問題児達と一緒に仮面ライダーの力を手に入れた俺が行くようだ 作:岬サナ
水路にまで吹き飛ばされた黒ウサギが自分に抱きついている相手を見て驚愕の表情をした。
「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!フフ、フホホフホホ!やっぱウサギの触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」
スリスリスリスリ。
それを見て思った。ヤベーレベルの変態だなーと。
「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」
ついに我慢できなくなったのか、黒ウサギは白夜叉と呼ばれた少女を無理矢理引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。
くるくると縦回転した少女を、十六夜は足で蹴り飛ばす。
「てい」
「ゴバァ!」
十六夜が蹴り飛ばした少女が千景の方へと飛んできたので千景も上から殴り付けるように少女を地面に叩き込んだ。
「ガハッ!お、おんしら、飛んできた初対面の美少女を足で蹴り飛ばした挙げ句、地面に殴り付けるとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
「少なくとも今の残念なお前よりは上だと確信している」
ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜に、こんな変態よりかは立場は上だと言ってのける千景。
その一連の流れの中で呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉に話しかける。
黒ウサギに飛び掛かる姿を見て、白夜叉に声をかけれるとは飛鳥の心の強さが垣間見れる所である。
「貴女はこの店の人?」
その飛鳥の問いに千景は、それもかなりの重役だろうなと先ほどの呆れた姿を見た上での発言とは逆の事を思考していた。
「おお、そうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」
「こんな変態がオーナーで大丈夫なのか、この店は?」
冷静な声で白夜叉に釘を刺す女性店員に、千景は白夜叉の発言にオーナーでこれでいいのかと本気で心配する。
「黒ウサギの残念さといい勝負ね」
飛鳥も大概酷いことを言っていた。そして濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がってきた黒ウサギは複雑そうに呟く。
「うう………まさか私まで濡れる事になるなんて」
「因果応報………かな」
「ニャー(お嬢の言う通りや)」
「こっちを濡らそうとしたんだ。当然の罰が当たったんだな」
耀とその猫に千景からの追撃に悲しげに服を絞る黒ウサギ。
反対に濡れても全く気にしない白夜叉は、店先で十六夜、飛鳥、耀、千景の4人を見回してニヤリと笑った。
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は………遂に黒ウサギが私のペットに」
「なりません!どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」
「あの変態には売れるのか」
「何を言ってるんですカ。千景さん!?」
バチーン!?と千景の頭をハリセンで叩き、白夜叉と千景の事でウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。何処まで本気かわからない白夜叉は笑って店に招く。
「まぁいい。話があるなら店内で聞こう」
そう言って白夜叉の後に付いていって店内に入る千景たち。その時に女性店員が白夜叉に規定を言うが、白夜叉は性悪店員の詫びだと言って下がらせた。
「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」
白夜叉が案内してくれた部屋は個室と言うにはやや広い和室であった。
全員が部屋に入り、それぞれが座ると白夜叉が話し始める。
「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構える"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々の縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
乗っけの自己紹介から中々に濃い自己主張でしてきたと俺は思った。
「はいはい、お世話になっております本当に」
俺達の横で投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その隣の耀が小首を傾げて白夜叉に問う。
「その外門、って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」
黒ウサギが説明する。
「此処、箱庭の都市は上層から下層まで7つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられております。外壁から数えて七桁外門、六桁外門、といった感じでございます。その箱庭で四桁外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境と言えるでしょう」
それを聞いた千景は、名のある修羅神仏でも四桁までしか行ってないのかと考え、その上の三桁より上の外門はどれ程なのかと思った。
黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図は、外門によって幾重もの階層に分かれている。
その図を見た4人は口を揃えて、
「………超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかと言えばバームクーヘンだ」
「確かに、タマネギよりもバームクーヘンだな」
うん、と頷き合う4人。身も蓋もない感想にガクリと肩を落とす黒ウサギ。
対照的に、白夜叉は
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は"世界の果て"と向かい合う場所となる」
「へぇ~」
「あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞ──その水樹の持ち主などな」
白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。その反応から、この水樹を持っていた蛇神は白夜叉の知り合いだったのだろうと千景は察した。
「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」
(力による打倒は最初から考慮に入れてないのか)
そう千景は思った。
「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」
自慢げに黒ウサギが言うと、白夜叉は声を上げて驚いた。
「なんと!?クリアではなく直接的に倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」
「いえ、黒ウサギはそうは思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし」
「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ」
「なぁ。その神格ってのは何なんだ?」
千景が黒ウサギと白夜叉に聞くと他の三人も同じように気になったのか頷いていた。
「あぁ、すみません!………神格とは生来の神そのものではなく、種の最高ランクに体を変幻させるギフトのことデス。
蛇に神格を与えれば巨軀の蛇神に。
人に神格を与えれば現人神や神童に。
鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化します。
更には神格を持つことで他のギフトも強化されるので箱庭にあるコミュニティの多くは各々の目的のために神格を手に入れることを第一の目標とする所も少なくありません」
神格に対する説明を黒ウサギが千景達にし、4人がなるほどと頷いていた。
そして4人に説明した黒ウサギは白夜叉の方を向き、聞く。
「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」
それが本当ならば、この女は一体幾つなのだろうか?と千景は疑問に思った。
小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。
だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。
「へぇ?じゃあオマエはあのヘビよりも強いのか?」
(強いだろうな。神格がどれ程そいつを強化するかは不明だが、与えた相手より弱いなんて可能性はないだろうしな。それにふざけてはいるがコイツは強いって伝わってくるからな)
十六夜が白夜叉に聞いたことを千景が考察し白夜叉の脅威度を測っていると白夜叉は肯定して答える。
「ふふん、当然だ。私は東側の"
"最強の主催者"──その言葉に、十六夜・飛鳥・耀の3人は一斉に瞳を輝かせた。
千景は興味無さげに見ていた。
「そう………ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」
「無論、そうなるのぅ」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
十六夜たち3人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はそれに気付いたように高らかと笑い声をあげた。
「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」
「え?ちょ、ちょっと御3人様!?」
慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。
「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」
「ノリがいいわね。そういうの好きよ」
「………対戦相手と認識されてないけどな」
ボソッと呟いた千景の呟きは白夜叉と耳のいい黒ウサギ以外には誰にも聞こえていなかった。
「ふふ、そうか。───しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」
「なんだ?」
白夜叉からの確認事に十六夜は疑問に思い、白夜叉に聞いた。
そして、白夜叉は着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印───向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、
「おんしらが望むのは"挑戦"か───
もしくは"