FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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た だ い ま


断章:獣コンビのエトセトラ

「――ンンン、宜しいですなぁ。実に」

 

 海坊主。船幽霊。蛟。

 男の脳内には、思い浮かぶだけの水の怪異という物が浮かんでいる。前半二つはあくまで餌に過ぎない。強化したシャドウサーヴァントの性能確認も兼ねてはいるが、基本は捨てるつもりだった。

 

 しかし、第三特異点を模倣としたここ、『海』という概念を特異点の形としたこの場所であれば、故郷の怪異も取り入れる事も出来よう。好き勝手に暴れられる。そう考えてしまうと……思わず吊り上がる口の端を抑えられない。

 

「まぁここで敗れ果てたならそれでよし……突破してくるのであればなお良し。何方にせよ此方にとっては得しかない。我らが大将も、実に悪辣な事!」

「――なんつークソゲー。拙者ならコントローラー投げてますなー」

 

 それに。

 自分には――ここで切れる、強力な切り札がある。そんな自負が彼には有ってこそのこの余裕である。圧倒的な慢心とも捉えられるようなこの、この、この満面、且つ、愉悦に満ちた笑みなのである。

 

 準備も万端の上に、完璧に制御できるだけのサーヴァントを絞った。強すぎてもいけない、かといって聖杯によって作られたうたかたの夢では召喚すら難しい……であれば。この第三特異点において最も暴れた彼に、リソースを費やすのは当然と言えた。

 

「それはもう! 好き勝手にさせぬように、貴方様まで召喚し、最大の戦力を託しておりますれば!!! 存分に『りべんじまっち』を楽しんでいただければ!」

「BBAいないんでしょ?」

「ええ、まぁ」

「じゃーイマイチやる気起きんですわなぁ。拙者カルデアの連中に恨み自体は無いですしお寿司。リベンジする相手が居ないとなぁ」

 

 ……最大の問題として、その当人である――黒ひげ『エドワード・ティーチ』が一向にやる気にならない事なのだが。召喚した時からずっとこれで、未だやる気を引き出せたことがないのである。

 自分が素直で分かりやすい……とは全く思ってはいないのだが。しかしながら、少なくともこの髭よりは扱いやすいという変な自信すらついていた。

 

「んねーマスター? もうちょっとこう、拙者のハートにぃ、こう、ビビッ! と来る様な報酬とか、頂けないんですのん?」

「ふむ……財宝では不足ですかな?」

「不足ですなぁ」

 

 そもそもマスターに普通に従わない。神秘の濃い時代の生まれでもないくせに、性根が京都などにうろついている、選りすぐりの魑魅魍魎やら魔獣共やらのそれなのである。反英霊ではあるのだが、それでも一応は人間であるといつの間にか忘れそうだ。

 

「――分かりました。何か欲しいものがあれば希望を聞きましょう。ライダー」

「全くぅ、初めっからそういえばいいじゃないですの~ん。まだるっこしいのは拙者大大大の苦手でごぜーますよぉん」

「貴方、まだるっこしい手とか大のお得意でしょうに」

「得意なのと好きなのとは違うって奴ですな」

「……確かに、貴方は気に入らなければ非常に直接的な行動をしようとしてきますし」

 

 さらに言えばこの男。常にこちらの寝首を掻こうとすらしているのだから始末が悪い事悪い事。彼自身、目の前の大男を始末できるだけの術師であり、さらにそれなりにフィジカルにも自信があるからそう容易くはさせていないだけで。

 

 例えば、こちらの総大将との通信している時だとか。

 全くもって背後への注意は怠れない。一瞬でもそういうのを怠ったら、その瞬間に鉛玉がこちらの後頭部から前頭葉をぶち抜いて脳漿をまき散らしつつ消滅しかねない。一応マスターではあるのだが、どうやら彼は自分とはそりが合わないようで。

 一瞬でも隙を見せたら喉元を食い破られかねない。

 

 まぁこの体は身代わり故に、そうなっても余裕ではあるのだが。流石に何度も何度も死ぬ感覚を味わうのは流石に勘弁してもらいたい。

 

「それで? その直接的な行動を抑制するには如何すれば?」

「そりゃあやっぱりおにゃのことの出会いですぞー!」

「そうですか。直球ですねぇ」

 

 しかしながら、その捻くれた性根の割に欲望はドストレートなのは幸いと言えば幸いなのだが。もしこれで、こちらの思惑を態と崩そうとして『マスターの命』だとか言い出す愉悦部であったら、如何に有能であってもその首を落とさざるを得ない。

 

 金、女、権力。そういうので釣れるのが一番だ。とはいえ、その女をどうするのかを考えてしまうと迂闊な女は与えられなかったりもするが。

 

