花を咲かせ、未来に繋ぐ [加筆修正中]   作:まんじゅう卍

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第2話 初陣

 学校の屋上に4人は立っている。

 眼下に映る周りの景色は完全に変わってしまい、何処がどの建物で屋根かなんてわからなくなってしまっている。

 広がる光景は言うなれば神秘的というのが正しい気がした。人も、建物も全て樹木に変わってしまっている。

 

「これもうどこに何があるのかわからないねぇ。自宅もわからないし全部木だし」

 

「すごいね〜話に聞いていた以上だよ〜」

 

「イネスの場所も分からん。大丈夫だよな。これ終わった後無くなってたりしないよな?」

 

 三ノ輪はあろうことかイネスというショッピングモールの心配をし出した。皆さんご存知イネスはなんでも揃うと評判がいい。イネスに行けばこの世の全てが手に入るとまで言われている。流石にそれは嘘だろう。と思うのは心の中だけに留めておきたい。

 

「こんな時にイネスの心配しなくても」

 

 須美は三ノ輪に思わず突っ込んだ。

 

「まあ、大丈夫だろ。多分。知らんけど」

 

 三ノ輪には須美の声は届いておらず、代わりに答えた俺にため息をついた。何故だか俺がすごく呆れられているらしい。

 今になって周りに気を向ける事が出来た三ノ輪は俺を見るなり怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「え?いたの?…誰?」

 

 おっと三ノ輪さん。ご存知でないと。

 

「失礼な。大赦から聞いてないか?というかさっき鷲尾ブラザーズとか言ってたろ」

 

「そうだったそうだった。ごめん!このとおり!」

 

 そう言って彼女は手を合わせた。この調子だと俺がお役目についてることを本当に覚えていないようだ。なんとも緊張感のない。

 そんな状況を見かねたのか、んんっ。と須美が軽く咳払いをした。

 

「二人とも緊張感がなさすぎよ。でも、そうね。この光景。話を聞いてなかったら混乱していたかもしれないわ」

 

「そうだな。その点に関しては賛成」

 

 須美の中では俺も緊張感がない内訳にいるらしい。それは置いといて、この樹海に関しては珍しく同意を示したい。

 

「見てみて〜。大橋は完全に樹海化しきってないよ〜」

 

 その通りこの街のシンボルである大橋は完全には樹海化しきっていなかった。

 

「いいね!わかりやすくて!あたしたちのお役目は大橋を守ることなんだから、あそこに行けばいいわけで」

 

「神樹様もいるね〜」

 

 乃木が指を刺したのは大橋と真逆の方角。その奥で神樹は煌々と奥に聳え立っていた。

 

(あれが神樹様ねぇ……)

 

 俺に到底理解の及ばぬお役目を与え、俺を悩ませている諸悪の根源。今すぐ伐採してやろうかな。なんて悪い考えが浮かぶ。

 再度思うが本当にどうして俺が選ばれたんだろうか。

 きっとこの疑問はこのお役目がひと段落着くまで俺の中で渦巻き続けるに違いない。

 

「じゃっ…そろそろ!」

 

 三ノ輪の一言で俺は我に返った。

 彼女は携帯端末を取り出した。元々強気な彼女の顔が一層引き締まった。須美と乃木も頷きあい端末を取り出す。

 この状況下でも3人は弱音も愚痴も吐いていなかった。愚痴を口に出してはいないが考えてしまった自分が恥ずかしくなり俺はそれを誤魔化すかのように携帯端末を取り出した。

 これはとても名誉のあるお役目。神樹様もついている。恐ることはない。周りの大人から言われ続けたことだ。つまらない幻想だと思う。恐ることがないならそもそも"守り人"なんて付ける必要がないのだから。

 

(とにかく今はこの戦いに集中しよう)

 

 こんな無気力でだらしなく、何の役にも立たなさそうな人間にも精々身体を張って盾くらいにはなるだろう。

 

(自分が生き残ることは考えるな。勇者を護り通すことだけを考えろ。自分の命はその次だ)

