問題児達と一緒に仮面ライダーの力を手に入れた俺が行くようだ   作:岬サナ

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コミュニティの現状

そこから語られるのはある意味では予想通りの内容ではあった。

 

「まず私達のコミュニティには名乗るべき"名"がありません。よって呼ばれる時は名前の無いその他大勢、"ノーネーム"という蔑称で称されます」

 

「へぇ………その他大勢扱いかよ。それで?」

 

「次に私達にはコミュニティの誇りである旗印もありません。この旗印というのはコミュニティのテリトリーを示す大事な役目も担ってます」

 

「それだけでも絶望的だな~」

 

ここまで来ると本当に絶望的だと俺は口に出す。だが、黒ウサギのコミュニティのノーネームの絶望は止まらないようだ。

 

「"名"と"旗印"に続いてトドメに、中核を成す仲間達は1人も残ってません。もっとぶっちゃけてしまえば、ゲームに参加できるだけのギフトを持っているのは122人中、黒ウサギとジン坊っちゃんだけで、後は10歳以下の子供ばかりなのですヨ!」

 

「終わってんな!」

 

「もう崖っぷちだな!」

 

「ホントですねー♪」

 

千景と十六夜の冷静な言葉にウフフと笑う黒ウサギは、ガクリと膝をついて項垂れる。口に出してみると、本当に自分達のコミュニティが末期なのだなーと思わずにはいられなかった。

 

「で、それが高島の言ったように衰退した結果なら何があった?」

 

「はい。彼らの親も全て奪われたのです。箱庭を襲う最大の天災──"魔王"によって」

 

"魔王"──その単語を聞いた途端、適当に相槌を打っていた十六夜が初めて声を上げる。

千景も空を仰ぎ見るように顔を上に上げる。

 

「ま………マオウ!?」

 

(魔王と来ましたか)

 

瞳をさながらショーウィンドウに飾られる新しい玩具を見た子供のように輝かせる十六夜と、ある意味で自分にも関連するワードに面倒を感じている千景。

 

「魔王!なんだよそれ、魔王って超カッコイイじゃねぇか!箱庭には魔王なんて素敵ネーミングで呼ばれてる奴がいるのか!?」

 

なお、その興奮している十六夜の隣には"最低最悪"に"最高最善"と呼ばれる魔王の力を持っている千景がいるが、本人は何も言わずにいた。

 

「え、えぇまぁ。けど十六夜さんが思い描いている魔王とは差異があると………」

 

「そうなのか?けど魔王なんて名乗るんだから強大で凶悪で、全力で叩き潰しても誰からも咎められることの無いような素敵に不敵にゲスい奴なんだろ?」

 

中にはそうじゃない魔王さんもいるだろうな~と俺は思う。

 

「ま、まぁ………倒したら多方面から感謝される可能性はございます。倒せば条件次第で隷属させることも可能ですし」

 

「へぇ?」

 

「ふーん?」

 

「魔王は"主催者権限(ホストマスター)"という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたが最後、誰も断ることはできません」

 

「逃げることも不可能なのか?」

 

「はい、不可能でございます。魔王が指定された者は何があろうと強制的に参加させられるのデ」

 

千景の逃亡の可否という疑問に黒ウサギは不可能と答える。

 

「私達は"主催者権限"を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティは………コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまいました」

 

これは比喩ではない。黒ウサギ達のコミュニティはその地位も名誉も仲間も、全て奪われたのだ。残されたのは空き地だらけとなった廃墟と子供達だけである。

しかし十六夜と千景も同情する様子もなく、岩の上で足を組み直したり、木に頭を預けたりする。

 

「けど名前も旗印も無いというのは不便な話だな。何より縄張りを主張できないのは手痛いだろ。新しく作ったら駄目なのか?」

 

「確かにな。名前は最悪ノーネームでもいいが、他との区別をつけるための旗印が無いのが致命的だな。最悪だと住居さえもこの瞬間に無くなってるかもしれないって意味だしな」

 

「そ、それは」

 

黒ウサギは言い淀んで両手を胸に当てる。千景と十六夜の指摘は正しい。名も旗印も無いコミュニティは誇りを掲げることできず、名に信用を集めることもできない。この箱庭の世界において名と旗印が無いということは、周囲に組織として認められないということ。

千景の心配する内容だって的を射ているのだ。

だからこそ黒ウサギ達は、異世界から同士の召喚という最終手段に望みを掛けていたのだ。

 

「か、可能です。ですが改名はコミュニティの完全解散を意味します。しかしそれでは駄目なのです!私達は何よりも………仲間達が帰ってくる場所を守りたいのですから………!」

 

仲間の帰る場所を守りたい。それは黒ウサギが初めて口にした、掛け値の無い本心だった。

 

「新しく作ったコミュニティの名と旗印を前のと一緒にしたら駄目なのか?それなら名も旗印もそのままでいいし、わざわざ魔王とギフトゲームをする必要もないしな」

 

「………それは解散して後から元に戻したというのならば可能なのですヨ。ただ、魔王に限らずですがコミュニティの名と旗印を他のコミュニティに奪われた場合は取り返さない限り2度とその名と旗印をコミュニティが持つことも名乗ることさえも不可能だと言っておきます」

 

千景が黒ウサギに聞いた方法も箱庭以外であれば可能だったかもしれないが、ここではそれは無理だと黒ウサギは告げる。

だからこそ"魔王"とのゲームによって居なくなった仲間達の帰る場所を守るために、彼女達は周囲から蔑まれることになろうとも、コミュニティを守るという誓いを立てたのだ。

 

