花を咲かせ、未来に繋ぐ [加筆修正中]   作:まんじゅう卍

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第6話 リーダー

 二体目のバーテックスを撃退した次の日、怪我の痛みに耐えながら俺と園子は学校にある庭で、蟻の行列を眺めていた。

 

「……」

 

 俺はただ無言で蟻を眺める中、園子は「ありさーん。元気〜?」と蟻に今日の体の調子を聞いていた。それが楽しくて仕方ないらしい。

 遂に手まで振りだした。

 

「…失礼かと思うが、それ楽しい?」

 

 俺は好奇心が勝ってしまい、捉えようによっては悪く聞こえてしまう聞き方をしてしまった。

 

「楽しいよ〜?どうして〜?」

 

 俺の懸念も他所に園子はいつも通りの雰囲気で答えた。少し安心した自分がいる。

 

「いつもここで休んでるのか?」

 

「うん、そうだよ〜。いつもってわけじゃないんだけどね。ここ、私のおすすめスポットなんよ〜」

 

 そう。そもそもなんで俺と園子がこうしているのかと言うと、一人ここで空を見ていた園子が目に写ったため、気になり俺が声をかけたからだった。

 

「昼寝をするにはもってこいってわけか」

 

 確かに心地よい場所ではある。俺も気を抜いたら眠ってしまいそうだ。

 

「私、ハルスケと二人きりで話したの初めてかも〜」

 

「そういやそうだな」

 

 というか既に俺のことはあれ以来ハルスケで定着してしまっているらしい。馴染みすぎてて嫌がってた自分はいつの間にか消えている。

 

「他にもこう言う場所あるのか?」

 

「あるよ〜。また今度案内してあげる〜」

 

「時間があったらお願いするよ」

 

 いつになるかはわからないが、そう言う日があってもいいだろう。不思議と人を疑うことしか出来なかった俺が、園子の事はすんなりと受け入れられている。須美や銀も同様だ。その事実が胸をくすぐった。

 

(不思議なこともあるもんだ)

 

 俺と園子は蟻から見るものを空に浮かぶ雲に変え、ただボーっ空を眺める。暫く経った後、見慣れた2人がこちらに手を振っているのを視界に捉えた。

 

「あれ?あの二人してるんだ?おーい!園子!ハルヤ!」

 

 2人でくつろいでいたところにピンポイントで銀と須美がやってきた。何か先生からの頼まれごとでも始末し終えた頃だろうか。

 

「何してたのかしら?二人で」

 

「蟻さんと、空見てたんよ〜」

 

「蟻さんと空を?」

 

「俺を蟻にするなよ。人で居させてくれ」

 

 その後、須美と銀も園子の隣に座り、空に目を向ける。

 

「わ〜、あの雲、わっしーの弓に似てる〜」

 

「そうかしら?こうやってそのっちの閃きは鍛えられているのね…」

 

 園子は自分の隣に須美と銀がいることがとても嬉しそうだった。

 俺たち4人は時間が許す限り、ここにいた。

 

 初夏の風が瀬戸内海から舞い込んでくる。放課後四人は図書室にいた。今日は銀を囲んでの勉強会。銀の成績が芳しくないと言うことで須美がつきっきりで教えている。

 

「なぁ、勉強より先にイネスいかない?あそこのフードコートがアタシを呼んでる」

 

「駄目よ銀」

 

「そうだぞー銀」

 

「ハルヤもやりなよ。一人は辛いぜ?」

 

「…須美、思う存分励んでくれ」

 

「あ、逃げた」

 

 渋々銀は再び資料に目を落とす。ちなみに園子はと言うと。

 

「zzz…なんでうどんってあんなに美味しいんだろう〜zzz」

 

「幸せそうな夢を見ているようで何より」

 

「寝てる園子は放置していいんスか先生」

 

「彼女は頭いいのよ…見えないけど」

 

「おのれ天才少女め…なら、そこで本を読んでる先生のお兄さんはいいんスか」

 

「俺をあまり舐めてもらっては困るな三ノ輪さんよ」

 