 

 ある種非想的とも取れる覚悟を胸に宿し、取り出した端末を無意識に力強く握りしめた。

 

「よし!行こう!」

 

 三ノ輪の元気な掛け声と共に4人は同時に端末を起動させた。

 

 神樹の力を宿した勇者の姿は、植物を象る。

 

 鷲尾須美は、言うなれば白菊のように美しく清楚の花。

 乃木園子は、言うなればバラのように優雅な花。

 三ノ輪銀は、言うなれば牡丹のように情熱的な風格の花。

 

 護人の姿は勇者とは異なる。花であることには変わりはない。ただ清楚でも、優雅でも、情熱でもない。そんな綺麗な言葉など持ち合わせていない。取るに足らない存在である。

 

 それぞれの中でとても大きな力が宿ったのがわかった。神である神樹から力を与えられているのだ。

 いわばこれは神の力の具現化。この力を扱えるのは四国広しといえどこの4人しか存在し得ない。

 変身を終えた4人は頷きあうと、示し合わせたように大橋へと跳躍した。

 

「さーてそろそろ来るんじゃない?」

 

 移動し、大橋へと着地した俺たちは臨戦態勢のまま敵が襲来するのを今か今かと待ち構える。

 

「あまり出過ぎないでくれよ?気持ちはわかるけど」

 

 三ノ輪はやる気持ちを抑えつけるので精一杯な様子だ。けれど今はそれが頼もしい。こう言う時、率先して指揮を上げてくれる人物は貴重だ。

 三ノ輪の武器は双斧。須美の武器は弓。乃木の武器は槍。図らずもバランスの取れたいいチームだ。

 俺のメインは片手直剣。何処と無く刀のようにも見える。俺は勇者システムの都合上、場合に応じて弓や槍ほかの武器を使用する事を想定され構築されている。そのための訓練をほかの3人より倍は受けてきた。この訓練の時だけは不思議とやる気があったのを今でも覚えている。

 

「三人とも、落ち着いて戦いましょう」

 

 須美が俺を含めた三人に言い聞かせるように言う。それでもみた感じ、三ノ輪も乃木も須美の注意はあまり届いてないように見えた。

 

(須美のやつ冷静なフリして結構燃えてるなぁ)

 

 こんなのでも須美の兄だ。国を守るということに関して須美が燃えないはずがないのは知っている。

 それに須美の弓は上手く機能すれば、大勢がリスクを背負うことなく戦うことができる。敵の力量は分からないがあわよくば橋へ来る前に遠距離で撃破できるかもしれない。

 

(けれどあまりやる気がありすぎるのもな……)

 

 その情熱が空回りすることもある。その可能性を見据えながら、俺も握っている剣を再度握り直した。

 

 そして遂に『それ』はやってきた。

 異質で巨大な物体。そんなものが大橋へとゆうゆうと進んできている。

 

「あれが、壁の向こう側からやってきた敵。バーテックス」

 

 須美の手にも力が入り、待つ装備もカチャリと音を立てた。

 

「不思議な形してんな。身体の横についてるの、あれは…水か?」

 

「飲めるかな〜。どんな味するんだろ〜」

 

「飲むなよ?」

 

「飲まないよ〜」

 

 フラグにしか聞こえない。俺と乃木が呑気な会話をしていると、隣をふわりと赤色の花が舞って行く。

 

「よし!速攻!」

 

 三ノ輪が真っ先に突撃していた。園子はその光景に見惚れていた。

 

「待って!私が牽制して手の内をみないと!」

 

 須美の声が届くわけもなく、援護射撃をする前に既に三ノ輪は敵に到達する。

 

「てやぁぁああ!」

 

 三ノ輪がその双斧の一撃で敵を切り裂いた。

 

「わあ〜すごいよ、みのさん!」

 

 乃木が手を叩いて感激している。

 

「この敵、案外脆いよ!いける!」

 

 三ノ輪は余裕そうに次々に斧を振る。そんな三ノ輪に相手はなすすべなく切られていく。ただ、俺はその様子に懐疑的になった。

 

