試しに書いたものなので内容はDVD特典の内容をかなり擦ってます。
気軽に読んで頂ければ幸いです。それではどうぞ。
銀、園子の姉妹道中
ある日の勇者部部室。勇者部は今日も今日とて元気に活動中。そんな中、鷲尾兄妹と犬吠埼姉妹に熱視線を送る一つの影。その正体は勇者部が誇る超純粋、ムードメーカーの友奈である。友奈が熱い視線を送るのには訳があった。
「須美〜。これどこに置けばいいんだっけ?」
「兄さん、それはその棚の上よ」
勇者部の喧騒の中の2人のなんて事のない会話。それをジーッと友奈は晴哉、というより東郷の方を観察している。次に友奈の視線はその近くで作業している犬吠埼姉妹に移った。二人は作業をしながら何かを話している。
「樹、今日の晩御飯何がいい?」
「昨日はカレーだったから、カレー以外がいいな」
「なら、カレーうどんね」
「カレーから離れようよ……」
どうやら今日の晩御飯の献立の話をしているようだ。友奈は二人の様子をこれまたジーッと見つめている。友奈が見つめている間に、紆余曲折あった末、鍋に決まったみたいだ。
ここで東郷は友奈の奇妙な眼差しに気がついたのか友奈に問いかけた。
「どうしたの?友奈ちゃん。私と兄さん、風先輩と樹ちゃんをじっと見て」
「バレちゃった。あのね。みんなを観察してたの」
「観察?何のために」
道具の片付けなどを終えた晴哉がまた別の荷物を運ぶついでに友奈に問いかける。そして何故か答えも聞かずに使わなくなった段ボールを捨てるために部室を出て行った。
「はは〜ん。さては、四国一の女子力姉妹と呼ばれた私たち犬吠埼姉妹の仲をその目に焼き付けておきたいのね?」
「確かに風先輩と樹、仲良いですもんね!」
「四国一の女子力ってのは疑問だけどね」
「女子力、女子力〜」
銀と園子はこの面白そうな話題に少しワクワクした感じであるのに対し、夏凛は呆れた感じである。主に風の台詞に。
「それでゆーゆー。ハルスケの質問の繰り返しになっちゃうんだけど、何かあったの?」
「先日にね。演劇部の人から依頼が来て、私がお手伝いする事になったんだ。それで、私最初は小道具とかのお手伝いとかだと思ってたんだけど……どうやら違うみたいで。妹の役をやって欲しいってお願いされたの。だけど、私お兄ちゃんとかお姉ちゃんとか居ないから、感覚がわからなくて」
友奈の話を受けて一同そう言うことかと理解があったようで、なるほど。と頷いていた。
「樹ちゃん。妹ってどんな感じ?」
「え、えっと…私、改めて聞かれるとどう答えていいのか…生まれた時から妹なので説明しにくいです……」
樹は申し訳なさそうに友奈に答える。そこで、銀がはいはーいと手を挙げた。
「須美ならわかるんじゃない?急にハルヤの妹になった訳だし」
「確かに!東郷さん、どうなの?」
友奈がその手があった!と言わんばかりに東郷に噛み付くような勢いで問う。急に友奈の顔が近づいたからか、東郷は一瞬だけ顔を赤らめると咳払いをしてから話す調子を整える。
「そうね。私の場合はどうだったかしら……」
「わっしーは、ハルスケのいいパートナーだったよね〜」
「妹は…相棒?」
友奈が園子の言葉にキョトンと首を傾げる。なかなか家族としての兄姉を表す表現としては珍しいのではないか。
「確かに須美とハルヤは仲がいいって言うより、警察官とかの相棒!って感じだったよな」
銀も二年前のことを思い出したのか腕を組んで頷いている。東郷も思い当たる節がいくつかあるのか、苦笑いを浮かべた。
「ごめんね、友奈ちゃん。ちょっと兄さんと私は事情が特殊すぎてあまりいい例にはならないかも知れないわ」
「ううん。大丈夫だよ、東郷さん。ありがとう!」
友奈の力になれなかったのか東郷は悔しそうな表情を浮かべた。園子はよしよしと東郷の頭を慰めるように撫でている。
「あれ?そう言えば夏凛ちゃんも妹だったよね」
「私?私は当てにならないわ。仲がいいわけではないし」
「そうなんだ…。うーん。どうしよう」
誰も友奈が求めているような妹についての解答を出来ず、どうしようか唸っていると、ようやく晴哉も部室に戻ってきた。唸っている友奈達を見て、晴哉は首を傾げると晴哉が部屋に戻ってきたことに気がついた風が無茶振りなことを言う。
「晴哉は何かいい案ない?いいや!部長の名において命令するわ。何か答えなさい!」
「んな、横暴な。それより、ことの顛末がわからないんですけど」
「全く。最初からちゃんと聞いてなさいよ」
聞くも何も晴哉は途中で出て行ったので知る由もない。半分ほど自分の責任である。
