アメーバ女神によって異世界転生した俺、リセマラで良いスキルを手に入れたんだけど故郷からは使えないと追放されたので孤島に引きこもってスローライフを満喫します   作:嫉妬レウス

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13話 帰還と終わりの始まり~アルフレッドの独白~

 レムナント、あいつは、間違いなくレムナントだ。

 10年の時が経っている位で、弟を見間違えるはずがない。

 

「レムナント! レムナントなのか!?」

 

 俺の呼びかけに、レムナントは……

 どこまでも暗く、冷たく、底の抜けた穴の様な、無限の虚無を閉じ込めた様な昏い目を俺に向けた。

 

***

 

 「レムナント……」

 

 一応対外的には病死、説明を受けた者には追放……実態を知る者には出奔と居なくなった理由については今更何かを問うような事もないだろう。

 石棺に閉じ込められ、廻りの船乗りや水兵たちが不安そうにする中で、俺は努めて忽然とするようにしていた。

 辺境伯という立場上、俺が一緒になって狼狽える訳にはいかない。

 しかし、精神的にそれが可能な状態かと言うと自分でも怪しかった。

 

「火を熾すのは最小限にしよう、閉所で焚火をして意識を失ったという例を何度か聞いたことがある……光源魔法が使える者は、最小限で良い、光を消さないように交代で魔法を使ってくれ」

 

 とにかく、光を途切れさせない事を第一にする。

 何もかもが判らない中で、自分の足もとすら見る事が出来ないのは恐怖以外の何物でもない。

 

「辺境伯様、とりあえず、人数の確認は終わりました……水夫を中心に20人、という所です」

「……そうか、いや、少なくともあの訳の分からない状況を生き延びて、更にあの悪夢としか言い表せない森を生き抜いた精鋭だ、生存を祝いたいところだが、酒の一本もないこの状況ではな」

 

 幸いにして、命の危険だけはぎりぎり切り抜けた、と言えなくもない状況だろう。

 少なくとも、今俺が出来る事はこれが限界だ。

 

「皆、何としてでも生き延びてくれ、ここに残った20人、今この瞬間から俺が抱え込む。遠慮は不要、この状況で辺境伯の身分なぞ便所の紙ほどの価値もない、思う所、状況を超える案があったら、どんなことでも良い、遠慮なく言ってくれ!」

 

 ただ、今目の前にいる20人、誰一人として失いたくはない。

 また軽々にそんな事を、とここまでしぶとく生き残っていた傍仕えの一人が苦笑する。

 最も、そうするだけで止めない。

 お互い、多くの馴染みを失った、これ以上失うのはごめんだ、とでも思っているのだろう。

 

「……全く、君らしいと言っておくよ、アルフ」

「お前からそう言われるのは、久しぶりだな、ジーニアス」

 

 モノクル越しの目が、柔和に笑う

 

「そりゃ、普段は君は辺境伯で僕はその侍従だ、弁えるさ」

「それがめんどくせぇからいつも通りでいい、と言ってるんだがなぁ」

 

 暫くぶりに、幼馴染との会話をした気持ちになった。

 あぁ、そうだ、こいつはこーいう奴だった。

 子供の頃の様に一つ悪戯でもしてやろうかと思ったが、それはやめる。流石にそこまで体力と動き回る面積を使える状況ではない。

 

「……レムナント、だったんだろ?」

「あぁ、離れている時間が長いからって、実の弟を見間違えたりするものか」

 

 思考を戻す。あいつは、確かにレムナントだった。

 5歳で唐突に出奔した、妙に要領のいい奴だったのを覚えている。

 いや、あるいはあいつは天才だったのだろう、恐らく、政治の。

 

 そして、それ故に政治の薄汚さに嫌気がさして、出奔した。

 その原因となる家の者が、偶然とはいえ近くに現れれば、嫌な顔の一つもするか。

 

「なんにしても、生きてるなら良いさ……親父やお袋に、内緒話が一つ増えた程度だ」

「内心、複雑な事になるだろうね」

 

 全くだ。

 幼馴染の言葉に内心で同意する。

 レムナントが生きていた事、その弟がこうして俺たちを閉じ込めている事、考えるまでもなく頭の中がぐちゃぐちゃだ。

 いずれにせよ、向こうから働きかけがなければ俺たちはどうしようもない、という事実があるだけだから仕方ないのだが。

 

***

 

 果たして、どれくらいの時間が経っただろう。

 周辺の石壁が突然崩れ、俺たちは見知った港に連れてこられている事が判った。

 ……ほんの数週間前に、2隻の戦列艦を旗艦とする大艦隊でここを離れたと、誰もが信じられない思いで見ているに違いない。

 周りに集まっていた者たちが呆然とその船を見上げる。

 

 我々が閉じ込められた石棺を港へ下ろすと、その船は直ぐに帆も張らずに動き出し、どんな快速線にも出せないような船足で消えていった。

 

「おぉ……!アルフレッド!!」

 

 集まっている人々の中に、我が父も居た。

 

「父上、ご心配をおかけしました」

「良い、お前が生きていただけでもありがたいというモノだ」

 

 現辺境伯である我が父が護衛も付けずに現れた。

 本当に、重要人物であるという自覚を持ってほしい物だ。

 

「父上、何度も言いますがせめて護衛の者を付けてください」

「世界中の誰に言われようともお前にだけは言われたくない台詞だな?次期辺境伯殿?」

 

 苦笑し、こちらの進言を受け流す。

 ……ジーニアス、さもありなんという顔で頷くんじゃない。

 

「……それはそうと父上、報告をしたいので執務室に戻ってください」

「そっちは後でいくらでもできよう、今は、生死も定まらぬ息子の生還を喜ぶ親でいさせてくれ」

「それが出来ぬ親もこの場にいる事を、お忘れなきよう」

 

 父はこういう所があるから油断ならない。

 母は輪をかけた天然なので対外用の駒として俺が使われるのも頷けるというモノだ。

 

「……こほん」

 

 流石にばつが悪いのか、一つ咳払いをして空気を変え、同時に周りの目を集める。

 

「ともあれ、艦隊の事、起こった事について報告が欲しい、直ぐに、謁見を行うので準備せよ」

「畏まりました、辺境伯様」

 

 父と息子ではなく、辺境伯と報告者としての会話を短く終え、館へと戻る。

 ともに帰ってきた20人は、家族との再会が叶った。

 しかし、犠牲はあまりにも大きい。

 

「……あれがなんなのか、何者が行った事なのか、調べたところで判る事でもないが」

「証拠も何も、全て船と一緒に海の底……調べる事など不可能ごとの類でしょう」

 

 寒い、少し熱が出てきたのかもしれない。

 何度か咳き込みついでにため息一つ。

 

「いずれにせよ、開戦は避けられそうにない、王都にはそのように報告しておいてくれ」

「畏まりました、後、報告が終わったら体調が戻るまではお休みください」

「あぁ、そうするよ……現状、ぶっ倒れられる状況じゃないからな」

 

 今下手に倒れて長期間動けないとか、ぞっとする、としか言いようがない。

 しかし、本当に熱っぽい、風邪だろうか。

 

 あぁ……くそ……

 

 

 

 倒れてるヒマなんて……




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