FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第五十四章・裏:破壊の影 後編

 ――まるで暴風。

 

 普通なら間合いの一歩外の相手も尻尾で薙ぎ払いながら、相手が飛べば無数の光の剣で四方八方を空間諸共に焼き切ってさらに前進、突っ込んでくれば爪で受け止めて、自力で吹き飛ばし、更なる破壊を持って、圧して返す。

 相手が破壊の化身ならば、こちらは……

 

 怪物。

 

 表現するには、それ以外の言葉は無い気がいたします。言葉を書き上げてきた身ではありますが、しかしそれ以外は最早無粋にも感じる程の、圧倒的な暴威。

 かつて、希臘において多くの英雄となるべく向かって来た勇士が、まるで相手にもならなかった程の、圧倒的な力。それを、我々は見誤っていたのかもしれません。

 

「……なぁ、勝負に奇計も切り札もいらないって言ってたよな」

「要らないとは言ったが欲しくはないとは言っていない」

「あの……それで、拙はどうすればいいんでしょうか」

「すまないな。もう下がっただけで役目は終わりかもしれない」

「えっ?」

 

 ……本当に。

 先ほどから、シャドウサーヴァントの斬撃も、何もかも。それ以上に破壊し、押しつぶして、更に粉砕する。枷から解き放たれたゴルゴーン様の勢いと出力というのは、とんでもない事が良く分かります。

 

「いやー生き生きしてんなっと! あ、グレイちゃんはこいつ等を一緒にシバキ回しておいてくれると助かる」

「は、はぁ」

「想像以上だった。まさか、ここまで全力を抑え込んでいたとは」

「周りを気にしないでいい、というのは本当にゴルゴーン様にとって楽なのでしょうね」

 

 目の前で展開されているのは、正に神話の戦い。宮殿を破壊しそうな勢いの攻撃の合間を剣一本ですり抜けようとする英雄と、その英雄を食らいつくさんとする魔の者の決戦。なお英雄が敵で、味方はゴルゴーン様なわけですが。

その戦いは、素人目ではありますが……互角な様に見えます。お互いに競り合ってどちらも一歩も引いてはおりません。

 

 もしかして、ですが。

 本当に、このまま戦い続けていたら、何時かゴルゴーン様が、押し切ってしまうのではないか。そんな期待が持てるような――

 

『ゴルゴーンという伝説に歌われる存在の力を、甘く見ていたのかもしれないね……今後から彼女お一人で戦ってみてもらう?』

「義理欠け過ぎないか?」

『いやまぁそうだけども。でもあれだけ戦ってるのを見ていると、ね?』

「おい。おしゃべりはそこまでだ。一応見てはいたが、やっぱり無理だアレは」

 

――しかし、それはどうやら私の甘い考えだった模様で。

 

「無理なのか?」

「無理だ。彼女の暴れ振りに一瞬目が眩んだが、互角では話にならん」

『うんまぁ。冷静に考えれば。相手はこっち以上のリソースがバックにあるんだ、このまま戦い続けたらガス欠で押し切られるよ』

 

 頭脳派のお二人のお言葉を聞けば当然と言えば当然。こちらは限られたリソース、相手はこの特異点を成立させている聖杯という圧倒的なリソースがあるのです。確かに、長期戦ともなればその差が出るでしょうし……

 

「という事で、そろそろ策を御覧じてもいいだろう。ゴルゴーンを下げるぞ。これだけ休んだんだ。準備が出来ていない等とは言わせんぞ」

「お、おう。そうだな。ゴルゴーンさんに暴れさせてばっかりだし……そろそろやるか」

 

 という事で、マスターが正面を向きますが……

 

『――ハッハァ!! どうした、その程度か!』

『――』

 

 ずびゃあああああ……ッドン! ゴゴガガガガッ……!

 

「……アレ、俺の声届くのかなぁ。明らかに魔王様の迫力醸し出してるけど」

「届かせてくれ。俺ではかの希臘の魔妖に進言など叶わん」

「アンタ軍師のサーヴァントって言ってただろ!? そこは口車回してなんとかさぁ」

「そんなもの特異点を越えてきた貴殿らの絆に太刀打ち出来るものではない」

「……邪魔したって怒られそうなんだよなぁ……」

 

 ま、まぁ。いかにゴルゴーン様が今、楽しそうに戦っていらしているとはいえ、それを邪魔された程度で、怒ったり、は……お、恐らくしないとは思いますが。とはいえ言わねば仕方ないので……

 

