FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第四十八章・裏:砦防衛戦 後編

「……消えねぇな」

「まず間違いなく、もう動かないとは思うんだけどね。アレ、結構強めにドゴンって叩いてたし……ヒビ入っているし地面に」

「というか、こんだけの威力で殴って原型保ってるのが凄いな」

 

 シャドウサーヴァントは、全く動かない。

グレイの最後の一撃で倒れ伏してから、全く反応が無い。しばらく遠目から見ても、ちょっと近づいてみても、それでも動かない。一応、ゴルゴーンの尻尾で叩いたりもしてみたけど、反応はやはりなし。

 という事で、とりあえず彼女が最も倒すべき目標と思われる、マスター・本造院を近づけてみても、反応なし。ついでに、彼が一発程ごつんと殴ってみたが、それでも反応は無かった。

 

 ここまでやって無反応なので、倒したという事は確認できた、のだが……シャドウサーヴァントの肉体が消えてはいないので、警戒心を解くことが出来ない。

 

「サーヴァントって、倒したら基本消えるよな?」

「倒した、というか霊核を砕かれたサーヴァントは消える。気絶した時はその限りではないんだけど。アレだけの尻尾の重い打撃を叩きこまれたら気絶からも覚める。で、それでも動かない」

「反応は全く示さない、罠を疑うな、って方が無理なんだけど……俺に一切反応してなかったとくれば本当に罠という訳でもなさそう、か」

 

 サーヴァントというのは、とどのつまりエーテルの塊だ。実体があるという訳でもないのだから、死体が残る訳でもないのだ。だけど……一応、死体らしきものが残っている。奇妙な話だが。それ以上に、これは見逃しては置けない案件でもある。

 

「放置するのが一番、か?」

「いや、始末するのが一番だろう、こういう場合は」

 

 魔術的に、死体なんて幾らでも利用する事が出来る。一番簡単に想像できるものとすれば死体を利用した死霊魔術があるし、死体そのものだって、魔術の触媒に幾らだって利用可能だ。

 シャドウサーヴァントという存在の死体がどれだけ色んな事に流用できるか。想像するだけなら無限に可能だ。それこそ代々受け継いできた魔術刻印とて、絶対に利用できないという保険は何処にも存在しない。

だから我々魔術師という存在は、迂闊に死体とかを残さないし、きっちり始末するのはもはや常識ともいえるレベルだ。

 

「……魔術師って因果な職業ね」

「何でもありな職業だからね。因果にならざるを得ないのさ」

「そっかぁ……」

「まぁ君たちの国でも、仏様はきっちり死後の世界に送り届けるだろう? それと同じようなものだと思おうじゃないか」

「造詣が深いですなぁ」

「ふふ、これでも一つの家の当主なものでね。それなりに色々覚えてはいるさ」

 

 という事で、この死体は無事に座にお帰り願う事にする。万が一、如何に利用される可能性も残さないように、本当に塵一つも残らない程に。正直、過激と思われても仕方ないが、魔術世界なんて、いつだって泥水の中を這いずり回るが如くなのだ。この程度は序の口である。

 

「……ま、火葬とかは出席するのはそこそこ慣れてるけど。流石に目の前で人間を塵にするのは、いやぁ。流石に初めてよなぁ」

「おや、親族が多くお亡くなりにでもなっているのかい?」

「ら、ライネス様……!」

「いーよ式部さん。変に気遣って貰ってもそれはそれで困るからさ。ゴルゴーンさんなんか見なよ、もう言われずともやる気だよ」

 

 ちら、とゴルゴーンに視線を向ける視線と、禿げた頭の光。それに応じて、彼女も逆立てた蛇の如き髪をシャドウサーヴァントに向ける。あの紫の光で焼き尽くされれば、最早跡形も残らないだろうが、万が一がある。一応、私も火力アップに魔術の一つでも使うべきだろうか……かと考えて一歩、足を進める

 

 自分を始末するといったような話し合いを真横で堂々とされていても、全く動くどころかピクリとしないと来た。最早、本当に脅威ではなくなっているのか。だとすれば何故全く動かないのか。

 

――それが一瞬だが、大きな油断だった。

 

「……ん?」

 

 かちゃり、と何か金属音の様な物を聞いた、その直後……首にかかる圧力と、突如として見える天に、呆然とさせられるほかなかった。何が起きたのかは、けれどその一瞬でおおよそ見当がついた。

 やはり、生きていた。そして私を狙ったのだろう。

 

「――ライネス!」

「ライネスさん!?」

「ぐ……」

 

 首を掴まれ、片腕で持ち上げられ……その直後の事だった。私の懐に手が差し入れられる。取り出されたのは……例の紙片だ。

 なるほど、狙いは、私ではなかったわけだ。マスターにも反応しなかったわけだ。このシャドウサーヴァントの狙いは、初めから私ではなく、私が持っていた例の紙片だった。

 

