歳の数だけキスをして愛を確かめ合う日なのだと。
逃げるシンジを追うラヴモード全開のアスカ。
ネルフ施設はミサトの手によって完全に封鎖されてしまった。
ゲームブック形式だとハーメルン版ではクリアーが難しいの事で、リプレイ版を作成しました。
普通に読み進めて行けばエンディングにたどり着けます。
碇シンジは、ネルフの施設内で4時間アスカから逃げる。
14回アスカに捕まってキスをされたら負けです。
色々なキスのパターンがあります。
旧タイトル『アスカから逃げろ!14回のキス(リプレイ版)2022年節分の日記念LAS作品』
※実験的に一時的にタイトルを変更しています。
ハーメルンのゲームブック版
https://syosetu.org/novel/279478/
スマホで読まれる方は、ページ切替しやすいpixiv版をお勧めします。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16899078
※今回はリプレイ版なので、キスを14回以上されてもゲームオーバーを通り越してエンディングに行けます
ここはネルフ本部のブリーフィングルーム。
第10使徒サハクィエルが現れた時、ミサトとシンジとアスカとレイの4人で宇宙から飛来する使徒を手で受け止める作戦が話し合われた部屋だ。
今、この部屋に居るのはミサトとシンジとアスカの三人。
さきほどまで初号機と弐号機のシミュレーターで模擬戦闘をしていて、その反省会をしていたところだった。
「シンジ君、恵方巻の用意は出来ているかしら?」
「はい、今日は節分の日ですから、買ってありますよ」
「セップン?」
アスカの空耳を聞いたミサトは、チェシャ猫のような笑みを浮かべた。
シンジはミサトが何かイタズラを思い付いた時のような表情だと気が付いた。
「アスカ、今日は接吻の日と言ってね、歳の数だけキスをして愛を確かめ合う日なのよ」
「そんな素敵な行事が日本にはあるの!?」
ミサトの話を聞いたアスカが目を輝かせてシンジの方を見る。
「ミサトさん、いい加減な事をアスカに吹き込まないでくださいよ」
シンジがなじるようにミサトに抗議すると、アスカは悲し気な表情になる。
「シンジはアタシとキスするのが嫌なの?」
「嫌って訳じゃないけど、さすがに14回は・・・」
二人の様子を見ていたミサトは良いアイデアを思い付いたと、ポンと手を叩いた。
「それじゃあこれからシンジ君には4時間、このネルフ本部の施設内をアスカから逃げ回ってもらうわ。アスカに捕まってしまったら、アスカとキスを1回してこのスタート地点のブリーフィングルームに戻って来る。アスカに14回キスをされずに4時間逃げのびればシンジ君の勝ち。特別にお小遣いをあげるわ」
「面白そうなゲームじゃない、アタシが勝てばシンジとキスできる上にお小遣いまで貰えるのね!」
ミサトの提案したゲームに乗り気になっているアスカ。
シンジに拒否権は無かった。
「ビールを飲みながら恵方巻を食べる事より面白い事が見つかったわ」
酷いよミサトさん……。
「さてと、このままこのブリーフィングルームに居たらアスカに捕まっちゃうからな。とにかく移動しないと」
シンジはそう呟いて、ブリーフィングルームを出た。
通路を歩くと行く手にはA通路、B通路、C通路、αエレベータ、βエレベータ、γエレベータと分かれ道がたくさんある。
シンジにとっては逃げ道がたくさんあるように思えたが、運が悪ければ一発アウトも有り得る。
「ネルフ本部は広いんだ、そう簡単に見つかるわけがないだろう」
シンジが知っている施設だけで14ヵ所は超える。
問題は4時間耐えなければいけない事だった。
それならば、なるべく凌ぎやすい場所に隠れたいところだが・・・・・・。
このフロアはブリーフィングルームなど人が多く行きかう場所だ。
快適に過ごすならば、エレベータに乗る必要は無いかもしれない。
A通路を進む
B通路を進む
C通路を進む
αエレベータに乗る
βエレベータに乗る
γエレベータに乗る
灯台下暗し!ブリーフィングルームに隠れる
シンジには様々な選択肢があった。
「まさかアスカも、スタート地点に隠れているとは思わないだろう。これは頭の良いアスカの裏の裏をかいた作戦なんだ!」
自信満々にブリーフィングルームの扉を開けたシンジの前に、腕組みをしたアスカが堂々と立っていた。
「アンタバカァ!? 裏の裏は表に決まっているじゃないの! でも、そんなおバカさんなシンジも好きよ」
アスカはシンジの頭をポンポンと撫でると、優しく唇に触れるようなライトキスをして来た。
「さあ、どんな形のキスでも1回は1回よ。今度はもう少し知恵を付けてアタシを楽しませてね、おバカなシンちゃん」
シンジはブリーフィングルームへと連れ戻された。
A通路を進むと、リラクゼーションエリアに出た。
ここはネルフに勤める人達の憩いの場となっていて、今自分が居る、自動販売機が並んでいるリフレッシュルームの他に、大浴場や噴水の綺麗な庭園、身体をほぐす事の出来るプールのあるジムへと道が続いている。
ここから様々な施設へと向かうことが出来るが、長い通路を歩いて少し疲れてしまった。
「自販機でジュースを買って、ベンチに腰掛けて休憩しようかな・・・・・」
とりあえず、ベンチに腰掛けて休憩する
大浴場へと向かう
木陰の多そうな庭園に行ってみる
トレーニングジムへと足を運ぶ
ブリーフィングルームに戻る
シンジの選んだ選択肢は……。
「飲み物は、牛乳が良いかな」
自動販売機で紙コップの牛乳を買ったシンジがベンチに腰を下ろすと、突然、両足を何者かに強い力で掴まれた。
「うわぁっ!」
驚いたシンジは持っていた牛乳の紙コップをズボンの上へと落としてしまった。
「一口も飲んで無かったのに、もったいなーい」
アスカはベンチの下に潜んでシンジを待ち伏せて居たのだった。
そんな事をすれば服や髪がホコリ塗れになってしまうと言うのに、アスカがそんな事をするはずが無いと盲点を突かれたのだ。
両足を掴まれたシンジは芋虫のように這いつくばって逃げようとするが、アスカの腕力には敵わず。
「アタシから逃げなきゃいけないのに、油断していたシンジにはお仕置きが必要ね!」
アスカはそう言うと、シンジの首筋にヴァンパイアのように吸い付くようなキスをした。
「痛い! 痛いよアスカ!」
「怠けた罰よ。シンジも気持ち良くなるようなキスをしたいなら真面目にやりなさい!」
首筋へのキスは、『執着』の意味があり、相手の身体を求めていると言うサインなのだが、シンジには分からなかった。
ズボンを白い液体で濡らしているシンジを見て、アスカはそんな気持ちが疼いてしまったのだ。
シンジはがっくりと肩を落としてブリーフィングルームへ戻る。
そして再びA通路へ、大浴場へと向かう。
シンジはネルフで一番安全だと思われる場所へと急いでいた。
それは、大浴場の男湯だった。
いかに大胆不敵なアスカも、男性の聖域とも言える場所へは入って来れまい。
自分が上せてしまわないように気を付けるだけだ。
「今日は入浴剤を入れているのかな?濁り湯だ」
シンジは湯船に気持ちよさそうに身を沈めた。
「シンジのココもすっかり熱膨張しているわね」
「まさか!?」
水面にプカリと姿を現したのはアスカの顔だった。
「ここなら絶対に安全だと思った? シンジの考えはお見通しなのよ!」
シンジは逃げようと思ったが、大事な所をアスカに握られて逃げることが出来ない!
