アメーバ女神によって異世界転生した俺、リセマラで良いスキルを手に入れたんだけど故郷からは使えないと追放されたので孤島に引きこもってスローライフを満喫します   作:嫉妬レウス

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22話 実験と予感

 

 ここしばらく静かだったのに、また射石砲が超水平線射撃をするようになった。

 今度は定期的に、長く続くのでそれなりの数の船が領海侵犯をしているのだろう。

 近づかなければなにもされないのに、この世界の人間は馬鹿の集まりなのだろうか?

 

「いやね?この辺りの潮流の関係上、どうしたって船は射石砲の射程内に入るって知ってるかい?」

「しらん、それこそ航路を変えればいいだろう」

 

 フレーアルはフレーアルで相変わらず頭がお花畑だ。

 

 沈めた船の残骸はいつも通りに海岸に流れてくる。

 これまで無かった女子供の死骸も多いが、まぁ大した違いじゃない。

 リーザとミリシア用に服を取っておくか確認すると、真っ青な顔で拒否られた。

 作るのは良くて拾うのはダメなのか、女の子と言うのは我儘なもんだ。

 

 という訳で、流れ着いた死骸からかっぱげるものをかっぱいで、死骸は海へ還す。

 これらのものを埋葬と言う形で地面に埋めても良いことは無い、腐臭が余計なものを呼び込むだけだ。

 海に流してしまえば、海の魔物たちが全て食いつくし、後には何も残らない。

 年ごろの女も相当数混じってはいるが、流石に黒焦げになった死骸に欲情したりはしないしな。

 燃えるものが多かったのか、焼け死んだ死骸が思った以上に多い。

 結果として、使える布はかなり少ないことになっているが、これは仕方ないだろう。

 拾い物に文句を言っても仕方がない。

 

「しかしなんだね、本当にアニミズムの国から来たとは思えない位ドライだね、君は」

「死骸は何も言わない、何も思わない、何も使わない、だったら生きてる奴が使えるモノを有効活用する、間違ってるか?」

「その現実的な所、私はどうでも良いけど、気に食わないって人は一定数常にいるって事は覚えておくと損は無いと思うよ」

 

 そういう奴は目の前の現実を見てないだけだから俺が忖度してやることは無い。

 

***

 

 養鹿牧場や農場もだいぶ軌道に乗り、定期的な収穫が十分に見込めるようになった。

 俺のスローライフにまた一歩近づいた、と言える。

 

「しかし、なんだね……移民船でも撃沈したんだろうかね?」

「フレーアル、お前は敵の都合に一々気を回すのか?」

「ご主人様が自分と身の回り以外の全てを敵と判断するのはもういいさ、どうやったって軌道修正はできそうにないしね」

 

 やれやれと肩をすくめるフレーアル。

 よくもまぁ人を好戦的な戦闘狂みたいに言ってくれるもんだ。

 俺ほどの平和主義者が世界中のどこにいるってんだ。

 

「あ、ご主人様!」

 

 そんなタイミングで、リーザが籠に一杯の卵を抱えて部屋に入ってきた。

 

「見てください!長尾鳥の卵がこんなにとれました!」

「そうか」

 

 だからなんなんだ。

 

「おー、凄いね!これだけあればでっかいオムレツ作れるよ!」

「はい!挑戦しましょうね!フレーアルさん!」

 

 何か知らないが急に楽しそうにし始める二人。

 うん、置いとこう。関わる事は百害あって一利なし。俺はあそこまで馬鹿じゃない。

 鳥飼ってるんだ、卵位取れるだろう。

 それの何が楽しいってんだ。

 

「……」

「なんだ?」

「いえ、何も……」

 

 ミリシアの方はミリシアの方で、何も言わずに俺の方を見ていた。

 その視線に憐れみのようなものを感じて、少しイラつく。

 

「言いたい事があるならはっきり言え」

「何も言っておりませんが」

 

 ……言われて見れば確かにそうだ。

 俺が勝手に視線を感じて勝手にイラついただけの事だ。

 

「そうだな、すまない」

「問題ありません」

 

 つんとした、いつもの表情。

 その時、それが少し違うように感じた。

 

***

 

 高い空を、見た事も無い生物が1匹飛んでいく。

 防衛設備が反応していない所を見ると、相当高い所を飛んでいるんだろう。

 

「おー、珍しいね、竜だ」

「へー、初めて見たな」

 

 くっそ興味ねぇ

 なんだっけ?ドラゴン?俺そーいうの判らんから、ガチで。

 

 結局その鳥だか蜥蜴だかは空の高い所から降りる事無く、なんどか輪を描いてからどこかへ飛び去って行った。

 

 それから特に大きく変わった事は起こっていない。

 あれも迷い込んだだけとかそういうのなんだろう、こっちに関わろうとしなければ、蜥蜴が飛んでようが這ってようが一々気にすることは無い。

 それよりも目の前の実験の方が大事だ。

 地下10メートルまで掘り下げた円形闘技場の中で、向かい合う二つの物体。

 一つは全10段階の内8段階目、皇剣のスキルを持つ熟練の剣士でようやく太刀打ちできると言われている、長爪羆。

 一つは、いつの間にかスキルがエンチャントできるようになっていたので、思い付きで9段階目、天剣のスキルを付与してみたゴーレム。

 二つを仕切る土壁を、魔法で崩す。

 目があったその瞬間、戦闘が始まった。

 長爪羆、その名の由来になった長剣ほどもあるその爪が、まさに剣で薙ぐようにゴーレムに襲い掛かる。

 ゴーレムに斬撃など、と思ってはいけない。羆の膂力をもって振りぬかれる鋭い爪は、重さと鋭さの両方を併せ持つ……らしい、知らんけど。

 なるほど、確かに周りの鉄で覆ったくらいの壁は結構な衝撃を受けているようだ、所々歪んだようにも見える。

 しかし、目標のゴーレムは、と言えば傷一つ負っていない。

 これが、スキルによる格の違いか。

 真正面からの殴り合いになると、それは更に顕著になった。

 長爪羆の攻撃は、そのどれもがゴーレムに届かない。

 ゴーレムの攻撃は掠めただけでも致命傷。

 カチあった攻撃は、全て長爪羆が押し切られる。

 結局、長爪羆は両腕と頭を切り落とされて死んだ。

 

「OK、実験終了」

 

 ついで、ゴーレムの動きも止める。

 下に降りて確認すると、ゴーレムの方は掠める程度の傷は多いものの、さして目立ったような損傷は見られなかった。

 この世界、格下には圧倒的に強くなれる様だ。

 たぶん、これを覆せるのは余程の例外だろう。

 

 地上に上がると、また例の蜥蜴が飛んでいた。

 今日は、随分と高度が低い……それでも、防御システムが反応するほどではないが。

 

 何かが来る。

 

 ふと、そんな確信が胸をよぎった。




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