花を咲かせ、未来に繋ぐ [加筆修正中]   作:まんじゅう卍

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ごめんなさい。第三幕ですが、なかなか書いてて辛いので第四幕と並行しながら進めていきます。というかネタが思いつかないんです。
のわゆの原作を書いた先生には尊敬の念しかありません。朱白先生に拝。
それでは箸休め程度に書いた第四幕、どうぞ


第四幕 大満開 –another world–
第一話 摩訶不思議な少女


「あのなあ……銀…」

 

「なんだい?ハルヤ」

 

「俺は一つだけお前に言わなければならない事がある。困ってる人を助けるのは当然だと思う。それが正しいって事もわかる。けどな、銀。どうにもならない事だってあるんだよ」

 

 俺は自室のベッドに眠っている一人の少女を見た。

 まだ年はかなり幼い。おそらく一桁。辛うじて十代か。それに、それ以上に言い方は悪いが大きすぎる欠陥がある。

 それはーーーーー

 

「……記憶喪失はどうしようもないって」

 

「……えへへ」

 

困っている人を無視できない。それがとんでもない形でこんな事になろうとは想像がつかなかった。

 

 

 

「と言う訳なんですよ」

 

 俺の部屋に風先輩と樹に来てもらって作戦会議。というか、単純に助けを求めた。

 銀は寝返りをうった記憶喪失の子に対して毛布をかけ直している。

 その姿は何処か子供を気遣う母親のように見えた。

 俺はその姿に見惚れるのもそこそこに風先輩と樹に向き直った。

 二人とも真面目に考えてくれているのかウンウン唸っている。

 

「見捨てるみたいで嫌だけど、こればっかりは私たちの手には負えないと思うわ」

 

「ですよねえ…」

 

 幼稚園児の相手はした事は何度もあるがそれでも記憶喪失の子などいた事がない。

 

「それよりも晴哉さんと銀さんはどうして記憶喪失だと思ったんですか?」

 

 樹がごもっともな質問をする。

 確かに俺と銀はその辺りの説明をせずにいた。何という失態。

 

「簡単に言うと道端に倒れていてさ。住んでる場所と名前、年齢不詳」

 

「それ、あんたと同類なのでは?」

 

「一瞬思ったんですけどね。まあ、恐らく無いかと」

 

 俺は一口お茶を飲んで喉と唇を潤す。今日は特に緊張などはしてないがやけに喉が乾くのだ。それにしても俺、いつもお茶飲んでるな。

 

「警察の方に任せた方が良さげですよね」

 

「そうね。下手すれば二人とも誘拐犯に成りかねない訳だし。早めに行くのが正解ね」

 

 俺も風先輩の意見に同意だった。流石に手に負えない事態というのもある。世界の滅亡を阻止したのを考えればもしかしたら今回の事は安い事なのかもしれないが。

 

「それともう一つだけ聞いていいかしら」

 

「何ですか?」

 

 風先輩が何処か気まずそうに聞いてくる。

 

「晴哉と銀の関係はもう知ってるけど、あんた達同棲してるの?」

 

 俺と銀は互いに見つめ合う。

 

「してないですけど」

 

 俺が銀の代わりに代弁者として答える。でも、確かに言われてみれば部屋が隣というのもあるが流石に入り浸りすぎなのかもしれない。夜ご飯を一緒に食べてる時点でかなり怪しい。

 

「私は晴哉さんと銀さんの関係、見ててもとても羨ましいですよ」

 

 樹にそう言われると妙に照れ臭かった。それなりに月日が経っているとは言えまだまだ恥ずかしい事は恥ずかしい。そんな感情を誤魔化すように俺は軽く咳払いをして脱線した会話を元に戻す。

 

「それはいいとして。とりあえず警察行きますか」

 

「待ってくれよハルヤ!」

 

 俺が立ち上がった時、突然銀に服の裾を掴まれて俺は止められた。

 

「ど、どうした急に」

 

「あの子、まだもう少しあのままにしておいちゃ駄目…かな?」

 

「……もしかしたらあの子の保護者が届け出てるかもしれないぞ?それなら早めにした方がいい…と俺は思う」

 