「茨の道ではあります。けど私達は仲間が帰る場所を守りつつ、コミュニティを再建し………何時の日か、コミュニティの名と旗印を取り戻して掲げたいのです。そのためには十六夜さんや千景さん達のような強大な力を持つプレイヤーを頼るほかありません!どうかその強大な力、我々のコミュニティに貸していただけないでしょうか………!?」

 

「………ふぅん。魔王から誇りと仲間をねぇ」

 

(誇り……ねぇ)

 

誇りはそんなに大事なのかと俺自身は考えてしまう。誇りを支えにしてる人もいれば、誇りがあるから生きている人がいるのは否定はしないが俺はそこまで執着したものがなかった。

 

深く頭を下げて懇願する黒ウサギ。しかし必死の告白に十六夜は気の無い声で返し、千景も興味が薄いような表情をしている。

その態度は黒ウサギの話を聞いていたとは思えない。黒ウサギは肩を落として泣きそうな顔になっていた。

 

(ここで断られたら………私達のコミュニティはもう………!)

 

黒ウサギは唇を強く噛む。こんな後悔をするなら、初めから話せば良かった。そう思わずにはいられなかった。

肝心の2人の内の十六夜は組んだ足を気だるそうに組み直し、たっぷり3分間黙り込んだ後、

 

「いいな、それ」

 

「───………は?」

 

「HA?じゃねぇよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べよ黒ウサギ」

 

(へぇ~)

 

不機嫌そうに言う十六夜。それを意外そうに見る千景。呆然として立ち尽くす黒ウサギは2度3度と聞き直してきた。

 

「え………あ、あれれ?今の流れってそんな流れでございました?」

 

「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねぇのか?失礼なこと言うと本気で余所行くぞ」

 

(まぁ普通は黒ウサギの反応だよな)

 

気の無い返事で面白味を与えられたと思えなかったら、そんな流れなんて思わないよな。と俺は思った。

 

「だ、駄目です駄目です、絶対に駄目です!十六夜さんは私達に必要です!」

 

「素直でよろしい」

 

あれ?と千景は考えてしまった。今ここで十六夜と黒ウサギの感動場面的なところを見ていると自分の場違い感が凄いなと考えてしまった。

 

「俺は関しては、だけどな。そこの高島に関しては自分でどうにかしろよ」

 

「………ち、千景さん」

 

黒ウサギの懇願する視線が千景へと向けられる。

このタイミングでもし俺は協力しないからとか言ったら空気の読めない奴もしくは最低な奴ってレッテルを貼られるのでは!?と千景は戦慄する。

 

(別にコミュニティに入ること事態は構わないが………)

 

千景が最も懸念していることは衣食住である。

コミュニティに関しては余程の外道だったり、自分に合わないコミュニティでないのなら入ってもいいとは考えてはいるが、それでも最低限の衣食住が保証されているかが千景の懸念であった。

 

「なぁ、黒ウサギ」

 

「……はい」

 

「俺としてもコミュニティに入るのは別に構わないとは思っている」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

俺の言葉に黒ウサギは嬉しそうな顔をする。

 

「構わないが!」

 

「っ!?」

 

そう続けると黒ウサギはビクッ!!としてしまう。

 

「俺の中ではこれは外せないって事案がある」

 

「それは何でしょうか?」

 

ゴクリと黒ウサギは身体が強張るのを感じた。

 

「最低限の衣食住が保証されていることだ」

 

「衣食住でございますか?」

 

「あぁ。代わりの服がボロ服しかないとか、食事は週一で食べれたら良い方とか、住宅はボロボロで風呂にも毎日入れないとかが無いって保証はあるか?後1つ個人的に気になるところはあるがコミュニティに入る上で、これらが保証されてないなら入るのは考えさせてもらう」

 

「え、え~と……」

 

黒ウサギは言うかを悩んでいた。衣食住の"衣"と"食"については今の自分達のコミュニティでも問題はないが"住"が大丈夫とは言い難い。

何故ならば水の確保が大変な地理にあるために、買うか、もしくは数kmも離れた大河から汲んでこないといけない。

 

(後はギフトゲームで得るくらいし──)

 

そこまで考えは黒ウサギは先ほど十六夜がぶちのめした蛇神とのギフトゲームで得られるギフトがあることに気付く。

 

「衣食住に関しては大丈夫でございましす。残りの個人的に気になるところはと言うノハ?」

 

「それならいい。そっちはオマエに聞いても意味がないから後で判断するさ」

 

それ以上は言うつもりがないのか、千景は口を閉ざした。

 

「これで俺も高島も黒ウサギのコミュニティに入るってことでいいな」

 

「はいな!」

 

十六夜がそう締め括って蛇神へと指さす。

 

「ほれ、あのヘビを起こしてさっさとギフトを貰ってこい。その後は川の終端にある滝と"世界の果て"を見に行くぞ。高島もそれでいいか?」

 

「俺はそれでいい」

 

「は、はい!」

 

黒ウサギが蛇神に跳躍するのを見て、十六夜は、

 

「それで気になる事ってのは何なんだよ」

 

「杞憂ならそれでいいが、そうでなかったら入らないもしくは抜けるだけだ」

 

「ハッ!まぁオマエが決めたことなら俺からとやかく言うつもりはねぇさ」

 

そう言って十六夜はヤハハと笑いながら黒ウサギの方に目を向ける。

 

「………魔王討伐を望むリーダーはリーダーとしての考えを持っているのかな?」

 

千景は1人そう呟き黒ウサギの方を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




千景たちが黒ウサギに話を聞いている時に、飛鳥たちもガルドから現状を聞いてます。
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