいいだろう。」

 

「最後まで親切にありがとうございます。 では。」

 

「待ってよ、トレーナーってば、ねぇ!!」

 

 

後ろ手に聞こえる声には聞こえないふりをして。 まずは神殿と言っていたな。 俺はそこに向かう事にした。

 

 

 

〔 Tips:風の精霊。仲良くなったものに自らの風の力を貸すという。 ただし気まぐれのため仲良くなるのは難しい。 〕

 

 

 

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