「燃えるような熱々のキスをしましょう?」
湯船に潜っていたアスカの唇はかなり熱かった。
しかもシンジの口の中に熱々の舌を入れてのサーチングキス。
歯茎が火傷してしまうかもしれないと思った。
「さあ、早く服を着てスタート地点に戻るのよ。時間稼ぎしようとしてもダメなんだからね!」
アスカに強引に服を着させられた。
そして再びA通路へ、庭園に行ってみる。
シンジは真ん中の池に大きな噴水のある庭園へとやって来た。
綾波はこの場所が好きなんだっけ・・・・・・。
なんだかマイナスイオンに満たされている感じがする。
花壇に植えられているチューリップやパンジーの色とりどりの花にも心が癒される。
ここは木も多いから、アスカが近づいても隠れやすいはずだとシンジは思った。
しばらくすると、噴水の勢いが激しくなり、シンジは目を丸くした。
『親方!空から女の子が!』
『5秒で受け止めろ!』
そんなアニメのような出来事がシンジの身に起こってしまった。
噴水の水流に乗って浮かび上がったアスカが、頭上からシンジに向かって飛び込んで来たのだ。
「シンジィーーっ!」
シンジとアスカの顔面が衝突し、シンジは顔面でアスカの顔面を受け止めて芝生に倒れ込んでしまった。
お互いの身体が逆さになって地面に柔着陸するという不思議な体勢となった。
アスカは上下反対状態になったシンジの顔にすかさずキスをする。
「これが噂のスパイダーマンキスね。中々レアな体験だわ」
アスカはすっかり楽しんでいたが、シンジには驚き過ぎてキスの感触など覚えていなかった。
シンジはアスカに引きずられてスタート地点へと戻った。
そして再びA通路へ、トレーニングジムへと足を運ぶ。
シンジはネルフの職員が利用するトレーニングジムへとやって来た。
デスクワークにかじりつく職員の運動不足の解消に好評のようだ。
残念ながらシンジはトレーニングジムの会員ではないが、今回は特別に入館が許された。
トレーニングジムと言えばロッカールームと大きなプール。
アスカからに逃げるにはどこに行けばいいだろう。
空いているロッカーを借りて隠れる
プールの中ならばアスカの動きも遅くなるだろう
シンジには2つの選択があった。
シンジは空いているロッカーの鍵を借りると、息をひそめて隙間から外の様子を窺った。
これならば、かなりの時間を稼ぐことが出来るはずだ。
我ながら名案だとシンジは思った。
「ねえ、シンジがこっちに来なかった?」
意外にも早くアスカがトレーニングジムへとやって来た。
でも、鍵のかかったロッカーを開ける事は出来ないはず。
「マスターキー、借りるわよ」
アスカの言葉を聞いて、シンジは真っ青になった。
このロッカーを開けるマスターキーなんてあったのか。
これでは自分は袋の鼠だ。
「さーて、シンジはどのロッカーに隠れているのかな?」
嬉しそうにロッカーを開けて行くアスカの足音が近づいて来る。
「シンジ、見ーつけた!」
シンジはアスカからロッカーから引きずり出された。
アスカは満足気に硬直して動けないシンジの唇を、左右に自分の唇で往復させた。
スライドキスと言われるものだった。
「ネルフのみんなは、アンタだけの味方だとは限らないのよ」
したり顔のアスカと共にシンジはスタート地点に戻った。
そして再びトレーニングジムへ。
「よーし、思いっきりプールの真ん中へと飛び込むぞ!」
シンジは助走をつけてプールに飛び込んだ直後、大失策を犯してしまった事に気が付いた。
自分は泳ぐのが大の苦手だったのだ。
そんな事を忘れてしまうほど、自分は慌てていたのかと気が付くが後の祭り。
もがいたシンジは大量の水を飲み、溺れてしまった。
「アンタバカァ!? 今度は泳げるように特訓よ!」
シンジを助けてくれたのは濡れたプラグスーツを着たアスカだった。
水着のような感覚のプラグスーツだったから、アスカは迷いなく飛び込めたのだろう。
「人工呼吸もキスのうちに入るのかな?」
「これは、アタシを心配させた罰!」
アスカは鳥がくちばしを突くかのようなふんわりと唇に触れるキスを何回かシンジにした。
バードキスと呼ばれるものだった。
「ずるいや、何回も連続でキスするなんて」
ルールを作ったミサトにより、今回のキスは1回だとカウントされた。
これからも1回捕まえるごとに1回のキスと言うルールは絶対だと。
ブリーフィングルームに戻って仕切り直しだ。
今度はシンジはB通路を進む事にした。
B通路を進むと、食堂や医務室などライフラインに関わる施設が集約したエリアに出る。
ミニシアターやカラオケルームなど、A区画には入りきらなかった施設もこの区域だ。
4時間も逃げ回る事になるのだから、体調を整えていた方が良いかもしれない。
食堂のメニューを見ると、数多くのラーメンが並んでいる。
アスカが普段近寄らない厨房なら見つかりにくいだろう。
医務室には優しいマヤさんが居るはずだ。
ミニシアターなら、上映中は部屋が暗くなって見つかりにくいかもしれない。
カラオケルームの個室に閉じこもってしまう手もある。
色々考えた末にシンジがとった行動は……。
食堂へと向かう
マヤさんの居る医務室へ行く
上映時間を待ってミニシアターへ
カラオケルームで一人カラオケ
ブリーフィングルームに戻る
シンジは食堂へと向かう。
「ラーメンスープ用の寸胴鍋の中に入る?馬鹿な事を言っちゃいけないよ!」
シンジはラーメンのスープを作る大きな鍋なら隠れられると思ったが、さすがに無理があった。
どの寸胴鍋もラーメンのスープが入っているし、巨大企業ネルフのスタッフの胃袋を満たすスープ用の鍋とはいえ、身体がすっぽり入るのは幼稚園児くらいのものだった。
野菜の段ボール箱や、ワイン用の樽など交渉してみたが無理だった。
調理器具を取り出して、収納スペースに隠れられないかと粘ってみたが、忙しいコックの皆さんに迷惑を掛けるわけにもいかない。
厨房に隠れる事を諦めて、肩を落として帰ろうとしたシンジの目の前で、食肉用の大型冷凍庫の扉が開いてアスカが現れた!
アスカの髪には霜が降りている。
プラグスーツで胴体の部分は零下でも耐えられるが、首から上はそうはいかない。
「もう、我慢するのが大変だったわよ! シンジの口で早く温めて!」
アスカはシンジの後頭部を掴むと、舌をシンジの口の中へと突き入れた!
