「ディナーって… まさかホテルのホールでやるのか…?」
ファインに… “ ここで待ってて♪ ” と言われて、○○ホテルの集会ホールの前で座っているのだが…。 ホールの中から、もう既に美味しそうな匂いが漂ってきている。
そのせいか、どうにも腹が減って仕方がない。 夜のために軽めの昼食を摂ったのもあって… 餓死しそうだ。 頼む… ファイン……! 早く来てくれーっ!!
「お待たせ♪ なんだか… 待ちきれないって顔してるね?」
「ファイン! ……って、その服は…?」
見上げると、綺麗なドレスに身を包んだ… 担当バの姿が目に入った。 緑を基調として柔らかさを出しつつも、黒がところどころに入っていて、全体的に引き締まった雰囲気になっている。
首には、黄金色のシャムロック… 俺が誕生日プレゼントとしてあげたネックレスが輝いていた。
「どう? 似合うかな…? これからの事を考えて… 一足先におろしてもらったんだ♪」
「あぁ… とても綺麗だ。 それに、俺があげたネックレス… つけてくれたんだな。」
「ふふっ♪ もちろん、つけない訳ないでしょ? これでトレーナーと “ お揃い ” だね!」
「ははっ、片方が綺麗すぎてつり合ってないけどな?」
「もうっ…! ほら、良い匂いがしてきてるよ? キミの為だけに用意した… とっておきのパーティーだから……。 いっぱい楽しもうね♪」
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「トレーナー様、誕生日おめでとうございます。」
「「「おめでとうございます。」」」
「おぉ… ありがとうございます…!」
「陛下からのビデオレターが届いておりますので、席についてお待ちください。」
SP達に出迎えられて… 席に着くが……。 周りにいる人達が、見慣れたSPしかいないのが… このパーティーの異質さを醸し出している。
当たり前のように、前ではなく隣に座る君には… ツッコまないでおこう。
「陛下って… ファインのお父さんだろ? 何があるんだ?」
「今日のためにいろいろ… お父さまには協力してもらったからね! キミが誕生日だってことも伝えてあるよ♪」
「へぇ…。 なんというか、これって国の代表に祝われてる訳になるんだよな……。 全く実感湧かないけど…。」
「ふふっ、キミはそのままでいてね?」
「うん……?」
⏰⏰⏰
「映像のセッティングが完了しました。 スクリーンをご覧ください。」
「あぁ、準備が出来たみたいだな。」
「お父さま… 何を言うつもりなんだろ…?」
『あー、あー…。 トレーナー君… まずは誕生日おめでとう。』
「ありがとうございます…!」
別に相手に伝わる訳じゃないが… 自然と頭を下げたくなる。 これが本物の迫力か……。
『功績については言わずもがな… 普段の生活においても、ファインに良くしてもらっている… と聞いている。』
『今日はそれらの “ 返礼 ” も兼ねて、我が国から有数のシェフを送る。 トレーナー君が存分に今日という日を楽しめる事を願っているぞ。』
『後… “ 返礼 ” とは別に、誕生日プレゼントも用意した。 部屋に届けておくから… ディナーが終わった後にでも開けてみるといいだろう。』
えぇ……。 王からのプレゼントって…。 なんだか凄く多そうな予感しかしないぞ…。
「ふふっ♪ 私からもまだプレゼントがあるから… 楽しみにしててね?」
「おぉ…。」
さすが王族… 半端ないな……。
⏰⏰⏰
「今日は… ビュッフェ形式なのか?」
「そうだよ♪ さっきお父さまが言ってた通り、私の国のシェフも来ているから… どれがその料理なのか当ててみてね!」
「なんか、ロシアンルーレットみたいだな…。」
「むっ… ハズレは用意してないよっ!」
とりあえず… なんでも美味しいだろうし、適当に取ってみるとするか。
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今日は… ○○ホテルの元々の料理人に加え、私の国のシェフに… “ 麺屋極極 ” の店主さんまで来てくれた。
ふふっ、いけない。 キミの誕生日なのに… 私が一番いい思いをしちゃってるかも?
