FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第五十五章・裏:しかめ面の思惑

 古代ローマの街並みも、やはり霧の漂う灰色の街並みに変貌している。

王宮は既に別の形の宮殿へと姿を変えて。一枚目に触れた事で、ここらも変化はしていたんだろうが。二枚目の変化でより顕著となった、と言ったところか。

しかし、テクスチャが剥がれる事と、特異点自体が崩壊する事はイコールではないのか我々は、未だここから出られている訳ではない。

やはり特異点全体を崩壊させなければどうにもならないのか。

 

「しかし、英国の宮殿にローマの王宮のテクスチャを被せて、狂信者共のご神体を置くとは……権威にも何にも屈しないし、気にも留めないタイプなのか」

『実際の英国人の感想は?』

「私は別に女王に特別敬意を払っている訳ではないが。まぁ、好き勝手やってくれるとは思うし、それなりには腹は立つ――と、一応形式的に怒っておくとする」

 

――まぁ個人的に、私以上に腹が立っているらしい男が一人いるのだが。

 

「それで? もやっとした感覚はいかほどだったのかな?」

「顔見て分かって欲しいなぁ」

「うん。そりゃあまぁそうだよね。明らかに不機嫌そうな顔してるもんね……そんなに嫌なの? その感覚」

「当たり前だろ。もやっとするって言ってんだからよ。今もまぁ、もやっとしてんだよ」

 

 明らかに言葉尻も荒っぽくなっている。険しい顔と合わせて、いよいよストリート辺りに屯するチンピラにしか見えないくらいには。

 

険しい、といっても。もやっとしている、という言葉で済むような表情ではなく、明らかに『不機嫌』と顔に出ているのが分かる。いや、ちょっと怒っている程かもしれない。そろそろ舌打ちまでしそうだ。

そこまでなる『もやっとした感覚』というのがどんなものなのか、気にならないでもないのだけれども……しかし、いい加減、この辺りも対策した方が良いのかもしれない。

 

「はぁ、頭痛くなってきそうだよいい加減……絶対に俺に嫌がらせしたいだけだろあの紙片を用意した奴。ホントに」

「一旦、休まれますか?」

「いやぁ休んだところでなって話だよ。精神的な話だし。まぁ、美人さんを見てれば気持ちも癒されるかなぁ、とは思う」

「……い、癒されます?」

「式部さんは癒し系だとは思うよ」

 

 ……いや、別に特別に心配しなくていいのかもしれない。あんな歯の浮くセリフを吐けるんだから。余裕は全然あるように見える。一応、カルデア側で観測しているバイタルに変化があった事は間違いないので、何もない訳ではないんだけど。

それにしても大げさな反応をしているだけかもしれない。

 

「――おいマスター、女を口説いている余裕があるならさっさと立て」

「あ、スイマセン。そういえば俺の回復待ちでしたね……?」

「そうだ」

 

 あ、私が言う前に色々言われてる。

 

 実際、我々がそこらへんで待機しているのは、本造院の調子の回復を待っていたからであるし、まぁ別に待たされている、という意識はないし、それ相応の激闘の後だから休んでも全然かまわないのだが。

 ……ここは乗って置いておいた方が面白い、か? いや流石に本当に精神的ダメージを受けているかで微妙な所にいる相手にそういう事をするのは避けるべきか。

 

「――まぁ、実際もうたいぶ回復は出来た。動くにも問題は無いから出発するか?」

「ならばさっさと立て」

『いやいやいや待ってくれ。本当に大丈夫なのかい? ちゃんと確認して? そんな女の子に冷たい目で見られたからって圧力に負けないで』

「いや別に本気である程度は回復できたからいいんだけどもなぁ」

 

 しかしまぁ、流石は三つの特異点を越えてきた精鋭か。先ほどまで、本気で命のやり取りをしていたというのに、それを感じさせない。こういう時に切り替えが早いのは、実にいい事だと思う。

 

「あの……心の疲れ、というのは、馬鹿に出来ませんから……つらいなら」

「ああいや、グレイさん大丈夫。本当にそこまではきつくないから。きつかったら多分恥も外聞も無く吐いてるし。ゲロゲロに」

「そ、そうなんですか」

「はっはっはっ……ごめんね、反応に困ること言って」

 