夏凛にも若干馬鹿にした感じの視線を向けられ、晴哉は尚更訳がわからなくなった。夏凛が親切に一から説明をしてくれている間に園子によって画期的な案が出されることとなった。
「ピッカーンと閃いた〜。ゆーゆが妹になっちゃえばいいんだよ〜」
「私が…妹に?」
「そうそう〜。観察してるだけじゃなくて、実体験をしてみることによって見えてくるものがあるかもよ」
「なるほど。それいいかも!」
友奈も園子の案にノリノリで乗じる。当の本人の友奈がやると言うのならそれを手助けするのが勇者部。話は友奈が誰の妹になるかが論点となって行った。
「ちなみに誰が友奈のお姉ちゃん役やるわけ?」
「そうね。とりあえずお姉ちゃんズ挙手」
風の号令によってまず風自身が、次に銀がパッと手を挙げた。
「兄さんはダメよ?」
「俺、そもそも手上げようとしてないんだけど…」
ただでさえ、この話題を輪の外から見ていた晴哉は東郷の言葉によって更に話題の外へと追いやられた。そしてまた一人、部室の片付けを始めた晴哉の背中は何とも悲しいものとなっていた。
そんな事があるともいざ知らず、風と銀による仁義なき戦いが幕を開けていた。
「私は小さい頃から樹の世話をしているわ!」
「アタシだって小さい頃から弟二人も世話して来たんだから経験値ならアタシの方が上です!」
「「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!」」
「まあまあ、二人とも〜。みのさん、今回はフウミン先輩に任せてみようよ〜。勇者部の『お姉さん』と言ったらフウミン先輩だしね〜」
「くっ!園子が言う事ならばアタシは認めざるを得ない…」
園子が仲介に入った事で銀は大人しく引き下がり、一日限定の友奈の妹になろうイベントは風の妹になる事で決定したのだった。
「まあ、的確よね」
「私が風先輩の妹になるんだ!何だか楽しそう!」
「そうだよ〜。学校だけじゃなくて、私生活でも妹になってみるんよ〜」
「一日中って事は私の家に泊まるのね。なら、友奈。親御さんには連絡ちゃんとしておいてね」
「はい!」
こうして決まったのはいいのだが、今回の件で困る人が一人。そう。紛れもない本物の風の妹、樹である。
「私は…どうすればいいんでしょうか…」
樹は路頭に迷った犬のような表情を浮かべている。非常に悲しみに満ちた面持ちであった。
「折角だから私の家、泊まりに来る?」
そんな不安そうな表情を浮かべる樹に提案したのは夏凛だった。樹も素直に夏凛の提案を受け、なんだかんだと楽しそうな雰囲気を醸し出している。
「良いね〜。そうやって絆が育まれていくの、とても良いよ〜!なら、折角だし、私もハルスケの妹になろうかな〜」
園子もこの波に乗ろうとしたのだが、東郷によって全力で止められていた。
「そのっち。兄さんはやめておいた方がいいわ。痛い目を見るわよ。主に兄さんが」
「さっきから一方的に俺、殴られすぎじゃない?痛いんだけど」
何もしていないにも関わらず、酷く言われ続ける晴哉のメンタルは少々削られていた。とは言え、晴哉はこの中で唯一の男子部員。本来ならいるはずのない人間であり、特にこう言うことを言われるのにも慣れている。白色の鳥の集団に黒色の鳥がいたら微妙な反応をされるのは当然のように思えると晴哉は割り切っていた。
「私も妹になりたいのに〜」
「確かアタシ達が小学生の頃の合宿で園子が今と似たような事言って、場を掻き乱してたの思い出したよ」
「そうね、なるなら銀の妹になってみれば良いと思うわ?きっと良い体験になるんじゃないかしら」
「園子がアタシの妹…。いいね!なんか面白い!」
銀の快諾によって、園子は銀の妹となり元神樹館四人組の中でもちょっとしたイベントとして捉えられた。
この友奈を発端とした一日妹体験はこの日の部活後から開始され、銀と園子は何故か二日間、この姉妹生活を行う事にしたのだった。
〜銀と園子〜
二人は学校までの道のりを早足で歩いていた。まだ授業が始まるまで時間があるとは言え、流石に遅刻はしたくないらしい。
「なんで互いにギリギリまで寝てるんだよ!」
「お姉ちゃんだってグッスリ私に釣られて二度寝してたのに〜」
「園子の謎の抱擁のせいだ。アタシを同じ布団に巻き込むから…。というか、園子のお姉ちゃん呼び慣れないな…」
「妹は甘えたいんよ〜。ねー?ハルスケ〜?」
園子は笑顔で歩きながら、銀と園子の後ろに追随する形で歩いている晴哉に話しかける。
「そうなの、か?」