食べたいものも一通り取り終わり、席に戻ると… 何故かキミがご飯を食べずに待っていた。
「あれ…? 別に、先に食べてても良かったんだよ?」
「ご飯を食べる時は… 皆で “ いただきます ” をするのがマナーだろ?」
「ふふっ、なんだかソレ… 心があたたかくなるね。」
「それじゃ、トレーナーの誕生日を祝して…♪ いただきます!」
「いただきます。」
って、トレーナー…。 全くアイルランドの料理… 取ってないじゃん!! これは、私が直々に国の良さを教える必要がありそうだね……。
「トレーナー… ちょっとお口開けて…?」 ゴゴゴ…
「っな…!? どうしたんだ…? 一旦落ち着いてくれ…!」
「トレーナー…? あ〜ん!」
「なっ、止まっ… ファイン! 口おさえないで! あ〜っ!!」 ムグッ
「ふふっ…。 美味しい?」
「ぜぇっ…… 美味しいけどな…? 心臓に悪いから、急に威圧しないでくれ…!」
「これは、羊の肉を使ったシチューで… アイルランドでよく食べられてる料理なんだ♪」
「あれ… 聞こえてるか…?」
「次は… これ!」
「むぐっ!」
「このオムレツはね… 一見日本のオムレツと同じように見えるけど、なんとアイルランドでは… 中にマッシュポテトを使ってるんだよ♪」
「あの〜、俺に人権は…」
「はい! スモークサーモン! あ〜ん♪」
「………。」 モグッ
⏰⏰⏰
「はぁ…… なんでだろう。 ただの食事のはずなのに、凄く体力を消費した気がする……。」
「つーんっ、キミが一つも… アイルランドの料理を取らなかったのが悪いんだからねっ。」
「いや… やっぱ普段食べてるやつと、どれだけここのが違うのかが気になってさ…。」
そう言われてトレイを見てみると、トレーナーは自分の好物しか取ってきてないみたい。 特に… パスタなんて、三種類も取ってきてるし……。
「トレーナーって… 本当にパスタ好きだよね……。」
「そう言うファインだって、ミニラーメン… 取ってきてるだろ? お互い様だよ。」
「むっ、これは極極の店主さんが作ったものだから… 取ってるだけだもん!」
「えっ、極極の店主まで来てくれたのか?」
「ふふっ、そうだよ! キミの誕生日のこと、店主さんに伝えたら… 来てくれたんだ♪」
「俺の誕生日ってだけで、そこまで……。 うん、俺も取りに行ってこようかな。」
「あ、でもまずは取ってきた物を食べ終えないと…。」
「それじゃあ、私が分けてあげるよ♪」
「いや…! ラーメンをあーんするのは無茶だろ!!」
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「ふぅ……。 だいぶ腹も膨れてきたな。」
「それなら…… そろそろアレの時間だね♪」
「アレ……?」
「さっき言った… “ プレゼント ” の時間だよ!」
⏰⏰⏰
「すっ… 凄いな、これは……。」
目の前に、今までに見た事がなく… これからも食べることは無いだろう “ モノ ” が現れた。 様々な種類のチョコケーキが合わさって… 一つのホールの形になっている。
そんな中、上に乗せられたプレートには、『☘️ Happy birthday ☘️』と、おそらくファインの字だろう…。 文字に加え… 可愛らしいクローバーの絵も描かれていた。
「ふふっ、驚いた? トレーナー、 “ チョコケーキが好き ” って聞いたから… 作ってもらったんだ♪」
「なんか… この世のチョコケーキが全て集まったみたいになってるんだけど……。 いったいどこからこんな発想が…?」
「ふふっ、好きな物を全部つめこむことの幸せさ……。 それはね… シャカールがくれた、 “ 各地のラーメン詰め合わせセット ” の教えだよ!」
「しかし… これだけあると、どこから食べるか悩むな…。 何かオススメとかはあるのか?」
「やっぱり私的には、 “ ギネスケーキ ” を最初に食べて欲しいけど…。 “ ザッハトルテ ” が多分… キミに一番合うと思うよ♪」
ザッハトルテは流石に聞いた事がある。 確か… その綺麗な見た目から、 “ チョコレートの王様 ” なんて例えられることもあるらしい。 食べたことは無いが… 凄く興味が湧くな……。
