仮面ライダーディナイト・マルチバース・オブ・マッドネス 作:夢野飛羽真
では始めましょう、マルチバース・オブ・マッドネスを
第1話:狂いの始まり
2021年8月 日本 大阪
オーマジオウが治める平和な世界が出来て76年という長い年月が過ぎた。
「よし、あとちょっと」
この世界でも技術は発展し、その技術を扱う人間を育てるために教育機関は存在する。
ここは大阪の中でも一番有名な大学の工学部の施設
実習の授業や学生個人、若しくは何らか部活等の作品制作に使われる工作機械が大量に置かれているラボの一角で1人の青年が工作機械を駆使してあるものを作っていた。
「やっぱりここにいた、今日は何作ってんの?」
テーブルの上で作業をしている学生の友人と思われる眼鏡の男子大学生、金城雅人が制作作業をしている青年の背中に手を置き声を掛ける。
「ん、PS-H(プレイステーション-ハイブリッド)だよ。この前手に入れたPS5と歴代のゲーム機のジャンク品を使って歴代のプレイステーションシリーズ全ゲームがプレイできるゲーム機だよ。」
「うわっ…またとんでもない物作ってる。流石理央だよ。」
作業台の上で電子回路と向き合っている大学生、和泉理央は端正な顔立ちと右目は青、左目は緑のオッドアイ、センター分けの青髪が特徴的な所謂イケメンの部類に入る青年だが、彼は自分に対する噂や好感度を聞くことなく日々機械いじりや発明に勤しんでいる。
「これでも父さんの血を引いてるからね。」
「成る程ね、その機械好きは君の親父さん譲りってことかな?」
「そういうこと、じゃあもうすぐ帰るから待ってて」
「りょーかい」
理央は工学部、雅人は文学部と2人は全く違う学部の学生だが2人が入学してすぐの時にひょんなことから出会って今では親友になっており、理央の数少ない話し相手にもなっている。
「ねえねえ、また面白い仮面ライダーの物語を見つけたんだけど聞いてみる?」
「うん、どんな仮面ライダーの話?」
ヒーロー達の平行世界群、ステラバースの中心である逢魔世界であるこの世界には他の世界のヒーロー達の情報が次々に届いており、その物語を本として読むことができる。
雅人はライダー達の本を通じて彼らの物語にのめりこみ、その探求に日々勤しんでいる。
そしていつもライダー達の話を楽しそうに理央に聞かせている。
「世界の人口の8割が"個性"って言われてる能力を持ってる世界でね…」
ステラバースでは仮面ライダーやヒーローの世界の複雑性が原因で様々な物語が入り交じり、本来の仮面ライダーから派生した世界も多く存在している。
今雅人が話しているのもその世界の内1つの世界の話だろう。
「その世界には自分の個性を悪用するヴィランっていう人とそのヴィランとか災害から人々を守るヒーローって人達がいるんだけど異世界から来た善良なエボルトと彼に出会って仮面ライダークローズに変身できるようになった不良少年がNo.1ヒーローを目指すストーリーさ。」
「エボルトってあの星狩り族の?」
「そう、まあ中身は普通の人間なんだけどね。僕みたいなライダーファンの」
「そうなんだ、ヒーローを目指すストーリーってのも中々興味深いね。」
「でしょでしょ、今度本貸してあげるよ。」
「ありがとう」
仮面ライダーの話は理央にとっても興味深いものである。 自分のインスピレーションを刺激するだけでなく今は事故で亡くなってしまった理央の父と彼自身が繋がっているように理央は感じていた。 彼と同じく発明を愛し、仮面ライダーも愛していた和泉竜斗のことを思い出せるほど理央にとって仮面ライダーは特別な存在だった。
「そういえば明日友達とROUND1に行こうと思うんだけど理央もどうかな?」
「僕は遠慮しとくよ。明日は父さんが残してたガレージに行かないといけないし。」
「そっか、じゃあまた会うとしたら夏休み明けかな?」
彼ら大学生はそろそろ夏休みに入るという時期だった。
この期間に会わない友人というのもいたりする大学生もよくいるのだ。
「どうせ大学内で会うかもしれないでしょ?雅人は図書館に出入りするだろうし僕もたまにここのラボ使いに来るかもしれないし。」
「確かにね、それじゃまたね」
「うん、じゃあまた」
今後の再開を近い2人はそれぞれの帰路に就く。
そして翌日…
(父さんが残したガレージか…)
理央は電車に乗って自分にとっては見慣れない土地を訪れていた。
つい先日、彼の実家で1冊の手帳が発見された。そこには今は亡き彼の父からの伝言と彼が所有していたというガレージのことが書かれていた。
母ですら知らなかったそのガレージだが父が亡くなった5年前から放置されていることがわかると流石にこのまま放置し続ける訳にはいかないということで理央は見に行く決心をした。
幸い鍵も手帳と共にあったので彼がガレージに入るのは容易だった。
(埃の量が……)
大阪市内から北にいくつかの市町村を移動した郊外の土地
これまで身内が誰も足を踏み入れていなかったためか、和泉竜斗が遺したパソコンや工作機械、発明品などは埃を被ってしまっている。
(このパソコンまだ動かせそう)
父の遺した物がまだ使える物かどうか確かめようとふと理央の指がデスクトップPCの電源スイッチを押すとモニターに光が灯り、パソコンに搭載されているOSが表示されてそれが起動したことを示す。
(起動したはいいけどパスワードは……)
理央はキーボードに向かって頭に浮かんだ数字を幾つか押してみる。故父、竜斗の誕生日の8月6日にちなんだ0806、竜斗の妻であり理央の母である珠子の誕生日11月28日に因んだ1128を入力したがそれは設定されたパスワードではなかったが、
(これならどうかな?)
