FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第五十四章・裏:破壊の影 前編

――その黒い影は、堂々と立っていました。

 

 黄金と紅に染められた玉座の前で。君臨する、というよりも。待っているかのように。剣を床に突き立て。その前で。全く動かずに。です。

 それだけです。威嚇も、何もしていません。私たちの目の前に、立っているだけなのです。他に、何もしていないのです。だというのに。

立っているだけの私は今にも意識を持っていかれそうな程に――

 

足元が震えている気がするのです。肌にビリビリと刺す感覚がいたします。頭の中で壊れてひび割れた鐘が鳴り響いているかのようです。

 

「……前は、割とイライラしてた時だったからか、そこまで気にしてなかったけど。今こうして相対すると……えっ、俺他のサーヴァントの皆様のお助けがあったにしろ、アレに勝ったの? 割と神業じゃない?」

「うん。だから私も信じられないんだよね。いまいち。ホントに勝てるのかい、アレ」

「本人には勝ったんだから大丈夫、と思いたいけど……式部さん大丈夫?」

「あ、あまり……」

 

 その警鐘は、普段私が発する事が出来ないモノ。戦場に出ない私の鈍った、感覚、第六感と言ったものが、目の前の危機を前に、突如として隆起する。そのレベルで、目の前のシャドウサーヴァントは、強いのです。

 

 では、このまま私は、尻尾を巻いて逃げ出すのか。

 それは――出来ません。人理の危機の声に応えて来た。というのは当然あります。ただ今この時に限って言うなら……万が一、逃げ出そうとしても、恐らく目の前の存在は、私をきっと逃がしてくれません。

 

 寧ろ、背を向けた臆病な者をこそ、狩りやすしと判断し、速攻で切りかかってくるでしょう。そんな、予感があります。

 

『――いやぁ、上がってるねぇ。各数値。こっちを認識したらしいよ?』

「あぁ今、目の前で剣を抜いたよ。戦闘準備に入ってる」

「グレイ、油断しないように。無理だと思ったら、一旦下がってもいい」

「分かりました、ライネスさんは、出来るだけ後ろに」

「ゴルゴーンさん、式部さん。戦闘準備、こりゃあ……楽な戦いにはなりそうにないぞ」

 

 であるならば。皆で力を合わせ、目の前の相手を打倒する以外に……道は、あるでしょうか。剣を抜き放った途端、最早、肌どころか、芯にまで響く程に圧力を増した、黒い影を相手に。

 

「苦しい、だと? 下らん心配などする前に、黙って魔力を回せ――直ぐに哀れな供物にしてやろう」

「了解しました、マスター」

「――オーライ。じゃあまぁ、ゴルゴーンさんから。やっちゃって、どうぞ!」

 

――マスターの宣言に応え。

 

先駆けと言わんばかりに先手を打ったゴルゴーン様の光線はしかし。隙間に入り込みながら、その幾つかを薙ぎ払う……シャドウサーヴァントの凄まじい反応速度と、剣の腕で凌がれて。

 

「ふん、生意気な」

「――」

「だが……私ばかりに気を取られていていいのか? まさかとは思うが、人間の小賢しさを知らんわけでもあるまい?」

 

 ですが、その凌がれた一瞬。

 背後に回り込んでいるのは……アッド様を、鉄槌に変えて振りかぶった、グレイ様

 

「くくっ、その中で、崇められていたのだから」

「――っ!?」

「はぁあああああっ」

 

 切り裂く鎌ではなく、巨大な鉄槌。防ぐ事が出来たにしろ、その重さを殺し切る事は流石にあの一瞬では不可能。吹き飛ばされずとも、体勢は、大きく崩れ、流され……直ぐ背後に辿りいたゴルゴーン様に、大きな隙を晒す事に。

 既に、振り上げた爪はシャドウサーヴァントの頭蓋を切り裂き、中身をまき散らさんと振り下ろされています。

 

「――」

 

 その爪を見て。彼女は、いかなる選択をしたのか。

 普通であれば、無理やりにでも避けようと、するのかもしれませんがしかし。私の目の前では、そんな矮小な想像など遠く及ばぬ――驚くべき、選択を、シャドウサーヴァントはして見せました。

 

 吹き飛ばされて崩れる体。そして、迫る爪。ならばと――彼女は敢えて、踏ん張る事をやめて、後ろに向け、転げたのです。後ろへ、コロンと。

 

「ちっ!?」

「――」

 

