蒼空の乙女達 ―Maidens in the blue sky― 作:ミヤフジ1945
感想くれてもいいのよ?
佐世保女子飛空士学校生徒会、生徒達の間での通称は『連合艦隊司令部』。
佐空艦艇の運用計画を立案することから連合艦隊司令部やGFと生徒達は呼んでいるが、実際には校内雑務や各専修科の予算管理、芝刈りから港湾補修の人員確保など佐空内のありとあらゆる事を取り仕切る。
生徒会は常時佐空№3ドックと№4ドックの近くにある校舎を使用しており、山側にあるかつて佐世保船舶工業のあった名残でSSKバイパスと今でも呼ばれる片側2車線の広めの車道と挟まれた形に建てられている。
校舎は鉄筋コンクリートで建てられており、6階建ての質素な作りではあるが校舎内には修理中の艦艇用の臨時教室や様々な会議室があるため校舎中央に計4基のエレベーターがあり、その隣に階段が設置されている。
生徒会室は校舎の最上階、1フロア全てを使っている。会計部や運航部、各部署によって専用の部屋が割り当てられており、その中でも質素な見た目の校舎とは違い1番豪華な部屋が生徒会長を長に各科の幹部達が使用している執行部室である。
応接室と複数の執務室を合わせたような作りで、その部屋にある調度品全てがかなり高価な物品で固められているのがあまり興味のない颯華にも一目でわかるほどだった。
もっとも、颯華にしてみればこんなものに年度予算を使うくらいなら艦艇補修予算に回せと常々思っているが……口に出したらどんな目に合うかわからないので黙っている。
「それで、普段とは違いわざわざ
溜息と共に、颯華は眼前の少女へとめんどくさそうに言った。
生徒会長席に座る栗毛の少女は申し訳なさそうに笑いながら颯華に答えた。
「今皆会議中だからね。めんどくさそうだったからこういう形をとって堂々とサボってるわけよ。」
「相変わらずだな大佐。」
大佐と呼ばれた少女。彼女の名前は
佐空運航科2年、颯華とは同学年の同期である。
佐空でも少ない飛空科や工廠科ではなく飛空艦の運航を管制する運航科専修で。その管制能力と状況判断能力を買われて生徒会運航部に抜擢、2年生でありながら運航部幹部に抜擢されたことからも彼女の優秀さが分かるだろう。
いつ誰が言い始めたかわからないが『大佐』という愛称で呼ばれ始め、彼女自身も気に入っている。
小柄、というほどでもないが颯華よりもやや身長は小さく、しかし出るところははっきり出ている体付きはアルマが見たら羨ましがるだろうと颯華は考えてしまう。また、髪は腰まである栗毛をツインテールにしており、その髪型と本人の性格も相まって知人達からは小型肉食獣扱いされることもしばしば。
それが目の前にいる理世という少女だった。
「貴様のサボりの口実されても困るのだがな。」
「そう硬い事言わないでさぁ?あ、お茶いる?」
「…………貰おう。」
るんるんと鼻歌を歌いながら生徒会長席から飛び上がってお茶の準備をする理世を横目で見つつ、颯華は再び溜息をついた。
普段は猫を被ったように大人しい彼女だが、親しい知人の前だと素の顔を簡単に出す。
しかも彼女の場合は野望というかなんといっていいのかわからないが、上昇志向と言えばいいのか出世欲と言っていいのか……
とにかく親しい相手には自分が生徒会長になってやると常日頃から言っている少女である。
「それで、会議をサボって私と話す理由はなんだ。私だって暇じゃないんだ。」
理世が注いだ紅茶を飲みながら、颯華は尋ねた。
颯華としては、いつも通り運航部に報告書を渡して軽い問答をしたら終わりだと思っていたのだ。今直ぐに船に戻って損傷状態やサワカゼの乗員の容態が知りたいのが颯華の夢中で占めている。
「まずはぁ…………取りあえず報告書と戦闘記録を読んだよ。」
「何か不満だったか?」
「全然!わかりやすかったし、むしろあの状況じゃ最善策だったと私も生徒会も思ってるよ!」