シンジはまるでアイスを口の中に放り込まれた感覚になった。
アイスクリーム頭痛もして来た。
これが、極寒の地のイヌイットに伝わるアイスキスと言うものなのだろうかとシンジは思ったが、それは誤解だった。
寒い地域では直ぐにまつ毛や髪の毛が凍ってしまうように、唇同士もカチカチになって外ではキスが出来ないので、別の方法でキスの表現をするようだ。
シンジはアイスを食べた直後のような冷たさを感じながら戻った。
そして再びB通路へ、マヤさんの居る医務室へ行く。
ネルフの医務室に行くと、ピンク色のナース服を着た伊吹マヤが穏やかな笑顔でシンジを迎えてくれた。
「こんにちは、マヤさん」
「シンジ君、葛城さんのせいで大変な事になっちゃったわね。私、応援しているから!」
「ありがとうございます。でも、4時間も逃げ続けるなんて出来るかな」
「それなら、医務室のベッドで休んで行くと良いわ。衝立があって外からは見えないし、顔を隠せば、直ぐにシンジ君だとは分からないんじゃないかな?」
マヤの提案はシンジにはとても魅力的に感じた。
上手く行けばずっとベッドで寝ているだけでアスカに勝てるかもしれない。
「アスカちゃんが近くに来たら起こしてあげるから。ね?」
優しい笑顔で微笑むマヤがシンジにとっては天使のように見えた。
「それなら、お願いします」
シンジはマヤに案内されたベッドで横になると、疲れていたのか眠ってしまった。
しかししばらくすると、自分の身体の上に何か重い物が乗っているような苦しさを感じて目を覚ました。
「グーテンモルゲン! おはよう、シンジ!」
シンジの身体の上に伸し掛かっていたのはアスカだった。
アスカは自分の頭の重さも掛けて、シンジの唇にプレッシャーキスをする。
だがこれは間違ったプレッシャーキスの方法だった。
お互いの鼻息がかかるほどの距離で、口をじっと閉じたシンジは呼吸が苦しくなって来た。
アスカが「ねえ、キスしよっか」「暇潰し」と持ち掛けた時のファーストキス・ワーストキスを再現してしまったのだ。
シンジが窒息する前に、マヤがアスカの顔を掴んでシンジから引き離した。
「ありがとうマヤさん、助かりました。でも酷いですよ、僕を応援してくれるんじゃなかったんですか?」
「私が応援しているのはラブラブアスカシンジよ」
シンジが恨めしそうな顔でマヤを見上げると、マヤは胸の前で手を組んでキュンっとした顔でそう答えた。
笑顔は天使でも、小悪魔は居るんだ。
シンジは新たな教訓を得て、ブリーフィングルームに戻った。
そして再びB通路へ、上映時間を待ってミニシアターへ。
シンジが入ったミニシアターでは、『空の奇跡』と言うゲームを基にしたアニメ映画が上映されていた。
映画を観始めた頃は、主人公(女・金髪)とヒロイン(男・黒髪)の髪の色が自分とアスカに似ているなくらいにしか思っていなかったが、女主人公がヒロインを引っ張って行ったり、ヒロインが女主人公のフォロー役に回るのを見て、話に引き込まれて行った。
中世の剣と魔法の世界で魔物退治や人々の依頼を旅先でこなして行くうちに親しくなっていく二人。そして女主人公はヒロインを恋人として意識し始める。
アスカがシンジを恋人として意識し始めたのとその姿がダブった。
今はすっかりツンツンしていたアスカがシンジにデレデレになっているのを見て、ミサトがこのような4時間逃走ゲームを提案し、アスカも乗っかってしまったわけだが。
だが大冒険の末の映画の最後の場面は、ヒロインが睡眠薬入りのカプセルを女主人公にファーストキスで口の中に流し込んで別れを告げる形で終わった。
あまりの急展開にシンジはショックを受けたが、さらにいつの間にか隣に座っていた人物にギュッと手を握られた。
これは考えるまでも無い、アスカの手だった。
アスカはシンジの肩を掴むと、シンジの口をこじ開けてキスをした。
「アスカ・・・何か口の中に流れ込んで来て・・・」
「安心しなさい。睡眠薬じゃなくて、チョコレートよ。アタシとシンジは別れるはずが無いから」
アスカは売店でチョコを買って、このチョコレートキスを思い付いたのだと話した。
バレンタインになったらもう一回やるからね、とアスカは宣言した。
ミニシアターから出たシンジとアスカには涙の痕が残っていた。
あの映画の二人のように離れ離れにならないと決意を胸に、シンジはブリーフィングルームに戻った。
そして再びB通路へ、カラオケルームで一人カラオケだ。
シンジは個室のカラオケルームの鍵を借りて中へと入った。
テーブルの下やソファに細工をされていないか確認した後、シンジは安心してソファに腰を下ろした。
しかし実際に一人カラオケをするとなると、シンジは何を歌えば良いのか分からなかった。
いつもカラオケに行く時はミサトやアスカがマイクの争奪戦をしていたし、シンジは歌に合わせて合いの手を入れるばかりだった。
「チェロでも持って来ればよかったかな・・・・・・」
もちろん、チェロなど背負ってアスカから逃走中など出来るはずも無い。
有名なチェリストがチェロは敵に襲われた時には武器になりますなどと物騒な事を話していたが、シンジがチェロでアスカを叩くなんて出来るわけがない。
チェロとアスカがかわいそうだ。
個室のチャージ料金を少ない自分の小遣いから払ってしまったシンジは何か歌わないと損をすると貧乏性な考えをしていた。
しかしアスカは倹約家で歌も歌えないシンジが有料のカラオケボックスに入るとは考え付かないから、意外と時間が稼げるのではないかとプラスに考えた。
延長料金を払わなければならないのが財布にとってダメージだけど、ミサトのお小遣いで帳消しになると・・・・・・いいなと考えた。
「ミサトさんも薄給で僕達の生活費まで払っているからな・・・・・・」
シンジは給料日前にはミサトがリョウジやリツコからお金を借りている事を知っていた。
チルドレン達の給料には決して手を出さないミサトは大人の鑑だと思う。
「お客様、ご注文のカクテルをお持ちしました」
「えっ!? 僕は未成年だし、カクテルなんて頼んでいないけど」
戸惑うシンジの前にドアを開けて乱入して来たのは、お盆だけ持ったアスカだった。
「まさか、僕に100%さんの芸でもやれって言うの!?」
「うーん、それはかくし芸大会の時にとっておきましょう。アタシはカクテルを持って来たのよ」
何度目を凝らしてもシンジにはアスカの持っているカクテルが見えない。
「カクテルは、ア・タ・シ」
アスカはそう言うと、口を大きく開いてシンジの舌を舐めたり、シンジの舌を甘噛みしたり、舌や唇を吸ったり離したりした。
されるがままのシンジも噛まれたり吸われたりするのも気分の悪いものでは無かった。
カクテルみたいに酔いしれそうなキスでしょう、だからカクテルキスって言うのよ。
いつの間にアスカはそんな熟練のキスを覚えたんだ!?