次は理央自身の誕生日である5月5日から0505という数字列を連想しキーボードに打ち込む。
「当たった!」
そのパスワードが正解であったことを現すようにモニターにはPCのデスクトップやファイル等が表示されていた。
「ファイルがいっぱいある…なんだろう?この重要って書かれたファイルは」
モニター画面を埋め尽くす程の数のファイルの中でも重要と書かれたファイルが異彩を放っており、それを見た理央は自然とマウスを手にカーソルをファイルに向けて動かしてクリックしていた。
「ユナイト計画?」
そこに会ったファイルの名前は"ユナイト計画"
しかも其のファイル形式はPDFやdoc等のよく知られたファイル形式ではなく.rideだった。
『顔認証を開始』
理央の指は自然とそのファイルをクリックしていた。
すると画面にはデータベースのような画像背に顔認証中という文字が表示され、女性的な電子音声がその文字を読み上げる。
「な、なんか始まったんだけど……」
『顔認証完了、和泉理央様ですね。』
「なんで僕の名前を?父さんが登録してたのかな?」
理央自身普段はあまり顔認証系統のシステムには頼らない人間である。
どこかのデータベースに自身の顔を登録したことはなかったがもしかしたら父が自分の顔を写真か何かで登録していたのだろうと推察し、再びモニターと向き合う。
『ユナイトドライバーを解放します。』
「ドライバー?ネジでも回すのかな?」
等と言っている間に理央の後ろにあった箱の蓋が開きとあるベルトがせり上がってきて姿を現す。
「ドライバーってもしかして仮面ライダーの……?」
仮面ライダーの使うベルトの名前にはドライバーと付くものが多い。突如現れた仮面ライダーのベルトと同形状の物で且つドライバーという名前。もしかすると仮面ライダーに変身するためのものなんじゃないかと考えを巡らせ、ベルトに手を伸ばす。
『AIシステムレオンを起動』
『よっ、やっと来たな。竜斗の息子さん。』
「喋った…!?」
突如ベルト前面に搭載されているスマホの様なディスプレイにバッタの仮面の様な顔が映し出されて声を発するとベルトに伸ばされた腕を引いてしまう。
『そんなにビビるなって、俺はレオン。マスター竜斗に作られたAIだ。お前のことはよく知ってるぜ。和泉理央』
突如しゃべり始めたAIの名前はレオン
現代のスマホ等に搭載されているような機械的な声でもなければ、先程の電子音声の様な女性的な声でもない。
フランクな話し方で明るい性格の男性、理央にとってはまるで一人の男友達と話しているような気分になる音声だった。
「父さんが作ったAIか。だったら父さんが僕のことを教えててもおかしくはない。けどなんで父さんは仮面ライダーのベルトっぽいのとAIを作ってここに遺してたんだろう?」
レオンの出自を瞬時に理解した理央だったが、その脳内には未だに幾つかの疑問が残ってた。
その主な疑問はユナイトドライバーの存在であった。
『それは世界を守るためだ!』
「世界を守るため?」
『そうそう、ちょっとパソコンのモニターを見てくれ。』
レオンの言葉と共にパソコンのモニターにいくつかの映像が流れ始める。
その映像には人々を襲う怪人の姿が映っていた。
『こいつらはブラックムーンズ、ヒーロー達を撲滅してこのステラバースを支配しようとしてる奴らだ。』
「ステラバースってことはこの世界とか他のライダーの世界のことだよね?」
『ああ、そうだ。ブラックムーンズはこの世界を含めた平行世界を狙ってる連中だ。』
モニターに映るブラックムーンズと呼ばれる存在は嘗て仮面ライダーと戦ってきた怪人を使役する黒い鎧の怪人を筆頭に人々を襲っていた。
『つっても当時はまだこの世界の仮面ライダー達で何とか出来てたんだが、ブラックムーンズは日々強くなってきてる。』
「このままだと仮面ライダー達が各個撃破されていずれ世界が支配されるかもしれない…」
