アメーバ女神によって異世界転生した俺、リセマラで良いスキルを手に入れたんだけど故郷からは使えないと追放されたので孤島に引きこもってスローライフを満喫します   作:嫉妬レウス

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21話 残る者 進む者 ~魔王視点~

 我々と人の戦いは、緒戦でありながら熾烈を極めた。

 決して侮っていた訳ではない、しかし、人は誇りの為に戦う戦いから、殺すための戦いに戦い方をシフトさせたようだった。

 

 激しく、苦しい戦いは……最終的に我ら魔軍の勝利に終わった。

 しかし、この勝利を手放しで喜べるものはいないだろう。

 なぜなら、最終的に勝ったのは我々ではなく、死病だからだ。

 

 人の軍を襲った死病は、存分にその猛威を振るい、貴族も平民も人も魔族も区別なく殺しつくした。

 戦場は最早戦いどころではなく、魔軍、人軍共に自然と撤退を行った。

 その最中、人の中に「天剣」のスキルを持つ者がいて、周りの者を取り纏め、最後まで戦場に立ち、背後に立つ者たちを守っていた、と報告を受ける。

 「天剣」の勇者。

 ふと、そんな御伽噺を思い出し、苦笑する。

 大いなる力には大いなる責任が伴う、まさかそれを実行できる人がいるなど。

 

 その人物と話がしたい。

 私は、心の底からそう思った。

 

 ……さて、現実から目を背けるのはやめて、そろそろ現実を見据えよう。

 

***

 

 死病は人も魔も関係なく、その場にいる全てを襲った。

 人も、魔も。

 そう、我が魔族にも、遂に死病がその牙を剥いてきた。

 これまではあくまで人を中心にその被害が出ていた病は、魔族が有する強靭な肉体とマナの防壁を超えるほどの力を手に入れて来たらしい。

 ……誰にも制御などできない、ただただ純粋な死の具現。

 その病に倒れた者達を埋葬した者までもが、病に侵される。

 

「……魔王様」

「アクレピオス、この病が発見されてから苦労を掛ける」

「いえ、私などには勿体ないお言葉……それよりも、この病の出所はやはり人軍です」

 

 その報告に、私は我知らず眉を顰める。

 

「どういう事だ?」

「正確に言えば、人軍の捨てた残飯や糞尿、死体……それらを食った鳥が病に罹り、周りの鳥にも病を広げるうちに、魔力によって魔化した鳥や、あるいは病そのものが我が陣内に侵入したかと」

「……今すぐ、この島を離れなければ」

 

 呟いた言葉が聞こえたか、アクレピオスが瞑目して頭を振る。

 

「同様の報告が、世界各地から届いております」

「なに!?」

「この病の源は、世界中で同時多発的に同じ変化をしたのです」

 

 今度こそ、私は無意識のうちに立ち上がっていた。

 それはつまり……

 

「今後、同じ事が無いとは限りません……幸いにしてこの所世界中に偵察を送っていたことから、様々な情報が確保できております……病の届く可能性が僅かでも低い所を移動し、時を稼ぎましょう」

 

 他に、どうしようもなかった。

 世界を焼き尽くす事が出来る力を持ちながら、目にも見えないような生物に敗北し、逃げる。

 あきれ果てる程弱い魔王も居たものだ。

 

「……時間は、どれだけ必要だ?」

「……皆目見当もつきません、それに、あの手の生物は相当極端な環境でも生き延びる事ができますので」

 

 本当に、どうしろと言うのだ。

 

「時間をくれ、考える」

「お急ぎください、その時間が、世界にはないのです」

 

 ……心の底から、魔王を辞めたいと思ったのはいつ以来だろう。

 辞めたいと言って辞められるものでもないが。

 

***

 

 

 これまでなんとか死病を食い止めてきた我々にとって、それはまさに「ヒビの入った城壁に対する破城槌の一突き」だった。

 戦場となった場所から魔軍、人軍双方が撤退後、この新大陸でも死病はその猛威を振るったのだ。

 これにどう対応するか……その答えを出したのは旧サンベルタの国民たちだった。

 

 老いた者、動けぬ者が、まだ病に侵されていない若者に明日を託し、どこかわずかでも安全な場所へ、と直訴を行った。

 

「我々は長く生き過ぎた、ここで朽ちるのもその罰と受け入れよう、しかし若者には希望がある。病に侵されていないものには明日がある、そう言った者を引き連れて、安全な場所へ遷都して欲しい」

 

 それが要求の全てであり、それ以外を誰も望んではいなかった。

 当然、魔族からは反対の声が上がったが……

 

「真に勇気を持ち、行動する事を恐れないものを勇者と言うのだろう?だったら、今ここで我々が歌舞いて見せれば、勇者の称号はわしらの物として伝わる、そんなセコい思惑があるのさ」

 

 と笑って聞かない。

 若い者を生き残らせ、足手まといと自らを切り捨てる。

 命の選別……しかし、全ての人々を守り切れないのもまた事実だ。

 

「……すまない、返す言葉もない……そして、感謝をしてもそれを口にするわけには行かんのだ……許してくれ」

 

 何も報いれない私にできる事は、ただ居住まいを正し頭を下げるのみ。

 しかし彼らは、心底楽し気に笑う。

 

「魔王様に頭を下げさせたジジィババァなんぞ、伝説以外になりようがない、長たるものが軽々に頭なんぞ下げるもんじゃないぞ、若造!」

「そうだ、わしらは伝説になりたいんじゃぁない、孫やひ孫達に語り継がれたいのさ」

 

 なんとでも言っていい、私には、この程度しかできないのだ。

 世界を破壊できるほどの力を持つ魔王とは、これほどまでに無力なものだったのか。

 

 それから一月後……

 

 数多くの別れを惜しむ人々が、この国を離れた。

 私と共に、後ろ髪を引かれながらこの地を離れる人々と、笑顔で手を振り別れを告げる人々。

 そのほぼ全てが、今生の別れである事を誰もが知っている。

 

 サンベルタの街全体が見える山の上で、皆が涙をこらえながら街に別れを告げている時……

 

 サンベルタの中央広場から、大きな花火がいくつも打ちあがった。

 祭りの時に打ち上げる位しかない花火が、いくつもいくつも、大空に花を咲かせる。

 

 まるで、残った人々が、行った人々にエールを送るかのように。

 

 そして人々は……

 

 後ろを振り向くのをやめ、前を見やる。




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