シンジは半ば放心状態でブリーフィングルームに戻った。
今度はC通路へ行ってみよう。
C通路の先は、ネルフの一般職員が宿泊に使う部屋が並んでいる。
日向マコトや青葉シゲル、伊吹マヤ、冬月コウゾウなどは第三新東京市内に住居を持ち、モノレールでネルフに通っている。
ほとんど彼らが家に帰れる事は無いのだが。
顔見知りでもない職員の部屋に匿ってもらうのは無理がある。
アスカも踏み込みにくいとは言え、ミサトの提案したゲームに巻き込むわけには行かないだろう。
シンジは刑事ドラマでリネン室のカートに犯人が隠れていた話を思い出した。
後は男子トイレに立て籠もると言う手があるのも思い付いた。
女子トイレは盲点かもしれないが、人生一発アウトだろう。
リネン室へと向かう
男子トイレで籠城だ
ブリーフィングルームに戻る
シンジの選んだ選択は……。
シンジがリネン室と向かうと、やはり使われていないカートがいくつかあった。
身体を折り曲げて入れば、中には十分なスペースがある。
後は適当なシーツを被って、中身があるように偽装する。
もしかしたら他の職員に不審に思われて見つかってしまうかもしれないが、時間稼ぎは出来るだろう。
そう思って棚からシーツを取り出そうとしたシンジだが、近くにあったカートのシーツが突然めくれ上がった。
「甘いわねシンジ、あの刑事ドラマはアタシと一緒に見たんでしょうが!」
まさにアスカは神出鬼没、シンジはいつも家でアスカと一緒にテレビを見ているという初歩を忘れていた。
「逃がさないわよ!」
逃げようとしたシンジの身体に、アスカがロープのような形にした繋げたシーツが絡み付いた。
シンジは床に倒れ込んでアスカに捕まってしまった。
「どんなキスをしようかしら・・・」
シートの上に倒れたシンジを見て、アスカは思考を巡らせた。
そしてお花見に使うようなレジャーシートのような柄のシーツを取り出して敷くと、シンジに座らせた。
「シンジ、口を少しだけ開けて舌の先を出すのよ」
アスカもシンジに言った通りに舌先を出すと、シンジもアスカの真似をして従った。
お互いの舌だけが触れ合うイレギュラーなキスをアスカは試してみたくなったのだ。
長い時間やっているうちに、アスカとシンジの口からはダラダラと唾液が溢れ、舌もパサパサになって来た。
「ピクニックキスってものらしいけど、思ったより気持ち良くは無かったわね」
「このシーツはどうするの?僕達の唾液が垂れちゃったけど」
「仕方ないわね、洗濯して欲し直すわよ」
シンジとアスカは新婚夫婦のように協力してシーツを洗濯して乾燥機に掛けた。
「さあ、シーツも綺麗になったところで仕切り直しよ」
アスカに言われてシンジはブリーフィングルームに戻った。
そして再びC通路へ、男子トイレで籠城だ。
女子トイレに正当な理由なく男性が入ってはいけない。
正当な理由は客観的に認められるもので無くてはいけない。
LGBTをめぐる動きが活発化している現在でも道理として通すのは難しい。
だからその逆、アスカが男子トイレに入って来る事はあり得ないとシンジは絶対の自信を持っていた。
個室を占領すると大〇をする人の迷惑となってしまう。
便器の近くはアンモニア臭がする。
シンジはさり気なく手洗い場の近くに居た。
「廊下と男子トイレの境界は決して崩れる事の無いジェリコの壁!」
結局シンジはジェリコの壁を突破してアスカを襲ってしまったのだが、本来のジェリコの壁は超えたら死刑になるという意味で、死刑になるのは壁の内側(あの時の夜はアスカ、今はシンジ)だとシンジは分かっていなかった。
アスカもシンジが男子トイレに籠城するのは想定済みだったようで、シンジとアスカは廊下とトイレの境界を挟んで向かい合った。
手の届く範囲に行かなければ、シンジは捕まらないと余裕の笑みを浮かべた。
だがアスカもニヤリと笑みを浮かべる。
「日向さ~ん、シンジ君が意地悪をして、トイレから出て来てくれないんです。ミサトの命令に違反して悪い事をしています」
「何っ、それはいけないな」
ミサトはゲームを始める時、男子トイレに逃げ込むのは禁止など細かなルールは決めていなかった。むしろどんな手を使ってでも4時間逃げのびなさいと楽しんでいる様子だった。
「シンジ君、葛城さんを困らせてはいけないよ」
空気を読めない事に定評のある日向マコトによって、シンジは男子トイレから引きずり出されてしまった。
青葉シゲルや加持リョウジなら異なった対応をしただろう。
アスカはマコトという人間を良く観察していた。
「さあ、シンジ。捕まえた」
「じゃあ葛城さんの所へ行こうか」
「アンタバカァ?それじゃあキスの回数が1回減っちゃうじゃないの。日向さんは仕事に戻って、行った行った」
シンジ並みに気の利かない人ね、とアスカは心の中で呟いてマコトを追い払った。
「アタシから絶対的な場所に逃げようなんて気を起こさないように、シンジをスッキリとさせてあげる」
アスカはシンジに少しだけ舌を出すように言った。
差し出されたシンジの舌の先端をアスカは自分の唇でくわえたり、優しく撫でまわしたり、ふわりと吸ったりした。
まるでオブラートに包まれたような優しいキスだった。
舌の先端に神経を集中させていたシンジにとっては脳が蕩けてしまうような気持ち良さだった。
至福の時間が終わってしまうのが、残念に思えてしまうほどだ。
でも負けるわけにはいかないと闘志を奮い起こしてシンジは戻った。
今度はαエレベータに乗ってみよう。
αエレベータはシンジやアスカ、レイたちが一番乗り慣れたエレベータだ。
ゲンドウが司令席に鎮座し、ミサトが指示を下してMAGIのある発令所、初号機、弐号機、零号機が収められて居るケージ、シンクロテストや戦闘シミュレーターが行われる実験棟が固まっているエリアだ。
エヴァンゲリオンのパイロットには一番馴染みのある場所だ。
司令室やMAGIのある発令所に向かう
初号機のケージへと行く
弐号機のケージへと行く
零号機のケージへと行く
実験棟へ行ってみよう
ブリーフィングルームに戻る
シンジの選んだ選択肢は。
シンジは使徒が襲来した時、ネルフが第一種戦闘配備になると呼び出される発令所へとやって来た。
使徒がやって来ていない平穏な今、発令所にはほとんど人は居なかった。
暇そうな顔をして煙草をくわえているリツコが居るだけだ。
ネルフでは私室と喫煙スペース以外では禁煙となっている。
「リツコさん、MAGIのメンテナンスですか?」
「ええ、シンジ君もミサトのせいで変な事に巻き込まれて災難ね」
リツコはシンジに同情するような口ぶりだった。
そのクールビューティな表情はいつもと変わりない。
「でもシンジ君、発令所に隠れる場所なんて無いわ。他を当りなさい」
そのリツコの言葉通り、発令所は見通しの良い場所だった。
特に司令席やミサトの作戦部長の席からは全体が丸見えだ。
発令所に曲者がひそめる場所があったらそれは危険だ。
しかし今はMAGIのメンテナンスだったので、シンジはMAGIの中に人が入り込めるスペースがある事に気が付いた。
MAGIが使徒に乗っ取られそうになった時にリツコが入った場所だ。
ちょっと不気味な場所だけど、リツコに頼めば良い隠れ場所になるかもしれない。
「あの、リツコさん。MAGIの中に隠れさせてもらう事は出来ませんか?」
シンジが頼むと、リツコは考え込むような仕草をしてから答えた。
「MAGIのメンテナンスが終わる時間までの間なら良いわよ」
ずっと逃げ回っていたシンジにとっては、しばらくの間休めるのは助かった。
シンジがMAGIの縦穴に入ると、リツコは別のMAGIの穴に向かって声を掛けた。
「アスカ、シンジ君が来たわよ」
「サンキュー、リツコ!」
「そんなぁ!」
シンジは絵画のムンクの叫びのように頬に両手を当てた。
「アスカの味方をした方が得だと判断したのよ。悪く思わないでね」
リツコは淡々とした口調でそう言った。
「リツコ、準備は出来てる?」
アスカは目を爛々と輝かせてリツコに尋ねた。
「エレキトリックキスなんて、アスカも物好きね」
リツコは静電気発生装置をアスカとシンジに取り付けた。
シンジとアスカの唇が触れ合った時、二人の身体に痺れるような感覚が走った。
「これがミサトの言っていたビビビと来る運命のキスなのね!アタシとシンジは赤い糸で結ばれているんだわ!」
誰が相手でも物理的にビビビと来ると思うんだけど、とシンジは思った。
アスカが死語となった言葉を知っていると思ったらミサトの入れ知恵だったのかとシンジは思った。
でも意外と刺激があって気持ちの良いものかもしれない。
クセになってもう一回と言う気持ちになってしまう前に、シンジはブリーフィングルームに戻った。
