FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第四十六章・裏:飛竜襲撃

 緑豊かな土地。何処までも続く田舎道。霧の都とは違う、長閑な風景。ライネスさんはここの辺りの何処であっても、飛竜が襲い掛かってくる事もありえない、と申しておりました。ですが。

 現状、我々の置かれている状況はといえば――

 

「――平和!!!! IS!!! 何処!!!!」

「私も平和だと思ってたんだよ! 実際ここを偵察した時は本当に襲われなかった! こんなに掌を返される事は時計塔でもなかった!!!!」

「ライネスさん、私の後ろに……!」

「っち、空飛ぶ蜥蜴風情を相手になんで逃げなければならんのだ」

「ご、ゴルゴーン様……アレらを全部相手にしてたら持ちません……!」

 

 上下左右。おまけで後ろ。前以外には全てワイバーンがずらり。端的に申せば、こうでございます。完全包囲一歩手前でございます。

 ……なんと申しますか、本当に一瞬の事だったのです。

 先ほどまで、彼らは何をしようと全く反応はしませんでしたでした。私たちが近くを通っても全く。ライネス様の言う通り……野生の動物の如く、存外と大人しいままだったのです。

 

 なのでライネス様のおっしゃる通り、ここで一つ、色々話し合おう……と、思った直後の出来事でした。

 

「というか全部がアレが悪いだろうが! なんだよいきなり出てきやがったあの真っ黒ヤロウは! またシャドウサーヴァントじゃねぇか!」

「でも以前見たシャドウサーヴァントとは様子が違うと申しますか!」

『ふむ、いつもの刀らしいものはもっていないが……?』

 

 やはりというより、またもと申すべきなのか。我らの前に立ち塞がって来たのはシャドウサーヴァント。

 しかし私達が今まで遭遇した物とはどうも違うと申しますか。

 そのシャドウサーヴァントは、突如として私達の前にふらりと現れ。その手に持った旗をかざしたのです。そして。それに従うように、突如として、私たちへの関心など、殆どなかったワイバーン達が……

 突如として、私達に牙をむいたのです。

 

「それにアレって……」

「えぇ、マスター……私の記憶に間違いが、なければ」

「何の話だ」

「あぁそういや、ゴルゴーンさんが来る前だったっけか!?」

 

 ゴルゴーン様が召喚される、その前。

 第一特異点にて。私達が相対したかの聖女。その()()()()()()()()()()()()()()姿()を、あの影法師を見ていて思い出しました。

 その影法師の旗の一振りに呼応するかのように、ワイバーン達は、突如として狂暴化して暴れだし……

 

「ああ思い出す……あの自称竜の魔女サマ、ワイバーンとか操ってたな!? なんでそれの再現を今ここでやらなきゃいけないんだ!」

「なんだい!? 彼女とは知り合いかい!?」

「全く知り合いではございませんよあんな凶暴なお人はぁ!」

 

 というか、敵でした。

 ワイバーンどころか、悪名高い邪竜をも従えた……黒いジャンヌ・ダルク。オルレアンを蹂躙せし黒い聖女。この景色は、かのオルレアンを思い出すこともありますし、余計にあの苛烈な炎の温度が思い浮かんできます。

 

 今まで、幾度となくシャドウサーヴァントと渡り合ってきた我々ですが、しかしながら今回の影法師は今までと桁が違います。ワイバーンも大量に従え、正にオルレアンの時の再現の如くです。

 

『兎も角逃げたまえ! 方角的に、もう少しでレディ・ライネスの言っていた場所に辿り着くと思う!』

「流石のお言葉、グルジアの軍師様様だぜ! んで、もう少しってどれくらい?」

『……もう少し頑張ってくれたまえ!』

「流石のお言葉!!!!! グルジアのぐんしさますげーなー!!!!」

「まぁ実際そう距離はないから頑張りたまえよ!」

 