「そうか。」
「生徒会長も副会長も褒めてたよ?」
「知らん。」
「相変わらずだねぇ。」
一口飲んだ紅茶を机へと置きながら、理世は改まって颯華をみた。
「相手の練度はどうだった?」
「まぁまぁだな。個々の練度はそこそこだったが連携があまりうまくない印象だった。アルメや奈々なら十分相手出来る練度だったが他がとなると、まぁ難しいだろう。」
颯華は今日相手にした艦艇の練度を思い出しながら理世の質問に答えた。
個々の練度は大体佐空の平均程度と優秀だったが、連携となるとあまりうまくなく簡単に崩せた印象だった。
しかし、一対一ならばまだしも残念ながら今の佐空には一対多をこなせる練度の艦艇は殆ど無かった。
「生徒会長は鳥栖空の話を聞いて福連に対して報復措置を取るみたい。で、近日中に福連に対して作戦行動に出ようとしてる。」
「無茶だな。」
「即答だねー」
戦力差でざっと2~3倍。しかも主力として発揮できるのは旧式の
「今やってる会議がそう。多分もうそろそろ決まるんじゃない?」
「やってられんな。」
「しかもアサマの活躍を大々的に公表するしねぇ。
「バカが上だと下は辛いな。」
同感!と笑いながら、理世はカップの紅茶を飲む。
今の生徒会長は残念ながら内政は出来るが戦略などはからっきしな
しかも災厄なことにそれを自覚できず自尊心がめちゃくちゃ高いと来たものだ。
無茶な演習計画を出したりと、飛空士候補生達からはあまり好かれないタイプである。
「たぶん颯華ちゃんとアルメちゃん、奈々ちゃんとこは連れてかないと思う。というか私が色々理由付けにして行かせないから。」
「それについては本当に頼むよ。私もアルメ達も負け戦に挑みたくはないからな。」
そうなると出せるのは巡洋艦2隻駆逐艦数隻とかなり戦力的に落ちてしまうが大丈夫だろうか。
そう頭の中で計算している颯華に、理世は話しかけた。
「それでね颯華ちゃん。たぶん状況によるだろうけど、アレを早めようと思うんだ。」
理世の言葉を聞いて、颯華はようやく彼女がこのような人払いをしていたか分かった。
「降ろすのか?」
「うん。十中八九作戦は失敗する。そうすれば支持率は一気に下がるから。」
理世が考えているのは言ってしまえば生徒会長へのクーデターである。
「行けるのか?」
「生徒会役員規定12条で行けると思ってる。運航部の根回しは出来てし、もう少し根回し……会計部とか執行部の人身の少しを取り込めば過半数になるから。」
生徒会役員規定12条。それは現役生徒会長が不適格と判断した生徒会役員が過半数を占めた場合に発動できる生徒会長再選挙規定である。
普通ならば病気や事故による職務遂行不能の場合に備えての規定なのだが、彼女はそれを利用して現生徒会長から会長職を奪おうと考えているのだ。
「それで?再選挙は出来るとして、生徒会長になれる自信はあるのか?」
生徒会の過半数をとっても出来るのは再選挙までで、再選挙で理世が生徒会長になれるかは別問題だ。
「そこは万事抜かりなく、だよ!」
「そうか、ならいい。私もそうなったら大佐に投票しといてあげるよ。」
「ありがと~!」
「それで、話は終わりか?」
「そうだねぇ…………終わりかな?」
「では帰るぞ。」
「またねぇ~!あ、あとでアルメちゃんにも会ってあげなよ?」
「…………考えとくよ、それじゃあな大佐。」
「ばいばーい!」
颯華はソファーから立ち上がり、出口へと歩いていく。
手を振っている理世に後ろ手に振り返しドアを閉め漸く一つ用事が終わったと溜息を吐いた。
「次は…………佐病にサワカゼ乗員の見舞いか。」
そのあとは一度アサマに戻って現状と修理工程の算出…………
「まだまだ終わらんか。」
どうやらまだまだ一日は終わりそうに無い。
再び溜息を吐いてから、颯華は出口へと歩き始めた。
短いですすみません。