シンジは再びαエレベータに乗った、初号機のケージへと行く。
「そうだ、きっと母さんなら僕を助けてくれるはずだ!」
初めての戦いではシンジを守るために暴走し、内部電源が切れた後も奇跡の再起動。
使徒のビーム攻撃からレイを守る盾になった時も限界を超えたATフィールドを出してくれた。
シンクロ率300%を超えてしまった時も、初号機の中で直接話をして優しく抱きしめてくれた。
今ではエントリープラグに乗り込めば、母親のユイと意思を伝え合うことが出来る。
母親はどんな時も自分の味方だと考えたシンジは初号機のエントリープラグに乗り込んだ。
「グーテンモルゲン!シンジ、待ってたわよ!」
「ええっ!何でアスカが初号機のエントリープラグの中に居てもエラーが起きていないの!?」
「そりゃあ、もうユイお母様とアタシは仲良しなんだもん」
元々ユイとキョウコは知り合いだった。
幼かったシンジとアスカには明確な出会いの記憶は無かったが、ユイは可愛いアスカちゃんを是非シンジのお嫁さんにとキョウコと話していた。
「さあ、母さんの前でシンジとアスカちゃんが愛し合っている姿を見せて!」
「じゃあ、シンジの全てを頂きます!」
アスカはそう言うと、大きく口を開いてシンジの口の中にある空気の全てを奪うような激しい吸引をした。
普通ならばシンジの口の中の空気が無くなった時点でこの激しいキスはおしまい。
相手の全ての空気を奪う事からエアクリーニングキスと呼ばれている。
しかしここはLCLに満たされたエントリープラグの中。
『肺がLCLから直接酸素を取り込んでくれます』
リツコが以前シンジに説明した言葉の通り、シンジは窒息する事は無かった。
と言う事はアスカとユイが満足するまで情熱的なキスは続けられるわけだ。
「そろそろ、シンジ君も限界ね」
発令所に居たリツコは冷静に初号機のLCL排水操作を行うのだった。
初号機のエントリープラグにLCLを注入したのも彼女である。
「シンジにはアスカちゃんみたいに元気に引っ張ってくれる子がお似合いよ」
ユイの言葉にガッカリとしたシンジはブリーフィングルームに戻った。
シンジは再びαエレベータに乗った、弐号機のケージへと行く。
アスカの愛機である弐号機のエントリープラグ。
勝負をしているシンジにとってはアスカのホームも同然だった。
何でこんな危険な場所に来てしまったのかシンジには分からなかった。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』と言う諺もある。
アスカのお母さんに必死に訴えれば、勝負を止めるようにアスカを説得してくれるかもしれない。
危険を承知でシンジは弐号機のエントリープラグへと乗り込んだ。
「待っていたわよ、シンジ!」
弐号機のエントリープラグに入ると、案の定アスカが飛び付いて抱き付いて来た。
しかしキスはお預け。
アスカはしばらくデートのような時間を楽しむつもりのようだ。
「こうして二人で弐号機のエントリープラグに乗っていると思い出すわね、力を合わせて使徒の口を開いて倒した時の事」
「バームクーヘン、なんて言い出すから、面白い男の子だと思ったわ」
「えっ!?あの時も僕の事を見てたんですか?」
キョウコの声が聞こえると、シンジは驚いた顔をして聞き返した。
「アスカちゃんってば、弐号機に乗る度に嬉しそうにシンジ君の話をするのよ。シンジ君から『仲直りの印』ってペンダントを貰った時はじっとしていられないほど喜んでいたのよ」
「えっ、安物でセンスが無いとか言っていたのに・・・・・・」
「もう、ママったら、内緒の話をシンジに言わないでよ!」
アスカはデレデレの限界に来たようで、キョウコがこれ以上話す前にキスをすると心に決めたようだ。
「シンジ、アンタは何もしなくていいから。吸って吸って吸いまくるから、覚悟しなさい!」
アスカの決意を秘めた青い瞳に、シンジは黙って従うしかなかった。
お互いの唇を重ねると、アスカはシンジの舌を捕えた。
そしてアスカは力の限りシンジの舌を吸って吸って吸い尽くした。
シンジは自分の舌がアスカに引き抜かれてしまうのではないかと思うほど引っ張られた。
これはまさにスロートキスだ!
「アンタのキスの全てを、アタシが貰うからね!」
「ミサトさんからも聞いているけど、シンジ君は家事も出来て本当に良い子ね。ユイさんに頼んでお婿さんに貰っちゃおうかな」
「ママ、シンジにくっつき過ぎ!」
キョウコの豊満な胸が当たって顔を赤くするシンジを、アスカは怒って引き離した。
疲れ果てたシンジはアスカに肩を借りながらブリーフィングルームに戻った。
今度は零号機のケージへと行く。
「そうだ、アスカは綾波が苦手なはずだ」
レイの匂いがする零号機のエントリープラグ。
初号機と零号機の相互乗り換え実験の時、アスカは絶対に零号機には乗りたくないと話していた。
でもレイの許可を得ないで勝手に零号機のエントリープラグに乗って良いものかとシンジは悩んでいた。
それも最長4時間も居るとなっては迷惑この上ないだろう。
「そう言えば、綾波は何処に行ったんだろう?」
ブリーフィングルームには居なかったが、家に帰ったとも聞いていない。
もっとネルフの施設内を探してみようか。
「零号機に乗ったと知ったら、アスカは怒るだろうな」
ミサトと同じシャンプーや石鹸を使っていただけで、アスカは自分と同じ物を使うように変えろシンジに言って来たのだ。
その程度なら可愛いわがままだとシンジは受け入れたが、レイの匂いのするLCLを嗅いでアスカの機嫌が悪くなってしまう可能性もある。
「僕だって、アスカから他の男の人の匂いがしたら嫌な気持ちになるだろうからね」
アスカから、加持リョウジの付けている制汗剤や整髪料の匂いを感じた時、シンジは胸がざわついたのを思い出した。
「アスカから逃げるなら、他の方法があるじゃないか」
シンジはそう納得して、ブリーフィングルームに戻った。
今度は実験棟へと行ってみよう。
実験棟では使徒が来ない時でも、定期的にハーモニクステストや実験機による戦闘シミュレーションが行われている。
今日も初号機と弐号機の実験機による戦闘シミュレータが行われた。
結果は間合いを詰められた初号機の敗北だった。
ハーモニクステスト用のエントリープラグや、実験機に乗って隠れる事は出来るかもしれないが、他の部屋から現在使用中だと分ってしまうのでは意味が無い。
部屋のコンピュータには『EVA-01シンクロ率〇〇%』と表示されてしまうのだ。
自我を持ったエヴァとは違い、電源を入れないとハッチは開かない。
「シンジ君、残念だけどハーモニクステスト用のエントリープラグや実験機に理由も無く乗せてあげる事は出来ないよ」
「やっぱり、そうですよね」
実験棟でデータをまとめて居残りしていた青葉シゲルに言われて、シンジは元気が無さそうにそう答えた。
隠れ場所が無いこの部屋にアスカが探しに来ない確率だってある。
「それよりもシンジ君、俺が知ってる良い隠れ場所があるんだ」
「本当ですか?」
シゲルの言葉にシンジは半信半疑で耳を傾けた。
ネルフの職員全員がシンジの味方だとは限らないからだ。
「俺はネルフの広報のための音楽活動をしていてね。楽器室の管理を任されているんだ。そこには様々な楽器のケースがある。中には2mほどの大きさのあるコントラバスもあるのさ」
「青葉さん、もしかして・・・・・・」
「ああ、シンジ君達が生まれる前の話だから知らないだろうけど、コントラバスのケースの中に隠れて日本に密入国した巨額脱税事件の社長が居たんだよ」
コントラバスは別の場所に隠してしまえば怪しまれる確率は低くなる。
シンジはシゲルから『楽器室の鍵』を借りた。
「マスターキーもあるから、怪しまれないように部屋の鍵は開けておいた方が良いかもな」
シンジはシゲルにお礼を言うと、実験棟を出てブリーフィングルームに戻った。
今度はβエレベータに乗ってみよう。
βエレベータはシンジ達にとってあまり乗り慣れていない、緊張する区画へ通じる道だった。
この先はミサトの執務室、リツコの研究室、楽器室、貴重品保管倉庫、会議室、副司令の私室、総司令室と気軽に足を運べる場所ではない。
警備の人間も警戒を強めていて物々しい雰囲気が漂っている。
廊下を歩いているだけでシンジは全身の筋肉がこわばるのを感じた。
だからと言ってアスカがこのエリアに来ないは言い切れない。
ミサトの執務室へ
赤木博士研究室へ
楽器室へ(『楽器室の鍵』が必要)
保管倉庫へ(『保管倉庫の鍵』が必要)
会議室へ
副司令の部屋へ
総司令の部屋へ
ブリーフィングルームに戻る
シンジの選んだ選択肢は……。