晴哉に関しても寝起きで反応は鈍く、思考回路は完全に停止していた。案の定、遅刻しない為に適当に準備したので寝癖が所々目立っている。
「もう少し身支度しっかりしなよ。また須美にとやかく言われるぞ?」
「学校で直すよ」
「直したことない癖に…」
呆れた銀の視線は真っ直ぐと晴哉に突き刺さる。その傍で、園子が何かに気がついた。
「お姉ちゃん、鞄は〜?」
「………え?」
「ないよ〜?」
銀は自分の肩あたりに掛かってるはずのものがないのを直接触れて確かめた。そして確認してからコンマ1秒の間に晴哉の肩をガッと掴んだ。
「晴哉!取り出して!!今すぐに!!!」
「馬鹿言うな。そんなしょうもない事したくない」
「あれ〜?でも、来る時までは持ってたよね〜。どこ行ったんだろ〜」
確かに家を出る時には持っていたのは三人とも見ていたので覚えている。加えて、思い当たることが三人の中にはあった。
「お姉ちゃん、さっき転んだ子の怪我の手当てしてたよね〜。その時、置いてきたんじゃないかな〜」
なんという事か、銀は自分が遅刻しているにも関わらず、転んだ子の手当てをしたらしく、ただでさえ大幅に遅刻していた晴哉が銀と園子に追いついたのもそれが理由だった。
「今日は大人しく遅刻だな」
「うう…。安芸先生じゃなくて良かったと思うべき?」
「みのさん、じゃなかった。お姉ちゃんはよく先生に怒られてたもんね〜」
懐かしい昔話も程々に銀は観念して来た道を戻り、今もそこで主人を待っているだろう鞄の下へとトボトボと歩いて行った。園子が軽く銀の肩をぽんぽんと叩いているのも哀愁を漂よわせるのには十分なアクセントであった。
「ハルヤは来てくれないの?」
「いや、俺色々とリーチだし」
「せっかくなんだからビンゴ目指してみるのも面白いかもよ〜?」
「それはそれで確かに面白そうだけど薦めないでくれ。悪いけど、先行くわ。本当に今回ばかりは宿題倍増では気が済まない気がする……」
晴哉は片手を挙げるとその場から逃げるように学校へと向かって走って行った。銀と園子はその背中を見送ると改めて来た道を戻り始めた。
「ハルヤ、逃げたなあ」
「まあまあ、お姉ちゃん。ハルスケもわっしーに怒られるの嫌なんだと思うよ〜」
「須美、ハルヤにはやたらと厳しいからね」
「お姉ちゃんも私に厳しくしてくれてもいいんだよ〜?」
「今回に関しては完全にアタシのせいだから厳しくなんて出来るわけないんすわ。とほほ…」
結局、鞄は推定された位置にしっかりと置かれており回収出来たのはいいものの、銀と園子は二人して授業に遅れる羽目になったのだった。
授業と授業の合間のお昼の休憩時間、銀と園子は机を向かい合わせて昼食を摂っていた。机の上には二つ弁当箱が並べられており、その内の一つは銀がわざわざ寝坊したにも関わらず園子のために作ったものだ。勿論、自分用にもちゃんと作ってある。
園子は卵焼きを一つ箸で掴むとヒョイっと口の中に放り込む。
「んん〜!甘くて美味しいんよ〜!流石お姉ちゃん〜」
「園子にそう言ってもらえてアタシもお姉ちゃん冥利に尽きるね」
あまりの美味しさに満面の笑みを浮かべる園子を見て、銀も自然と嬉しい気持ちになる。銀も時間がないなりに作ったものとしてはかなり美味しいものを作れたのではないかと満足していた。
「どうしてこんなにお料理が上手なのかな」
「んー、なんでだろ。作った相手が大切な人だから?…ごめん、やっぱり今の無しで」
「照れてるお姉ちゃん可愛いよ〜。写真に残しておきたいくらい〜」
「撮るな撮るな!恥ずかしいからやめてくれ!」
恥ずかしさで顔を少し赤くした銀はカメラを取り出した園子に対して手をブンブンと顔の前で振ってお断りを入れる。園子は残念そうにしながらも大人しく受け入れ、カメラを鞄の中にしまう。
「それにしても朝は面白かったな〜」
「本当にご迷惑をおかけしたようで」
「昔わっしーが歩く災厄って言ってたけど確かにそうかも〜」
「須美、アタシのことそんな風に言ってたのか…。確かに怪我してる人がいて救急車を呼んだらその救急車のタイヤがパンクした事はあるけどさ」
銀は過去に起こした自分の巻き込まれ体質による事件事故等々を思い起こす。振り返る度に、自分の運命というものを呪った。
「もしかしてお姉ちゃんって結構命が危ない人だったりする〜?」
「命が危なかったのはあの一回だけだよ。何処かの誰かさんがいなかったらこうして園子と机を向かい合わせてご飯なんて食べれてなかったかもね」
