"個性"
人間のおよそ八割が発現させた超常能力。ある者は空を飛び、またある者は火を吹き、ある者はとてつもない筋肉を手に入れたりもした。
さて、ここで質問だが、どこかこの世界に聞き覚えは無いだろうか。
主に、漫画などの方向性で。
ああ、この際はっきり言ってしまおう。
俺は『僕のヒーローアカデミア』の世界線に転生したようだ。
案の定、俺は未だに個性が発現していない無個性だが──いや、この記憶が個性なのかも知れないが──その可能性は余り考えたくはない。
勿論、最初は俺もヒーローを目指してやろうと思ったさ。
だが、下手に原作に介入してしまえば予期せぬ出来事が起こるだろう──無論、マイナスの方向性でもだ。
よって、俺は考えた。いっそのことチキって一切原作に介入せずに生きていこうと。
──そう、考えていたのに
今飛び交っているのは決して平穏なものではない、狂った笑い声に悲鳴、怒号。
僕のヒーローアカデミア、という世界線においての敵。"
今現在、一般人相手を虐殺している腕がカマキリのように変質した男もそう呼ばれるものの一種だ。
いや、本当にひどい。確認できているだけでも3人は死んでいるだろう。
俺がヒーローだったら、個性を持っていたら、守れた筈なんだ。そんな言い訳ばかりをしながら目の前に居るヴィランから全力で逃走する──ものの、
「オマエモォ!───死ね」
錯乱していたと思えば、急に冷静になるんじゃねぇ、と思いながらも、無情にも振り上げられる鎌。
ああ、死ぬのってどんな感覚なんだろうな、とか。
呆気なかったな、とか。
そんな事しか湧いてこない──訳がない。
怖い、死にたくない。そんな思いで溢れる。
『───』
脳裏によぎる一節。ここに来る前、憧れた
ああ、俺も、こんなヒーローに───
直後、カマキリ男に拳がめり込む。いとも容易く吹き飛び、意識を刈り取られた男は壁に人形の痕を残し
「もう大丈夫、何故かって?」
そこに立っているのは最強のNo.1ヒーロー。拳で発生させた風圧で時に天候すらも変える英雄。
「私が来た!」
人々は彼をこう呼ぶ、平和の象徴、と。
「…カッコいいなぁ」
正直な話、漫画として読んだ程度では彼にこんな言葉を言うとは思いもしなかっただろう。
だが、冷静になって考えてみてほしい。命の危機を救われた上、もう大丈夫なんて言葉を掛けられたらどう思う?俺が女なら間違いなく惚れていた。
「…やってみるか」
俺のこの肉体の年齢は14歳。まだ、ヒーローへの憧れを捨てるには早い筈だ。
ヴィラン退治は出来なくとも、何か小さな人助け程度なら出来る。
目指せ、一般ヒーローだ。