ゲームだのじい! でもガンダム怖い!
ーーーーー東京エリアのとある喫茶店ーーーーー
アリスは喫茶店で窓際の角のボックス席に座って頬杖をつき、外を眺めていた。
アリスが今いる喫茶店は、以前巳継悠河達、通称アリスチームで集まり、夏世を紹介した喫茶店と同じ場所だった。
アリスチームを含めてアリス本人以外は、知らないことだが、この喫茶店は、アリスがよく利用する場所である。理由はアリスともう一人しか知らない。そのもう一人とは、
「アリスさん、また来たんですか?」
「カウンターに立ってなくていいの? マスター?」
この喫茶店のマスターだった。
マスターはよくある喫茶店のマスターの格好をしていて、綺麗に整えられた短い髭をはやしていて、渋い声。所謂ダンディーなおじ様的な装いだ。
「いえ、今はアリスさん以外にお客さんは入っていないので大丈夫ですよ」
「そう。このあとここで待ち合わせしてるから。後、いつものやつで」
「両方分かりました。待ち合わせの人達はいつものメンバーですか?」
「いんや、マスターの『
「ほう、それは興味深いですね」
マスターがカウンターに戻り、アリスの注文の品を用意し始める。
愛用の懐中時計(アリスは個人的趣味から、基本的には腕時計ではなく、懐中時計を使う)を開いて時刻を確認し、時間を確認すると、約束の時刻まで後30分程あった。
注文の品もまだ届いていないため、ぼんやりと窓から外を眺めて、自身の研究に思考を割いていると、
「あ! アリス来てたんだー!」
カウンターの方から従業員の制服を来た、アリスよりも小さい10歳前後の青みがかった銀髪の幼j…………ゲフンゲフン、少女が走りよってきた。
「リリア…………マスターといいリリアといい、私の事客扱いする気あるの?」
銀髪の少女ーーリリアはそんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりにアリスの隣に座り、頬杖をしていない方の腕に抱きついた。因みに、口ではそう言いつつも、美少女であるリリアに抱きつかれアリスは嬉しそうにしていた。内心では恍惚としていたが。相変わらず何処か残念である。
「えー? だってアリスはそんなこと気にしないじゃん?」
「いや、仮にも客にそれは駄目でしょ」
リリアは一応この店の従業員…………というか、この店の従業員は実質マスターとリリアだけである。リリアは本来働ける様な年齢ではないが、この店の常連にとっては恒例の光景であり、なにより、若い常連は注文の品をトテトテと運んでいくリリアに癒され、年をとった常連は微笑ましそうに見ているのであった。
しばらくの間、腕に抱きついたリリアの頭を撫でていると、
「お待たせしました、いつものやつです」
そう言ってマスターが紅茶とイチゴのショートケーキを持って来たのだった。
「モグモグ。それにしても今日は人いないね」
アリスが言った通り、喫茶店の店内に今客は、アリスだけだった。
別にこの店の人気がないとかではなく、基本的にこの店は、満員になる事は滅多にないが、誰もいないということも滅多にない常連客が多い店なのだ。所謂隠れた名店というやつだ。
もっとも、この店の場所か大通りから外れた一本裏路地に入った所なので新規の客が中々こないという理由もあるのだが。
「まあ、たまにはこんなときもありますよ。それにことなんて滅多にないんですから、少しリリアに構ってやってあげてはいかがですか?」
「そうだー! 構えー!」
「マスターはともかく、リリアは客に対する態度じゃないな…………」
それからしばらくなし崩し的にリリア構っていたアリスだったが、突然顔をあげると目を瞑り黙った。数秒程すると目を開けて、
「リリア、待ち合わせてる人が来たから戻りなさい。後、聞かれたくない事もあるかも知れないから一応マスターも連れてしばらく店の奥に居てくれない?」