二年前の三体のバーテックスによる同時侵攻。恐らくそれが銀の人生史上最も危険な出来事だったのではないだろうか。と言うより、晴哉と園子曰く、銀は実際のところその際に亡くなる予定だったらしく今こうして生きていられるのは限りなく晴哉のおかげであった。
「ところでハルヤは?何処にも見当たらないけど…」
「ハルスケならわっしーと一緒に何処か行ったよ〜。今日はゆーゆがふーみん先輩と一緒にいるからね〜」
「そういや夏凛と樹もアタシ達と同じことしてるんだっけ」
教室内に夏凛がいないところを見るに、部室にでも行っているのかもしれない。
「まあまあ、お姉ちゃん。今は私との絆を育もうよ〜。はい、あーん」
「それもそうだね。はむっ。うん。我ながら美味しい」
「まだまだあるよ〜」
「園子ように作ったのにそれだと意味ないじゃん」
「お姉ちゃんが私に食べさせてくれればいいんだよ〜」
「仕方ないなあ、園子は。ほれ」
銀はそれから園子の口にありとあらゆる料理を投入して行った。クラスメイト達にはその光景は餌付けにも等しいものに見えていたと言う。こうして、二人の昼休みは過ぎていくのだった。
晴哉はこの日の昼休み、一人屋上にあるベンチに腰掛けていた。隣にはサンドイッチの入ったコンビニの袋が置いてあるが手をつけた様子はない。それに誰かを待っていると言うわけでもなく、無言で空を眺めている。勿論、空に何かがあるわけでもない。
そんな晴哉の耳にガチャっという屋上の扉が開く音がして、その音に引っ張られるように上に向けていた視線をそちらへと向ける。
「兄さんはそういう風にしているのが格好いいと思ってしまう性格?」
「別にそんなんじゃないよ」
屋上に上がって来たのは東郷で、晴哉の様子を見て揶揄うように言った。晴哉も仕返しをするかのように須美を揶揄う。
「友奈が風先輩に取られて暇になったのか?」
「はっきり言うとそうね。友奈ちゃんが隣にいてくれないのがこんなにも寂しいとは思わなかったわ」
「だろうな。見てればわかるよ」
今日の東郷は若干、普段と比べて元気がないように晴哉の目には見えていた。原因はもれなく友奈である。今日の朝の登校時間から友奈と風は姉妹生活を始めており、休み時間なども友奈は風の方に行ったりと何かと今日は東郷の隣にいることは少ない。普段のエネルギーが友奈である東郷にはかなりの痛手であった。
「きっと兄さんにはこの苦しみはわからないかもしれないわね」
「急に毒を吐くなよ。まあ、いいけどさ」
「兄さんもいつにも増して元気がないわね。どうしたのかしら?」
普段であれば自分の言った事に晴哉は一言二言くだらないことを言って自分を呆れさせてくれるものだが、今日はそんな様子は見受けられず東郷は首を傾げた。そして思い当たる事が一つあり、東郷は再び揶揄うように晴哉に言う。
「銀となかなか話せないから?」
「そんなくだらない理由で気分は落ち込まんよ。逆に、今日は不思議なくらい一人で居たい気分だ」
「最近クラスの人と一緒にいる事が多かったのに珍しいわね」
晴哉は何処となく理由を探してみるが、何故一人で居たいと感じたのかは自分では理解できなかったようで先程の東郷同様、首を傾げる。
「なんだろうなあ。今になって、自分がこうして生きてることが不思議なのかも」
晴哉はふと思いついた事を言ってみた。そうすると段々とそれが原因であったかのようにストンっと腑に落ちていった。
東郷も二年前の今頃、何が起きていたかを思い出したのか少しだけ遠い場所に目を向ける。
「兄さん、絶対絶命だったものね」
「今でこそ笑い話だけども、本当によく生き残ったと思うよ」
結局、最終的には園子も鷲尾須美も晴哉は守れなかった。ただ、あの結末は当時の晴哉では覆す事ができない絶対的なものであった。
「あまり気にしても仕方ないけどな。そういや、須美。もうご飯食べた?」
「まだ食べていないわ。教室で食べてもよかったのだけど」
東郷は自分が手に持っている弁当箱を晴哉に掲げて見せる。
「私、まだ記憶が戻ったばかりで曖昧な事ばかりだから、教えてほしいわ。二年前のこと」
「長くなるぞ?」
「お昼休みの範疇でお願いね?」
クスッと笑った東郷は晴哉の隣に腰掛けた。晴哉はそれを嫌な顔を一つもせず受け入れる。
「前、どこまで話したっけ」
「私と兄さんが喧嘩した所までだったはず」
「喧嘩なんてしたっけなあ」
「一方的に私が怒ってただけよ」
「それは喧嘩とは言わないと思うぞ。なら、それより先の話でもしようかな」
