FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第五十六章・裏:海の脅威のあれやこれ

 目の前には、もう灰色の薄暗い霧が漂ってきているのが見えて来ています。

 そして、その霧の中に顕れ、そしてある程度はその姿を露にした建造物も。

 アレは、この特異点を維持している者の、拠点なのか。それとも、全く別の何かなのかと。頭脳役お二人の議論は尽きませんでした。

 

 とはいえ、結果、断定はできない、という結論に至ったのですが。一つだけ。先ほどダ・ヴィンチ様が例の建物を遠目から測定したその結果を見て……『あの構造物の外は固い外殻……卵の殻っぽい』という結果から来た感想だけが、今の所です。

 

『もしあれが卵だと仮定して。さて、一体どのような中身を守っているのか』

「特異点そのものを維持する文字通りの楔とか?」

『中身ぷるぷるで流動系の楔とか、頼りにならなさそうだねぇ』

「料理してお供えものにでもした方が良いんじゃない?」

『卵系のお料理。英国ならスクランブルエッグとか?』

「何の話をしている……?」

 

 恐らくは、建造物に関しての話だと思われます。途中から何故か卵のお料理の話にすり替わって行きましたけれども。

どうして急にそうなったのか、頭の良い方というのはやっぱり、常人には理解しがたい思考をしているものでしょうか……等と。頭の中が、『はてな』で埋め尽くされておりますが。

 

「やっぱ卵の形崩すのは良くないし、そのままゆで卵が一番宜しいのでは?」

「ふむ、一理はあるか?」

『美味しさはスクランブルエッグの方がいいと思うけどなぁ』

「貴様ら本当に何の話をしている……?」

 

 そう思っていたらそこにマスターも参加して混乱が加速しました。ゴルゴーン様の明確に怪訝なお顔も、更に深くなりました。

 

「生贄ってのには形ってのが重要だからさぁ、やっぱり、そのまま変に加工しないってのは縁起がいいんじゃないか――っと、そろそろご到着か」

「おや、暇つぶしのお時間も終わりかな?」

『その様だねぇ。じゃあこっちも仕事するかぁ』

 

 ……とまぁ、そのような話をしていれば、何時の間にか到着でございます。霧の都。入り口の辺り。ここで人形を鹵獲して、身代わりとして、マスターの危険を出来るだけ軽減するのが目的。

 

「しっかし灰色だよなぁ。剥がれた場所と色合いがそっくりじゃ」

「そう考えると、この霧の都は大本のロンドンを元にしたエリア、という事かな」

『そう考えるのが普通だろう。全体は覆いきれないから、中心だけは残して利用するとは随分とまぁせせこましいというか』

「でもま――ここ以外は、多分だけどそういう意図なんだろうなってのは、想像つくよなぁ、いい加減さ」

 

 マスターが、ふと、といった様子で呟いたのはその時でした。そう思わないか、とでも言いたげにこちらに視線を向けて来たのですが……しかしながら、私には何をおっしゃっているが全く分かりません。

 

「えっと……何の意図ですか?」

「……いきなりで悪い。ここの作りだよ」

「ここの作り。今までの二つの領域のお話ですか?」

「そうそう。竜の都も、紅の都もさ、まぁそっくりの形をされてるじゃないの。今まで俺たちが巡って来た所を、さ」

 

 ……そういわれてみれば、そうなのですが。

 

 竜の都は、牧歌的な景色の中に跋扈する無数の飛竜を、旗を掲げた黒い魔女が率いる第一の特異点――オルレアン。

 紅の都は、狂気の神祖に率いられたローマの兵隊。ローマとローマの激突を繰り返していた第二の特異点――セプテム。

 この二つに、確かにそっくりではあるのです。

 

「これで()()()()も無いっていうのは、詐欺だと思うんだよな」

『まぁ、それは薄々気が付いてるけれども。となると海の都もそういう事かな?』

「じゃあシャドウサーヴァントはどっちになるの? 黒ひげ? 筋肉達磨?」

『うーん海戦主体なら前者、島に上陸して戦う事になるなら後者かなぁ。どっちもって普通にあり得そうなのがねぇ。普通に凶悪なのはヘラクレスの方なのかな?』

 

 もしヘラクレスがもう一度我々の前に立ち塞がった場合。もう一度勝てるか、と言われますと。無理です。シャドウサーヴァントという形に零落しても尚、恐らくは今までの二人を相手にした時以上に。

 

