FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第五十四章・裏:破壊の影 中編

「兵隊と、町の市民を引っぺがして……それでもまだいやがる。なんなんだ、どっから来てる!?」

「さっき宮殿の天井の窓あたりから、ぼとぼと零れ落ちてくるのが見えた!」

「クソッたれ! どんなところから入って来やがる!」

「これでもまだマシな方だ、正面玄関が破壊されたらこれ以上になる、正念場だよ!」

 

 私自身、周辺の敵に襲われそうになっていないのは……マスターに守ってもらっているお陰というのは間違いありません。この状況下。周りから、大人数の束ではなく、一人一人が突如としてとびかかってくる。シャドウサーヴァントとの決戦、と思っていたのがしかしながら。蓋を開けてみれば、想像以上に神経を使う戦い。

 

 周辺の市民か、兵隊か。何れにせよ、彼女の信奉者たちは、狙いを前線のお二方ではなく、後方に控える私たちを狙って来て、先ほどから援護があと一歩、届いておらず。ゴルゴーン様、グレイ様のお二人はあと一歩詰め切れておりません。

 

「っち、どうする、令呪、ここで切ってもいいが……!?」

「貴重なリソースを無駄遣いするものじゃない――機会は必ず来る、まだ耐えてくれ」

「あのいきなり目の光を消し飛ばすのやめて? 交代するなら言って?」

 

 状況は――互角と言える、のでしょうか。

 先ほどから、偶にライネス様が中のお方と交代し、指示を飛ばす程には、予断を許さない状況で。ただ、我々は今の所、苦しい状況ではありません。

 

「とりむまう……だったか? が居ないからな。君には些かと無理を強いる事になるがもう少しばかりだ」

「ええいアンタに何が見えてるかは知らんけども! 信じていいんだよな!?」

「戦場の把握とこの頭脳以外に特に取り柄が無いからな、それを疑われては困る」

 

 ……いえ、苦しいのはたぶんマスターだけだと思われます。私自身はマスターに守っていただいていますが、しかし自分でもある程度はよけたり、迎撃もするようにはしております。いるのですけれども。

 

「じゃあ脳以外に体も動かしてもらえませんかね!! 俺、さっきからお嬢さん……? のサポートに必死なんですよ!!」

「全体を見なければならないからね。そうはいかない」

「ああそうかい! ならやってやるよ存分によォ!!」

 

 マスターが警護してらっしゃるのは……主に、全く動かないライネス様です。トリム様をグレイ様の援護に回して、ご自身はずっと戦場を見つめる為に、後方の一点から動いておりません。

その周辺をあくせく動き回るマスターのその姿は、まるでライネス様を守る若武者、従者の如くです。

 

「ふむ――やはりだな」

「あん?」

「我々を狙っているのは、やはりそういう基準だったか。であれば……うん。決めた。おい、カルデアのマスター」

「なんですかぁ? いっとくけと、これ以上必死に守れとかムリだぞ」

「いいや、守らなくもいい。だがこれ以上に必死にはなってもらう」

 

 ……もし本当に従者だとすれば、あの様に目が見開いて、眉間に目いっぱいのしわを寄せたりは、たぶんしない、とは思いますが。見ている私も『不信感』『驚愕』『不安』を感じられる程に、いやそうな顔をしています。

 

「……」

「信じろ。当然の様に勝つだけだ」

「えぇー……ったく、信じるぜ、お嬢さん!」

「性別がこうなのはライネス嬢の体を借りているからで、俺は男だ……まぁ、それは良い。耳を貸せ」

「あぁ? っと、その前にッ!」

 

――ですが、その顔をしていたのは一瞬。

 

 瞬間、こちらに向けて走りだしてきたマスターのその顔は、真剣そのもので……マスターはこちらに手を伸ばして、私は……そのまま、抱きかかえるようにマスターの、懐に引き寄せられて……っ!?

 

「ま、マスター!?」

「ぼんやりしちゃダメよんお嬢さん。ほれ」

 

 お、驚いてしまって、一瞬頭が真っ白になって……

でも、そんな呑気な事を考えていたのもつかの間、マスターの指し示す先に転がっていた、信奉者の姿を見て、顔に上った血がサーッ、と引いていくのを感じました。

 マスターが間に合わなければ、私は背後からの奇襲を受けていたかもしれません。けがを負わなかった、としても。態勢を崩し、隙を見せていれば……背後の戦いの天秤の拮抗を、崩していたかもしれない。

 

「あ、ありがとうございます、マスター……」

「大丈夫だ。まぁこれっきりにしてもらえると、ありがたいかな。流石に――」

「――いいや、あともう一回肝を冷やしてもらう事になる」

 

