花を咲かせ、未来に繋ぐ [加筆修正中]   作:まんじゅう卍

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第12話 託した力

 放課後になり、予定通り園子と銀が病室にやってきた。園子は病室に来るなり俺の右手を握ってブンブン縦に振った。

 

「やった、ハルスケ復活だ〜。すごい心配したんだから〜」

 

 園子は目の端に涙を浮かべている。涙を浮かべてくれるのは俺としてもなんだか不思議な気持ちだった。

 

「心配してくれるのは嬉しいけど、痛いから、振るのやめて…」

 

 点滴もまだ身体中に繋がっている。身体中にできてしまった傷跡もそう簡単には癒えることはないらしく、医者が言うにはもう少しはこのままらしい。

 

「園子も元気そうでよかったよ。安心した」

 

「うん、ハルスケのおかげだよ。けど、隊長として後で説教なんだから〜」

 

 ほんわかとした雰囲気で注意してくる園子の様子を見て須美がツッコミを入れる。

 

「そのっちの説教、迫力無さそう」

 

「そ、そんなことないよ〜」

 

 こうして三人が話している間も銀は笑ってはいるがその表情に陰りが見えるのを見逃さなかった。何よりここにきてから一度も声を発していない。元より決めていた事なので一呼吸おいてから俺は声をかける。

 

「…悪い。園子、須美ちょっとでいいから外に出てくれないか?」

 

 俺の意図を汲んだ二人は軽く頷くと病室を退出した。二人がいなくなるのを確認して俺は銀に向かい合う。銀はどうにも気まずそうだった。

 

「無事で良かった。一番心配してたんだから」

 

「……」

 

 銀は黙って俯いている。

 

「腕のこと気にしてるのか?」

 

「それ、も…あるけど、それよりなんでアタシのこと庇ったの。あの時庇わなかったら…」

 

「俺が庇ってなかったら、お前死んでたろ」

 

「っ!」

 

「それに、大事な友達が危険な目に合ってるのに見捨てる奴がどこにいるんだよ」

 

 これは俺の紛れもない本心だった。今まで人との付き合いが苦手だった俺を変えてくれたのはあの三人だ。それに、須美、園子、銀の三人が欠ける事が何よりも嫌だった。自分の命を投げ出してもいいと、そう思えてしまうほどには。

 俺はもう一度銀を見据えた。

 

「他にも理由はたくさんあるけど、こんなものかな。とにかく、気にするなってこと。OK?」

 

 俺がそう言うとまだ銀は申し訳なさを感じているようだったが、病室に入ってきたときよりは表情が軽くなっていた。

 

「変なこと言うかもしれないけど、俺はそんなふうに下を向いてる銀より、常に前を向いて進もうとしてる銀の方が好きだな」

 

「ふへっ!?」

 

 銀は変な声を出したと思ったら急に顔を真っ赤にして、また俯いてしまった。

 

「銀?聞いてる?」

 

「ハルヤ…」

 

「ん?どしたよ、もしかして体調悪くなったりした?」

 

「そんなんじゃない。…アタシお前がそのうち刺されないか心配だよ」

 

 俺は自分で言ったことを振り返った途端過去に前例を見ないほどの羞恥心襲われた。

 

「…それは、夜道に気をつけないとな」

 

 その羞恥心を誤魔化すので精一杯だった。とりあえずしばらくは口を慎もうと思う。

 

「みのさんがいつも通りに戻ってくれて良かったよ〜。ね、わっしー」

 

「ええ、そうね。私もくよくよしてる銀なんて見たくないわ」

 

「ははは、アタシだって落ち込む時は落ち込むんすわ」

 

 銀はとっくにいつもの調子を取り戻していた。なんだかこうして四人で話すのが久しぶりに感じられる。面会時間終了まで、まだ時間があるそうなので時間ギリギリまでいるとのこと。

 

「ハルスケいつ退院できそうなの〜?」

 

「まだ様子見らしいからすぐには無理かな。もう1週間ぐらいはかかるかも」

 

「そっか〜。あ!そうだそうだ、菅野君と西浦君から伝言預かってるんよ〜」

 

 そういや完全にあの二人のこと忘れた。というよりあの二人は何故来てくれないのか…。

 