「ミサトさん、自分の部屋に居るのかな・・・・・・」
このゲームの切っ掛けを作った張本人であるミサトには、文句の一つでも言っておきたいとシンジは怒っていた。
どこで高みの見物をしているのか。
ミサトは家族ではあるがネルフでは上司と部下の関係だ。
シンジはミサトの部屋のインターフォンを鳴らしたが返事が無い。
不在なのかと思ってミサトの部屋のドアの取っ手に手を掛けると、鍵は掛かっておらず、引き戸はスライドして開いた。
ミサトは書類の山が積まれたデスクに突っ伏して寝息を立てていた。
寝たふりをしていると思ったが、そうでもないようだ。
4時間くらい掛かる残業がミサトにあって、それが寂しくてシンジとアスカにキスゲームを持ち掛けたのかも知れない。
ゲームマスターが寝ているのならばゲームは終了しても良いのではないかとシンジは思ったが、乗り気になっているアスカが引き下がらないだろう。
「それにしても、4時間は長いよ・・・・・・」
シンジが呟いて下を向くと、床にカードキーが落ちているのに気が付いた。
『ヘブンズゲート・カードキー』と書かれている。
どこの鍵なのかシンジにはさっぱり分からなかったが、借りておいて後で返せばいいとシンジは軽い気持ちで拾った。
シンジは『ヘブンズゲート・カードキー』を入手した。
そして廊下へと戻った、そして赤木博士研究室へ。
赤木博士研究室と書かれたプレートには可愛い猫のイラストが描かれたシールが貼られている。
『子猫譲りマス』とリツコの手書きでドアに文字が書かれているが、シンジにとっては少し近寄りにくい部屋だった。
シンジの方から用事があってリツコの部屋へと行く事は無かった。
インターフォンを鳴らしても返答はない、不在のようだ。
リツコは色々忙しい身だ、ネルフの色々な場所を廻っているのだろう。
自室に鍵を掛けて研究に熱中しているのだとしたら、邪魔をしたら悪い。
シンジが赤木博士研究室の前から立ち去ろうとすると、アスカが廊下を全力疾走して来るのが見えた。
「シンジ!見つけたわよー!」
廊下で見つかってしまうとは何という不運!
シンジはエレベータ前でアスカに捕まってしまった。
アスカはシンジの唇に舌を触れると、唇全体をペロペロと舐めまわした。
最初はゆっくりだったものが、だんだんとスピードが上がって行く。
ニプルキスと呼ばれるものだった。
「唇が荒れないように気を付けるのよ」
唾液をそのままにしておくと唇が乾燥して荒れてしまう。
アスカはシンジにリップクリームを渡して塗るように言って去って行った。
ブリーフィングルームからやり直しになったシンジは、楽器室へと向かった。
楽器室には鍵が掛かっていた。
ネルフには音楽隊があり、音楽に合わせて諜報部がキレキレのダンスを見せるのが広報活動となっている。
高価な楽器もあるので、普段は鍵が掛けられている。
シンジはシゲルから『楽器室の鍵』を受け取っていたので中へと入れた。
楽器室にはシゲルの話していた通りたくさんの楽器が並んでいた。
トランペットやトロンボーン、ホルンのような金管楽器。
アルトサックス、オーボエ、クラリネット、ファゴット、フルートのような木管楽器。
ドラム、ティンパニ、シロフォンのような打楽器。
ピアノのような鍵盤楽器。
ギターやヴァイオリン、ヴィオラやチェロ、ハープ、そして目的のコントラバスのような弦楽器もあった。
その他にもウクレレやブブゼラのような民族楽器まで揃っているとは、シンジは心底驚いた。
「いけない、早くアスカが来る前に隠れないと!」
シンジはコントラバスに「ごめん」と謝ってから、コントラバスをケースから取り出し、コントラバスの楽器ケースへと隠れようとした。
「中には入れそうだけど、どういう形で入ればいいんだろう・・・」
シンジは最初、身体を丸める形でケースのチャックを締めて入ったが、この体勢は苦しくて長い時間耐えられそうになかった。
しばらくコントラバスのケースの形を眺めていたシンジは閃いた。
「そうだ、長い部分に両足を入れたらどうだろう。うん、寝袋みたいで良い感じだ」
「そう、それは良かったわね」
声のした方に顔を向けると、シンジを見下ろすアスカの姿があった。
隠れるのに時間を掛け過ぎて、アスカに見つかってしまったのだ!
せっかく青葉さんが助けてくれたのに、いや、ケースの入り方を教えてくれなかったのは罠だったのか?
シンジには分からなかった。
アスカはシンジをコントラバスのケースから引きずり出して、シンジにコントラバスをケースに戻させる。
「ここって音楽室よね!」
ニヤリと笑ったアスカは、シンジの下唇を噛むと頭を小刻みに振った。
まるで楽器を演奏するようなスウィングキスだった。
「楽器のハードケースに入ると、中から開ける事が出来なくなってとっても危険だから、『軽部権兵衛』の真似は絶対しちゃダメよ」
真剣にシンジの事を心配するアスカに説教されて、シンジはブリーフィングルームに戻った。今度は保管倉庫へ行ってみよう。
ネルフの物資保管倉庫。
非常事態に備えての防災グッズや開発が中止された兵器など普段使用されないものが押し込まれている。
中にはそれなりに価値のある物も保管されているので、防犯対策のために施錠されていた。
「倉庫の段ボール箱とかに隠れる事が出来れば良いんだけどな・・・・・・」
保管倉庫の鍵など、簡単に借りれるものじゃない。
しかし、何らかの方法で『保管倉庫の鍵』を持っているのならば、シンジは中に入ることが出来る。
しかしシンジは『保管倉庫の鍵』を持っていなかったので、廊下へと戻った。
そして会議室へ。
大型モニターが設置され、座席が並んでいる会議室。
ここでは使徒イスラフェルと戦いを挑んで敗れた時の反省会が行われた場所だ。
「あの時は、僕とアスカ、お互いに相手の方が悪いとぶつかっていたな」
在りし日を思い出して感傷に浸るシンジ。
座席の下には隠れるスペースが無く、この場所も発令所と同じように隠れ場所には適していないようだ。
「ここで叱られた後、ミサトさんの家でアスカと同居する事になって、ユニゾンの特訓をしたんだっけ」
「そうね、今となっては懐かしい思い出だわ」
いつの間にかアスカが隣に立っていて、シンジは震え上がった。
感傷に浸っていたシンジは息を殺したアスカの気配に気か付かなかった。
「じゃあ、アタシ達のユニゾンの成果を試す、インサートキスをしましょ!」
聞いた事の無いキスにシンジは首を傾げた。
アスカの説明によると、シンジとアスカが唇を密着させて、アスカがシンジの口に舌を差し込んだら、シンジが自分の口の中でアスカの舌を優しく撫でまわしたりする。
アスカが舌をシンジの口から抜いたら、シンジがアスカの口に自分の舌を差し込んで、アスカが自分の口の中でシンジの舌を優しく包み込んだりする。
お互いの舌を差し込んだり抜いたりする二人の連携が問われるキスだ。
しばらくの間インサートキスが続き・・・シンジは間違ってアスカの舌を噛んでしまった。
「痛っ!ユニゾンの時もそうだけど、シンジって最後で失敗するのよね」
「ごめん・・・」
「まあ十分に楽しめたから良いわ」
満足気な表情のアスカと共にブリーフィングルームに戻った。
シンジはβエレベータに乗り、冬月の部屋へ。
「すみません、冬月先生、いらっしゃいますか?」
「鍵は開いているよ、入りたまえ」
副司令の冬月コウゾウの私室は、『和』を感じさせる骨董品で溢れていた。
壁には掛け軸や浮世絵が飾られていて、人工照明で照らされた場所には盆栽が置かれている。
シンジが初めて訪れる部屋だった。
コウゾウは座布団に座って将棋の本を持ち、一人で将棋盤に向き合い詰将棋をやっていた。
「あの、僕は事情があって、アスカに見つからないように隠れないといけないんです」
「葛城君から話は聞いている。私は時には息抜きも必要だと考えている。むしろ君を歓迎するよ」
今までシンジとあまり接点の無かったコウゾウは、シンジの来訪を心なしか喜んでいるようだ。
アスカはコウゾウと直接話した事はほとんどない。
イスラフェル戦の後に怒られて苦手意識を持っているはずだ。
でも、この部屋の中のもっと安全な場所に隠れたいとシンジは思った。
「あの大きなツボの中に隠れさせては頂けませんか?」
「それは構わないが、私の頼みを聞いてはくれないかね?」
コウゾウの頼みとは、母親のユイと同じ髪のカツラを被って、さらにメイド服を着たシンジの写真をコウゾウに撮影させる事だった。
いつの間にかレイも写真撮影に加わっていた。
「あの、もう良いですか?」
「もう良いよー」
そう言って大きなツボからはい出て来たのはアスカだった。
あのツボは悪魔のツボ・・・ではなくアスカのツボだった!