「なるほど、それじゃ… それから頂こうかな。」
「ふふっ♪ その前に… ロウソクを消さないとね?」
「隊長…? 明かりを消してくださる?」
そう、ファインが言った瞬間… 明かりが消えた。 SP隊長さんの手際の良さに感心しつつ、ケーキに目を移す。
「三本……?」
するとそこには、三つの火が灯っていた。 もちろん俺は三歳では無い。 何か他の意味があるのだろうか…。
「アイルランドの神話でね、三には神様にまつわる特別な意味があるんだよ♪」
「私がシャムロックを好きな理由も、信仰上の理由でね… 城のお庭にクローバー畑が咲いてたからなんだ。」
「なるほど……。 それなら、俺があげたネックレスや… このブローチも特別な意味を持つことになるな。」
「ふふっ♪ だからね、キミにネックレスを貰った時… 本当に嬉しかったんだよ?」
そう言って笑う君は、薄明かりの中でも眩しくて。
「あー、なんか恥ずかしくなってきた。 ほら、火消すぞ?」
「照れちゃった…? ふふっ、どうぞ♪」
⏰⏰⏰
「うっ、流石にこの量は食べ切れないか……。」
「ファインも食べたらどうだ…?」
「う〜ん、キミのために作られたケーキだからなぁ……。 あっ、そうだ!」
「トレーナーが、あ〜んしてくれたら食べてあげられる… かな♪」
悪魔か? 毎度のことなのだが、ファインのこの距離感は矯正されるべきだと思う。 でも、せっかく用意されたものを食べないで帰るっていうのもアレだしなぁ……。
ええい、人目も少ない事だし… この際、少しの恥ずかしさには見て見ぬふりをしよう。
「仕方ない……。 ほら、もっと近寄ってくれ。 そのドレスを汚したくないしな。」
「ふふっ♪ 実は、少し食べてみたかったの!」
「そりゃ良かったですね… 殿下様ー。」
「むっ、殿下じゃなくてファインだよ!」
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トレーナー… あれだけ間接キスとかで照れたりするのに、自分のフォークを使ってあ〜んするんだね。 少し、私も照れちゃうな…。
いけないいけない、ケーキの出来の方も確認しておかないとね。 ……うん、やっぱり特注したかいもあって… とても美味しく出来ていた。
やっぱり、好きな物がたくさんあると… その分嬉しくなるっていう考えは間違ってなかったみたい。
「ふぅ、ご馳走様!」
「ご馳走様でした。」
「今日のディナーはどうだった? 美味しかったかな…?」
「あぁ、普段食べる食事の何倍も美味しかった。」
「それに、普段食べないような料理もたくさん味わえたしな。 本当に… 忘れられないディナーになったよ。」
「ふふっ、良かった♪」
「それじゃ、部屋に届いてるっていう… お父さまのプレゼント……。 確認してみない?」
「あの、殿下…。 その前に私達からトレーナー様にプレゼントしたい物があるのですが。」
「隊長……?」
私も聞かされてない……。 サプライズなのかな。
「おぉ、SPさん達からもプレゼントをもらえるんですか…!」
「えぇ、私からは… 花を送ろうかと思いまして。」
「この花は… 黄色いバラですか…? ありがとうございます!」
「ときに… トレーナー様。黄色いバラの花言葉はご存知ですか?」
「いえ、知らないですけど…。 どんな意味があるんですか?」
「黄色いバラの花言葉は…… “ 嫉妬 ” 。」
「えぇっ!?」
「……というのは冗談です。 トレーナー様にお送りした黄色いバラの意味は… “ 友情 ” という意味ですよ。」
「冗談に聞こえなかったですよ!?」
「ははっ、でもまぁ冗談も言える仲になった… って事だと捉えておきます。」
「えぇ、あと一年間… よろしくお願いしますね。」
あれ…… なんでだろ、少し胸が痛む。 私、隊長にすら嫉妬しちゃうくらい… キミへの気持ちが大きくなってたんだ……。
あと一年… 経ってしまったら、キミの隣に入れる時間も終わりを告げる。 そしたら… キミの隣に立つのは誰なんだろう……。
「私達からは、マリーゴールドをプレゼントします。」
