FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第四十八章・裏:砦防衛戦 前編

「――意外だなぁ」

「何がだい?」

「いや、俺たちが戦った、あの竜の魔女って……もっと、もっと物凄かったような気がするんだよなぁ。迫力が足りないというか」

 

 どうにも、肩透かしというか。

 そう言っている彼の背筋には、先ほどまで少し、明らかに汗が伝っていたのを、私は見ている。オルレアンの竜の魔女、というのは、話に聞いている以上に苛烈な存在だったのだろうかと、その汗から想像することは出来た。

 因みに今は汗は引いている。

 

「強敵な事には変わりないだろう?」

「いやそうなんだけれども……なんだろうな。もう、俺も命を懸けて戦うぞっていう気合が空回りしたというか」

「じゃあその気合は今、目の前の敵に向けたまえ。まだ戦闘中だぞ」

 

――まだ激戦は終わっていないのだから、もうちょっと緊張してほしかったのだが。

 

 先ほど、ゴルゴーンから『貴様は下がっていろ。手は足りている』と直々に言われたのが余程不満だったのか……それとも。

 ともかく、彼の言う通り、こちらが優勢なのは間違いないとは思う。シャドウサーヴァントが指揮を執るワイバーンとて、石造りの砦をそう簡単に壊せるわけでもない。こちらには地の利があり、後はその利を活かせば……

 

 ちょっと下を見てみる。

 そこには先ほどから叩き落されたワイバーン達の死屍累々とした姿が。

 砦に籠ったこちらに向けて真正面から力押しで向かってくるのは、正直言って愚策としか言いようがない。

 

 例えばの話になるが。

 こちらがただの兵隊で。向こうがサーヴァントだった時。その場合は真正面から攻められたとすれば、正直、普通に負けも見えるだろう。だが現状はこちらがサーヴァント、向こうは一般兵とは言わんが……まぁサーヴァント相手では格落ちの相手だ。

 結果は見えている。

 

「……マスター、これでは鴨撃ちも同然だ。退屈なのだが」

「前線に全力で出ておいてそう言われましても。頑張ってくださいとしか」

「全く。真正面から押し寄せてくるばかりでは何の面白みもない。ちょっとは思考を回して見せろ」

「でも知恵回したは回したでイラつくんでしょ?」

「良く分かっているではないか」

 

 まぁ相手のレベルが、なんというか理不尽的な差ではあるが。強さも割と理不尽だが、言っていることが割と酷い。

 

「……あの、マスター。グレイ様、全然援護必要そうじゃないのですが」

「あらそう?」

「はい。近づこうとするワイバーンは、全てゴルゴーン様が撃ち落としてしまわれますので、殆ど一対一で……はい。全然」

 

 まぁ、それくらい理不尽な強さをしていた方が、グレイも危険に晒されずに済むという物だが……ちら、とグレイを見たら、小さく手を振り返してくれた。アッドが掌でぴょんぴょん跳ねているのが少し微笑ましい

 ……いや、戦っている最中なのだから、微笑ましいとかいう感想を抱いてはいけないだろう自分で言ったのだから。

 

 何はともあれ、前線を支える役割を担わせていた筈のグレイ、およびグレイの援護を任せていた紫式部も、完全に暇を持て余している様な状況だ。

 

「……緊張感も失せないか? こんな状態だと」

「……否定はできないなぁ」

 

 正直、ワイバーンを統率する能力は脅威ではあるのだが。活かし方が真正面からの平押しという脳筋にも程がある戦法だ。非常に申し訳ないが、全く活かせていないというしかない。ちゃんと裏から回すとか、そういうやり方をしてれば、そりゃあここの防衛戦としてはそれ相応に苦労しただろうけども……うん。

 

「――っと、流石にこれで終わる訳ねぇか」

「あぁ、新手のお出ましだ」

 

 しかしながら、そう簡単に終わる様では特異点ではないという事なのだろう。奥から出てきたのは、明らかに迫力とか大きさの違う、赤い、屈強なワイバーン。そしてそれに合わせて……黒い影が一歩を踏み出しだ。

 

「なんかぞろぞろと強そうなのと、ほんで……? 一緒に御大将も出て来たか」

「精鋭部隊、ってところかな? あぁ……いや、それだけじゃないな」

 

 そして、それに合わせ、さらに他のワイバーンが……まるで赤いワイバーンと、シャドウサーヴァントを庇う様に前に出る。どうやら、いよいよ業を煮やして、全面突撃という事だろうか。それにしたとしても、逐次投入の後に全軍突撃とは、やってる事が完全に愚策のそれなのだけど。