「なんて言ってた?あの二人」

 

「えっとね〜、『戻ってきたらボコす』だって〜」

 

 なんだそのわけのわからない伝言は。しかもそれはどういう風に解釈すればいいんだ。しかも園子が言うとすっごいふわふわして聞こえる。もしかして怒ってるのだろうか。約束破ったわけだし。

 

「あー、うん。とりあえずわかった。ありがとう、園子」

 

「いえいえ〜」

 

 えへへーと園子は頬を緩ませる。

 

「まだ入院が続くってことは、訓練も出来無さそうね」

 

「普通に考えたらな。それにプラスアルファでリハビリあるからすっげえ面倒」

 

 俺にはこの左腕のオーバーテクノロジーを使いこなせるようにならなければならないという使命がある。いつになるかわからないがやるだけやってみることにする。

 そんなことを考えていたら銀が恐る恐る手を挙げた。

 

「あのー、ちょっといい?」

 

「どうしたの、みのさん?」

 

 改まった口調に園子が心配そうに銀を見る。須美は何故か俺を睨みつける。いや、須美に関しては意味がわからん。お兄ちゃん何もしてませんよ。

 銀は一度深く息を吸った後に、「よし!」と自分の顔を叩いた。一大決心をしたような。そんな感じだった。

 

「アタシ、三ノ輪銀は今日付で勇者引退します!」

 

 アタシユウシャインタイシマス………

 アタシ勇者インタイシマス………

 アタシ勇者引退します……。

 ようやく言葉の意味を理解し終わった時。

 

(ん?あれ?え、)

 

「「「えええええええええええ!?」」」

 

 三人の驚愕した声が病院内に響き渡った。

 

「ど、どゆいうこと銀!お役目はどうなるの!?」

 

 須美が勢いに任せて銀の服を掴んでぐわんぐわんと身体を揺らす。

 

「なんで?みのさん。ここまで私達上手くやってきたのに」

 

 園子の言い方にはさながらアイドルの解散を連想させた。

 

「あああ、違う園子!多分園子が想像してることじゃないから!須美もちょっと止めてくれ」

 

 銀は須美に揺さぶられるなか園子の一人歩きの想像をやめさせる。須美も銀から手を離すとようやく銀は話し出した。

 

「ハルヤが知ってるかわからないけどさ、アタシ前回の戦闘で変身できなかったんだ」

 

「それは須美からさっき聞いた。けど、今なら」

 

 俺は銀の精神的な不安定さはおこがましいが俺に対する申し訳なさや、自分を責めた結果だと思っていた。なら、今ならそうはならないのではないか。

 

「多分無理」

 

 銀はそんな僅かな可能性すらないとキッパリと言い切った。

 

「そんなこと…」

 

「あるんだよ。アタシ、急に怖くなっちゃって。前々回の戦いの時、弟たちの顔がよぎってさ。…我儘だってのはわかってる。勇者だから皆を守るために戦うのは当たり前だって。けれど、急にもう会えなくなるんじゃないかって考えると、身体の調子は万全なのにダメなんだ。足が震えて、動けないや。心が身体についてきてくれないんだよ」

 

 アタシこんなに心脆かったかなあ…と最後ぽつりと呟いた。

 

「銀…」

 

「みのさん…」

 

 須美と園子は銀の話を無言で聞いていた。銀は困ったなと言わんばかりに指で頬をかいた。

 

「アタシ、あの後何回も試したんだ。けれど一回もダメだった。反応もなーんにもしてくれないの。全く困った機械だよな。それに、そもそもアタシ樹海に入れなくなったし」

 

 その後も銀は話しを続けた。

 

「大赦にはもう言ってあるんだ。もう既にアタシの勇者システムを受け継ぐ人を選抜し始めたらしいし」

 

「…俺らに話す前にとっくに決めてたってことか?」

 

「ごめん。多分、話すとさ須美や園子やハルヤに止められるんじゃないかって…それに余計な心配させるのも悪いと思って」

 

「そっか」

 

 樹海に入れないと言うことは、そもそも勇者としての素質がなくなってしまったことを意味している。しかもその事を本人が納得してしまっていた。もう元から俺たちに付け入る隙などなかったのだ。