 何故銀があの子に固執するのかはわからない。何か特別な理由でもあるのだろうか。困っている人を放っておけない銀の普段の姿からすればその発言はどこか珍しいもののように感じた。

 そんな時、ベッドで寝ている少女の顔を樹が覗き込んでぽつりと呟いた。

 

「晴哉さんに…似てる?」

 

「んな馬鹿な」

 

 俺はそんな事あるわけがないと樹の隣から寝ている少女を覗いた。

 …いや、そんな事はない。けど、自分で言うのもなんだが雰囲気が似ていた。

 それこそ、目元というかそこら辺は……銀に近い。それこそ何がどうしたらそんな現象が起きるのか説明をしてほしいところである。

 何故か銀が戦慄した表情でこちらをゆっくりと向く。

 

「……浮気!?」

 

「な訳あるか!!」

 

 そもそも仮にそうだとして、恥ずかしいが俺と銀に似ているのならば浮気も何もない。

 

「ん?あれ、この髪留め…」

 

 銀が少女の手に髪留めが握られているのを見て首を傾げた。

 俺もその髪留めを見る。髪留めはかなり劣化してしまっているが見覚えがあった。

 だってそれは紛れもなくーーーーー。

 

「アタシがハルヤから貰ったものだ…」

 

 銀にも今現在進行形で同じものが付けられている。

 ここで風先輩がある結論を出す。

 

「保留にしましょう。色々と」

 

 なんだか今回も不思議なことに巻き込まれたと。この場にいる四人は頭を抱えるのだった。

 

 それからある程度のおもてなしをしてから風先輩と樹は何か考えとくと言って帰っていった。他人のことなのにここまで真摯になってくれる二人には頭が上がらなかった。

 その後、まだ眠っている少女を尻目に俺は銀と雑談に興じていた。

 

「銀の不幸体質ってこんな超常現象みたいな事まで引き起こすのか?」

 

「アタシだって人の範疇に収まる事しかやってなかったはずなんだけど」

 

 銀は珍しくため息をついた。

 

「疲れたのか?」

 

「そりゃね。特徴だって樹に言われなければ気づかなかったよ。それに手に隠れてたけどあの髪留めが出てきたら…。まあ、そう思っちゃうよね」

 

「すげえ既視感あるもんなー。あれ」

 

 それこそ俺が少し前にあげたばかりの髪留めだ。見覚えがないわけがない。

 

「でも、そう決めるのも早計か」

 

 今まで何度も何度も奇妙なことに遭遇している。そのせいかある程度耐性が出来ているらしく、最初に比べれば既に落ち着きを取り戻していた。

 最も、俺自体が奇妙な存在である事には変わりはない。

 銀はうなじの当たりを軽く掻きながら照れ臭そうに言う。

 

「こんな事言うのも恥ずいけど、アタシがあの子のこともう少し見てたいって言うのはそういう理由だからじゃないかと思うんだよね」

 

「なるほどな…。とりあえず俺、大赦や警察行って情報集めてくるよ。普通なら捜索願い出されてそうなくらいだからな」

 

 俺は椅子から立ち上がる。とにかく必要なのは情報だ。そうすれば、自ずと自分達が勝手に立てている仮説は証明されるはず。

 俺は銀に声だけかけてから、外に出た。

 

 

 晴哉が外に出て行った後、アタシは今一度近づいて、この記憶喪失の子を見る。

 

「やっぱり似てるなあ…」

 

 アタシは勝手に自分の頬が緩んでいる事に気がついた。

 

「いい加減起きろよ。じゃないと話が進まないじゃん」

 

 軽くこの子の頬を押してみる。触り具合は悪くない。頬を押された子は苦しそうに少し唸って寝返りを打った。

 

「へへっ。可愛いやつめ」

 

 アタシは晴哉が戻ってくるまで、一人でこの子を弄って遊んでいた。

 

 

 日が落ちるくらいに俺が家に戻ると銀も少女と共に眠っていた。

 少し待たせ過ぎただろうか。反省。

 それでも俺の足音が聞こえたからか、銀はゆっくりと身体を起こす。

 

「ごめん。眠っちゃってた」

 

 銀は小さく欠伸をしてから目を瞬かせ、俺の方に向き直る。

 俺は眠たそうにしている銀に一応報告だけする事にした。

 