「……へ、ヘラクレスって、拙は一人しか知らないのですけれど、あの、ヘラクレスさんなんでしょうか」

「ひひっ、お前でも知ってるレベルっていやぁアイツしか居ねぇだろ。とんでもねぇ化け物とぶつかり合ってるなぁテメェら!」

「おう褒めなくて良いぞ。っていうか、多分厄介さで言うなら、黒ひげの方が厄介だ」

 

 ですが、マスターの感想は、それとは一つ違う模様で。

 

『いやー、厄介さという意味では確かにそっちも中々だよねぇ』

「黒ひげって、師匠が持っていた、アレ、でしょうか」

「うん、あの樽に詰まったオジサンの元ネタ。世界一有名で極悪な海賊。知名度はヘラクレスと同等の化け物。サーヴァントとしては、確かに脅威だね」

「舞台が、海じゃなけりゃあそうでもないんだけども」

 

 しかし、聞いてみれば確かにそうです。次の舞台は、水に沈んだ場所という事……であれば海の上の黒ひげ、という怪物を、今度はドレイク船長抜きで相手にすることに、なるという……えっ?

 

「あ、あの、勝ち目って……ありますか?」

「ないっ。ぶっちゃけヘラクレス相手の方がまだ勝ち目あるんじゃないかな」

『あーそうだね! こっちには船頭が居ない! 黒ひげのシャドウサーヴァントを出されて、それがキッチリ海を渡るだけの力を持ってたら終わりだ!』

「……もしかして黒ひげさんって、物凄い人なんですか?」

「少なくとも樽に入ってピョンピョン飛ぶ人じゃないよねぇ」

 

 あの時は、ドレイク船長の巧みな操船技術と、海賊の皆様、ゴールデンハインド号という名船があって、それで漸く互角だったのです。そ、それが無いという事は、要するに我々は海の上でただの狩りの獲物という事に。

 そもそも我々は、勝負の舞台にすら上がれない、という事にならないでしょうか。もしかして、ですが。

 

「マジでどーしよーかなー……船乗りさん(太陽を落とした女)いないけど」

『どうする? 現地召喚する?』

「ランダム要素が強すぎるだろう。船乗りを引き当てる可能性も無いのに、リソースを費やすのは、どうなんだろうね」

「じゃあ船員どうするん?」

「まぁそう焦らない。今は目の前に集中、その後に改めて話し合うとしようじゃないか」

 

 ……確かに行かない、という選択肢はない以上、確かに焦って論ずるのはマズいのかもしれません。船員の当てがない以上は、それを補うだけのちゃんとした作戦を立てないと危険なのは間違いありません。

 それに、この先は――あまりにも危険な領域。そこに入るにあたり、ここを安全に抜ける為に色々と策を練ったくらいには。

 

「さて、いよいよ身代わり人形の確保と、近辺での建造物の調査開始だ。足を止めぬように駆け抜けるとしよう――君がね?」

「あーはいはい。必死こいて担いで走るとしますよ……本当に走れねぇんだよな?」

「あぁ。私の魔術は基本的に研究用に調整されていてね、身体強化も出来ない訳ではないがたかが知れている。元の身体能力を考えると、特異点を越えて来た君たちに匹敵するなんて、口が裂けても言えない」

 

 無理無理、と申されているライネス様を抱え、マスターは駆け抜ける事になっております。私はゴルゴーン様に抱えていただくことになっております……単純に、動けない者を抱えて走る、ただそれだけの事なのですが。捕まれば危険、のこの領域においては、それこそが必要である、と。

 

「んじゃ――お姫様、でいいかな?」

「おや、そんなロマンチックで、非効率な抱え方でいいのかい?」

「女の子ってのはそういうのにあこがれるもん……という偏見がある」

「古い偏見だねぇ。今だとそういうのってセクハラに当たる場合もあるらしいけど。まぁいいや、頑張りたいなら任せるとも」

 

 ライネスは、マスターの腕の中。そして、私は既にゴルゴーン様の腕の中、俵の様に担がれて――ふと、ライネス様の方に視線が行きました。彼女は……霧の向こうを見つめているように見えました。

 

「――さて、何かしらの()()を見つけられれば、良いんだけど」

「そこはダ・ヴィンチちゃんに任せるかねーんでない?」

「あはは、そうだね……では、諸君。突入するとしよう。グレイ、一番身軽に動けるのは君だ。くれぐれも頼んだよ」

「は、はい! 頑張り、ます!」

 




くうつか。

という事でしばらくのお休みを頂きます。次の投稿は十二月初めごろになると思われます。その時、またお時間があれば、見ていただければと思います。

それでは。
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