 銀は自分の意思でこの道を選んだのだ。なら、口出しするというのはお門違いというものだ。

 

「本当にごめんな。こんな途中で情けなくリタイアするつもりはなかったんだけど」

 

 銀は俺たちに対してどう接すればわからなくなっているようだ。そんな時、園子が銀の手を握った。

 

「園子?」

 

「あのね。私は、それがみのさんが選んだ道なら何も言わないよ。それも一つの選択なんだ〜って思えるから。でも、一つだけお願い。勇者でなくなっても、私達と一緒にいて欲しいな。折角ここまで仲良くなれたんだもん。私は離れなくないな。みのさんと…」

 

「そのっち…。銀、私もそのっちと同じ考えよ。私も仮にこの事で銀が私達のそばにいなくなってしまうのなら腹を切る自信があるわ」

 

 いや、ハラキリとか何年前の文化よ。俺は真面目な話をしてる最中に関わらずついツッコミたくなる衝動を堪えた。俺は軽く咳払いをする。

 

「こうやって皆んな言ってるし、それが銀の決断なら多分それが正しいんだと思う。だから、これからもよろしくな。銀」

 

「ありがとう…須美、園子、ハルヤ」

 

 銀は全て話し合えると静かに涙を流した。俺たちに見せる初めての涙だった。かなり本人としては重たい決断だったのだろう。だってそれは、自分は他の三人を見捨てる事と同義なのだから…。折角できた友達を失う可能性すらあったのだ。それがいかに銀にとって辛いか、今なら少しわかる気がした。

 だが、そんな事にはならなかった。園子も須美も銀の選択を一切責めることはなかった。寧ろ肯定した。銀の仲間はとても心優しかった。優しすぎた。園子と須美は泣いている銀の手を泣き止むまでずっと優しく包み続けていたのだった。

 

 

 

 その夜、面会時間が過ぎた頃に一人の来客があった。

 

「こんな時間にどうしたんですか?安芸先生」

 

「貴方に一つお願いがあります」

 

「珍しいですね。先生が俺なんかに頼むなんて。こんな状態ですけどできる事が有ればやりますよ?」

 

「三ノ輪さんについてです」

 

「………」

 

「貴方も既に知っているかと思いますが、彼女は勇者のお役目からおります」

 

「ええ、知ってます。本人から聞きましたから」

 

「そこで彼女にはこの先、新たなお役目として次期勇者の育成に当たってもらいます」

 

「それで、俺にどうしろと?」

 

「貴方もしばらくリハビリの一環として、三ノ輪さんと共に大赦の施設で勇者育成に携わっていただきます。」

 

「……へ?」

 

「学校への支障はありません。それと、これは貴方の身体が本調子に戻るまでの期間です」

 

「要するに、須美と園子とは別メニューでの調整ってことですね?」

 

「そうね。お願いできるかしら」

 

「そう言う事なら、やります。上手く出来るかは分かりませんけど」

 

「貴方ならそう言ってくれると思ってたわ。ならあと、説明をもう一つ」

 

「なんですか?」

 

「このことは外部に漏らしてはなりません。いいですか?」

 

 その言葉に言い知れぬ圧力を感じた。

 もしかしてとんでもない事を引き受けてしまったのではないだろうか。だが、リハビリも兼ねているとのことだしやるだけやってみようと思った。

 その後、先生とは少しだけこの先のことを相談したり他愛のない会話を少々してから別れた。

 

 

 俺が学校に復帰したのはそれからおよそ1週間後。予定通りの退院だ。

 身体の機能は既に勇者システムによって上書きされており、実質、半神半人であると言えた。それにこの勇者システム内に存在する人物の不知火幸人という人物について誰にも話をできていない。

 

 銀の勇者システムは正式に次の代へと引き継がれることとなった。

 だが引き継ぐには選抜で選ばれる必要がある。

 勇者適性有りと判断された30人近くの少女達が大赦の施設へと集められた。

 

 

 時間は過ぎていく。

 

 

 神託は、まだない。

 

 

 

 




やはりこの先の展開を考えた結果、銀の勇者としての出番はここまでにした方がいいと思いました。無理矢理感のある感じですがご了承を。
決して上手い文とは言えませんが読んでくださっている方ありがとうございます。
次もどうかよろしくお願いします
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