晴哉は記憶の奥底から、これまで東郷に対してあまり話してこなかった二年前、それより前の記憶を引っ張り出して思い出を語る。それを東郷は笑ったり、呆れたり、驚いたりしながら聞いていたのだった。
時は放課後。各々が授業も終わり、勇者部の部室は賑わいを見せていた。夏凛は煮干しを咥えながら銀と園子の様子を見て思わずツッコんだ。
「どうして園子は銀にそんなにべったりしてるのよ」
「にぼっしーも野暮な質問するね〜。姉妹だからだよ〜」
「園子の姉妹観どうなってるのよ…」
見るからに暑苦しそうな二人。ただ、園子にくっつかれている銀も満更でも無さそうだった。
「東郷さん。そっち持ってて」
「任せて友奈ちゃん。この命に変えても離さないわ」
「若干意味合い変わってくるだろそれ…」
東郷も部活中は友奈と共にいる時間が長く、昼ごろまでの元気の無さは影を潜めていた。晴哉は今度、幼稚園で行われるお手伝いの為に折り紙の練習をしながら、元気を取り戻した東郷を見て安心したように小さく笑みを浮かべる。
「晴哉さん、それ何を作ってるんですか?」
「ん?これ?これは…なに?」
「私が聞きたいですよ…」
晴哉は晴哉で樹と訳の分からない会話を繰り広げていた。ちなみに、晴哉は機械いじりはできる程度に手先の器用さは悪くない。それなのに折り紙は致命的に下手なのだ。樹が晴哉の手元の本を覗くと、そこには誰でも作れるであろう鶴のページであった。
「今まで晴哉さん、幼稚園の子たちと何してたんですか?」
「サンドバックになってた」
樹が「ええ…」と微妙な反応をとった。そこを近くを通りかかった友奈が説明を補強する。
「晴哉くん、いつもボール当てられたりしてるもんね」
「小さい子相手に本気になっても仕方ないからな。思いっきり俺にボール当てて喜んで貰えた方が良いに決まってる」
「なんだ、そういうことなんですね」
樹がそっと胸を撫で下ろした。一体、樹はどんな事を想像していたのかそれは誰にも分からない。
その後も晴哉と樹が談笑していると風から新たな依頼が入った事が晴哉に伝えられた。
「えっとねー、何でも職員室のコピー機が壊れちゃったらしくて」
「それ、俺が行っても意味がないと思うんですけど?ちゃんと専門の人呼んだ方がいいのでは……」
「先生たちの中ではあんたが直せない場合に業者を呼ぶようになって来たらしいわ」
「そ、そうなんですか。とりあえず行ってきます」
「任せたわよ!東郷に並ぶ勇者部のメカニック担当!」
晴哉は何処から取り出したのか工具らしき物を持って部室を出ていってしまった。その後、風は机に置いてあるあまりにも無惨な形をしている鶴の折り紙を見て、凄まじい不安に襲われたのだった。
この日は晴哉が作業から戻ってきてからお開きとなった。友奈は予定通り風の家に泊まるらしく、二人で買い物に行ってしまった。いつもならば取り残される事のない東郷と樹は二人同時にため息をついた。
「お姉ちゃんを取られるのがこんなに悔しい事だなんて。私、知りませんでした」
「私も友奈ちゃんがまた離れていってしまうと考えると…。あぁ。もうダメかもしれないわ」
東郷の様子は見慣れた光景となっていたが、樹の落ち込みようを心配したのか夏凛が声をかける。
「今日は元から私の家に泊まる予定でしょ?大丈夫よ。風に負けないくらいの生活を送らせてみせるわ!」
園子も夏凛に便乗するように東郷に微笑みかける。
「わっしーは、私とみのさんとハルスケと一緒にジェラートでも食べに行こ〜」
「うん!」
二人のおかげで東郷も樹も表情は笑顔に変わった。銀と晴哉は夏凛と園子の手腕をみて、流石だなと感心させられたのであった。
「四人でイネスくるの久しぶりだね〜」
「そうね。最近大変なことばかりでそんな余裕なかったし」
東郷と園子に限っては歩く事すらできていなかったり、記憶が無くなっていたり、実質二年ぶりと言っても過言ではない。それを知っているからこそ、東郷も園子も感慨深そうにジェラートを食べている。互いの予定などのせいで、こうして四人で過ごすのも本当に久しぶりであった。
「ところで諸君。何故アタシおすすめの醤油味ジェラートを相変わらず誰も食べてくれないんだ?」
「どうにも慣れないのよこの味」
「俺も須美に同意」
「私はこの独特の味も好きだけどな〜」
「やっぱり園子だけだよ…アタシのことわかってくれるの」
泣きまねをしながら銀はジェラートを自分の口に運ぶ。やはりどうにも晴哉と東郷は醤油味ジェラートを認めることはできなさそうだ。
「不味くはないんだけどなあ……」
美味しそうに独特な味を持つ醤油味ジェラートを食べる銀を見ながら晴哉はボソリと呟いた。