「花言葉は… “ 嫉妬 ” 。」
「その流れさっきもやりましたよね!?」
私だといいな……。 なんて、こんな願い… 叶うはずもないけれど。
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「うわぁ、ダンボールがいっぱいだ…。」
「お父さま… 少し、やりすぎちゃう所あるから…。」
にしても、この量は多くないか…? 一体何が入っているのだろうか…。 少し気になるな。
「とりあえず… 開けてみるか。」
「私も手伝うね?」
⏰⏰⏰
一通り開けてみたが… 中には、高そうな食器、紅茶の茶葉、異国風のお菓子など… “ ロイヤル ” な物が沢山入っていた。
そんな中、底の方に一通の手紙が入っているのを見つける。 気になって開けてみたが… アイルランド語で書かれているのか、全く読めない。
俺に、アイルランド語で手紙なんて送らないだろうし… おそらくこれはファイン宛に送られてきた物なのだろう。
「ファイン〜? なんか、手紙入ってたんだけど… これって、誰宛の物なんだ…?」
「どれどれ〜? あっ、私宛のみたい…。 もしかしてだけど、中身見ちゃった……?」
「いや、書いてあることはよく分からなかったが… すごく長いって事だけは分かったぞ?」
「うん、全く読めてないってことが分かったよ! ちょっと一人で読んでくるから、先にお風呂入ってて…?」
う〜ん、俺も中身が気になるのだが… あんまり人のプライベートに踏み込むのは良くないよな……。
「分かった。 それじゃ、お先に入らせてもらうよ。」
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……お父さまから送られてきた手紙には、大きく分けると… 三つの事が書かれていた。
一つ目は、私を輝かせてくれたトレーナーに… 感謝を伝えて欲しいということ。
二つ目は、王族として… あと一年で必ず、アイルランドに帰って来なければならないということ。
三つ目は、父としては… この留学で、後悔を残さないようにして欲しいということ。
本当に、難しい願いだ…。 二つ目と三つ目の願いは… 相容れない物だというのに。
“ 後悔 ” をしないという事。 それは、私の恋心に向き合う必要があるという事で…… 国を裏切ることになるかもしれない。
でも、許しが出てしまった。 それだけで、無限に湧きあがってくる感情がある。
“ 伝えたい ” 。
ずっと、理由が欲しかったんだ。 務めを裏切ってもいい理由が。 ……なんて、こんな事を言ったら怒られちゃうかな。
考えるより先に、私の足はキミのいる場所に向かっていた。
「と、トレーナー! 寝巻き持ってきてないでしょ? ここにおいとくね?」
「あぁ、ありがとう… ファイン。」
あぁ、どうやって話をすればいいんだっけ。 いつものように話せてるかな。 決意も固まらないまま飛び出してきたことに後悔する。
「そういえば、さっきの手紙… 何が書いてあったんだ?」
「え〜? 気になる…?」
「いや、言いたくないのなら別に良いんだが… やっぱり、少し気になってな。」
「…お父さまからの手紙にはね… “ トレーナーへの感謝を私の口からも伝えといてくれ ” とか、 “ あと一年間だけど… 後悔のないように ” って書かれてたよ。」
「あと一年… か。」
「………私はね、一つ… 絶対に後悔したくないことがあるんだ。」
「レースか……?」
「ううん、別のこと。」
「見当もつかないな……。 でも、俺に出来ることならなんでも協力するよ。」
協力する… か……。 それどころか、キミが当事者なんだけどね…。
「トレーナーは… 一つ葉のクローバーの花言葉って、何か知ってる?」
「さっき言ってた通り… “ 始まり ” じゃないのか?」
「実はね、キミに送ったしおりには… それ以外の意味も込めて送ったんだ…。 」
「私がキミに送った、一つ葉のクローバーの花言葉は… “ 初恋 ” 。」
「…………っ!?」
「キミが… 私の初恋なの…!」
「なんて…… ごめんねっ! やっぱり忘れて!」 ガチャ!