 等と考えていたら目の前のマスターの眉間に刻まれたしわの数が一気に……えげつないお顔になっていました。急転直下に過ぎてちょっと、温度差が……あの……

 とはいえ、ライネス様、ではなく、中の方がおっしゃる事を冷静に考えていると、私もそのような顔をしそうと申しますか。

 

「あの、ど、どういう事でしょう」

「何。あの剣使いをこっちに突っ込ませるんだ。寧ろ後衛まで巻き込んで楽しい楽しい乱戦に持ち込もうじゃないか」

 

 マスターは――その言葉を聞いた後、今度は明確に、彼女を睨みつけて。しかし彼女はその鋭い視線に一切怯まず、泰然自若としています。

 

「――そりゃあ、冗談じゃねぇんだな?」

「冗談じゃない。それが一番、勝ちの目が大きい」

「式部さんは接近戦もクソも無い。接近させるリスクは――」

「ま、マスター!? 後ろ後ろ!」

 

――その一瞬でまた信奉者が飛び掛かろうとしていたのを、速攻で迎撃しています。

 

 えぇ、今でもこの状況なのです。

 シャドウサーヴァントがここに乱入して来たりしたら、我々、いよいよ瞬殺される可能性すらあるのですが。それは……たぶん大丈夫ではないと思います。

 

「――承知の上か?」

「当然だ。しかし、至近距離に引き込むことで状況を打開できることを考えると、許容するべきリスクだろう」

「……分かってんなら、カバーする方法も考えてる、そう思っていいんだな?」

「あるとも。その辺りが無ければ提案はしていない」

「そうかい」

 

 大丈夫ではないのですが。

 

「式部さん。これから無茶させる。やれるだけの事はやるつもりだけど……」

「いいえ。大丈夫です。私も、覚悟を決めていない訳ではありませんから」

「そっか。ありが――良い雰囲気を壊すなぁっ!」

 

 それでも。ここで嫌だとは申しません。マスターと共に、いかなる戦いでも――と、思っていたのですけれども。怪鳥の如き雄叫びを上げて殴りこんでまいりました信奉者の方の所為で全てが台無しになった気がしました。

 

「――で!!!!!」

「あー、うん。こういう乱入は無くなると思うから、安心して欲しい」

「ならさっさとやるぞ!!!!! 殴り飛ばしてやる!!!!」

「だからその殴り飛ばす機会も……まぁいいか。じゃあ、説明するぞ。今回考えているのは――」

 

 

 

「――ゴルゴーンさん!」

 

 第一段階は――二人の前線を大きく下げ、我々のいる場所までシャドウサーヴァントが押し込んでくる様に仕向ける事。

そこで、ライネス様の中の方が、先ず意識すべきと言ったのは……前線にいる二人を一緒に下げない事。もし一緒に後ろに下げてしまうと、その機を狙って打ち壊されかねないとのことで。

 

「グレイさんを下がらせる! ――好き勝手に暴れていいぜ!」

「――くくっ、ふはははっ! 何を企んでいるのか、まあいいだろう。その言葉、後悔するなよマスター」

 

 そして。その時下げるのは……グレイ様からが先。

 その理由は、説明されずともマスターは理解しておりました。というより、私たち自身が良く理解している、と申しますか。

 単純明快。

 ゴルゴーン様は、()()()()()()()()。カルデアでも、体が詰まると文句をいう事もありますし。しかし、その分、大きな範囲を薙ぎ払い、破壊できるのです。が。

 

 それを味方と共闘している時――特に、藤丸様と一緒に戦っていらっしゃる時は、ともに前線で戦うにせよ、後衛から私と共に援護をするにせよ……その圧倒的な攻撃範囲に味方を巻き込むことを警戒してもらわねばなりません。ゴルゴーン様がそれを良しとしていた訳ではございませんが……

 しかし、今この時だけは。グレイ様だけを下げる必要のあるこのタイミングであれば。

 

「良いだろう、好き勝手に暴れさせてもらう。初めてではないか? こうして現界してから、何にも気にも留めず――力を振るうのは!!」

 

 その全力を振るう時が、今、来たのだと思われます。一瞬、ゴルゴーン様の方から、一陣の風が吹いたようにも錯覚するほどに。彼女が晴れやかなお顔をしているのが一瞬見えました。課せられていた拘束から解き放たれて、どれだけの……どれだけ……

 あの、物凄く、前提がひっくり返る様な、想像をしてしまったのですけれど。

 

「……なぁ、このまま勝っちゃう、って事は無いよな?」

「いや、流石に聖杯のバックアップを受けているはずの、敵を相手に……いやぁ」

「あの、どうなさったんですか? ライネスさん」

「私はライネス嬢では……うん、まぁ、とりあえず、体勢を一応整えてくれ。もしかしたらそのまま勝ってしまうやもしれないが……」

 




どうして投稿を忘れてしまうのか。人類の永遠の課題。
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