「ちなみに聞くけど、何で銀はその味が好きなんだ?」
「え?美味しいからだけど」
「それもそうか」
さも当然の反応をされて、晴哉は結局納得せざるを得なかった。好きな食べ物に対して美味しい。ただそれ以外の理由などいらなかったのだ。
「わっしーは相変わらず宇治抹茶味なんだね〜」
「ええ。これこそが日本の味って感じで美味よ。そのっちも食べる?」
東郷はスプーンで自分のジェラートを掬って園子の前に差し出すと、園子は一思いにそのスプーンを咥える。
「う〜ん。やっぱりこの味は外れないんよ〜」
「園子ばっかりずるい!アタシにもくれよ須美」
ジェラートの美味しさに目を細める園子を見て、銀は拗ねたのか軽く頬を膨らませる。
「仕方ないわね。はい、どうぞ」
「やった!いただきます!」
銀も園子同様、差し出されたスプーンを勢いよく咥えた。何度か舌の上で味を転がして銀は「くっ、醤油味ジェラートが負けてる…」と謎の言葉を残しすごすごと引き下がって行った。
「どうしたのそんなに私の事見て。兄さんもいる?」
「いらない。何というか、須美がこの中なら一番お姉さんっぽいなって」
晴哉は思った事をそのまま口にする。そこに何故か対抗するように銀が声を上げた。
「いやいや晴哉。この中で一番の姉適正を持つのはアタシだね。須美はどちらかと言えばおかあさ、痛っ!?」
「ぎーん?」
「ひいっ!?ご、ごめんよ須美。だけど今のお前の怒り方、最高に母親だぜ!」
「銀、お前怖いものとか多分存在してないだろ」
凄まじい圧を向ける東郷にグッと親指を向ける銀。その銀を見てさらに東郷は何処からか輪ゴムを取り出すと銀に向かって射出した。晴哉と園子はその騒がしい様子を大人しくジェラートを食べながら見守っていた。似たような光景がその内起きるが、それはまた別のお話。
「園子のやつちょっとくれよ」
「ならハルスケのもちょうだい〜」
「いいぞ。ほれ」
「やった〜。いただきます〜。ハルスケも取っていいよ〜」
「さんきゅー。ちょっと貰うな」
東郷と銀が何やらわちゃわちゃとしている間に晴哉と園子は人知れず、互いの味を共有していたのだった。
イネスの帰り道、晴哉と東郷は二人とも別の用事があるとの旨を銀と園子に伝え、二人で何処かに行ってしまった。何でも旧世紀の船の模型が新しく出るとかで二人で見に行くとの事だった。東郷もその点の趣味だけは友奈とはなかなか共有しづらく、記憶が戻った今は晴哉がいい相手になっていた。
銀と園子はそのままイネスの食品売り場に残り、今晩の夕飯の材料を買うことにした。
「というわけでアタシ達は取り残されたわけですけども。園子、今日の夜何食べたい?」
「お姉ちゃんの作ったものだったら何でもいいな〜」
「そういやまだアタシ、園子のお姉ちゃんだったな。うーん、何でもか。難しいなあ」
銀は食品売り場の生魚コーナーを特に何の考えもなしに覗くと、そこには二切れの鮭がかなり割安に売られていた。
「よしっ!今日はこれに決めた!」
銀にはイメージとして鮭を使った料理が浮かんでいた。俗に言うバターホイル焼きである。
「どうして鮭〜?」
ただ、園子には銀が作ろうとしているものの想像がつかなかったらしく、首を傾げる。銀は園子に楽しみにしていて貰おうと、敢えて料理名を出すことはしなかった。
「あとは、きのこと玉ねぎでいいかな…」
銀は迷いなく、食材を籠にどんどん放り込んでいく。その内、いらないものまで買っているのはお決まりだ。
「というか、園子?」
「お菓子だめ〜?私も払うからさ〜」
「買うのはいいんだけれど、こんなに今日明日で食べ切れる?」
「いざって時はハルスケにあげればいいよ〜」
「多分、ハルヤ食べないけど無理矢理渡せばいっか」
結局、銀は園子に言われるがままにレジに食材とお菓子、その他諸々を通したのだった。
その頃、晴哉と東郷はーーーーーー。
「はくしょん!」
「兄さん、どうしたの急に。風邪?」
本屋にて晴哉がおすすめの単行本を須美に力説していた所、何の前触れもなく3度くしゃみを繰り返したのである。
鼻を啜りながら、晴哉は口を東郷が見たことがない方向へと曲げた。
「嫌な予感がする…。何か良くないものが押し付けられそうだ…」
「押し付けられたら押し付け返したら良いのよ」
正体不明な感覚に対して真っ向から挑もうとする須美に晴哉は思わず感嘆のため息を漏らす。怖いものを知らない人というのはもしかしたら、1番怖い存在なのかもしれない。