「マスター、居ませんかな? マスターの身近に、女神様系の美形で、超絶ロリロリしていて、それでいて相当にプライドの高い、拙者が思わずおみ足を舐めたくなるようなブレイクスルー美少女って奴」

「……」

 

 こうである。

 全く、全くの偶然である可能性はある。あるのだが。しかしながら相手がこの男であるというだけで不安になる。

 どうして、こちらが確保している『女神』の特徴をそうも完ぺきに捉えた要望を、しれっと出してくるのか。

 

「――拙僧の元にはいませんなァ」

「そっかー。そういう匂いがしたんだけどナ~。気の所為だったか~」

 

 これである。

 

 油断していたら、何時の間にかこちらの総大将に取り入っているとかもあり得るくらいにはこの男、実に頭が回る。この見た目で怪力乱麻ではなく頭脳派なのは些か以上に面倒に過ぎるのである。

 というか、匂いとは一体何だ。

 

「ですが、敵にはいらっしゃいますぞ?」

「えっ、マジ」

「ある程度、特徴を捉えてはいますから悪くはないかと思うのですが……さて、このような感じなのですが」

 

 という黒ひげの態度が実に面倒なので、気を反らすために敵の姿を見せてみたりする。本来は、この特異点に彼らだけを閉じ込めるつもりが、いつの間にやら余計な輩が何人か紛れているのは、もう把握はしている。シャドウサーヴァントと視界を共有する程度の事は、そう難しくも無いのだ。

 

「ほー……ぉぉぉぉおおおおおおおおおっ!?」

「如何でしょうか」

 

 そのうちに一人。まぁこの男の趣味に合致しそうな女が居る。

ライネス・エルメロイ・アーチボルトと名乗るサーヴァントは、この男が口にした全ての条件を満たす様な見た目をしている――その姿を見せるだけで、やる気が煽れるならば安い物。

 

何よりも。このサーヴァントはリンボにとって一つの悩みの種だったからこそ、出来るだけ早く対応したかったというのがある。彼女が召喚されたのは、本当に唐突で、不意打ちにも近い出来事だったのだ。

魔術の秘奥の一つを元に編み上げた術でここを覆って、ここの防衛に最も適した守護者を配し。様々な細工を行った。脅威へのカウンターとしてここに呼ばれたサーヴァントもたった一騎だった。

 

「うっわ凄いですなぁ、こんな『小悪魔』してる少女なんてこの世にいたんだ……これがオタクの待ち望んだエルドラド……!」

「大変ご満足されたようで」

 

そんな中で、突如として召喚された二人の少女達は、リンボにとっても完全に想定の外の出来事だったのである。

あの一人だけなら、自分の想定の範囲内。しかも特に反抗的な作戦をする訳でも無く。こんな厄介な後は策が成るのを待つばかりだとばかり。とか思ってたら取り敢えず逃げ出した後に唐突に二人ほど呼び出された訳で。そりゃあ拙僧も最後まで驚きたっぷり、と言い出したかった。

 

厄介なのは、先のアーチボルトだけではない……もう一騎もそうだ。この特異点の性質上、灰色の彼女はこの特異点を崩壊させる一因になりかねない。彼女だけならまだしも、それを扱い熟す頭脳も一緒にいる辺り、恐らくあの二人が呼び寄せられたのは明確な『対策』だと思われる。

 

「彼女の扱いはお任せいたしますよ、黒髭殿」

「――よっしゃ、やる気出て来た。ちょっと明日の未来を先取りして本気出す。轢殺! 略奪! 凌辱! の3Rですぞぉ! ぐひょひょひょひょひぃっひっひっひっひっ!」

 

 万が一、後詰の黒髭を召喚しておかなければ。そのまま『あの中』にまで到達されていた可能性があった。

 

 とりあえず、ここであの二人にはご退場いただき。

 もしあの少年がここを突破できたならば、あの少年を最深部まで誘導する――後は、あの塔を閉じれば、それで終わり。楔はそのまま、牢獄へと早変わりする訳である。

 

「(――しかし、あの方も恐ろしいものだ)」

 

 無理矢理ではいけない。

 自分から踏み込んで、自分から折れるという手順が大切なのだ、と今の主が言っていた事を思い出す。言い訳を作る余地を与えてはいけない。我々が貶めようとしていた、という感情を与えてはいけない。

 

 自ら心をへし折らせる事でこそ――彼は、主にとっての最高の『導』となるのだと。そう言っていた、あの顔。

 自らの悪辣さを棚に上げ、正に()()らしい、実に性根のねじ曲がった考え方だと。リンボは、改めて苦笑いを浮かべた。

 




邪ンヌを召喚するのって現状ぐだ男くらいしかできないという事実。他は縁もクソもねぇんじゃ!!
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