 であれば。この逃走劇は、決して間違っていないのでしょう。

 ライネス様は、ここを拠点に特異点を調査していた、とのことで。我々はその時に使っていた『砦』をまず目指していたのです。その途中での、襲撃。

 とりあえずは、そこに立てこもってワイバーン達とあのシャドウサーヴァントを撃退するのが、とりあえずの目標です。

 

「本当にその砦、大丈夫なんだろうなライネスちゃんよぉ!」

「流石に何もできないままに崩壊する程じゃないと思うよ、ワイバーンだけならね」

「ああそうかい! あのシャドウサーヴァント、本当に余計な事ばっかりなァ!」

「――皆さん、前っ!」

 

 ですが……その目標の事を考えていた所為か。その事に気が付くのに、一手遅れてしまったのです。

 グレイさんの指さすその先、我々が向かうその先に、既に何匹かが待ち構えていたのです。ワイバーンが。先回りされていたのでしょうか。

 

「っち、頭使いやがる……ゴルゴーンさん、礼装の強化回す、いけるかっ!?」

「誰にモノを言っている。ちょうど鬱憤が溜まっていた所だ、それを晴らすつもりで焼き払ってくれる!」

 

――しかし、それに動揺するも先に。

 

「グレイ! 援護はする、頼むぞ!」

「はいっ! アッド、お願い!」

『任せなァ!』

 

 マスターも、ライネス様も。手早く指示をお味方に飛ばし。ゴルゴーン様は魔力の光線を、グレイ様は、アッド様を……ぶーめらん、というのでしたか。その形に変形させて、全力で投擲を。

 前に回っていた数匹のワイバーンは、その一撃で撃ち落とされるか、あるいは態勢を崩し、此方を阻むどころではありませんでした。

 

 が、それでも一匹程はその攻撃をすり抜け、こちらへと突っ込んできます。

 

「――式部さんッ!」

「は、はいっ!」

「トリムマウ、よろしく頼むよ」

『――承知しました、お嬢様』

 

 ですがその一瞬で、私もようやく態勢を整えられて……マスターからの礼装の支援を受けて、冴えた感覚で相手を狙う事が出来るようになっています。これで外す事は、恐らくそうはないと思うのですが……

 ……とりあえず。

 

「あの、ライネス様、そちらの方は?」

「ん? トリムマウの事かい? 私の……まぁ、屈強なメイドだとも」

 

 唐突に生えてきたそちらの銀色の方は一体どちら様なのでしょうか……とか、そういった事を気にせずにいられれば、間違いなく直撃はさせられる、とは思います。恐らくですけれども。

 

 

 

「――っはぁ……とりあえず、撒いた……訳じゃなさそうだな」

「見失っただけのようだね」

『お嬢様、お怪我はございませんか』

「あぁ、君のお陰で疵一つもね」

 

 とりあえず、前方を突破し、何とかワイバーンの包囲網を築かれる事だけは避けられましたが、しかし。現状、未だあのシャドウサーヴァントを振り切れたわけではございません。こうして、森に姿を隠して様子を伺ってはいるのですが。全く警戒を解く気がいたしません……というか。

 

「しつこ過ぎねぇか? さっきからずうっとここら辺うろついてる……」

「普通ここまで探したら離れそうなものだけどねぇ」

 

 全く同じ場所を、あのシャドウサーヴァントは、ずっと歩いているのです。ワイバーンを引き連れて。マスターのおっしゃる通り、一、二時間は変わらぬ足取りで、探しているでしょうか。

 周辺を見回す、だとか。近くを探す、とかでもなく。ずぅっと、ぐるぐるぐるぐると同じ足取りで。その間、空中に偶にとどまって周辺を睨みつける、ワイバーンの方がまだ人間臭く感じる程に。

 

「まるでロボットのようにも見えてきてしまうが……」

「どーやら、見た目は違っても俺が戦ってた、あのシャドウサーヴァントと同型みてぇだなぁこりゃあ」

「そうなのかい?」

「あの魂の抜け具合というか、命令に順守する、的な無機質な動きだとか……ね」

 

