「向こうの建物だな」
ナビゲーターの指差す方向に他と比べ、ひときわ大きな建物があった。
「あれが会場か」
「うわー」
ゴン、クラピカ、レオリオの三人はナビゲーターに案内され、ハンター試験会場の前に来ていた。
「ここに世界各地から」
「ハンター志望の猛者が集まるわけだな」
(親父もこんな気持ちだったのかな・・・)
三人が建物を前に思い思いのことを考えていると、
「おい、そっちじゃないよ。こっちだよ。」
ナビゲーターが斜め向かいの建物を指差す。
「「・・・・・・」」
「・・・どう見てもただの定食屋だぜ」
レオリオの言う通りのそこには普通の定食屋があった。
「冗談きついぜ、案内者さんよ。まさかこの中に、全国から無数のハンター志望者が集まってるなんて言うんじゃねーだろ」
「そのまさかさ。ここなら誰も応募者が数百万人とも言われてる、ハンター試験の会場だとは思わないだろ?」
ナビゲーターはそう言って、定食屋へと入ってしまい、ゴン達もそのあとに続く。
「いらっしぇーい!!」
「・・・・・・」
中に入ってみても、亭主が料理を作り、他の客達が食事をしていて、普通の定食屋にしか思えなかった。
「御注文は?」
「ステーキ定食」
ピク「焼き方は?」
「弱火でじっくり」
「あいよー」
ゴン達に何も聞かず、ナビゲーターが勝手に注文を言う、しかも焼き方まで。
「お客さん、奥の部屋どうぞ」
(今のが試験者だと知らせる合言葉か)
クラピカはナビケーターを亭主のやり取りを見てそう推測する。
(一般人がたまたま同じ注文をしたらどうするんだ?)
短い合言葉に対してそんなことを考えていると。
ガラガラッ
店の入口が開き、一人の小柄な女性が入ってきた。
「いらっしぇーい!!」
女性は美しい容姿をしていたが、見るからにひ弱そうで、まるで病人ように血色のよくない顔をしていた。
(例えば、こんな女性が間違ってハンター試験に紛れてしまったら、確実に死んでしまうぞ)
「御注文は?」
「・・・ステーキ定食をお願いします。」
ピク「焼き方は?」
「えーっと・・・弱火でじっくり」
「「「え!?」」」
ナビゲーターと全く同じ注文に、ゴン達は驚いて女性を見る。
「・・・なんでしょう?」
女性はそれに対して、不思議そうに首を傾げる。
再度見ても、女性はハンター試験を受けるような猛者には見えない。
「あいよー」
だが、そんなことは気にせず亭主は注文を受ける。
(だから、言わんことではない。合言葉はもっと複雑にするべきだ)
「お客様、相席よろしいでしょうか?」
「鑢 七実と申します。あ、こちらの言い方では、ナナミ=ヤスリ という事になりますね」
「オレ、ゴン。よろしく」
「オレはレオリオだ」
「私はクラピカ」
ゴン達は案内された奥の部屋、(エレベーターになっていて下に降りている)で、
ステーキ定食を食べながら自己紹介をしていた。
ちなみに、上の定食屋のメニュー表にはステーキ定食は無く、その為合言葉を間違えて言う客はいないらしい。
「しっかしあんた、どう見てもハンター試験を受けるような人には見えねーな」
「そうですか?」
「失礼ながら、私もそう思った」(しかしここまで来れたということは、只者ではないということだろう)
「ゴン君のような少年が受けているのですから、それほど不思議でもないと思いますが」
「まぁ、こいつは普通のガキじゃねーからな」
「では、私も普通の女ではない、ということでいいのではないでしょうか」
(普通より弱そうだから言ってんだけどな)
「ナナミはどうして、ハンターなりたいの」
他の二人と違い、ゴンはナナミのハンター志望の理由に興味があった。
弱くても、ハンターになりたいと思う人はたくさんいるだろう、でもその理由はそれぞれだ。
「・・・実は特にハンターになりたいということではないのですよ」
「えっ!、そうなの」
「ええ、こう見えて私、生まれながら病弱でして」
((見たまんまだけどな))
「そのため普通の職につくのが難しく」
((普通の職が無理ならハンターはもっと無理だろ))
「ハンターなれば何もしなくても、定期的にお金がもらえると聞いて」
((それは間違ってないが))
「それで、なろうかな。と」
((かなって!?))
