FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第五十章・裏:紅の圏内

「――ほんとにガラッと変わるな、雰囲気とか」

「えぇ。気温だとかもそうですが。空気そのものが、全く違うと申しますか」

「面白いだろう? 『霧』という境界線を隔てなくても、『あ、もうここは違うテリトリーなんだな』というのが分かる」

 

 『紅の都』は、気候的には『竜の都』と大差はない……と、ライネス様はおっしゃっていました。その上で『明らかに違う』との事で。それがどういう事なのか、いまいちわからなかったのですが……確かに違います。

 竜の都は、なんと申しますか、牧歌的な雰囲気が漂っていましたが。紅の都は何処か気温とも違う『熱』の様なものが、渦巻いている気がします。

 

「……それに、目の前の光景だけで明らかに違うってのが分かる。ほれ、見ろよアレ」

「町、でしょうか」

「みたいだな。しかも……こっから見るだけでも、活気に満ち溢れてるのが分かるくらいの賑わいだぁね」

 

 その熱の元、それは恐らく……この『紅の都』エリアにのみいる、とライネス様がおっしゃっていた……現地民、というより、人間でしょう。霧、竜、そして海、他の三つには人間が住んでおらず、その分がここに全て集中する勢いだ、とのことで。

 しかし……あの町、というか居住地の形式は。

 

「――ホント、形だけならローマそっくりだ」

「なんだ、貴様。ローマなんぞ行ったことがあるのか?」

「ゴルゴーンさんはご存じじゃなかったっけ? 俺たちが向かった第二特異点は、それこそ全盛期のローマそのものを救う旅だったんだぜ。なァ式部さん」

「ほう?」

「は、はい。ですから、あの町並みは、私にも覚えがあります」

 

 建築された建物や、住んでいる人の服装。その全てが、嘗て我々が向かったローマの街並みのそれに、実に酷似しているのです。向こうのあの牧歌的な雰囲気が、何処かオルレアンを思い出させるものであっただけに、今度はいきなりセプテムが如き光景。

 移り変わる景色があまりにも激しすぎて、ここが同じ土地である、というのを忘れてしまいそうになるくらいです。

 

「ローマ、ねぇ」

「ローマだ」

「――彼らがローマの軍隊だとして」

「……軍隊? いや、俺たちが見てるのは町なんだけれども」

「いったい誰を崇拝すると思う? ローマの専門家のお二人。ほら。来てらっしゃるよ団体様が。信仰を叫びながら、さ」

 

――そんな風に、のんびり街を見ている場合でも、無かった模様で。

 

 はっ、と気が付けば町からこちらに向けて向かってくる土埃……そこから聞こえる雄叫びの様な声が近寄って来ていました。しかもそれは意気を上げるための魂からの咆哮ではなく……寧ろ、怒号と申しますか。敵に向ける声と申しますか。

 

「も、物凄い数が……来てらっしゃい、ますね」

「ちょ、なんであんな急に突撃してくるんだよ!? 俺たち、まだ何もしてないぞ!?」

「私たちがここに来た時もあんな感じだったよ。どうやら、彼らは相当に『異端者』の匂いに敏感な様だね」

 

 異端者、という言葉がどういう意味を持っているのか。何となく、少しずつ声が聞こえてくる度に分かって来ます。喉の奥から上がるのは、ただ一つ、熱狂。すなわちは……信仰にも似た声でございます。

 

 我らが指導者に仇成す者に死を。

 ひと際高らかに上がった声は正に、自らの胸に燃える信仰を謡うもの。自らの狂気を以て我々を殲滅する為の……だとすれば絶対に危険なのですけれども! あの、あの方たち確実に目が、目が血走ってらっしゃいます。

 

「「うわぁ……」」

「マスター。アレはエネミーだ。薙ぎ払って良いな」

「い、いえ、薙ぎ払うのは些かと……マズい、のではないでしょうか?」

「ふぅううううううう――うん、やって良いわ。頼んますゴルゴーンさん」

「マスター!?」

 

 とはいえ、彼らを真っ向から薙ぎ払うというのは……と、思っていたのですが。マスターが容赦なくゴーサインを出してしまいました。紙片を探すのに、聞き込みなどもしないといけないというのに、あの方たちを焼き尽くしてしまうのは、些かと!