晴哉は突然の身震いに、何か底知れぬものを感じたのだった。
日が沈み、銀は手際よく料理を進めていく。園子はその様子を感心しながら見ていた。
「凄いね、お姉ちゃん。プロみたい〜」
「へへっ。褒められるのってやっぱり嬉しいね」
玉ねぎを均等に切っていき、ホイルに敷き、その上に鮭を乗せる。あとはコンソメやらを振りかけて、バターを更にその上に乗せて、フライパンで蒸し焼きにする。
「これ、私にも作れるかな〜」
「慣れれば簡単だよ。その内、教えてあげるよ」
「本当?約束だよ。絶対の絶対」
「ははっ。わかったって。別に遠くに行ったりもしないし大丈夫」
銀は軽く園子の頭を撫でる。園子は気持ちよさそうに目を細め、銀の手を受け入れる。
「もう少し時間かかるから待っててな」
「いつまでも待ってるんよ〜」
それから銀が作った完成した料理を二人で手を合わせてから口に運ぶ。二人はあまりの美味しさに互いに顔を見合わせて笑った。
ご飯の後は自然とお風呂、という形になるのだが銀は園子の提案に乗るかどうかを決めかねていた。
「いや、でもアタシの家のお風呂狭いよ?園子の家ほど大きくないよ?アパートだよ?ここ」
「狭くても一緒に入れると思うけどな〜。入ろうよ〜。いつかの合宿の時みたいにさ」
「むむむむむ…」
銀は唸る。今、銀の中では天使と悪魔が葛藤していた。というか九割型、悪魔が一生囁き続けている。滅多にこんな事はないのだから一緒に入れ。と。
今一度、銀が園子を見ると園子はとても楽しそうに身体を揺らしている。そんな園子の様子を見たら断りたいものも断れない。
「わかった。一緒に入るよ」
「流石お姉ちゃん。わかってる〜」
園子が今にもスキップしかねない勢いでお風呂場へと向かい、銀はそれを追いかける。しかし、銀は湯船に浸かり、園子の服を脱いだ姿を見て、若干の後悔に囚われた。
「どうしたの〜?姉貴〜」
「…二年って大きいんだなって……」
銀は園子と自分の身体の一部を見比べて小さくため息を吐いた。銀の中で身長が伸びたにも関わらず何も変わらなかったものがある。
「アタシではアルプスにはなれないのか」
銀は目頭を軽く抑え、上を向く。それは涙が流れるのを止めるためか、はたまたその部位から目を逸らすためか。
「まだお姉ちゃんは成長できると思うよ〜」
「慰めにもならないよ…。いいもん。アタシ、登山家になるし!」
銀は突然そう言うと園子のタオルで覆われた部分に手を伸ばした。
「あははっ!やめてよ、みのさん!あははは!」
「須美とまでは行かなくてもそんなにいい身体をしてる園子が悪い!親父!その桃くれ!」
狭い湯船の中では園子の逃げる場所はなかったにも関わらず、園子は銀から伸ばされる手を上手いこと回避しつつ、こうして銀と戯れられるのを幸せに感じ、それをひたすらに噛み締めていたのだった。
銀と園子がお風呂から出ると一人の来客があった。隣人の晴哉だ。晴哉は少し前に東郷と別れ、家に戻ってきていた。今は私服に着替え、銀の部屋に勝手に入り込んでいた。
「女の部屋に勝手に入ってくるとはいただけないね。ハルヤ」
「俺も流石に勝手に入るのはどうかと思ったけど、忘れる前に渡しとこうと思ってな。冷蔵庫に入ってるから確認しといてくれ」
「何持ってきてくれたのかな〜。みのさん、見て見てよ〜」
銀は園子に促される形で冷蔵庫の中身を確認しにいく。その間、晴哉と園子は軽く会話を交わす。
「園子、もう銀のお姉ちゃん呼びやめたのか?」
「何かもう、別にみのさんはみのさんだし、いいかな〜って」
「そっか。楽しめたようで良かったよ」
晴哉が園子の楽しそうな様子を見て、頬を緩めるのと同時に銀が箱を持って戻ってきた。箱の中身を開けるとその中にはプリンが二つ入っていた。
「さっき帰りに見つけたから買ってきた。夏凛と樹に先に渡してきたけど結構美味しかったみたいだぞ。かなり安心した」
「ハルヤの分は?」
「俺はさっき須美と一緒に食べたからいいよ。もう戻るわ」
「え?はや。もっとゆっくりしてけば良いのに」
「これから俺、何やらされると思う?」
「はい?」
銀が改めて晴哉の顔を覗き込むと、その顔には妙に恐怖と言う感情が表立っていた。そして、銀はとあることに思い当たった。
「まさか、あのテストの結果を須美に!?」
あのテスト。とは晴哉が模試で叩き出した恐るべき数値の記述されたテスト結果である。
まさか晴哉も須美が家に来るなどとは思っても見なかったようで外に出したままにしていたようだ。
「これから地獄のマンツーマンレッスンだよ」
「お、おぉう。可哀想に」