「そうね、いつも怠けてるけど兄さん、国語と歴史はクラストップレベルよね」

 

「加えて言っとくと、算数は小4で諦めた。理科も全くわからん」

 

「えっ、そうなの?じゃあ二科目だけなら園子より上?」

 

「結果だけならな」

 

 園子の場合、ほとんどの確率で回答欄がずれていたりで0点になったりと模範解答をしているにも関わらず不正解になることが多い。そして俺の場合、必ず漢字ミスを一個したりとつまらないミスをして100点を取ることはそうそうない。

 

「そのっちは色々と紙一重なのよ」

 

「ハルヤ、アタシが思ってたより賢かったんだな…」

 

「お前は俺のことなんだと思ってたんだ…」

 

「でも銀、あなた理系科目なら兄さんより上よ」

 

「え!マジ?」

 

 すごい食いつかれた。テストの結果ってそこまで重要なのだろうか。

 とりあえず俺は理系科目の酷さを証明するためにカバンを漁る。そして、一つの小テストの回答用紙を銀の目の前に差し出した。ただ、俺はこの点数は特に誇れるものでもない。何故ならーーー。

 

「5点…だと?」

 

「そこまで驚かなくてもいいだろ。照れる」

 

「また訳のわからないことを…私としてはもう少し不安に思って欲しいわ…」

 

 須美は俺の方を見てため息をついた。ある程度勉強してこれならもう仕方ない気がする。最近少しだけ勉強に対する意欲も湧いてきてはいる。ただ面白いとは思わない。義務的なものだ。

 

「将来はめっちゃ不安だぞ?就職できないんじゃないかと毎夜毎夜うなされてる」

 

「嘘ばっかり」

 

 バレたか。

 こんなやりとりをしている間も園子はすやすやと寝ている。

 

「みのさん…だいすき〜…zzz」

 

「ど、どんな夢見てるんだこやつは。ははは、大好きとか言われると照れるな」

 

 銀は園子の寝言に照れていた。

 

「私は?ねぇそのっち私は?」

 

「わっしーは…zzz………」

 

 え、ちょ、なんか言ってやれよと突っ込みたくなるくらいには自然にフェードアウトしていった。なんとかフォローをしなくては。ここで兄の威厳を見せつければ須美の俺に対する尊敬の念も生まれるかもしれない。

 そんな浅はかな考えと共に、俺は須美に向けてサムズアップ。

 

「俺は須美のこと好きだぜ?」

 

「やめて」

 

 全力で拒絶された。泣きそう。何で俺が寧ろショックを受けないといけないのだろうか。

 続いてエントリーNo.2 三ノ輪銀による須美への励ましの言葉が送られる。

 

「アタシは好きだぜ?須美のその拗ねた顔も」

 

 こちらに対しては須美は少し照れ臭そうだった。

 銀がドヤ顔をしてこっちを見る。さながら「勝った」と言わんばかりの見事な表情だった。

 

「ついでに俺は?」

 

 せっかくなので流れで園子に聞いてみた。

 

「ハルスケは…お兄ちゃん…zzz」

 

「ただ事実を伝えられたんだが?」

 

 須美に目を向けると、須美は頬を膨らませている。

 

「答えてくれただけマシよ」

 

 年相応に可愛げのある表情を浮かべながら、須美は拗ねていた。

 

「っと…そろそろ訓練だな」

 

 図書館の時計を見ると時刻は既に訓練場への移動時間となっていた。果たして学力はついたのかはともかくとして、勉強から解放された銀はどことなく嬉しそうだ。

 

「そんじゃ、今日もしっかりと鍛えますか!」 

 

「ええ、しっかり鍛えましょう」

 

 

 それから四人は訓練場に移動した。訓練場は大赦支部にある。

 勇者としての実戦が始まると、大赦は四人を本格的にバックアップしはじめた。大赦は全ての恵みである神樹を奉る組織である。今では総理大臣よりも、発言力が高い。

 当初、訓練は個人個人のものだったが、今の訓練では連携を高めるものへと変わっていた。しかし、俺だけはその訓練には参加しなかった。というよりできなかった。

 ただの訓練でも身体は崩壊するのか、それとも一定時間使用すると身体が崩壊するのか未だに自分も大赦も判別がつかなかったからだ。

 