「結論だけ言うと何もなかった」

 

「大赦も何も?」

 

「乃木や鷲尾が何も知らなかったから確かな情報だろうな」

 

 俺は眠っている少女の方をみる。それにしてもいつになったら起きるのやら。園子ばりに寝ている気もしなくもない。

 

「いつ起きるんだろう」

 

 同じことを思ったのか、銀も小さくぼやいた。

 それを聴きながら俺は銀の方へと向き直る。

 

「今日どうするよ。一旦家…とは言え隣だけど、戻るか?一日くらいなら俺も見てられる」

 

 銀は少し考えた後

 

「じゃあ、お願いしようかな」

 

 と申し訳なさそうに言った。

 

「了解」

 

 それならば頼まれたからにしっかりと見ておこう。

 俺は銀を玄関まで見送った後、今一度彼女の前に立つ。

 

「いい加減狸寝入りはやめとけよ」

 

 寝ていた筈の少女はすぐに身体を起こした後、気まずそうにこちらを見る。

 

「……取って食べたりしませんよね?」

 

「生憎俺とてカニバリズムに走りはしないさ」

 

「それならば良かったです。ちょっと目が覚めたら知らない方が二人もいたので、怖かったんですよ」

 

「そりゃ悪かったな」

 

 受け答えの仕方が本当に最低年齢一桁の少女かどうか怪しいが、そこは無視してとりあえず俺は話だけ聞く事にした。

 

「名前とか、さっき道端で倒れてた時は何もわからないって言ってたが…今はわかるか?」

 

 少女は首を何度も何度も傾げて考え込んでいる。

 そして小さく頷くと俺の方をみた。

 

「わからないので名前付けてください」

 

「……はあ?」

 

「どれだけ考えても年齢以外出てこないので」

 

「歳は出るのかよ…。何歳なん?」

 

「11です」

 

「………嘘も大概にしろよ?」

 

 俺は少女の頬を軽くつねった。こちらとて、あまり時間もかけたくない。なかなか人間として終わってると思うが読みかけの本が俺を待っている。

 

「嘘じゃないですって!お母さん譲りなんです!この身長の小ささは」

 

「親はわかるのか?」

 

「名前はわかりませんよ?」

 

「言ってることチグハグだぞ。本当に大丈夫か?お前」

 

 俺は小さくため息をついた。確証を得られると思ったが、そう上手いこと行かないらしい。

 

「私はいたって正常です」

 

「記憶喪失の人間をいたって正常とは言わないんだよなあ…」

 

 誇らしげに胸を張っている少女にもう一度大きなため息をついてから、俺は立ち上がった。

 

「腹減ってないか?ずっと寝てたわけだし」

 

「すいて…ますね。うどんください」

 

「少しは遠慮ってものをしてくれ。作るけど」

 

 俺はその遠慮のなさに先程隣の部屋へと帰って行った人物を想像した。

 別に嫌だと言うわけではない。寧ろ変に遠慮されるよりかはマシだ。

 それにしてもうどんを要求するとは。この子も生粋の香川県民なんだろうなあと謎に感慨深くなったのだった。

 

「75点です」

 

「75点満点って事にしておくよ」

 

 全て食べ終わってから点数付けをしてくるとは。厄介な少女に出会ったものだ。

 

「でも、とても美味しかったですよ。知ってる味です」

 

「そりゃ市販のつゆ使ってるからな」

 

 俺は食べ終わったのを確認してから皿を回収した。

 皿を洗いながら彼女に問う。

 

「名前だけど、思い出すまで『美遊』ってのはどうだ?」

 

 目の前で椅子に座っている少女は首を傾げる。

 

「誰の名前?」

 

「お前さんの名前だ。他に誰がいるんだよ」

 

「おおー、確かに」

 

 俺は思った。こいつ、かなり阿保なんじゃないか。と。良い言い方をすれば天然気質という事なのだろう。

 

「『美遊』ですか。一時のものかもしれないのに立派な名前つけますね」

 

「じゃあなんだ。ミドルネームでも付けてやろうか?」

 

「それはそれで面白そうなので有りです」

 

 何処かこの少女に会話を引っ張られてる感覚を覚える。

 なんというか、会話を自分のペースに持っていけていない。

 