「……ファイン!?」
…怖い。 やっぱり私には向き合えないよ…。 伝えたいのに… もしかしたら全てが壊れちゃうかもしれないなんて。
聞こえちゃったかな…。 シャワーの音で… かき消されてないかな……。 なんて、伝えたのは私なのにね。
ごめんなさい、お父さま。 私、後悔とは離れられそうにないかも。
トレーナーが、髪を乾かしている音がする。
今、キミとは顔を合わせられそうにないな。 合わせちゃったら… 感情が止められなくなるだろうから。
キミと、入れ違いでお風呂に入る。 カギも閉めて… 今なら心をさらけ出しても大丈夫。
怖い… 怖かった… 怖いよ… 感情と向き合うことがこんなに難しいなんて思わなかった。 もし、伝わってたら? 受け入れられたら? どれだけ思考を回しても、正解が分からない。
「一旦落ち着かなきゃ……。」
きっと掛かっているんだ… 私。 こういう時は… 冷水で頭を冷やすといいんだっけ。 温水から、冷水に変えてシャワーを浴びる。
つめたいな。 うぅ… つめたいよ……。
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心もすっかり落ち着いて… 冷静に自分のした事を振り返ると、した事の愚かさに涙が出そうになる。
髪を乾かし… おそるおそる戻ると…。 トレーナーはベッドに寝転がりながら、ウマホをいじっているだけだった。
ベッドにいるキミの後ろに入り、呼吸を整える。 とりあえず、さっきの事を確認しなきゃ…。
「ファイン…? さっきは急に出ていったけど… 何かあったのか……?」
「……っ!!」
そう思っていたら、私に気付いたのか… キミは寝返りをうち、質問をしてきた。
良かった、伝わってない…。 伝わってないんだ……。 なんでだろう。 これで良かったはずなのに… 心は痛むばかり。
「別に… 大した事はないよっ。」 ギュッ
「どわっ! ファイン!?」
「ごめんね? 朝まででいいから… このままで居させてよ。」
心の痛みを誤魔化すように、キミの温もりに触れる。 やっぱり… 伝わって欲しかったって思う私もいるみたい。
「……あぁ、分かった。」
「今日は、ファインのおかげで良い思いをいっぱい出来たし…… わがままの一つや二つ、聞かないなんて言えないよ。」
「ふふっ、ありがとね。」
「………トレーナーは、今日という記念日を… 楽しめた…?」
「あぁ。 ファインのおかげでな。」
「私、キミが今日という日を忘れないように… すごく頑張ったんだ。」
「トレーナーが、自分の誕生日を忘れちゃうなんて… 悲しすぎたから。」
「社会人になると、祝われなくなるもんなんだけどな。」
「私は忘れないよ。 来年も、再来年も… キミの誕生日を祝うから…。」
「だから… 私のことも、忘れないでね……?」
「……忘れられないよ。 こんな楽しい誕生日をくれた子を忘れるなんて、有り得ない。」
「ふふっ、その言葉が聞けただけで、エスコートして本当に良かった… って思えるよ♪」
今日は、これで良かったのだろう。 いつか、向き合う準備が出来たら…… キミに伝えるから。
だから、今日にはもうさようならをして。 明日からの私に想いは託すことにしよう。
「おやすみ… トレーナー……。」
「おやすみ、ファイン。」
- 1月30日 00:00 -
……寝れない。 さっき、ファインに言われた事を思い出す。
『キミが… 私の初恋なの…!』
衝撃だった。 トレーナーと担当の恋。 よく聞く話ではあるが… 自らの身に起こるなんて。
もちろん、よく聞くからと言って… 世間的にはあんまりよろしくないのは事実だ。 しかも王族となれば… 尚更。
それでも… 君に告白されてから… ファインのことが頭から離れない。 知らない内に、君に惹かれてたみたいだ。
しかし… 日頃、よくわがままを通してきたファインが… 自分で無かったことにするくらいのことだ。 俺一人で何か出来ることはないのだろう。
でも、それでも君に、何かしてあげたいんだ。 俺の誕生日に色をつけてくれた君に。
「ファイン…? もう寝たか……?」
一度、君に抱き締められた状態から抜け出す。 俺の決意を表明するために。
「俺だって…… ファインのことが好きなんだ……。」
「だけど今は… 伝えるべき時じゃないんだろ? だから、君に誓うことにするよ。」
そういって、君の手を取り… キスを落とす。
「今はこれしか出来ないけど…… いつか、面と向かって伝えるから。」
「おやすみ… そして、ありがとう。」
幸せを教えてくれた君に、幸せを分けてあげられるようになれる日まで。 俺も頑張ろう。