「須美のやつ、わざわざ家に帰って荷物まで持ってきたんだぞ!?なんて執念だ……」
この世の終わりと言わんばかりの絶望をその身体に纏い、晴哉は「帰るわ」と銀と園子に背を向けた。
「とりあえずありがとうハルヤ。美味しく食べさせてもらうよ」
「ハルスケありがと〜」
「どういたしまして。また明日な」
晴哉は用事だけを済ませるとそのまま帰宅してしまった。突然現れては姿を眩ますのは最近の晴哉の傾向なのか。と互いにアイコンタクトをとった後、銀と園子は手元に残されたプリンをありがたくいただくことにした。
「にぼっしーといっつんの分も買うなんて気が利いてるよねハルスケとわっしー」
「風先輩と友奈の分は買ったのかな」
「わっしーが買わない訳がないよね〜。今日は甘いものづくしだね〜」
「確かに。けど、たまにはいいよね。…でも、買ったお菓子はどうしよ」
「ハルスケにお礼ってことにして渡せばいいんじゃないかな」
「なかなかにエグい事を考えますね園子さん」
二人はそんな事を話しながら同時にスプーンにたっぷりと掬ったプリンを頬張る。甘さが口の中で溶けていき、ジェラートとはまた違った美味さが口の中に広がった。
「美味しいね!みのさん!」
「うん!アタシ、幸せだ!」
二人でこうして居られることに何度感謝しただろうか。園子と銀は泣き出したくなるくらいのこの幸せを二日間を通して精一杯噛み締めたのだった。
こうして、風と友奈。夏凛と樹。銀と園子の姉妹生活は終わりを告げた。それから数日後。
「風先輩!お陰でうまくいきました!」
「さっすが友奈!やったわね」
「はい!結城友奈。やってやりました!」
友奈の妹役は大層演劇部でも評判が良かったようで、またなんらかの役回りでお願いするかも知れないと言うことだった。
「いやー、たった一日だけ出したけど、このまま風先輩の妹になってしまっても構わないかも」
「友奈だったらいつでも歓迎よ」
友奈がなんの悪びれもなく放った一言と、それに対する風の反応は樹と東郷に衝撃を走らせる。
「「それはダメ(です)!!」」
お互い最も大事なものがこの一瞬にして奪い去られると言うのは耐えられないのだろう。その必死さに近くにいた全員は笑いを堪えることができず、勇者部は笑いに包まれる。
「友奈と風先輩の話も気になるけど、アタシは夏凛と樹の方も何してたか結構気になるんだけど」
「私と樹は一緒にトレーニングしてただけよ」
「え、それだけ?」
「お陰で筋肉痛です…」
銀と夏凛、樹の話を聞いていて、晴哉は夏凛の妹に樹は向いていないだろうなと感じてしまった。ただ、夏凛も面倒見はいいので今度は運動好きな銀を割り振ってあげるといいかもしれないと考えたのだった。
「樹ちゃんが風先輩から離れたくない気持ちがよーくわかったよ…。私、あのままだとダメになりそう」
「それだと私が樹をダメにしてるみたいじゃないっ!」
「うわわわわ!違います、そう言う意味では!」
慌てふためく友奈を見て、窓際でその様子を見て居た園子は笑顔で呟いた。
「この光景を守れたって考えれば私の二年間は無駄ではなかったよね。ね、ハルスケ〜」
「そうだな」
「ハルスケも、少しは自分の身体労わりなよ〜。まだ見た感じ、神器の傷治ってなさそうだし〜」
「そう言えばまたしばらく病院漬けだよ。嫌なこと思い出させてくれたな。と言うか半分くらいはお前のせいだからな……」
「えへへ〜。どういたしまして〜」
「頼むから反省をしてくれ……」
晴哉と園子は互いに命を張り、守り切った光景がこれであれば何の文句もないと感じた。そしてこれからも守り続けていくのだろうと。何年経とうと、何十年経っても。それは変わらないのだろう。
「私とハルスケ、未来はどうなってるんだろうね〜」
「どうだろ。互いにまた敵対するかもしれないし、仲良くお茶でも飲んでるんじゃないか?」
「どっちにも転べるのが面白いところだよね〜。私としてはハルスケとみのさんが未来でもそのままで居てほしいな〜」
「それもどっちに転ぶかわからないから面白いな。最近は、そう思えるよ。ただ、俺はお前とは対立したくないよ。精神的にまいる」
晴哉は園子と対立するかもしれない未来を想像して胃を少し痛めたのだった。同時に、少しだけ想像した。この先の未来を。もしかしたらあり得たかもしれない未来を。東郷が鷲尾須美のまま、今に至っていたらどうなっていたのだろうか。
晴哉は園子しか周りにいないのをいい事に、軽く妄想の世界に入り込む。次はあり得たかもしれない未来のそんなお話。