FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第四十八章・裏:砦防衛戦 中編

「ハッハッハッハッハッハァッ!」

 

――高笑いを上げるゴルゴーンの姿は控えめに言っても悪役にしか見えないのだが。

 

 とはいえ、彼女が味方であるという事を加味すると、恐ろしくも間違いなく頼もしいのである。かつて、英雄ペルセウスをして女神の加護無くしては倒し得なかった最強の蛇妖たる『ゴルゴーンの怪物』……その力を、文字通り全てを薙ぎ払う圧倒的な破壊力を、あの一撃は、我々に見せつけてくれた。

 

 私も一応、サーヴァントの身ではあるのだが……その出力差というものは、歴然であると言わざるを得ない。というか、アレで『サーヴァント』(劣化した影法師)っていうのが信じられない。本来はあれ以上なのだという。ギリシャ神話というのは誰も彼もああなのだろうか。

 

「おーおー物凄い出力だ事。ゴルゴーンさん、相当溜まってたんかねぇ」

「……結局、私、何もしていません……」

「いやいや式部さんは本来戦える人じゃないのに無理やり働かせてる感じだから、仕方ないっちゃ仕方ないのよ。ね?」

「グレイも固まってるよ。いや、まぁ仕方ないと言えばそうだけど」

 

 実際、私もそれなりの激戦を覚悟していたのだが。あの一撃を受けて、ワイバーンはもちろんとして、シャドウサーヴァントも生き残っているとは到底思えない。良くて原型が残っているかどうか、悪ければ、恐らく跡形もないだろう。それだけの破壊を目の前に見せられたのだから、そりゃあ目も丸くなって固まったりもするだろう。

 

「ま、流石にこれで勝ちだ。一応、敵がまだ残ってるかどうかだけ確認してから休憩にしましょうやお嬢」

「誰がお嬢だ」

 

 私はそういう組織の一人娘とかじゃない。

 まぁそれよりも、確認か……いや正直、あれだけの出力を叩きこまれた後に生きているとは到底思えないのだが。一応はやっておくべきか。

 

 煙が上がっている場所は、下よりも、此方からの方が確認が出来そうだ。取り合えず城壁の辺りに手を置いて、ちょっと身を乗り出して覗き込む――

 

「……ん?」

 

 一瞬、その中に影が……見えた気がした。その直後、背筋に走る冷たい感覚と――頭に浮かぶ嫌な想像、光景。それを具体的に咀嚼したその直後、全力で頭を働かせ……それ以外の選択肢は全て排除出来ることを確認、誰よりも先んじて、その声を上げた。

 

「グレイっ! ゴルゴーン! その場から離れろっ!」

「――ゴルゴーンさん!」

 

 隣の彼も、私の言葉の意味を理解したのかそれとも私の言葉に反応したのか、何れにせよ即座に声を荒げて、撤退を促すように、自らのサーヴァントの名前を呼んで。それが功を奏したのか……下の二人は、その命令に疑問を抱くことなく、急いでその場を離れた。

 

「式部さん、あの辺りに全力で攻撃! 急いでっ!」

「えっ? あ……は、はいっ!」

 

 しかしそれだけでは止まらない。さらにもう一発、同じく城壁に残っていた紫式部に焦燥を纏った檄を飛ばし――本当に、あと一歩の所だった。もし、あと少し遅れていたら文字通り……彼女達は、火の波に焙られていたかもしれない。

 彼女の放った黒い弾丸は……煙の奥から、そこを食い破って、突如としてこちらに押し寄せていた大波の如き焔に突き刺さって、ぶつかり合って……その力を、完全にではないが、しかし大分そぎ落とすことに成功していたのである。

 

「――危なかった」

「くそッ、宝具食らって、あれだけの出力を吐き出せるって……なんだよ、今までは最大出力を出してなかったって事かい!」

「言ってる場合か!? 出てくるぞ!」

 

――そして、出てくる。立ち上がる煙の奥から、黒い、旗が。

 

 シャドウサーヴァントは……所々から白煙を上げてダメージを負っていない訳ではないとは、思われる。倒しきれていないだけだ。足取りは堂々としているし、あの焔を吐き出している、その迫力は手負いとは全く思えない程のパワーで、こちらに歩いてきている、それ、だけだ。

 

