アメーバ女神によって異世界転生した俺、リセマラで良いスキルを手に入れたんだけど故郷からは使えないと追放されたので孤島に引きこもってスローライフを満喫します   作:嫉妬レウス

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20話 「笛」吹き達~アルフレッド視点~

 魔軍との戦いは、サンベルタと王国の間に浮かんできた、あの島で行われた。

 いや、ここはもう島などではなく、小さ目な大陸、と言ってもいいだろう。

 物資、軍勢を揚陸し、会敵間近という所で、対魔軍連合はその陣形を整える。

 

 勿論、それを待つほど魔軍の礼儀は良くなかった。

 地走竜の騎兵を中心とした騎馬部隊が早速こちらに一当て、とばかりに襲い掛かってくる。

 おそらく、荷馬車部隊を蹴散らして、その勢いを駆ってこちらに一当て、というのが狙いだと見た。

 それは間違っていなかったようで、彼らは自分たちが蹴散らした荷馬車部隊がどうしているか等、まるで興味がない様だ。

 それは間違ってはいない。彼らが蹴散らしたのが、本当に「先端を鉄で覆っただけの棒を持たせた、数合わせの平民を荷馬車に詰め込んだだけ」の部隊なら。

 

 戦場に、一千の戦太鼓を同時に叩いたかのような音が響き、竜騎兵たちがもんどりうって倒れる。

 先頭に立っていた赤い鎧の魔族が、暴れる竜をなだめながら、何事かと探る様に周囲を見回す。

 

 そしてその動きが止まり、信じられないものを見つけたかのように唖然としている。

 

 おそらく、見つけてしまったのだろう。

 散り散りに逃げていたはずの荷馬車が集まって、一つの城砦が組み上げられているのを。

 そしてその銃眼から覗く、無数の「笛」の砲口を。

 

 再度の発砲音。

 それだけで、再び何十もの騎兵が転倒する。

 状況を見定めた赤鎧の指示は早かった、すぐさま、敵騎兵たちは撤退していく。

 追撃の射撃音が響く中、初戦はどうやら、我々の勝ちに終わったようだ。

 

***

 

 勝利の報に沸いたのは一部の兵のみで、多くの将兵は複雑そうな表情を浮かべていた。

 主に我が国北部の領からかき集められたものと、他国の将兵がそれだ。

 

 あの「笛」の存在で間違いなく戦いは変わる。

 個人が携行可能な、貫通力に特化した「砲」などという存在を、実際に見るまで信じていない者が多数だったのだから。

 多くの、特に騎士階級の者が、限りなく複雑な表情を浮かべているのは、あの荷馬戦車部隊が戦列に混じると決まった時に、自分たちも散々にやられたことを思い出したからだろう。

 あれは酷かった、10回やって7回全滅判定、かろうじて勝利判定が出たのも、やけくそで撃った矢がたまたま指揮官を抜いての偶発的勝利。

 貴族の誇り、騎士の矜持などなんの役にも立っていなかった。

 装甲を施された荷馬車は簡易的な障壁となって騎兵の突撃を阻み、そもそもそこにたどり着くまでに簡単に鎧を貫いてくる貫通力を持つ弾丸が休む間もなく襲い掛かってくる。

 

「……事が終わった後、戦争は変わるな」

 

 鎧一つすら身に纏う事の無い平民が簡易的に作り上げた陣地に、無謀な突撃をしては壊滅的打撃を受けるという事を繰り返す騎士達を見て、老将軍が一言呟いた。

 

***

 

 結果として、人類連合は魔軍に対して余裕を持った勝利を収める事ができた。

 これは人々を守るという大目標にとってはいい事であり、現在の階級社会を維持したい人々にとっては頭の痛い勝利だったに違いない。

 

「流石、天剣様は余裕って感じだな?雑兵が新兵器を使った所で剣一本あれば平定できるか?」

「いや、俺も模擬戦はやったが手も足も出ずに戦死判定だった」

「は?」

 

 その場にいた誰もが俺の言葉に動きを止める。

 

「いやな?相手の陣地まで120歩以上あるっていうのに、こっちを一撃必殺できる礫が雨霰、なんだぞ?天剣なんて言ったって、頑張って腕伸ばしても精々1歩だ」

 

 そう、剣が腕で振る武器である以上、その射程はあくまでも至近距離に制限される。

 矢のような、ゆっくり飛ぶ大きな的であれば切り落とす事も可能だが……「笛」はものに寄っては被弾の衝撃の後に発砲音が来ることもある。

 勿論目で追えるものではない、ほんとにどうしろと言うんだ。

 

「やっぱ、狙わせない、が最善だろうぜ」

「……ただの平民相手に逃げを打つのか?」

 

 横から入ってきた弓兵……確か彼は天弓のスキル持ちだ。

 その彼もやはり渋い表情で俺と話していた槍鬼のスキル持ちに言う。

 

「少なくともアレを持った奴が相手である時は、貴族だの平民だのってのは捨てるべきだ……こっちに撃ってくる弾丸に、そんな事は関係ないんだからな」

 

 弓持ちでも、模擬戦で勝ちをもぎ取れたのは相当の上手だけらしい。

 彼も勝つには勝ったが、味方の死体の山を盾にして指揮官狙いがうまく行っただけの事。

 

「……戦場は変わるな、騎士や戦士が誇りをかけた戦いの場ではなく、ただ相手より性能の良い武器を相手より多くそろえた側が勝つ戦場に」

「……戦争から誇りが消える、か」

 

 誰ともなく、戦馬車戦術の訓練を行う平民たちを見る。

 魔軍の中にも、誇りによって立ち、誇りの為に戦うものはいたのだろう。

 戦いは、その誇りなど容易く踏み躙る様になっていくのではないか。

 ふと、頭に浮かんだ考えを振り払うように頭を振る。

 今は、次の戦いの事だけを考える時だ。

 

***

 

 翌日、戦馬車隊は中衛に下げ、前線は騎士隊が務めた。

 結果として魔軍、人軍双方ともそれなりの損害を出し、戦線は膠着と言った所で推移する。

 このまま行けば、やや押され気味の痛み分けか、という所で戦馬車隊が動いた。

 機動力と防御力を活かして、魔軍の歩兵隊を半包囲するように包み込み、隊列の中を即席の殺し間に仕立て上げる。果たして包囲が解かれた時、生きている魔族は存在しなかった。

 戦場の主役は、間違いなくこの平民たちに移っていた。




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