FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第四十七章・裏:危険への自覚

「特異点ってのは……っあー……今さっき話した通りこっちの度肝を抜く事、んぐ、ばっかりで、な。昔の人たちが目の前にいるってのは、いや、そうは見えなくてもとんでもないショックな……わけだよ」

「ふむふむ」

「それに加えて、俺を狙ってる……臭い、黒子が何人も向かってくるんだから、まぁ……それについて『なんで!?』って思った事は、っすぅ……数知れずだよ。それは、言わないけどな」

「ふーん。なんでだい?」

「言ってもしょうがないから?」

 

 目の前の禿げたマスターから、この特異点に来る前の事について、色々聞いてみているのは……まぁ、ぶっちゃけて言ってしまうとただの興味が半分以上を占めている。彼から聞いた特異点での経験が、ここの攻略に役立つかは、ぶっちゃけると分からないし、確約も出来ない。

 間違いなく情報はあるに越した事はない。だけども、それにしたって彼らが遭遇したサーヴァントについて聞けばいいという話だ。でも、それだけを聞くんじゃあまりにも味気がないから。色々聞いている。

 

――問題を解決するための情報は、人と人とが交わる事でしか手に出来ない。SNSだって手紙だって、人と人がお互いの思考を突き合わせていることには変わりない。

 

「第一特異点、オルレアンの竜の魔女、第二特異点、破壊を嘯く超人、そして第三特異点の世界最古の海賊船……それらを越えてきたんだ、愚痴位言う権利はあるんじゃないかなぁ? 我が兄なんて、常に愚痴とフ〇ックばかりだ」

「いやどんな治安? あのねぇ、俺がそんな事言い出したらダメでしょ。一応、世界を救うヒーロー……いやそんな柄でもねぇな。ブチ切れると角だすし、カタツムリみたいに」

「君の角はそんな可愛らしい物じゃないんじゃないかな? がっつりと生えてたじゃないか。雷みたいな角が」

 

 ……まぁそんな話を聞いてる彼は、さっきから結構ダメージに呻いている訳だが。彼曰く『動いていないと体が鈍る』らしい。動いたら余計に傷が開くのではないかとも思うがしかし、最近は手術後も、ある程度リハビリで歩くのが推奨される時代だ、そう考えると割と理に適っている……のかもしれない。まぁそれは置いておくとして。

 そんな風に彼が歩けているのも、この会話の中で、私が知恵を回す必要のある問題に関係している訳だが。

 

「……まっ、角が生えた結果、今回はそんな特異点を乗り越えて来たなんていう自信が、無様でどっかに消し飛んだけれどもなぁ……あっつぅ」

「――話は聞いたよ。君は、あの状態だと気性が荒くなるんだってね」

「にしたって、ここまでじゃなかった。しっかり律することが出来てりゃあ、こんな事にはならずに済んだんだ。ったく」

 

 彼は、どうやらごくごく普通の一般人……という訳ではなかったらしい。

 

「東洋のデーモン……鬼種の血を引いて、それを覚醒させているとは。時計塔が生き残っていたら間違いなく研究材料にするだろうね」

「……なに? とけいとう? ロンドン?」

「ふふ、まぁ一般人はそう思うかな……ま、ロクデナシの巣窟と思ってもらえればいい」

 

 古い人外の血を目覚めさせた、ハーフデーモン。

 

 幻獣種にも匹敵するレベルのレア物だ。剥製か、ホルマリン漬けか……何れにしても禄でもない事になるだろう。

私自身、話を聞いたときは目を疑ったが、しかし。あのワイバーンを殴り飛ばすだけの膂力、そしてがっつりと背中を切り裂かれて、魔術での治療を受けているとはいえここまで素早く復帰する生命力。流石に信じない訳にもいかない。

 

「まぁよくわかんないけど……たぶん、ろくでもねぇ組織なんだな」

「ひどい言い方をする。でも間違いないね」

「よく知ってらっしゃる?」

「私も時計塔で政治に関わるロクデナシの一人だからね。どうだい? 私の暇つぶしの材料になりたくないかい?」

「いや、ご遠慮させてもらうわ」

 

 とはいえ、今、目の前の禿げた男は、普通の人間と変わらないようにしか見えない、そんな異常な力を発揮しているようには到底見えない、というのが。私の正直な感想なのだが……だが、それで済ませていい訳ではないとは思う。

 

「……一つ聞きたいのだけども」

「ん?」

「君、こういうことは初めて、なんだよね?」

「ちょっと頬を赤らめながら言うな。誤解を生む」

「あははっ、すまないね。でも、ちゃんと聞いておきたいんだ……私も、似たような、厄介なものを抱えている身でね」

 

――私の魔眼は、まぁ具体的には違うものではあるが。しかしながらここは、シンパシー感じてもらうためにも、一つくらい、本当の事を言わなくてもセーフ。

 