「おいおい……せめてよろめくとかなさらない感じですかぁ?」

「そんなに甘くはないみたいだね。どうやら」

「ゴルゴーン様の全力が撃ち込まれて、それでもなお健在なんて……!」

「――どうやら、想像よりも甘い相手ではなさそうだなぁ……一人になってから本気出すとか、どんだけソロが好きなんだか! 式部さん、改めて、戦闘準備!」

「しょ、承知しました!」

 

 ハゲ頭をぴかりと光らせ、紫式部へ指令が飛んだ……と同時に。

 先ず、一歩。黒い影が踏み出す。

 しかし、それをけん制するかのように、今度はゴルゴーンが一歩、前に出た。

 

「――マスター、援護を寄こせ。叩き潰してやる。アレでも本気だったのだ、それを虚仮にされたようなものだ。こちらも煮え滾っている」

「オーケイ……式部さん、俺の援護のタイミングに合わせて――」

「承知しております!」

 

 直後、ゴルゴーンに飛んでいく、礼装からの援護。そして……紫式部の陰陽術の弾丸は、ゴルゴーンの傍を通りすぎ、シャドウサーヴァントへと。

 私も、今はアッドを鎌に変形させたグレイの元に、彼女を下ろして、指示を下す。彼女を守るように、と。

 

「グレイ、トリムマウを傍につける。くれぐれも気を付けてくれ」

「はいっ! 分かりました!」

 

 グレイの隣に、トリムマウが配置されたのを確認してか……さらに、黒い影は一歩、そこから大きく踏み込んで、前方に飛び出す。

 しかしながら、さらに奥へと踏み出そうとしたその目の前に、ゴルゴーンが立ちはだかり――相手が振り回し、薙ぎ払おうとしたその一撃を、片腕で受け止めて見せる。

 

 ドスン、という重い音と主に……互いがしっかりと衝突し、どちらも一歩も引かぬ、力と力のぶつかり合いに、二人は突入した。

 

「ふん、パワーに自信があるのか?」

「……!」

「残念だったな、所詮人間、私相手に力比べは……無謀も無謀だっ!!」

 

――どうやら、パワー比べに関して言えば、ゴルゴーンの方に軍配が上がったようだ。

 

 叩きつけた旗を、そのまま片腕で捕まえたままで、全くビクリとも動かそうとはさせていない。そしてもう片方は、見せつけるように爪を構え持ち上げて……そして、全力で振り下ろして……

 

「――っち!」

 

 だが、シャドウサーヴァントは旗に固執せず得物を離し、その一瞬で爪の射程から逃れて見せた。されに、その爪が振り下ろされた直後に、ガン、と旗を蹴り飛ばして、攻撃に集中していたゴルゴーンの手から弾き飛ばし、空中でその旗をつかみ取る。

得物を一旦手元から離してから、直ぐに蹴り飛ばして回収、そのまま離脱する……その大胆にも過ぎる判断は普通の人間が到底、出来る事ではない。

 

 一手、完全に不意を突いたと判断したのだろう。そのまま空中でつかみ取った旗をそのままに、ゴルゴーンに向けて構えて、振り下ろそうと――

 

「させ……ませんっ!」

「――っ!?」

 

 ――した。もし本当に一対一なら、そのまま旗を振り下ろし、致命傷を与えられていたかもしれないだろうが……しかし、此度の戦いは、卑劣なれど、こちらが、三。向こうが一なのだ。グレイが、その得物とゴルゴーンの間に入り込んでいる。

 大楯に変形させたアッドにぶつかった旗は弾かれて、シャドウサーヴァントの体は、背後へと大きく傾いだ。グレイとの間に、大きく隙間も出来て、反撃も防御も出来ないような無防備。

 

 出来れば、そのまま動かないでほしい、と。一応、グレイの動きに合わせて背後に回していたトリムで、彼女の両手両足を拘束する。

 

「チェックメイトだ――式部さん、ゴルゴーンさん!」

「はいっ!」

「一撃耐えたところで……無駄だったようだな? どっちにしろ……!」

 

 その大きな隙を、見逃さず。

 叩きこまれるのは魔術と、魔獣の爪牙。二つの一撃が×の十字にシャドウサーヴァントの胸を引き裂いて……その体が、さらにぐらりと揺らいだ。流石に、宝具の一撃で負ったダメージも軽い物ではなかったのだろう。

 

 ここが、決め時。

 

「……グレイ!」

「はいっ!」

 

――最後の縦の一撃は。グレイの大鎌が。

 

 黒い影に、上から下へ、一文字の傷を刻んだ。

 




前後編にしようと思ったら予想より伸びたので前中後編に。
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