(……どうして反撃しない。ただやられるためだけにこちら側に来るはずがない)

 

 バーテックスにも殴られ、切られたい願望があるなんて信じたくはない。

 

「ッ!三ノ輪!!」

 

 バーテックスの本体が一瞬歪む。その歪みとともにバーテックスはダメージを受けた箇所を回復させていった。同時にそれまでの雰囲気を一気に反転させる。

 

「うわっと!まずい!」

 

「三ノ輪さん!」

 

 銀は一度間合いを取るために後ろへ跳躍した。しかし、それに食らいつくよくに敵は体当たりを仕掛けてくる。

 須美が動きを止めようと弓を放つが、バーテックスが突撃してきたため軌道から外れてしまった。

 

(その回復力があるから、最初は攻撃を受け続けてたってことね)

 

 俺は先程までのバーテックスの動きを分析しつつ、目の前へと全力で跳躍し、敵の頭の部位と思われる場所へ剣撃を打ち込んだ。

 下手をすれば銀共々吹き飛ばされていただろうが上手く相手を怯ませることができたようだ。

 しかしそれも束の間。相手は再度突進を行なってきた。

 

(速いが、避けれないほどではないっ)

 

 しかし敵は回避の遅れた三ノ輪へ左右の巨大な水球のうち、片方を側に押し付けた。俺は三ノ輪より自分の回避を優先してしまったのである。

 

「しまった!」

 

「…!!」

 

 中から必死に水球を割ろうとするがびくともしない。

 

「待ってろ!今そこからーーーーー」

 

「兄さん!後ろ!」

 

「!?」

 

(三ノ輪を助けることに意識しすぎた!!)

 

 剣で相手の突撃を防ごうとするがそこまで効果は見込めない。空回りする行動の数々。連携も取れず、ここで退場とは死んでも死にきれない。

 

「やあっ!」

 

 諦めきれず、最低限の抵抗を見せようとした時、目の前に一輪の花が咲いた。三ノ輪の花とは別種の美しさ。素直に綺麗だと思った。

 

「あっ…」

 

 無意識のうちに吐息が漏れる。同時に肩の力が自然と抜けていった。

 園子は持っていた槍を盾にして相手の突撃を軽減しただけでなく、小さな身体で巨体を押し返したようだった。そこに加え、須美の援護射撃が相手へと解き放たれる。

 

「すごいな。それ」

 

「えへへ〜。これ盾にもなるんよ〜」

 

「便利だな。乃木!次くるぞ!」

 

 再度敵が突撃を行ってくると思っていた矢先、敵の先端に水が集まっていた。これまでにない攻撃パターンに背筋が粟立つ。

 俺は剣に力を込めた。自信に宿っている神樹の力の一部を刀身に込め、剣を加速させ威力を上げる。

 何度も訓練で重ねてきたこの一連の動きを行い、俺は園子の一歩前に飛び出し、思い切り踏み込んで剣を振るった。次の瞬間とてつもない威力の水流と剣が衝突した。

 

(頭悪いレベルの威力だな!化け物が!)

 

 これでもかと神樹の力を込めた剣は数秒は持ち堪えたがそれでも数秒が限度だった。出来の悪い剣は粉々に砕け散った。

 

「うわっ!!」

 

「きゃあっ!!」

 

 水流の威力はある程度抑えられたが完全には防ぎ切ることができず俺と園子は後方へと吹き飛ばされる。

 すぐさま迎撃体制に移行するのは無理だと判断し、俺は乃木の手を掴むと樹海の陰に身を滑り込ませた。

 

「あー、モロ食らったかと思ったわ。走馬灯が走ったよ」

 

「お陰で助かったよ〜」

 

 見た感じ、お互いそこまでの重傷は負ってないようだ。その事に安堵しつつ、こんな場所で立ち止まってるわけにはいかないと再び武器を作り出した。

 

「生きてるなら何より。反省会は後だ。まずは須美と三ノ輪を助けにいかないと」

 