 マスターのおっしゃる通り。しかし、それを考えると、不穏と申しますか。

 まるで量産型の如く、画一的なものしかいなかった、あの黒い影法師達。それらに、新たな形が現れた、というのは。

 

「ったく、どうする。多少のダメージ覚悟で打開、しかないか?」

「いや、私の言った砦は近い、下手なダメージは負わなくても、そこへ辿り着けはするだろうとは思う。とはいえ、タイミングが欲しいが……」

「んじゃ仕方ねぇ。状況の打開のためだ……ダ・ヴィンチちゃん? 令呪の使用、シルブプレ?」

「それ私が言う側だと思うけど……まぁいいや、やっちゃっても大丈夫だとも」

「っしゃあ! んじゃあまぁ、派手な一発だとバレちまうし……式部さん」

 

 ですがそれを考える前に、ここを打開するのが先決。マスターの言葉に頷けば、少し甲高い音を立てて、令呪が消えて……私の体に、魔力が回ってくるのを感じました。

 

「式部さんが宝具を開放すると同時に動く、でいいか?」

「よろしい、やってみたまえ」

「偉そうなのやめなー? ……今っ!」

「――宝具、開帳いたします……『源氏物語・葵・物の怪』」

 

 私の宝具は、呪詛を以て相手の滅びの運命を誘う者。正直、あまり派手なものではありませんが、しかし……こうして、相手がこちらを視認できていない時に打ては、多少の不意打ちにはなり得ます。

 

 びくっとしたその直後、数匹のワイバーンが唸り、その声を弱々しいものに変えていくのが見えました。

 

「――どけっ!」

「アッド、お願い……っ!」

 

 シャドウサーヴァントが一歩、反応に遅れ、そして……そこに集中するお二方の攻撃がワイバーン達を蹴散らします。

 相手の動きを崩したのを確認し、マスター、およびライネス様、そして私も走り出します。シャドウサーヴァント側も、どうやら攻撃の余波を受けて、体を崩していたようでこちらへちょっかいをかけては来ません。

 

「へへっ、ざまぁみさらせっ」

「油断しちゃいけない、まだ近くにワイバーンが潜んでいるかもしれないよ」

「っと、そりゃあそうだ。いかんなー、どうにもパンピー時代の癖が――」

 

 このまま追っ手を振り切れる。

 そのような雰囲気が漂っていました。実際、後ろのシャドウサーヴァントは完全にこっちの奇襲に崩されて、指示の出しようもない、ように見えました。

 しかし――

 

「……っざけんなっ!」

「うわっ!?」

 

 次の瞬間、隣を走っていたライネス様を突き飛ばしたのはマスターでした。何事か、とライネス様が視線を向けた瞬間には、既にマスターはその頭から、角を生やし……空中からの奇襲を仕掛けてきた、ワイバーンの顔面を殴り飛ばしていたのです。

 森に入っていたからこそ、木々に阻まれ見えなかった、更なる上空からの兵力。危ないところでした。ゴルゴーン様も、グレイ様も、私も、一斉攻撃から離脱しようと考えていた所で、ライネス様に近いマスターでなければ、間に合わなかったでしょう。

 

「――この野郎」

 

 しかし。

 相手の一撃を迎撃し、そのまま離脱すれば、終わりになる話……だと思われていたのですが。マスターの表情が、憤怒のモノに歪んだのは、その直後でした。

 

「上等じゃねぇか蜥蜴が! ひき肉でもなる準備を――」

「ま、まてっ、今は離脱優先だ! 相手にするんじゃ……!」

 

 ライネス様の静止の言葉は届かず。マスターはその降りてきたワイバーンへとこぶしを構えようとして……しかし――そのワイバーンと相対するマスターの後ろに、降り立つ影がもう一体。

 それが何かを確認する前に、術を編もうとしました……が。

 

「――マスターッ!?」

「がっ……!?」

 

 一歩間に合わず。

 もう一匹のワイバーンの爪牙によって切り込まれたマスターの背中から、鮮血が舞い上がるのを、私は、見ていることしかできなかったのです。

 




違うんだ! 赤得が勝手に!
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