「……ほーん?」

「私も、これを持て余していた頃もあった。まぁ、親切な義兄のお陰で、なんとか生かすことが出来るようになったわけだけど」

「そうは見えないけどねぇ」

「私個人としては制御できていなかった頃は、まぁむず痒かったし、それなりに嫌な思いもしたわけで。君は……その辺り、どうなんだい。自分のその力の事を、どう思っているんだい?」

 

 という事で、ストレートに。

 正直な話をすれば。発動するたびに精神にある程度の影響を与える、という不安定さは個人的に……時計塔で色々と暗躍していた身としては、どうにも見逃すことは出来ないというのが、正直なところだ。

 

 感情というのは、人間の最も重要な部分だ。ホワイダニットに直結し、それが無ければ人間は、『事件』という物を起こしたりはしない。動機の無い事件というものはそうは存在しない。

 そこにすら影響を与える……というのは、能力としては相当に異質だ。

 『力』というのは、直接、人格に影響を与える事は基本的にない。その『力』に酔い、心を狂わせるのは、力の所為ではない。己の責任だ。

 もし、『力』が宿主を直接的に狂わせてくる、というのであれば……そこには、何かしらの悪意という物が存在する。

 

 その悪意は……自覚しているかどうか、というので、大きく変わるものだ。

 

「――それはまぁ……時計塔、だったか? それに近い印象はあるわな?」

「ろくでもない、と?」

「これが真っ当な力に見えるんだったら、そりゃあそいつの目が節穴だっていう証拠だからなぁ」

 

――意外といえば、意外な答えだった。

 

 彼は、あの能力を迷いなく行使している、という印象があった。

 言い方は悪いが……そんな悪意の見えるような力を軽率な考えの元、使っているようにも見えたのだ。

 リスクがあるなら、それ相応の場面で切るべきだ。私を助けるにしたって、別に突き飛ばすなり、他にも方法はあった中で……敢えて力でねじ伏せる方を選んだ。

 考えているようには、見えなかった。

 

 私に言われたことで、うろたえたり、考え込んだり……若しくは、明確な答えは持っていない。むしろ、この短期間で力を得たのだから、そんな答えを出していなくも不思議ではないとすら思っていた。

そんなことを想像していたのだが。しかし。

 

「……意外だ」

「自覚があったことにか?」

「まぁ、率直に言ってしまえばな」

 

 だが、彼は自分のあの『力』について、何も考えていない訳ではないようだった。寧ろ危険な部分がある、と即答し……さらに言えば、目の前の苦々しい表情は、自分の能力を過信しているようでもなかった。

 

「マジで率直に言うなぁ……けど、軽率に力を振るって自滅した、って思われても仕方ないか、今日のアレは、マジで」

「いやそこまでは言ってないんだが」

 

 心の中で思ってはいたが。

 

「別にごまかさなくていいさ……実際そうだからな」

「軽率に力を振るった、と?」

「というか、リスクがあるのは分かってて使ってた……世界が滅んだんだ、そんなときにリスクにビビって切れる札を切らないなんて、それこそバカのやる事だと思ってる」

「リスク、というのは、感情面の話か?」

「……さて、な」

 

――彼の力は、最近発現したものだと聞いた。

 

 しかしながら……今の彼の表情を見ていると、とてもそうは見えない。何年も何年も自分の力と向き合って来た、そんな凄みを纏っているように見えた。

 あの命のやり取りの現場に於いての行動で、自分が軽率だった、というのを認めるのは容易い事ではない。

 

 だがそれを『自分の能力の扱いが軽率だった』と容易く答えられるというのは……年齢にそぐわない、年月の積み重ねの様なものを感じさせる。

 

「――ふむ、であれば、大丈夫かな」

「……ん?」

「人とは違う能力について、先人として説教の一つでも垂れようと思っていたが。その必要は無いらしいね。自覚があるなら、大丈夫だろう」

 

 持てる者の中に、自分の能力が危険だと、自覚を持てない者が一体どれだけいるか、数えるのも馬鹿らしくなる中で。周りに迷惑をかけて、その挙句の果てに自滅する者までいる中で。

 自覚があるなら大分、大分マシだ。

 であるならば。

 

「さて、さっきの続きだ特異点の事をもっと話してくれたまえよ」

「……えぇ?」

「気が変わったのさ。辛気臭い説教よりも、楽しい話を聞きたいじゃないか」

 

――それに。

 

 彼が巡ってきた三つの特異点の話。

 まだ触りしか聞いてはいないが、一つ。()()()()()も、見えてきたところだ。

 

 兄上ではないが、一つ。私も謎解きに興じてみるとしよう。

 




三つの組織がちゃんと設定として出て来てなお『一番ろくでもない』と思える組織時計塔。
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