 

「心得た……」

「いや心得たじゃないよ」

 

 と、思っていた所、私より先にマスターにびしっと物申したのは、ライネス様でした。

 

「えーダメ?」

「ダメに決まってるだろう。殺さずに程々に追い返さないと。私たちはこれからあの中に潜入するんだよ?」

「――えっ!? せんにゅう!?」

「ああそうだ――という事で、先ずは、彼らを適当に追い払ってから、話をしようじゃないか。諸君!」

 

 とはいえ。マスターを止めた事よりも。さらに気になる事を、ライネス様はおっしゃって来たのですけれども……せ、潜入?

 

 

 

「――ぐ、おぉおお」

「むねぇぇえええん」

「もうしわけない……」

 

 という事で、目の前に積みあがった、兵士の皆様。誰も死んではおりませんがしかしながら、死屍累々としか言えぬようなありさまです。ゴルゴーン様に真っ向から挑んだのですからそれは、当然と申しますか。ハイ。

 

「とまあ、こんな感じでね――ここにいる人間達は、熱に浮かされた狂信者ばかりなんだよ。というかそれ以外がまるでいない」

「ライネスさんとここに入った時も、私たちの姿を見るなり『異端者め!』と襲い掛かってくるばかりで……全く話が通じなくて」

「なーるほどなぁ。グレイちゃんが怯えた、ってのはこういう訳か」

「道理、と言えば道理ですね」

 

 しかしながら、困りました。

 この『紅の都』で紙片を探す、というのであれば、彼らの様な物凄い熱量を持った方々の目を搔い潜って探さねばならないとなると、少し難しくなってくる気がするのですが。しかし、ここで気になってくるのが。

 

「もしかして街にいる人たちも……ですか?」

「おっ、そちらのご婦人、勘が良いですね。大正解だとも」

 

 ……訂正いたします。たぶん、とっても難しくなったと思います。

 

「こんなのばっかりしかいないんだよねぇ。だから町に異物が入ってきたら即座に察知してくるだろう。町の人間が全員監視カメラみたいなもんだ」

『うわぁ。万能の天才もそれにはドン引き』

「お、恐ろしいですね……」

 

 人の目というのは、恐ろしい物です。

 こっそりと行っていた筈の逢引きが、たった一人の奉公人の何てことない酒のつまみとして酒宴の中で上がり、そこから失脚していったお方がどれだけいた事か。

 人の目を完全に欺くことは……不可能、とは言えないのかもしれません。私自身、そういった手管に詳しい訳ではございませんので。ですが、それがどれだけ難しい事なのかは朧気ながらにも……

 

「彼らにバレないようにするのが前提……でも潜入して調査するにしたって相当気合入れて変装とかしないとダメだろうね」

「へ、変装……ですか」

 

 だからと言って、それを成す手段にも向き不向きという物は存在するとは思いますが。いえ、決して私はゴルゴーン様の事を申している訳ではなく。なので、この後ろから漂ってくる無言の圧力は……あの、そのですね。ただの気のせいだと、思いたいです。

 

 という事で。

 

「――俺と、グレイさんかぁ」

「あ、あの。ライネスさん。拙で大丈夫なのでしょうか。その……潜入、なんてあまり得意ではなくて。目立たないのは、そこそこ自信はあるのですけれど……それとこれとはちょっと……」

「大丈夫だ。なんとでもなるさ。君はもうちょっと自分に自信を持ちたまえ――っていうのは建前で、君たち以外に隠密が出来そうなのが居ないんだよね。だから、ごめん」

「そんなぁ」

 

 ……という事で。

 マスターと、グレイ様が町への侵入を行う事になりました。

 ライネス様、私は運動神経が良いとは言えず……かといって、ゴルゴーン様はどう足掻いても目立ってしまうのは避けられず。なので、消去法で選んだ結果ではございますが、ハイ。

 

 一応、気配を隠す護符だとかは作れない事も無いので、気休めにしかならないかもしれませんが、お渡ししてあります。が……グレイ様はあの、兎も角、マスターは、ちょっと、隠密には。ちょっと、あの町に混ざるのには、あの、ガラが悪すぎると申しますか。

 グレイ様と並んでしまうと、もう……

 

「はぁ、じゃあま、行こうかグレイさん。短い間だけど、よろしく」

「よ、よろしくお願いします」

 

 ……完全に、非常に申し訳ないのですが。

 

「婦女子を誑かすジャパニーズ・マフィア」

「言わないでおいていたんですけれども!」

 

 明らかにマズい光景にしか見えなかったのです。本当に。

 




因みにゴルゴーン様以外、全部アウトな臭いしかしない黒スーツハゲホモ野郎。
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