 まぁ実際見た目キツイ男が『弱ってたら間違いなく吐く』発言してきたらそりゃあ私だって困ってしまうが……一見して見ただけでは、それを強がりで言っているのか、それとも本当になんてことも無くて、寒いジョークを言って滑ってしまっただけなのかは、分からない。

 

「――まぁ動けるなら、出来る限り直ぐに動いた方が良いだろうね。取り合えず立てこもれそうな一室に避難しているとはいえ」

『開けろ! 異端審問兵士だ!』

『逃げるなぁあああああ!! 断罪から逃げるなァアアアア!』

『もうこれで……終わってもいい……』

「――うるさい上に、彼女には狭いだろうしね。うん」

 

 という事で、ここは話題を変える事を優先。取り合えず、現状のゴルゴーンのいら立ちの半分以上……というか、殆どを占めている現状を敢えて説明口調で。そうすれば注意も引きやすい、かなと。

 いや、実際ずっと体を小さく縮こまらせているゴルゴーンが可哀そうになって、というのも無い訳でも無いのだが。

 

「ではそこをぶち壊して外に出るぞ。構わんな」

「あーうん。大丈夫だと思うよ。後は逃げるだけだし。よしんば包囲網があっても、これだけの戦力で突破できないなんてことは無いだろう」

「……ごめんなさいね?」

 

 どうやら余程この窮屈な場所に押し込められていたのが気に食わなかったらしい。もう既にエネルギーをため込んで、全力でうち放つ準備を――って。

 

「ちょ!? ここでそんなものぶっ放したらまず――」

「――」

「――あぁ駄目だコレ……ぜ、全員反対の壁に寄れ! 巻き込まれるぞ! 撤退!」

 

 その言葉に、状況が理解できたのだろう、全員が急いで壁際へ――私を抱えて逃げ出してくれたグレイに大いに感謝をしながら。

 

「――らぁっ!」

 

 紫の光が壁際で弾け……壁を押し退け、砕き、光が全てを飲み込まんと暴れた後には。相当サイズの大穴がドカンと開いていた。

 アレだけの魔力、やはり近くに居たら塵になっていただろう。

 

「さっさと出るぞ。早くしろ」

「もーゴルゴーンさんったらせっかちさん! さ、式部さん。行こうか」

「は、はい……」

 

 全員が外へと飛び出す。

 

 外を確認。どうやら誰もいないらしい。本当に全員が王宮に殺到しているなら、周りも取り囲まれている事も想定していたのだが。それとも……今の魔力の爆発で相当数が吹き飛ばされたか。まぁ何れにしても、誰もいないならそれが一番だろう。

 当然言わない。別にいう必要もないだろうし。言ったところで現状に何か関係する訳でも無いだろう。変に士気を下げる方が今はよろしくないだろうし。

 

「んで、どうする!? このまま『海の都』に行くか!?」

「いや、一旦『竜の都』の拠点に戻ろう! 勢い任せはよくない、どうせどっちの都からも直接行けるんだ。落ち着いて、情報を整理してからでも遅くない」

「はいはい。であれば捕まる前にトンズラするか!」

 

 ……引き続き、嘘は言っていない。うん。

 『海の都』に今は行くべきじゃない、っていうのは本当だ。色々情報の整理も必要だろうし、当然ながら今後の対策も必要だ。今の所、紙片を触る事でテクスチャが剥がれている以上、紙片を彼に触って貰っているというリスクに、一つこちらから手を打つ事だってしなければいけない。そのプランも、頭にはある。

 

 だが致命的な問題はそこではない。

 

 海の都は、グレイと共に一応、調査しようと思った時……最も『調査困難』として、最速で切り上げた場所だ。ある意味で、霧の都以上に真っ当な探索は不可能に近い。

 というか、あそこをどうやって調査するつもりなんだろうか。あの()()()()は。

 

「……こんな事なら『出師表』でもう一人程、呼んでくれても良かっただろうに」

「ら、ライネスさん。しーっ、しーっ、です」

「あ……すまない」

 

 っと、考え込んで忘れていた。

 どうやら、竜の都、紅の都は、確認した限り調査は終わっているらしい。一体、今何処に居るのかはサッパリだが……囮役としては、そこそこの役割を出来ているのではないだろうかと、思う。

 

 彼はこの特異点の背後にいる者を、特定できるのか。

 ま、信じて待ってみるとしようか。

 




ライネスとグレイがこうなっている以上、彼の宝具が関わっていない訳もない。という話。
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