腰を抜かしたメイド服姿のシンジは四つん這いで逃げようとして、アスカに捕まった。
「碇君、白いブリーフじゃなくて、パンティを履いてくれていたら満点だったのに」
「綾波、スカートの中を撮らないでよ!」
顔を真っ赤にするシンジを見下ろして、アスカはシンジに手の甲にキスをするように命じる。
「ふふふ、シンジの御主人様になった気分だわ」
やっとメイド服を脱ぐことを許されたシンジはブリーフィングルームに戻るのだった。
覚悟を決めたシンジは総司令、ゲンドウの部屋へ……。
アスカから逃げるためには仕方ないと、シンジは自分が一番苦手な場所へと行った。
ネルフ総司令、碇ゲンドウの部屋である。
無駄とも思えるほど広い部屋の中には、ゲンドウの座る黒檀のデスクがあるだけだ。
シンジがゲンドウの部屋に来たのは、ネルフを去ると告げに来た時で、あまり良い思い出はない。
「シンジ、何の用だ。私は忙しい、早くしろ」
「父さん、アスカはこの部屋には居ないよね」
「ああ」
ゲンドウの答えに、シンジはホッと胸を撫で下ろした。
苦手なゲンドウと2人きりなのに安心するとは不思議な気持ちだとシンジは思った。
「アスカから逃げるためにこの部屋に居ても良いかな?」
「シンジ、隠れるのならば奥の部屋を使え。私のプライベートルームだ」
思いがけない父親の優しさに、シンジは胸が熱くなった。
ゲンドウのプライベートルームへ足を踏み入れると、シンジは今まで知らなかった一面を見て驚いた。
一流の演奏家が弾くようなピカピカに磨かれたグランドピアノが置かれていた。
「いつか父さんとチェロで合奏できるかもしれない・・・」
会話の続かない父親とも演奏を通じてなら心を通わせられるかもしれないと、シンジは希望を抱いた。
陳列棚には大事に手入れされた釣り竿や、登山用のピッケルなどが置かれている。
初号機に居るユイから、ゲンドウは若い頃に釣りや登山に誘ってくれたのだと聞いていた。
研究に行き詰った時、運動をする事が気分転換になるのだと冬月先生に教わったのだと言う。
部屋にあるソファに座ってシンジがくつろいでいると、非常用の脱出口からアスカが現れた!
シンジはゲンドウの居る司令室へのドアを叩くが、ゲンドウはドアを開けない。
「裏切ったな!父さんは僕の気持ちを裏切ったんだ!」
「俺がシンジの側に居ても、シンジを傷つけてしまうだけだ・・・」
ドアの向こうから漏れ聞こえて来るシンジの慟哭に、ゲンドウはそう呟いた。
「碇シンジ、召し捕ったり! もう逃げ場はないわよ」
ドアにすがり付くシンジの背中に、アスカは覆いかぶさった。
「さあシンジ、観念して御縄に掛かりなさい」
アスカは密着した身体のように、シンジの唇も包み込むように拘束するバインドキスをした。
そしてアスカは無抵抗なシンジの唇を舌を出して舐めまわす。
シンジの唇を捕えて離さない、そんな情熱的なキスだった。
アスカは最後に唇を離すと、シンジに優しくライトキスをして、釈放を宣言した。
解放されたシンジは非常用の出口からブリーフィングルームに戻った。
最後の希望を胸に、シンジはγエレベータへ乗った。
γエレベータは普段は進入禁止区域とされて、シンジ達エヴァのパイロットには乗る事すら許されない聖域のような場所だ。
ネルフの心臓部とも言われる重要な施設があると聞かされていたが、何故かシンジはγエレベータに乗ることが出来た。
シンジがこのエレベータに乗る事が出来たと言う事は、アスカも乗る事が出来るかもしれない。
だからこの先のエリアでも隠れ場所を探さなければならない。
シンジは分かれ道まで来たが、『関係者以外立ち入り禁止』と記号化された通路表示しか書かれていない。
一般職員の立ち入り禁止だからなのか、人通りの全くない通路はシンジを不安にさせた。
さて、どの通路を進むべきか、それとも戻って知っている施設内に隠れるのが良いのか?
