獣王踏破、または頭の中が面白いことになっているTS転生者のGGO 作:やりたい放題はご愛嬌
夕暮れの砂漠。
正しくそう形容する他ないその地で、銃声が響く。
各々バラバラの銃火器で武装して
彼らはパーティを組んで狩りをしていた。
一言に狩りとは言っても相手は獣ではない。いや、考え方によっては獣かもしれないが、彼らはそんなしょっぱくて面白みも無い獲物になど興味は無い。
彼らが狙っていたのは自分達と同じ
ガンゲイル・オンライン。GGOと呼ばれるこのゲームにおけるメインは対人戦。すなわち銃の撃ち合いだ。プレイヤーキルが第一に推奨された超殺伐MMOゲームである。
そんなゲームの作法に則って、 フィールドで獲物を待ち伏せしていた彼らは、仕掛けていた爆弾が爆発したのを見計らい一斉に飛び出した。
そして十人いた内の半数が一瞬にしてデスペナルティの憂き目にあった。
「ぐぁあっ!?」
今も、砂煙の中で煌めくフォトンの光に男達の仲間がまた一人殺されて、電子の塵と変わった。
半狂乱になりながら銃を撃つ彼らは、自分達が何に喧嘩を売ったのか、既に理解していた。
「くそっ、なんでここに
「知るか! くそっ、ふざけやがってぇ!!」
男達が銃弾を撃ち放った先、青い光がいくつも閃いた。
男たちは知っている。あれがパフォーマンスであると。
自分たちの火力では、そもそも獣王が纏う装甲を貫けない。宇宙船装甲板という最強の盾を貫くことは不可能。
それを知っていながら、獣王は拳撃と蹴撃で以て全ての銃弾を弾いて見せたのだ。
強い風が吹き、砂煙が晴れる。
生き残っていた三人の男達は息を飲んだ。
「……弾切れ?」
荒野に響く鈴の音のような声。
茜に照らされる美しい黄金の髪。何の感情も映さない
動きを阻害しない程度に各所に貼り付けられた白い装甲板。そして何より目を引いたのは、その両手両足の彼女の得物である。
それは青いフォトンの光を放つ篭手と足具。
彼女のみが所有し、彼女だけにしか扱えない半ばオンリーワンの武器、
近接武器の中ではそこそこリーチのある
「なら、おしまい」
「っ、撃て、撃ちまくれぇ!!」
処刑人の宣言に煽られて、男が吼える。
だが、既に勝負は付いていた。
「もう終わってる」
「へぁ?」
次の瞬間、男の頭部は消し飛んでいた。
頭を失えば当然致命傷。重力に逆らわず地面にくずおれた胴体は程なくして赤い破片となって砕けた。他の二人も同様に。
少女が行ったのは、なんということは無い回転蹴り。
しかし、そのストレングスとアジリティの高さに物を言わせた蹴撃は容易く人体を砕き、破壊する。
少女は興味を失ったように視線を戻すとイヤホンを耳に付けた。流れるのは神崎エルザの新曲。今の彼女のお気に入りだ。
彼女の名前は獣王。獣王レオニード。
最強王者決定戦バレット・オブ・バレッツ、第一回、二回大会の優勝者であり、
「(今の俺、めちゃくちゃかっこよくねぇぇぇぇぇえ!? あ、あと神崎エルザの曲マジやべえ!)」
頭の中が大層面白いことになっている、無表情コミュ障TS転生者である。