 それに、もう既に右腕はヒトではなくなっていた。

 

 いかんせん勇者システムを使用していない状態で右手に意識を集め、想像するだけでモノを作れてしまう状況になっていた。

 普通に考えれば異常だ。俺はそれを悟られまいとかなり気を遣った。

 多分ボールとか投げるととんでもない速さで飛んでいくので下手なことはできない。

 このシステムがはっきりとするまで俺は基礎体力の向上に努めることにしたのである。

 

 3人が連携を取りながら敵へと前進する訓練を見届け、それが終了すると四人とも先生の前に集まる。

 

「お疲れ様。ずいぶん動きが良くなってきたわね」

 

 先生は労いの言葉をかけてくれた。

 

「それと忘れていたのだけど一応、便宜上リーダーを決めておかないといけないの」

 

 そういやリーダーいなかったこのグループ。チームとして普通に考えればあり得ないことではあった。

 須美が銀の方を見る。

 

「アタシはパス。柄じゃないんで」

 

 銀ははっきりと無理だと意思を示した。俺は銀のこういうところは嫌いじゃない。1番このグループでしっかりとしているのは須美だがリーダーには向いていない気がした。責めているわけではない。役割にも相性というものがある。銀は誰かに指示を出すより、自由奔放にやらせておいた方がその力を発揮することだろう。

 そして、多分須美は自分がリーダーだと思っていると俺は推測している。真面目で、実直なものがリーダーになるものだと考えたくなる気持ちもわかる。だが、実のところそんな人はリーダーには向いていない。特に戦場での指揮となると固定観念に縛られかねないのだ。

 

(ちょいと可哀想だが……)

 

 俺は挙手をして、自身の考えを先生に言った。

 

「俺は園子がいいと思う」

 

「えっ、私〜?」

 

 まさか園子も自分の名前が出てくるとは思わなかったのだろう。目を何度も瞬かせている。

 

「理由はあるの?」

 

 先生は俺に問う。

 

「園子は普段ふわふわしてますけど、ここ1番の発想と判断力はこの中で1番高いと思います」

 

 須美はずっと無言で俺の話を聞いていた。少しの沈黙。須美は自分の中で何か納得いったのか「私も兄さんに賛成です」と笑顔を返した。

 

「わ、私にできるかなあ〜」

 

「できるよ。俺が太鼓判押しとく。何かあっても、みんなで支えるし。それがチームってものだから」

 

「ありがと〜。それなら私、頑張る〜」

 

 園子が胸の前で握り拳を作ったところで、同意と相成ったのを確認した安芸は、クスッと笑った。

 

「鷲尾くんからそんな言葉が出てくるなんて。何かあった?」

 

「…………いえ。別に」

 

 須美をリーダーにしないため。なんてこと言えるわけもない。実際のところ、さっき言ったことは殆どが口から出まかせ。園子を支える気はあるが、そこまで深く関わる気はやはりない。

 

「少しは変わったと思ったのですが…。まあいいわ。リーダーも決まったところで貴方達に通達。さらに連携を深めるために、今度の三連休、大赦が経営している旅館で合宿してもらいます」

 

「効率的に鍛えられますね。助かります」

 

「うわあ〜、お泊まり会だ〜!」

 

「そりゃ楽しみだ!いよいよ夏だし。なんだかワクワクしてきた!」

 

 はしゃいでいる三人を見ていると、先生はそっと俺に耳打ちした。

 

「意外に周りのこと見ているのね」

 

「別に。ただでさえ真面目な人にこれ以上重たいものを乗せれなかっただけです」

 

「ふふっ。大事なのね」

 

「そりゃそうですよ」

 

 先生は俺があえて須美をリーダーにさせなかったことに気がついているらしかった。

 少し前だが、家族になった人が大事でないわけがないのだから。

 

 ーーーーそうして、勇者たちの合宿が始まった。

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