「えー、…………分かったよ。その代わりまた今度ね!」
「はいはい」
そう言ってリリアはトテトテとカウンターの方に引っ込んでいった。
それから数十秒後、カランカランとドアが開く音がし、蓮太郎と木更が店内へと入って来たのだった。
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「それで? 話しって何かな?」
アリスは口元に微笑を浮かべて蓮太郎に自分を呼び出した経緯を尋ねた。
木更の方はどうやら蓮太郎に連れてこられただけのようで、蓮太郎に問いかけるような視線を向けていた。蓮太郎は暫く黙っていたが、やがて意を決したかのようにアリスを真っ直ぐに見据えた。
「…………今日のニュースを見たか」
「私は子供なのでニュースなんか見ませーん」
そう茶化すように言い、コロコロと笑うアリスに蓮太郎は続けて問う。
「xx区の町の外側で頭を吹き飛ばされた男の死体が見つかった。警察もその男の素性を掴めていない。頭を吹き飛ばされたんだから時間もかかるだろう。だが、俺にはわかった。あいつは羽賀だ」
蓮太郎の妙に確信を得ているかの様な話し方にアリスは少しだけ苛つきのようなものが垣間見えた。
「へー、面白い事言うね。警察も掴めていない情報を蓮太郎が勘によって入手! 穴だらけ過ぎるでしょ」
「ちょっと蓮太郎君? そんな話し私も聞いてないんだけど? というかなんで私までここに連れて来られたの?」
木更が言う通り、木更がこの場にいる理由はないかのように思える。しかし蓮太郎は最悪の場合、ここでアリスとの戦闘がおこることを考えて木更を連れてきたのだった。戦力という意味合いなら延珠の方がいいかとも思えるが、アリスを慕っている延珠がいきなりアリスと戦えるかと言われると難しいと言わざるを得ない為、木更を連れてきたのだった。
「アリス、お前羽賀との騒動があった日、子供達を連れて帰った後何をしてた?」
「あの娘達を何時もの場所まで送り届けた後、自分の住んでるところに帰ったけど?」
「本当に何も知らないのか? 本当に何もしていないのか? 本当にーー」
蓮太郎が更なる疑問を投げ掛けようとしたとき、アリス吐き捨てるように言った。
「だからなんだっつうんだテメェは。あんなカス死んだ所で困るやつ居んのかよ。それともなにか? 法に反してるとでも言うのか? ふざけんな! その法があいつらみたいな奴等を野放しにしてるだろうが! 私はそんな法なら認めねぇ! 私は…………俺だけはそんな奴等を許さない。必ず報いを受けさせてやる」
蓮太郎達が知ることではないが、アリスは常に赤い目を隠す為に今もカラーコンタクトをつけていた。しかし、蓮太郎達の目に写ったのは血のような深紅の目をしたアリスだった。
「…………なんでお前はそんなにも簡単に人を殺せるんだ。人を殺し続ければ…………」
「…………言いたくはないけど、最悪民警や警察、特殊部隊なんかがあなたを狙うかもしれないわよ」
純粋にアリスを心配する蓮太郎と木更の言葉にアリスは押さえつけたような低い声で、
「何? 私が殺されるとでも? それに俺は
「あ、おい!」
蓮太郎の声に反応する事もなく、アリスは喫茶店を出ていってしまった。
しかし、蓮太郎も木更も会話の内容の衝撃に気を取られ気づくことが出来なかったのだった。アリスの白い髪が一部
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アリスは喫茶店を出るとそのまま野路裏の奥に進んでいき、確実に一般人が近くにいないと判断すると、壁に向かって走り出し、そのまま駆け登った。最後に壁を強く両足で蹴り宙返りをしながら対岸の建物の屋上に着地した。
すると、今度は懐から携帯を取りだし、夏世に電話をかけた。
「…………夏世? 私。ちゃんと準備は出来てる?」
『何回確認するんですか…………ちゃんと終わってますって』