「ああ~、なるほど」
「(納得するとこじゃね~!!)」
思わずツッコミをいれてしまうレオリオ。
声にこそだしていないがクラピカ同様である。
「わかってんのか!、ハンター試験は困難かつ危険で、毎年死亡者が出るって話だ」
「・・・ハンター志望者が、死亡者ですか。ふふ、面白いですね」
「なんも面白くね~!!」
「毎年試験は変わるそうですし、ひょっとしたら今年は危険の少ない試験かもしれませんよ。料理とか」
「んなわけねーだろ!」
「・・・・・・まぁー、なんとかなりますよ」
レオリオの忠告もナナミには、どこ吹く風だった。
「はぁ~、もういい。とにかく無理だけはしないようにな」
「ふふ、お優しいのですね」
「けっ、そんなんじゃねぇよ」
チンッ
「・・・着いたらしいな」
エレベーターが目的の階に着いたらしく、扉が開く。
「「「!!」」」
会場には既に多くの受験者達が集まっており、これまでとはあきらかに雰囲気が違っていた。
(全員が何らかの達人に違いない!!)
「それにしても薄暗い所だな」
「コホッ、地下道みたいですし、人が多いせいが空気も澱んでますね」
「一体何人くらいいるんだろうね」
「君達で406人目だよ」
誰にともなく言った、ゴンの質問に答えたのは潰れた鼻のおっさんだった。
「オレはトンパ。よろしく」
そのあとすぐゴン達は番号札を渡された。
403番、レオリオ
404番、クラピカ
405番、ゴン
406番、ナナミ
トンパというおっさんは、ハンター試験を35回も受けれるベテランらしく、
他の実力のある受験者のことなどを教えてくれ、
またその途中、他の受験者同士の揉め事があり、その受験者、44番ヒソカは特に要注意人物で、
近づかない方がいいとアドバイスもしてくれる親切なおっさんだった。
「おっとそうだ」
そう言ってトンパはジュースを取り出し、4人に渡す。
「お近づきのしるしだ、飲みなよ。お互いの健闘を祈ってカンパイだ」
「ありがとう!!」
それをなんの疑いも無く、口にするゴン
(くくく、そのジュースは超強力な下剤入り!! 一口飲めば三日はウンコが土石流みたくとまらねェ!!
お前らもうパンツをはいてテストを受けることすらできないぜ!!
しかも綺麗な嬢ちゃんまでいるじゃねーか、美少女のお漏らし・・・ゲヘヘ、携帯で撮影しとくか。
どうせあんな弱そうな嬢ちゃんは試験受けても死ぬだけだ、
早々にリタイヤする理由を作ってやるんだ、むしろ感謝してほしいくらいだぜ)
実はトンパは親切なおっさんではなく、常連から新人潰しを呼ばれてる性悪のおっさんだった。
しかし、トンパがそんなゲスなことを考えていると、
「れろ」
ダーーーー
「!!」
いきないりゴンがジュースを吐き出した。
「トンパさん、このジュース古くなってるよ!!
「え!? あれ?おかしいな~?」
(下剤は無味無臭のはずなのに、このガキどんな味覚してやがるんだ)
ゴンの言葉を聞いて、他の三人もジュースを捨てた。
トンパからジュースの謝罪を受けたあと、しばらくすると
ジリリリリリリリリリリリー
と大音量のベル音が場内に響いた。
その音源は、太いパイプの上に乗った、スーツ姿の男の手に持っていた。
男は音を止めると
「ただ今を持って、受付の時間を終了いたします」
そしてパイプからおり、こう言った。
「では、これよりハンター試験を開始いたします」