『その通り!そこでマスター竜斗が作ったのがこのユナイトドライバーだ!』
理央達のこれまでの日常で知ることは無かった存在、ブラックムーンズ
その脅威が彼らの日常生活を少しずつ脅かしていたという事実に驚くと共にそれがユナイトドライバーが作られた理由に結び付いた。
「なるほど、だから父さんはこのベルトで仮面ライダーに変身してブラックムーンズと戦おうとしたんだ!」
『ああ、けどそのことをブラックムーンズに嗅ぎ付けられて暗殺されちまった……』
「暗殺された…?」
だがそのベルトはブラックムーンズにとっても脅威である。
そのことをシッタノナラバ竜斗を狙い、襲撃して始末してしまうのも彼らの戦略としては妥当なものだろう。
『事故に見せかけて殺された。そん時にベルトは破壊されたんだが俺のバックアップとベルトの予備がここにあったってことだな。』
無情にも告げられる真実。
それを聞き、固まる理央だったが
『おいおい、早速現れやがったぞ!ブラックムーンズだ!!』
インターネット上の情報から、ブラックムーンズ等の怪人の出現をすぐさまレオンに伝達するプログラムも作成されており、このタイミングで遂にそのプログラムが発動した。
「今現れたの!?」
『場所は隣の市のROUND1だ!』
「ROUND1…?」
ROUND1と言われるとボウリングやスポッチャ、ゲームセンターなどの様々なアミューズメントが揃っている複合施設であり、特に理央と同じ大学生や高校生の利用者が多い場所だ。
そのROUND1という言葉に理央は昨日のある出来事を思い出していた。
「そういえば明日友達とROUND1に行こうと思うんだけど理央もどうかな?」
それは昨日の帰り道、理央の友の金城雅人が言った一言だ。
どこのROUND1とは言っていないが今敵が現れたというROUND1に雅人がいるかもしれない。
そう思った理央の身体が動いたのはすぐだった。
箱の上にあるユナイトドライバーを手に取って外に出ようとする。
『おい待てよ、本当に行く気か?』
「ああ、父さんの仇とか計画とか色々と考えたいことはある、けどもしかしたらここに友達がいるかもしれない!だから僕は助けに行く!」
そこに居るかも知れない友人を助ける。
亡くなった父の為に戦う。
「それに、敵が来たって分かってるのにここで動かなかったら…助けに行かなかったら……ROUND1にいる人達が殺されるかもしれない……僕はその人達だって見殺しにはできない……!それに世界の命運も放っておけないしね、」
それに敵の襲撃に巻き込まれた人たちを見捨てたくない。彼らのことも、そして世界も守りたい。
これらの気持ちは理央に戦う覚悟を決めさせるのに十分だった。
『OK!流石マスターの息子だ!戦いに行くならこれ使え。』
ガレージの壁にある扉が開くと、布を被った大きめの物体があり、その布を理央が取るとそこには赤と青のバイクがあった。
『こいつはマシンユナイト、良いバイクだろ?』
「うん、かっこいいね」
『じゃあヘッドライトの上にベルトを置いて、運転免許を横のフォルダーに入れてくれ』
「免許も?」
『おう、そいつがバイクの鍵になる。』
「父さんがよくバイクの免許取っておけって言ってたのはこういうことなのかな、」
父の言葉を思い出しつつレオンの言葉に従い、バイクにユナイトドライバーと自分の自動2輪の運転免許をセットすると、バイクのエンジン音が鳴り響き、ヘルメットを被った理央がマシンユナイトにまたがる。
『道案内は任せろ!』
「任せたよ、さあ、行こう!」
ガレージのシャッターが自動で開き、そこからマシンユナイトに跨った理央が走り出す。
これから始まる戦いに向けて、エンジンを吹かせて進み始める。
To be continued
主人公ら登場人物の設定はこの後すぐに投稿いたします。
そちらも是非読んでいただけるとありがたいです。
主人公達のこともそちらを読んでいただけたらよりキャラを理解できてこの作品を1000%楽しめると思います。