「それならいいんだけどさ…………。最初にヘマしたらカバーするのは難しいから、ちゃんとやるんだよ?」
『わかってますよ。それじゃあ切りますね』
ピッ! っと音を鳴らして通話を切られると、アリスはそのまま携帯をしまった。そのまま走り去ろうとしたアリスだったが、不機嫌そうに頭をかき、少し速めに建物の上を走っていった。
「…………はぁ」
アリスはそのまましばらく走り続けけいたが、やがて苛立ちを隠そうともしなくなり、おもむろに立ち止まった。
すると再び懐を探り、煙草を取りだしてくわえて火をつけ、息を大きく吸い、そして吐き出した。
「…………不愉快だ、殺すぞ」
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「ふぅー、監視とか尾行って思いの外暇だし、帰りたい」
「母さん、聖天子様からの依頼なんだから真面目にやらないと駄目だよ?」
「分かってるわよそれくらい」
喫茶店へと向かうアリスのかなり後方。一人の女性と一人の少女がそのアリスの後を追っていた。聖天子からの依頼を受けた桐谷澪香と桐谷華鈴だ。
「それにしてもいくら探しても見つからなかったのに、普通に二人で出掛けてる時に見つかるなんて、皮肉なものね」
言葉通り澪香と華鈴は聖天子からの依頼を受けて以来、アリスを探し続けていたが、まるで居場所がわからず、早くも依頼は難航していたのだった。
そこで、気分転換でもしようと思い、澪香は華鈴を連れて出かけていたのだが、そこで偶然アリスを見つけたのだった。
しばらく尾行を続けていた二人だったが、喫茶店からアリスが路地裏の奥でいきなり壁を駆け登ったものだから、あわをくって追いかけ、追い付いた頃にはアリスは何処かへ電話していたのであろう、携帯を懐にしまっていた。
再び走り出したアリスを一定間隔を保ちつつ、尾行していたが、突然アリスが立ち止まり、それと同時に華鈴が澪香の服の袖を掴み震え始めた。
「? どうしたの? 華鈴」
「母さん…………帰った方がいいかも知れない。凄く…………嫌な予感がする」
華鈴は澪香と出会う前に色々とあったことによって、とても危険に敏感になっており、その勘については澪香も信用している。
娘の恐怖に震える姿を見てアリスの方を覗き見ると確かに少し寒気がしている気がした上、どこか苛立っているようにも見えた。
娘の為にも「今日の所は帰ろうか」と言おうとすると、アリスが懐から煙草を取りだし吸いだしたので眉をひそめ、「これは尾行なんかより、出ていって止めたほうがいいんじゃないか?」と思ったその時、澪香の強化されている聴覚には聞こえてしまった。
「…………不愉快だ、殺すぞ」
「っ!?」
「母さん!?」
アリスの声が聞こえた瞬間、澪香は華鈴を抱えて即座に全力で離脱を開始した。隠密性なんて考えずに、走り続けた。
(あれは私達だけじゃ勝てないな…………こうなると影胤の申し出はありがたい)
「わわわ! か、母さん? 大丈夫?」
「華鈴…………えぇ、大丈夫よ」
澪香は華鈴を抱き締めながら安心させるために、そして自分にも言い聞かせる様にそう言ったのだった。
アリス「さていつも私の活躍を見てくれてる皆? メリークリスマス♪」
××××「めりーくりすまーす♪」
夏世「メリークリスマス…………って、その黒髪の子供は誰ですか?」
××××「××××だよー!」
夏世「え? なんか聞き取れない上に発音もできないんですけど…………」
アリス「それは夏世が本編でまだ××××の存在を知らないからだね。ついでにあいつからもこの茶番を見てくれてる人にメッセージがあるぞ
『補講ヤバイ 赤点ヤバイ ゲーセンガンダム台パンコワイ メリークルシミマース by虚無龍』
だって。相当追い詰められてるな」
夏世「まあ、あのゲーム依存性患者はほっといて」
××××「そうだね! じゃあ一緒に…………せーの!」
皆「メリークリスマス!」