ある日のトレーナー室…… SP達に守られたその部屋は、他の部屋とはひと味もふた味も違う… どこか異質な雰囲気を醸し出していて─────
「トレーナー! キスしようよ♪」
「はぁ……。 ファイン、自分が何を言っ… んむっ!?」
「んっ〜♪ 好き、好き〜♡」
だいぶ前から… ずっとこんな感じでファインに屠られている……。 どうしてこんな事になってしまったのか…。 少し思い返してみるか。
Overdose
「ねぇ、トレーナー! 最近… みんなの間でご褒美を上げるのが流行ってるらしいの!」
「ご褒美…? それって、例えばどんな事だ?」
「頭を撫でるとか…… 抱きしめるとかだよ♪」
いやいやいやいや、そんなことファインにしたら… 下手すると、俺の首より上が無くなる可能性があるぞ……。 もうすでに… 部屋中から刺すような視線を感じるしな。
ただ、この状態のファインは絶対に説得出来ないから…… ここはファインの意向を受け入れつつ、過激なことは断じてやらないという作戦でいこう。
「そんなのが流行ってるのか…? よく分からないが、俺にとって嬉しいことを… ファインがしてくれたら、ご褒美に頭を撫でるっていうのはどうだ?」
「う〜ん…… 本当は抱きしめて欲しいけど… うん! まずはそれでいいよ♪」
うむ、我ながらいい着地点に落ち着けたんじゃないか…? 一言… まずっていうのが気になるが… うん、考えないことにしよう。
「じゃあ、コレ! アイス買ってきたんだ♪」
「あぁ… ありが…… はっ!?」
「ふふっ♪ 嬉しいって思った? 思ったでしょ!」
「それなら… やるべきこと、分かってるよね♪」
やられた。 ハーゲ○ダッツを出されたらそりゃ受け取るしかないだろ…。 でも約束は約束だ。 撫でる回数の指定はされていないから… 触れただけでも許されるはず。
「貴様〜、いつまで私を待たせるのだ〜?」
「はいはい… 今やりますよー。」
念の為… 周りを確認する。 うーん… 大丈夫なのかこれ…。 SP達のライン的にはセーフか…?
ええい、ままよ!
ナデナデナデ………
あっ…… なんか凄くさらさらで… ずっと撫でていたくなるな。
ナデナデナデナデナデ……………
「んっ……// もう… ダメかもっ……///」
ナデナデナデナ… バシッ!!
「そこまでです。」
「はっ!? 俺はいったい何を…!?」
「これ以上… 殿下に触ると言うのなら、それ相応の罰があるとお思い下さい。」
「隊長…。 この件は全て、私からお願いした事ですよ。」
「ですが…!」
「それとも、貴方は私のやりたい事を無下にするつもりなのかしら?」
「……分かりました。 但し… 必ず限度は守ってください。 もし限度を超えたスキンシップをした場合は、速攻… 陛下に連絡を入れますよ。 」
「……じゃ、そういう事だから♪ これからもご褒美、よろしくね?」
「あ、あぁ………。」
今思えば… この時にやめるって言っておけば良かったんだ。 まさか、この後… あんなことになるなんて……。
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「トレーナー♪ そろそろ… 私を撫でるのにも慣れてきたんじゃないかな?」
「いや… 俺は毎回心臓バクバクだよ……。」
主にSP達の視線のせいでだけど。
「ふふっ♪ 私にドキドキしてくれるのも良いけど… そんなんじゃ次のステージに進めないよ〜。」
「次のステージ…?」
何だろう、ものすごく嫌な予感がする。
「一応聞くが… 次ってなんの事だ…?」
「ハグだよ♪」
「待ってくれ! 本当に俺の人生が終わっちまう!」
「私がお手本をするから、途中からキミもやってね…?」
や、やめろ… 死にたくない! うわああああ!!
ダキッ……
ん、想像以上に柔らかいな…。 女の子ってこんなに柔らかいもんなんだな……。
ちょっと興味が湧いてきたけど… 抱きしめ返すべきなのかを迷ってしまい… 手だけが宙をさまよう。
「もうっ…! 抱き締め返していいんだよ?」
もう、なんも分からん…。 今、俺に残っているのは… 好奇心と、微かに残った理性だけ。 そんなんもう絶対… 理性が勝てるわけなくて。
震える手で君の背中に手を回す。
ダキッ……
「あの… 殿下、トレーナー様……。 忠告を聞いていなかったのですか…? 連絡、今すぐ入れますね。」
「やべ! ファイン! 今すぐ離してくれ! マジでこれ以上は……!」
「ふふっ、トレーナーのにおい…♪」
あっ、これ耳に届いてないやつだ。
「もしもし、こちらSP。 国王陛下に連絡があります。」
『………何用だ。』
「こちら、留学中の殿下なのですが… このような状況になってまして…」
そう言ってこっちに液晶画面が向けられる。 ビデオ通話だったのか、終わったわ。
「トレーナー……♡」
「え、これ見られてるの? ファインのお父さんに!?」
「ファイン… 離して……!」
「トレーナーっ…………♡」
『トレーナー君。』
「……っはい!」
『この先… 多くの困難が立ちはだかると思うが…… 君なら乗り越えられるはずだ……。』
は? 急に何を……
「仰っている意味がよく分からないのですが……。」
『血は争えぬってことだ……。 それでは…健闘を祈るぞ。』ブツッ
「え? は? おーい! お父さ〜ん……? マジ……?」
「トレーナー♪ 親公認になったってことは… 次のステージ…… キスに進んでも問題ないってことなんだよ?」
「いや、なんか他にもダメな理由いっぱいあるだろ! 生徒と教師みたいなもんだぞ!?」
「隊長さんもそれでいいんですか!?」
「国王陛下が認めたならば、もう私が口を出せる事は何もありません。」
「それでいいのかよ!? 倫理観とか何とかさ!!」
「トレーナー…♪ キスしようよ〜♡」
「ああああああ!! ……んむっ!」
こうして、何故か親公認となってしまったため… 今日までずっとキスをされ続けている。 一応ご褒美ってシステムだったはずだろ……。 もう理由なんて無しにキスしてきやがる……。
まぁ、もういいか……。 どうせ俺にも国の目がついてるから、逃げられることは無いんだろう。
「受け入れるしか… ないのか……。」
「ふふっ、やっとその気になってくれたの?」
「でも、ちょっと私を待たせすぎかな。 そんな悪いトレーナーには… “ おしおき ” が必要だよね?」
「ヒェッ……」
皆も… ほんの少しの選択で、違った結末を迎えるかもしれないってこと……。 俺の犠牲で学んで欲しい。
「それじゃ、いただきます♡」