アメーバ女神によって異世界転生した俺、リセマラで良いスキルを手に入れたんだけど故郷からは使えないと追放されたので孤島に引きこもってスローライフを満喫します   作:嫉妬レウス

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18話 大きな力を持つ者は大きな責任を厭う

 なんとなく思う所があって、一つの実験を試みた。

 

 「付与、弓術」

 

 対象は、配置してある対人石弓の一つ。

 それに、なんとなく弓術できるかやってみる。

 属性やら効果やらで結構いろいろなものが付与できるから、技能も付与できない事はないだろう、と思っていた。

 ランダムに動く的としてのゴーレムを用意し、技能をエンチャントしたものとしていないものを並べて比較する。

 なんというべきか、弓術をエンチャントしたほうの石弓は、していないものに比べ、比較にならない命中率の高さを叩き出した。

 どういう事かと調べてみると、何もしていない石弓はその時その場にいる敵を狙って打っているのに対して、弓術をエンチャントした石弓は相手の動きを予測してその先に射撃を置く……つまり、偏差射撃を行っていた。

 そうなると、他の技能もエンチャントして有効かどうかを確かめなければ。

 これは、世界が変わるぞ。

 

***

 

「君から私に話しかけてくるとは珍しいね、ご主人様」

 

 その日の午後、カタツムリ相手にうだってた元アメーバことフレーアルに声をかけ、島の中ほど、開発が進んで大分開けた平地になった場所にやってきた。

 

「リーザ達みたいに、私にも手ぇ付けるつもりかな?」

「いやそれはない、それよりもフレーアル、お前相手のスキルや技能がどれ位か、ってみる事は出来るか?」

 

 おや、と心の底から珍しがるような表情をするフレーアル、俺の方は普段通りだから面白味もないだろうに。

 

「出来る出来ないで言えば、出来るよ」

「なら話が速い、こいつの技能……いや、ステータスを調べてみてくれ」

 

 俺が指さしたのは、一体のゴーレム。

 

「なんだ、珍しく通常のゴーレムじゃないか、こいつ等なら大体持ってる技能は物理関係や運搬関連、レベルは製作者に依存って所だけど……」

 

 ゴーレムを見据えてむにゃむにゃと何か唱えるフレーアル、その動きがぴたりと止まった。

 

「……なぁ、ご主人様?私の見間違いじゃなければゴーレムに剣技の技術が付いてるんだが」

「よし、成功だな」

「ちょっとまて何したんだガチで」

 

 かなり素の声音だった。

 

「何をも何も、技能をエンチャントしただけだぞ」

「……あ、そうか……構造的には一応出来なくもないのか……けど、世界の不具合の利用に近いね」

「使えるモノを使っている、文句を言われる筋はないぞ」

 

 それに対して、フレーアルは一つため息を吐く。

 

「別にゲームじゃないんだ、見つけたものをどう使おうとご主人様の自由だよ」

「随分物分かりが良いな?」

「これに関しちゃ、知らない方が悪い、で済む話だからね」

 

 肩をすくめながら言うフレーアル。

 苦笑しながら納品後にプログラムのバグが見つかったゲーム開発者みたいな顔をしていた。

 

***

 

 島の防衛の為に据え付けていた射撃武装群に、それぞれの射撃武器に対応した技術を付与する。

 これにより、命中率の向上が期待できる、というのが凄くでかい。

 燃料気化爆発はしっかり装甲した目標には大きな効果を期待し辛いからな。

 

「少なくとも木造船にはこの上もない位壊滅的な打撃を与えると思うんだけどね」

「相手には大和級やモンタナ級が量産されててもおかしくない、自分の手持ちはガレー船、それで勝てるように考えるのが戦略だぞ」

「よし判った、君、バカだろ」

 

 なんだと、とフレーアルと喧々諤々のやり合いをいつものように行ってから、もう一度技能付与の続きをやる。

 ……人に対して服従だの、好意を抱くだのって付与も出来るんだから、このエンチャントって技能、人間的に問題のある奴が極めたら大問題なんじゃ。

 

「すっごく今更な事を考えるね、君は」

 

 なんだかんだと傍で付与を見物していたフレーアルが呆れ切ったように言う。

 

「まぁやった事云々で言えばクズの所業だと思っているけど、同時にできたのに誰も知らないって事は誰も今までやってなかったって事だ、さっきの技能付与と同じで見つけたものをどう使うかはご主人様の自由だと思うよ」

 

 思ったより現実的な反応で寧ろ驚く。

 

「大きな力には大きな責任が伴う、なんて理想論を抱いてるなら、寧ろそれは捨てたほうが君の為になる、大きな力を持つ者は大きな責任を負う事ができるが、大きな力を持つ者がそれを望むとは限らない、としてしまう方が正しいさ」

 

 それが君の認識だろう?と苦笑しながら言うフレーアルに、あえて無言を貫く。

 間違ってはいないが、内心を読まれて嬉しいとは思わない。

 

 俺の様に力を得た者に誰もがしたり顔で偉そうに言う。

 

 お前の得た大きな力は皆を幸せにするための物、つまりは俺を幸せにするための物だ、だからお前はお前自身の利益や幸せなど考えるな、全て俺の為に尽くせ、大きな力を持つ者には大きな責任が伴うのだ、責任を果たせ、お前に幸せなど必要ない、それは俺のものだ、お前のものではない。

 

 ふざけるな。

 俺の幸せは俺のものだ、俺の得た力を俺が使いたい様に使って何が悪い。

 ようやっと手に入れた自由を、自分が幸せになる為に使う事がそんなにも許されざることなのか。

 なら、そんな世界など必要ない、全て壊して俺の、俺だけの幸せを手に入れるまでだ。

 

「……そうだ、大きな力を手に入れたから、それを使いこなせるよう努力した、それで自分を幸せにしたからと言って文句を言われる筋は無い」

「私は別に君を否定はしないさ、したいように、したい事をすればいい」

 

 俺の頬に手を当てて、フレーアルが微笑む。

 そこでふと、俺は我に返った。

 

***

 

 大きな力を得た者が、大きな責任を負うとは限らない。

 俺は、この言葉は誰よりも知っているはずだった。

 大きな力なんぞ望むべくも無かったが、大きな責任は常に背負い続けていたのだから。

 その逆が、あって然りだった。

 一般的な派遣よりもややお安い給料で、会社全体の土台を支える様な仕事。

 使っていた側は笑いが止まらなかったに違いない。

 本当に、こっちに対する責任は全部知らん顔してぶん投げてたからな

 

「……そうだな、俺が俺の生きやすい様に生きて何が悪い」

「……まぁ、やりすぎは困るけどね」

 

 言いながら、フレーアルが手を離す。

 正直、今はとても清々しい気分だ。

 

 ずっと胸の内に残っていたしこりが取れたかのような。

 思う様に生きる、つまりはそういう事なんだろう。

 

 俺はようやく、俺を縛る何かから一つ自由になれた気がした。




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