「ゴルゴーンさん! そろそろ下がってもらえるとありがたいかなぁ、なんて」

「……………………ちっ」

「舌打ちしたなぁおい!?」

 

 ダメだったようです。

 とはいえ、ゴルゴーン様も、そのまま戦い続けたりはせず……切り結ぶか、すり抜けて切るか、何れにせよ剣を構え、近寄って来ていたシャドウサーヴァントを、尻尾で払いのけて、こちらへと下がって来ました。

 

「――それで、これでどうするつもりだ」

「これでいい。このまま、後は……」

 

 そして、当然の如く、シャドウサーヴァントは一歩下がったゴルゴーン様を追って、こちらへと近寄ってきます。一切怪しまず、こちらの動きに反応、いえ、今は追従するように動く姿はまるで、カラクリであるかのようで。

 正に、こちらが意図した通りの動きでございます。

 

「き、来たけど!?」

「グレイ。後は普通に相手をしていてくれ。隙は何れ私たちが作る」

「えっ、あ、の……」

「おい引き寄せるだけかよ!? カバー案は!?」

「ない」

 

 そうなれば後はライネス様の、中の方の策が――えっ。

 

「おい! アンタなぁ!?」

「冷静に考えろ。さっきまで、あのシャドウは二人の間を抜けられなかった。ここでも我々に手出しは出来ん」

「だけど外から入って来てる奴らが乱入したり――」

「しない。ほれ。見てみろ。もう策は成った」

 

 一瞬、物凄い投げ捨てられた意見が飛んだ、と思ったのですが、しかしそれだけでは終わりではないようで。その手袋を嵌めた手が、虚空を指さし

 

――いえ、正確には。今再び、シャドウサーヴァントと激突した前衛のお二方の、その奥の方、信奉者が向かって来ていた方を指さして。

 

 そこにぬぼぅ、と立っているのは、どうやら今到着したらしい、信奉者のようで。目をらんらんと輝かせて、今にも再び激突を始めた我々の元へと飛び掛かって来そうな……競う、な?

 

「……あれ?」

「こない、ですね……?」

「狂信者、というのは、信ずる者の邪魔はしない。ご神体の戦いは、邪魔してはいけない神聖なもの。であれば動きも止まる。彼らに合理的な考えはない。狂信だけがある」

 

 何人も何人も、集っては周りに集まり、しかしながら。我々を中心に遠巻きに見守りながら手を合わせ、祈る様な仕草をするばかり。他に、何もしてこようとはしません。寧ろ祈りに熱を入れている様な。

 

「――あー、はいはい。分かった分かった。そっか、そうだな。アイツらに『主体性』ってもんは存在しなかったんだっけか?」

「彼らの動きは、全て信仰に基づいている――たとえ、その状況が信仰対象にとって致命的でも信仰を優先する。それは神の事を思っている訳ではない。信仰という物に依存しているからだ」

 

 もはや、こちらに飛び掛かってくる気配すら、ない。です。

 

「我々は最早『聖戦』の一部だ。彼らが手を出してくることは無い。そしてこの大きな大きな隙は――我々にとって利にしかなり得ない」

「策は成った、ってか。なるほど。反吐が出るような習性を活かした、素晴らしい作戦だ事で。式部さん、大技準備。頼むぜ」

「あ――は、はいっ!」

 

 私たちを狙ってくる邪魔者は、今はいません。

であれば最早、決着をつけるのに――支障は、もうどこにも、ない。

 

「――参ります」

「おう。神業も、二度、三度は通じねぇだろうさ!」

 

 虚空に走る、私の筆――描かれたそれは、力ある言の葉でございます。顕れれば、そこに込められた思いを解き放ち、仲間を寿ぐ祝福にも、相手を縛る呪縛にも、そして、滅びを謡う呪詛にも。如何様にも、なり得ましょう。

 宝具程ではございませぬが。

 

「――えいっ!」

 

 走る文字は、黒い影を中心に回り、包囲するかのように渦巻いて――ですが、やはり捉える事は適わず、一閃にて、逃げ道を作られてしまいますが。

 此度は当てようと思ったわけではございません。もう既に。

 その目の前に、グレイ様と、ゴルゴーン様が。

 

「お願い、アッド!」

「イッヒッヒッヒッ! やっちまえ、グレイ!」

「逃がさぬ……!」

 

 渾身の一撃を構えられているのですから。

 逃がすことも、最早――ありえないでしょう。

 




あれっ? ゴルゴーン様って単騎の方が強い……?
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