「そうだね。二人にするのは可哀想だからね〜」

 

「ははっ。そうだな」

 

 俺と乃木が飛ばされた場所近くまで戻るとそこには未だに水球の中に銀が閉じ込められていた。

 

「あ、完全に忘れてた」

 

「ガボガボっ!ガ!」

 

「何言ってるかわからないよ、みのさん〜」

 

「はやく助けないと!でもさっきから割ろうとしても割れないの。どうしたら」

 

 弓の攻撃でダメなら剣はいけるだろうと水球に差し込むが割れない。どういう原理だと頭を悩ます。

 水球が割れずこちらが狼狽えていると三ノ輪は目を思いっきり開き何かを決心し、そして……。

 

 飲み始めた。水を。

 

「「「え」」」」

 

 俺、須美、乃木の信じられないものを目にした時にしか出ない戸惑いの声を置き去りにして、三ノ輪ごくごくごくとあっという間に飲み干していく。

 開戦前に飲むなよと言う会話を三ノ輪にしたわけではないが乃木したばかりだ。そして、瞬く間に三ノ輪は自分を覆っていた水を飲み干してしまった。

 

「神の力を宿した少女に不可能なんてない!ううっ…気持ち悪い…」

 

「そりゃそうだろ…」

 

 俺は自分でも分かるくらい三ノ輪の行動に引いていた。多分、自分なら絶対にやらない。

 

「どんな味がした〜?」

 

 と呑気に聞く乃木。なぜ聞くのか。

 

「なんか烏龍茶のあとにサイダーが来る感じ…飲めないことはない…」

 

「おい、やめろ。仮に乃木が私も飲みたい〜とか言い始めたらもう止められないぞ」

 

「飲まないよ〜」

 

「さっきもやったぞこの流れ」

 

「とりあえず三ノ輪さんが無事でよかったわ。どうしましょう。どうやれば良いのかしら」

 

 須美の言葉で現実に戻される。

 それぞれ考えを張りめぐらせる。三本の矢ならぬ四本の矢だ。何かいい案が思い浮かぶかもしれない。

 数秒もせずに「あっ!」と園子が声を上げる。

 

「ピッカーンと閃いた〜!」

 

 何かを閃いた乃木の目は、言葉通り本当に光っていた。

 

 

 

 乃木の提案は、まず最初に須美が矢を放ちそれを起点にして攻撃を行う。三ノ輪は須美と乃木の後方で待機。俺は木々の陰に隠れ、敵の背中を奇襲する。奇襲が成功した後、三ノ輪が攻撃を始めると言うものだった。

 

「当たって…!」

 

 小さく願いを込めて放った須美の矢は正確に敵に命中する。

 須美の矢が命中したバーテックスはその足を止め須美と乃木の方に向き直った。

 

「よし!気づいた!」

 

 須美の矢によって敵の意識は自然とそちら側へと向かう。

 完全に乃木の作戦通りに物事が進み始めた。須美と乃木の方に意識が向く分、背後はバーテックスといえど疎かになる。

 

「後ろもちゃんと見とけよ!バーテックス!!」

 

 俺は隠れていた場所から飛び出し、神樹の力を再度剣に込める。同時にその力の応用として機動力を上げるため足へと神樹の力を集中させた。殆どの捨て身に近い。俺の目的は敵を多少撹乱させるだけでいい。

 俺は二撃、三撃と次々と斬撃を入れていく。すると、相手の注意は自ずと次はこちらへと向く。いくらバーテックスと言えど2正面攻撃には対応仕切るのは難しいはずだ。

 

「いくよ!みのさん!」

 

「おうよ!これできめる!」

 

 乃木と三ノ輪の攻撃も直撃した。先程まででは考えられない乱撃がバーテックスの身体へと叩き込まれる。その間を縫うように須美の矢が命中し、追い討ちをかける。だが、繰り返しダメージを与えてもバーテックスはその回復力を持ってして耐え続ける。

 そんなバーテックスの理不尽さに三ノ輪は根を上げた。

 