X通路を進む
Y通路を進む
Z通路を進む
ブリーフィングルームに戻る
シンジの選んだ選択肢は……。
シンジがX通路を進んで突き当たったのは、『ダミープラグ製造工場』と書かれたプレートの部屋だった。
使徒に侵食された参号機と戦おうとしなかったシンジを見て、ゲンドウは初号機をダミープラグで無理矢理初号機を動かそうとした。
しかし初号機のユイにダミープラグを拒絶され、ユイに説得されたシンジは再び立ち上がり、アスカとレイと力を合わせて参号機からトウジを救い出したのだった。
「ダミープラグって結局何だったんだろう?」
気になったシンジは部屋の中へと入ろうとするが、解除するにはカードキーが要るようだ。
自分の持っているカードキーは『ヘブンズゲート・カードキー』と書かれている。
鍵が合わないだろうと判断したシンジは廊下へと戻った。
そして、Y通路を進んだ。
シンジがY通路を進むと、明るく開けた場所へ出た。
無機質なネルフの建物が終わり、地面は耕された土へと変化する。
何かが栽培されている畑へと迷い込んだようだ。
「こら、スイカ泥棒め!」
「違うんです!」
後頭部に銃口を突き付けられたシンジは泣きそうな顔で振り返ると、そこにはじょうろを持った加持リョウジの姿があった。
「こんな所で何をしているんですか?」
「見ればわかるだろう?スイカ畑さ」
シンジに尋ねられたリョウジは呑気な顔でそう答えた。
Y通路はネルフ施設内から直接ジオフロントへ出れる非常口だったのだ。
もしかしたら、ここから外へと出れるかもしれない。
「おっとシンジ君、ゲームのルールは守らないといけないな。こうしてネルフ施設の外に出ているのも厳密にはルール違反だ」
「でも僕はそんなこと知らなくて」
「分かっている、だから今回は大目に見よう。それよりも、アスカとの勝負に負けたくない気持ちがあるならば、この鍵を持って保管倉庫に向かうんだ。役に立つ物が、真実に近づくための物がそこにある」
シンジはリョウジの言葉の意味が分らないまま、『保管倉庫の鍵』を受け取った。
「ただし、他にも必要なものがあるぞ。足を使って、ネルフ施設の中を探し回るんだ。頑張れ、シンジ君」
リョウジの言葉に頭を捻りながらも、シンジはルール違反を咎められないうちに廊下へと引き返した。
リョウジから渡された『保管倉庫の鍵』が気になったシンジは、Z通路に進む前に保管倉庫へと向かった。
鍵を使ってを使って中へと入ったシンジ。
ここにはアスカとの勝負に負けないために必要なアイテムがあるとリョウジは話していた。
しかし部屋を探し回っても役に立ちそうなものは見当たらない。
そんなシンジの目に、淡い光を放つ小さな箱があるのが見えた。
箱の大きさは手のひらでも隠せるポケットにでも入りそうなサイズで、感触はプラスチックのようにツルツルとしていた。
蓋の部分は透明になっていて、中には灰色の泥で固められたアンモナイトの化石のようなものが入っている。
箱には『アダム』と書かれたラベルが貼られている。
見ていて気持ち悪いものだったが、もしかしてアスカが目にするのも嫌なほど苦手な物なのかもしれない。
他に部屋を探してもめぼしいものが無かったシンジは、その箱を持って保管倉庫を出た。
シンジは『アダムの箱』を手に入れた。
そしていよいよシンジは、Z通路の奥へと足を踏み入れる……。
Z通路の突き当りには、『ヘブンズゲート』と書かれたプレートがある物々しいゲートがあった。
『この先危険区域』『この門をくぐるものは全ての希望を捨てよ』『命の保証は致しません』など立ち入り禁止よりも厳しい文言が書かれたステッカーが貼られている。
アスカから逃げるためだとは言え、シンジはこの先に行く事は憚られた。
ゲートはしっかりと閉じられ、脇にはカードキーを通すためのスリットがある。
さらにセンサーカメラのようなものがこちらへと向けられている。
このゲートを開くための鍵をシンジは持っている事に気が付いた。
シンジがミサトの部屋で手に入れた『ヘブンズゲート・カードキー』をスリットに差し込むと、緑のクリアーの文字が表示されてゲートのロックが外れる音がした。
しかし重いゲートは動かず、開こうとはしない。
他に何か必要なものがあるのだろうか。
センサーカメラの前に色々な物をかざすが、反応が無い。
「これでダメだったら、諦めようか・・・」
『アダムの箱』を持っていたシンジは、ダメで元々だと箱を取り出した。
シンジが『アダムの箱』をセンサーカメラの前に掲げると、ヘブンズ・ゲートは大きな音を立てて開き始めた。
ヘブンズ・ゲートの向こうは、セントラルドグマと呼ばれる広大な空間だった。
紫の顔に六つの目を持つ下半身が無い白い巨人が、巨大な赤い十字架に釘のようなものではりつけにされている。
巨人の胸の部分には赤黒い巨大な槍が刺さっていた。
「何だよ、これ・・・これを狙って使徒がネルフにやって来るって言うの?」
シンジは誰に尋ねるでもなく、そう呟いた。
質問したい相手はいくらでもいた、父親であるゲンドウ、母親であるユイ、リツコ、ミサト、リョウジ・・・大人達は僕達に何を隠しているんだろうとシンジは思った。
突然、セントラルドグマの天井に空いた穴のメインシャフトの上の方から騒がしい音が聞こえる。
大きな水飛沫を上げて、シンジの立っている池の前に着水したのは弐号機だった。
アスカはこんな所まで追いかけて来たのか!?
弐号機のエントリープラグが排出されると、笑顔のアスカが弐号機を伝って降りて来た。
さっさと逃げれば良かったのに、シンジは蛇に睨まれた蛙のように体が動かない。
「シンジ見っけ」
アスカはそう言ってシンジの手を掴んだ。
「アスカ、ここがどんなところだかわかる?何か嫌な予感がする、ゲームどころじゃないよ!」
「そんな事を言って誤魔化そうとしてもダメよ」
『セントラルドグマに緊急事態を確認。MAGIにより、自立自爆が三者一致で決議されました。10秒後に自爆装置が作動します』
機械音声がセントラルドグマの中に響き渡った。
『10、9、8・・・』
「そうだ、カウントダウンキスにしましょう! このカウントダウンの音声がゼロになった瞬間にキスをするの!」
シンジは抵抗しようとするが、アスカにきっちりと頭を掴まれて逃げることが出来ない。
『3、2、1・・・』
MAGIの機械音声のカウントダウンがゼロを告げた時、アスカとシンジはキス出来たのかどうかは分からない。
確かな事は『リア充』のシンジとアスカがネルフ本部ごと爆発したと言う事だった。
●~*リア充爆発END●~*
(Ver1.0ではこのエンディングでゲームクリアーとなります)
★バッドエンド★
(14回以上アスカにキスされてしまった場合)
「ふっふっふ、これでとうとう14回目のカウンティングキス達成ね。シンジのエキスをたっぷり頂いたわ」
威風堂々と立っているアスカの側で、シンジはガックリと膝を付いていた。
シンジにはアスカのお尻にサキュバスの尻尾でも生えているのではないかと思った。
「ほらシンジ、何をへたっているのよ。アタシからの愛情がたっぷり注入されたはずでしょう?」
今日はシンジの口にもアスカの唾液がたっぷりと注ぎ込まれた。
シンジよりアスカの方が疲れていないのは当然だった。
走り去って逃げ回って居たシンジに比べて、アスカは待ち伏せしていた事が多かった。
ミサト以外にもネルフには多くのアスカの協力者が居た。
助けてくれると騙されて、シンジはアスカに身売りされた。
「アタシと色々なシチュエーションでキスできて、今日は最高の一日だったでしょう?」
ツヤツヤとした笑顔でアスカに言われると、シンジは頷く事しか出来ない。
アスカとは何種類ものキスをしてしまったのだ。
「そうそう、恵方巻キスって言うのもあるのよ。お互い両端から恵方巻を食べてキスをするの」
「へえ、それって面白そう!」
帰ってからもアスカとキスをするのか。
他人から見たら羨ましい、『リア充爆発しろ』と言われそうだ。
来年は逃げのびてやると誓うシンジだった。
アンケートがゲームブック版にもありますので、ご回答お願い致します。
次回作の『アスカとドキドキ登下校デート』もハーメルン様ではリプレイ版の公開となると思います(バッドエンド多そうですが……)。
ちなみに製作に半月ほど掛かりましたので、次回の大作の為にも応援お願いします。
<span class="info"><a title="web拍手 by FC2" href="http://clap.fc2.com/post/clap01/?url=http%3A%2F%2Fncode.syosetu.com%2Fn1133l%2F&title=%E7%9F%AD%E7%B7%A8" target="_blank"><span size="3" face="メイリオ" style="font-family: メイリオ; font-size: medium;"><img alt="web拍手 by FC2" src="http://clap.fc2.com/images/button/blue/clap01?url=http%3A%2F%2Fncode.syosetu.com%2Fn1133l%2F&lang=ja" /></span></a><br /></span></p>
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