「――ど……り、で」

「シャドウサーヴァントの狙いは初めからアレ……? じゃあなんで俺らを襲って来たんだか! お二人とも!」

 

 こうなれば――私は不要だ、このまま始末されても不思議ではないだろう。

 

 だが、こんな状況にあっても、カルデアのマスターというのは実に落ち着いている。不意を突かれ、味方が捕まっているこの状況であっても、決して取り乱すようなことはしていない。落ち着いて、自分のサーヴァントへ……

 

「――グレイさんを全力で援護! ライネス嬢を無傷で助け出さにゃならん、ド派手な技も下手な遠距離攻撃も無し、精密な近距離で決着だ!」

「っ……ありがごうございます! ミスター・本造院!」

 

――私を助けるように、命を下す。

 

 少し、笑いがこみ上げる。こんな絶望的な状況の中でずっと戦い抜いて来た。そんな中でも先ず、人命救助で最適な指示を下す辺り、とことん、そういう汚いやり方とは、無縁だったのだろうと、察せられたから。

 カルデア、という組織が、とことん誰かを助けようと、戦ってきたのだろう事は、今の言葉で凡そ察せられる。

 

「承知しました!」

「っち、ぬるいやり方を……」

「ゴルゴーンさんはマジで石化は今はタブーで! ライネス嬢巻き込んじゃうからな!」

「――ええい、分かっている!」

 

 ……私を巻き添えにせずに、目の前のシャドウサーヴァントを打ち取るのは至難の技だとは正直思う。だが……しかし、それを口にすることも出来ない状況では、彼らの善意を甘んじて受けるしかない。

 しかしながら、何もしないというのは論外だ。せめて、トリムをもう一度背後に――途切れそうな意識の中で、必死に操作しようと、して。

 

「――」

「……っ?」

 

 違和感に気が付く。いつの間にか、私の首を締めあげていた手から力が少し抜けているのだ。私の体を、手に保持する程度の力しか入れていない。なんだ、この違和感は。注意を促そうにも、声も出せない――

 

「――!」

「ぅぁっ!?」

「――っ!? ライネスさん!?」

 

 直後だった。景色が吹っ飛ぶ。否、私が投げつけられたのだ。景色が吹っ飛んだそのすぐ後に、私を助けに来たであろう、グレイの腕の中にいて……その事を、何とか理解できた。そして……グレイの横を、黒い影が一瞬で抜けていくのも、辛うじて視界の端に捉える事が出来た。その先にいるのは――

 

「ぇほっ……さがれっ」

「しまっ――」

 

 一歩、警告は間に合わない。追いかけたその先に見えたのは――私に意識を向けていたのであろう、隙だらけのマスターに向けて……あの紙片が、押し付けられている光景。

その直後、本造院が膝から、ゆっくりと崩れ落ちる。

 悲鳴を上げそうな顔で手を伸ばす紫式部。顔をしかめつつ、それでも自分の武器を構えるのをやめないゴルゴーン。

 

 やられた――そう、誰もが思っただろう。だが。

 よく見れば出血も、何か呪詛の様な物をかけられたようにも見えない。どころか、本造院が適当に払った腕に、シャドウサーヴァントは、軽々と払いのけられてしまった。

 

「――」

 

 そのまま、黒い霧の様になって解けていくシャドウサーヴァント。

 驚きつつも、グレイに肩を貸してもらって、なんとか彼の傍に寄った。いつの間にか、額から角が生えていたが……直ぐにそれも引っ込んでいって。ダメージを感じさせない程に彼は、スムーズに立ち上がった。

 

「大丈夫か!?」

「――外傷、とかは……ない」

 

 ゆっくりと立ち上がる彼の体に、確かに外傷は存在しないようにも見える……とはいえ他に何も問題が無い、とは言い切れない。一応、目視で確認できる部分に、魔術やその辺りの細工をされていないかは確認し……それも、無かった。

 だが、目の前の本造院の顔は、険しい。顔色も優れない。

 

「どこかおかしなところは?」

「……ない」

「マスター、無理はなさらずに。少しでも違和感があれば」

「ありがとう……でも、これは、そういうんじゃ……ないんだ」

 

 片手で顔を抑えながら、少し俯きながら彼は立ち尽くしている。

 

「……はっ、記憶の女神(ムネーモシュネー)、ねぇ」

「?」

「いいや、意地の悪い女神さまもいたもんだ、って思っただけだ」

 

 そういって笑った彼の笑顔には……まるで、力も入っておらず。生きるのに捨て鉢になった世捨て人の様ににも、一瞬見えてしまった。

 




拙者、機械マスクかぶった女性大好き侍、義によって投稿させていただく
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