「まったく!キリがないぞこれ!」

 

「こっちだってまだまだなんだから!けど本音はキツい〜!」

 

「その意気よ!二人とも!けど本音はあまり言わないで!」

 

 少女たちはここは通さないと、己の役目を果たすために武器を振り続けた。

 そしてーーーーー。

 

 巨大な敵は来た道を退却しはじめた。

 元々彼女たち勇者の任務は撃退すること。撃破ではない。三人の少女と俺は完全に姿が見えなくなるまでその背を睨みつけ、姿が見えなくなると勝利を確信した。

 

「「「やったー!!!」」」

 

 3人の歓声が樹海に響き渡る。

 抱き合う三人。俺はそれを大きく息をつきながら見ていた。守れた。色々と反省すべき点はあるがそれでも人類を、この街を、なによりこの3人を守れた。

 そのことを確認するたびに喜びを感じた。こんな感覚久しぶり。いや、初めてかもしれない。

 

「いやー、正直怖かったけど、なんとかなるもんだね」

 

「みのさん、あれで怖がってたの〜?」

 

「実を言うと、私も…正直不安だった…」

 

 今だからこそカミングアウトしている三人。覚悟は決まっていても少女なのだ。死と隣り合わせの緊張感はどうにも拭い切れるものではないらしい。最初の軽口はもしかしたら、そんな緊張感を打ち消すためのものだったかもしれない。

 

「まあ、勝てたんだからオッケー!」

 

 喜びのあまり飛び上がる三ノ輪。

 

「三ノ輪。あんまりはしゃぐと傷口開くぞ」

 

「へへっ!あたしはそこまで柔くないぞっ」

 

 三ノ輪が手を差してハイタッチすると乃木も「私も私も〜」と手を差し出してハイタッチをした。その後、銀と園子は二人で声を上げながら2人で喜びを分かち合う。

 

「混ざらなくていいのか?」

 

「あっ!いや、私は…その…」

 

 須美は2人の雰囲気に置いてけぼりを食らっているのか、少し気まずそうに2人を見つめていた。それとも自分の攻撃が殆ど通じなかった事を気にしているのか。俺にはその両方に思えた。

 

(もう少し気を楽に持って良いと思うんだけどなあ……)

 

 反省をするのも良いが、喜ぶ事も大事な事だと俺は思う。

 はっちゃけると言う事を我が妹は知らないらしい。なんて不器用な子なんだと思いながら、俺は須美に笑いかけた。

 

「助かった」

 

「えっ?」

 

「須美のおかげで何回か攻撃を喰らわずに済んだよ。ありがと」

 

「珍しいわね。褒めたって何も出ないんだから」

 

「はいはい。ほれ、タッチ」

 

「……全く。兄さんは」

 

 俺と須美の手のひらが重なり合い、パンッと小気味良い音が鳴った。その音を聞きつけたからか、三ノ輪がこちらに駆け寄ってくる。

 

「鷲尾兄も!ほら!」

 

「ん?おう」

 

 三ノ輪に言われるがままに手を出すと、三ノ輪はそこに力いっぱいに自分の手を叩きつけた。

 

「痛った!?」

 

「へへっ。そうだ。せっかくなんだし、アタシの事名前で呼んでくれよ。その方が仲間っぽくていいだろ?」

 

「……まあ、確かに。んんっ。よし、それなら銀。改めてハイタッチ」

 

「おっ、良いね!って痛っ!?」

 

 俺はお返しとばかりに三ノ輪……もとい、銀とハイタッチする時に力をめいいっぱいに入れて叩いた。

 自分の手のひらに息を吹きかける銀を横目に、俺は乃木の方に目をやった。だが、乃木は乃木で須美と何やらやっているので今は一旦置いておいた。

 そんな事をしている間に樹海化が解けていく。

 

 

 この勝利は人類において重要なものとなった。

 決して倒したわけではない。しかし人類にとっても、戦う少女達にとっても大きな一歩となった。

 しかしまだ誰も知らない。進み続けたこの先に待ち受ける試練を。

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