「それで美遊。明日からどうするんだ?俺もずっと家にいるわけじゃないし」

 

 実際問題、明日も普通に学校だ。本来なら美遊も学校がある筈だが、今の様子ではそれすらも難しいように思える。

 

「お役目ですか?」

 

「義務教育を言い換えると、そうも取れるな」

 

 どうしてその言葉を?と聞きたくなる衝動を抑え、何とか適当なことを言ってはぐらかす。

 多分だが何の意味もないのだろう。

 

「そう言えば私、学校ってどうしてたんだろ」

 

「俺に聞かれても困る」

 

 俺はひとまず自分が寝るようの布団を押し入れから引っ張り出す。片腕が無いので、これがかなり手間がいる。新しい義手、園子に頼もうかな…。

 なんて考えるのも程々にして、美遊の居場所のことは何処かで妥協しておかなければならないかもしれない。家にずっと居るのも退屈なのではないだろうか。

 それに知らない土地?で一人でいるのも苦しいだろう。ならば、一応匿える場所もある中学校に来るのが良いかもしれない。

 というわけで俺は早速提案してみた。

 

「……来るか?中学校」

 

「私行っても大丈夫なんですか?」

 

「とは言っても部室だからな。移動は制限されるけど、何もないこの部屋よりマシだと思うぞ」

 

 布団を敷き終わってから美遊を見ると、美遊は目を輝かせていた。

 

「もしかして勇者部ですか!?」

 

「そうだけど、何で知ってるんだ?」

 

 やはり美遊の記憶は肝心なところが抜け落ちてしまっているのか、美遊は首を傾げる。

 

「あれ?何ででしょう。誰かから聞いた記憶なんですよね。それでとても面白そうだなって思った記憶はあります」

 

「…まあいいや。じゃあ明日はそういう事で。あまり人目につくのも困るから遅刻してくか…」

 

 俺は頭の中に明日の予定を組み立てていく。やはり授業が始まった後くらいに行くのがベストか。それと風先輩あたりに部室を開けてもらわなければならない。後で連絡だけ入れておこう。

 そんなことを考えていると玄関の鍵が開いた音がした。

 さっき閉めた筈なんだけどなあ…。

 というかこの部屋の合鍵を勝手に作り、保有している人間は一人しかいない。

 

「ごめん。やっぱり気になったから、来ちゃった」

 

 既に風呂に入った後なのか、パジャマに身を包んだ銀が部屋に戻ってきた。責任感の強さからかそれとも巻き込んでしまった事への申し訳なさからなのか。どちらも銀らしいと言えば銀らしかった。

 

「ハルヤ、まだあの子寝て…って、起きてるじゃん!何で教えてくれないの!?」

 

 銀が俺の肩を掴んでぐらぐら揺らす。脳内がぐちゃぐちゃになる感覚を覚えた。要するに酔った。

 

「教えるも何も目が覚めたの2時間と少し前だぞ」

 

「普通はアタシにも伝えるものでしょ!」

 

 銀は俺の容態なぞ知らんとばかりに身体を揺らしまくる。

 もう俺は諦めて、銀が満足いくまで揺らされ続けた。

 

「あはははは!」

 

 俺と銀の様子を見て美遊が笑う。俺と銀は美遊の方向を見る。

 何が面白いのか美遊は笑い続けている。それでも、ここに来て初めて見せる笑顔だった。

 美遊はひとしきり笑い終わると満足げに頷いた。

 

「お二人を見ていると、とても懐かしくて安心します」

 

 笑った顔は銀にとても似通っていた。

 正直、この辺りで結論付けても良いかもしれない。

 どんな理由かは知らない。多くの摩訶不思議な体験をしてきた方だが、それでも今回のことはトップレベルで難解な気がする。

 美遊の父親は確定はできない。だが、母親は三ノ輪銀である事に変わりは無さそうだ。そこまで考えて俺はふと思った。

 髪留めのことさえ立証できれば完全に証明終了となる。

 

「なあ、美遊。その髪留め、誰から貰ったんだ?」

 

 美遊は肌身離さず持っている劣化してしまった髪留めを見た。

 