 大柄なゴルゴーン様だからこそ、一瞬、足元がお留守になっていた……そこへと活路を見出し、もう二度ほど、ころん、ころん、まるで子供の様に、しかし子供のそれとは比較にならぬ程、身軽に転がり。彼女の背後へ。

 立ち上がった時にはもう、剣は振りかぶられている――かもしれません。であるのならば。その一瞬を、埋めるくらいは。

 

「――救急如律令!」

 

 放つ墨染の弾丸と共に、走る銀色の影。グレイ様が構えているのと、同じ鉄槌をその両手を変じさせて構えた、ライネス様の侍女にして魔術礼装たるトリム様の突撃が迫ってきます。

 

 先ず私の弾丸はと言えば。

 一閃。切り捨てられました。まるで歯牙にもかけられていません……分かっては居ましたがちょっと悔しいです。悔しいですが。

 その一瞬の時間でで、弾丸の後ろにぴたりとついていた、トリム様が、その両の手を叩きつけられる距離に。

 

「トリムマウ――よろしく頼むよ」

『了解です』

 

 銀色の鉄槌は、いよいよその黒い影を捉える……その直前まで迫っていました。

これは当たる、と思っていたのも束の間、シャドウサーヴァントは、私の術を盾に切り捨てたそのままの剣を地面にたたきつけて……突き刺した剣を足場に、彼女は高く飛び上がったのです。

無理矢理防ぐのではなく寧ろ、前のめりに躱す、その動きに対応しきれず、振りぬかれた鉄槌は空しく空を切り――。

 

「グレイの援護を、ね」

『――!?』

「遠距離なら……!」

「こいつだァ!!」

 

 投げつけられるブーメランは、既にその背後に。

 こちらに意識を取られていたのが悪い、とは申しませんが。しかし、我々に気を取られているこの機会を、お二人が見逃すとは思えません。トリム様と、私が生んだ隙を、背後のお二人が突く。些か卑劣ではありますが、至極当然な戦い方ではあります。

 

 さらに言えば、私の様な戦場を知らない甘い女ではなく……戦場の厳しさを良く知っている彼女ならば。当然の如く。

 

「――逃がさん」

 

 ゴルゴーン様は、既にその逞しい尾で自ら跳躍し、既にシャドウサーヴァントの背後を取っています。ブーメランが直撃したその直後の隙を狙って、一撃を叩きこむお積りなのでしょう。

 

「――」

 

 既に空中にて、躱しようもない一撃が、二重に。何方に対応したとしても、何方かは受けざるを得ない。最早、詰みと思っていました。

思っていたのです。

 そのしなやかな体、そこに秘められた肉体の力はどれほどのものなのか――ゴルゴーン様が驚愕したのも、無理からぬこと。空中で体をくるり、と背面向きに縦に回したのは飛び上がったシャドウサーヴァント。ゴルゴーン様と目が合ったのでしょう。

 

 しかも、只縦に回ったのではない、直撃以外にどうしようもないブーメランを、まるで背面跳びでもするかのように紙一重ですり抜けて――

 

「――!」

「ちっ!」

 

 振りかぶった、ゴルゴーン様の爪と、再びその剣を打ち合わせ。その衝撃で自ら弾かれて飛んでいき……我々から離れた場所に何事もなかったかのように着地しました。

 

「小賢しい真似を」

「――」

 

 驚くべき反応と、判断の果断さ。あの時、ローマで戦った白いサーヴァントの強さと、全く遜色ありません。

 油断すれば、こちらが負けるでしょう。とはいえ、今の様な芸当を何度も何度も出来るとは思えません。押しているのは、たぶん此方だとは、思います。

 

――ですが。

 

「――勝て、ますよね」

「そう思いたいけどなぁ……ったく、宮殿の中にもまだいるぞこいつら」

 

 マスターの顔色は、優れず。それが何故なのかは。

 何処からか現れた、武装した兵士を見れば、分かってしまいました。

 

「そんな、どうして……!?」

「そりゃあ宮殿に警護の兵隊置いてない訳はないよ。我々が引きはがしたのは外回りの兵隊達だ。相当数減らしただろうけど、一人もいないというのはないんじゃないかな」

「真っ当なお言葉どうも!」

 

 どうやら……落ち着けば勝てる、そんな甘い事は、無かった模様です。

 ゆらり、と何事かをつぶやきながらこちらへと迫る兵士の姿の嫌な迫力を見ていると。それを、肌で実感するような、気がしました。

 




アルテラさんのスレンダーモデル体型大好き。
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