 

 とはいえ、相手はただの兵隊ではない。ワイバーンだ。飛翔する怪物。それらが一気呵成に攻め立ててくるとなると……些か以上に厄介なことは間違いない。

 

「――式部さん。ゴルゴーンさん、集中プリーズ」

「くくっ、少しは歯ごたえのある相手が出てきたではないか……面白い」

「はい。気を引き締め直します」

「グレイ! あんまり無理をしないで、こちらに近づけさせなければいい」

「はいっ、分かりました!」

 

 流石に気合いを入れ直さないといけない。

 ゴルゴーンが、ニヤリと笑って、一歩前へ……そして、グレイの傍へと、飛び降りて着地。どうやら、余程暴れたかったらしい。

 

 黒い影が、旗をかざす。それに合わせ……先ずは緑の影が、二人に向けて甲高い鳴き声を上げて突撃してくる。先ほどと同じように、ゴルゴーンの光線が、先頭集団の数匹を薙ぎ払い……だが、今度は数で纏まってきている所為か、倒れたワイバーン等気にせずに遮二無二突っ込んでくる。

 

「やらせません……!」

『遠くなら、コイツだ!!』

 

 その突撃してきた個体も、グレイの投げ放つアッド・ブーメランに首を刈り取られている訳なのだが。さらにもう一発、戻ってきたブーメランをそのまま弓に組み替え、さらに何発かがワイバーンの命を刈り取った。

連続で打ち取って、敵の壁をすり減らして尚……しかしながら、シャドウサーヴァントに先導されたワイバーンはまだまだ奥から突っ込んできて。

 

「――手ぬるいっ!」

 

 が、そのままゴルゴーンが腕力で二匹ほどまとめてねじ伏せた。遠距離攻撃で蹴散らすだけではなく、力任せで相手を叩き潰すことも出来るらしい。カッコ良く術を使おうとしていたのだろうポーズのまま、紫式部が固まっているのが物悲しい。

 

「ナイスゴルゴーンさーん。パワフル! マッシヴ! 筋肉が唸り上げてるよー!」

「マスター、後で貴様は殺す」

「ヒェッ……」

「遊んでいる場合か! 本命が来るぞ!」

 

 そうだ。ワイバーンの肉の壁によって、無理やりに接近して来ているのだ。砦を落とさんとする、敵の本隊。赤いワイバーンとシャドウサーヴァントが、こちらに迫ってきている……のだが。

 

「――へっ、最後まで真正面からの平押しとはなぁ、なんでゴルゴーンさんをさっきまで後ろへ下げてたのかも分からないくせに……さて。ゴルゴーンさん先ほどの事は土下座して謝るんで一発お願いできませんか!?」

「……ふん、まぁいい。ちまちまと撃ち落とすのは飽きてきたところだ。おい、小娘、下がっていろ」

 

 こちらにも当然切り札がある。

 彼とて、何も考えず、遠距離から強力な砲撃が出来るから、という理由だけでゴルゴーンを後ろに下げていたわけではない。

 多少攻撃しつつも、貯めていたのだ。

 向こうの戦力が、それなりに多い事は分かっていた。ならばこちらもそれに相当するだけの、破壊をぶち込んでやる、というのが隣のマスターの決定であった。こちらの最大出力の一発を。

 

「――貴様らの呪いを返してやろう」

 

 ニマリ、ゴルゴーンの顔が笑顔に変わる。

 その眼前に展開される、赤い魔法陣。渦巻く髪が、逆巻く竜巻の如く絡まり、その中心に向けて一点、充填されていく禍々しい魔力。

 まるで、魔力による核融合の如き、凄まじい魔力。

 これですらただの劣化版でしかないというのが、彼女という存在の規模の大きさを語っている――そして。

 

「融け落ちるがいい――『強制封印・万魔神殿(パンデモニウム・ケトゥス)』!!」

 

 放たれた赤黒い破滅の光は。

 文字通り、赤いワイバーンを融かし……そして、シャドウサーヴァントをも容易に飲み込んで。

 

 そして、その一点に終息した魔力は、臨界を迎え。

 まるで、水をたっぷりと含んだ風船の如く。盛大に、弾けた。

 




ゴルゴーンさんがワイバーンに苦戦するか……?→書いてみたら全然苦戦しないでやんの……
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