「お母さんです。あれ?お父さんだったかな。でも、大切な人に貰ったものだから私に託すって。あ、顔は思い出せませんけど、恥ずかしそうに『私の勇気のバトン』って言ってましたよ」

 

 微妙に恥ずかしい話を聞いたような気がする。銀も俺から顔を背けている。俺も恥ずかしさを誤魔化すように咳払いしてから美遊に向き直った。

 

「そっか。ありがとう。教えてくれて。それ、大切なものなら無くすなよ?」

 

 美遊は小さく笑って「絶対に無くしませんよ」と言った。

 それから大切そうにそれを眺めていた。

 

「ところで、みゆうって誰?」

 

「私の仮名だそうです」

 

「いかにもハルヤがつけそうな名前だなあ」

 

 銀がニヤニヤしながら俺を見る。

 

「ほっとけ。ネーミングセンスが無いのは承知してる。単純に……単純に、俺は誰から連想したんだ?」

 

 また俺は、以前のように喉に何かが引っかかったような感覚を覚えた。

 この唐突に何かを思い出そうとするたびに襲いくる不快感は何なのか。

 俺が一人、思考の世界に入り込んでしまっている間に銀は今更ながらの自己紹介をしていた。

 

「そういや、アタシの名前言ってなかったね。アタシは三ノ輪銀。あっちで一人考え込んでるのが鷲尾晴哉。よろしく!美遊!」

 

 美遊は銀の自己紹介に嬉しそうに大きく頷いた。

 

「よろしくお願いします!お父さん!お母さん!」

 

俺は吹き出した。銀は半ば放心状態になっている。

 

「お前、絶対に記憶戻ってるだろ!!」

 

 美遊は「私何か言いました?」と言わんばかりの表情を浮かべ、キョトンとしている。

 この日は結局、多くの謎を残したまま美遊という一人の少女を受け入れることから始めざるを得なかった。

 それにしても本当に何が始まるのやら。

 俺は一人天を仰いだ。

 

 朝9時。もう既に学校は始まっており、今から行けば二限目には間に合いそうなジャストな時間帯だ。銀には夏凛と共に先に行ってもらっている。

 ちなみに、夏凛は美遊の事を知らない。後、友奈も。

 

「…服の事は何も考えてなかったな。キツく無いか?」

 

 美遊は昨日着ていた服は洗濯をしてしまったので事実上、着替えは一枚もない。なので銀が何故か持っていた神樹館の制服を着せている訳なのだが。久しぶりに見る神樹館の制服は新鮮に映った。

 

「私服よりかは制服の方が色々と面倒事が避けられる…とは思うが」

 

「成せば大抵何とかなるものだよ。お父さん」

 

「11歳にお父さんと呼ばれる14歳がいてたまるか」

 

 昨日の夜からタガが外れたのか、それとも本能的にそう呼んでしまうのか。あれから俺と銀の事を「お父さん」「お母さん」と言うのでもう好きにさせる事にした。それに、特に気になりはしなかったが急に敬語がタメ口になった。それが吉と出るか凶と出るか。神のみぞ知るとはまさにこのことか。

 

「なんか遠足みたいだな」

 

「学校見学会だよ」

 

「どっちでも良いけどな。そろそろ行くか」

 

「うん!行こう行こう!」

 

 やはりこの天真爛漫な笑顔は制服も合間ってか神樹館の時の銀を彷彿とさせた。そう思うたびに、この今自分が見ている事が現実だと直視させられている気分になる。

 俺はこの先の事に不安を覚えながら美遊と共に玄関をくぐった。

 

 これから始まるのは『偽』の親子の物語。

 これは、失われた時と、失われた人を取り戻すための『父親』と『母親』、『娘』の三人の。そして『勇者』の戦いの軌跡。

 

 その先に新たな『絶望』が笑みを湛えて待っているとも知らずに……。

 

 




さーて、我ながら奇妙な文章が完成したわけですが。
一応もう一度補足だけしておくと、第三幕の方が完結しないと、色々と回収できない伏線(笑)があるのでそちらを優先させます。
本当に今回は暗すぎる文章を書きまくり、心がすり減ったので少しでも明るい内容を書こうとした結果がこれです。
見てくださるのなら、第三幕、第四幕をこれからもお願いします。
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