FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第六章・裏:聖女から見たハゲ頭

「――聖女ねぇ」

「えっと……その……なんでしょう」

「本造院さん、どうしてそんなにジャンヌさんの顔を穴が開く程に……」

「ん? ああいや、俺の周りには居なかった人種だしな。珍しーなーとか、アレだ。動物園で急にタスマニアデビルとか展示してあったらさ、その。気になるじゃん」

「せ、聖女を珍獣扱いはマズいんじゃないか!?」

「いやあくまで例えで珍獣扱いはしてねぇよ?」

 

 ――何というか今、私がどんな扱いを目の前の男の方からされてるのか。藤丸の言葉で凡そは悟りました。正直、喜んで良いのか、怒るべきなのか。まぁ、こういう反応は生前沢山されたと言えばされましたが……ここまで露骨なのは初めてで。

 

「確かに無垢そうというか。初心というか。そんな感じするなぁ」

「初心!?」

「マスター! 高名な神職の方に……そんな、初心、なんて失礼ですよ!」

「いやいや褒めてんのよ? 初心って言うのは、言い換えれば純粋って事にもなる。()()()()純粋なのは別に悪い事じゃない。寧ろ凄い事だぜお嬢さん」

 

 でも、こんなに露骨に見てくるにしては、何というか、純粋と言えばいいのか。その目線に悪いモノは余り含まれていないように感じます。不思議なのは……まるで、懐かしい物を見ているような、目をしているのが。

 

「――っと、あんまり見てるのも良くないな。ま、これから宜しくって事で。自己紹介が遅れたな。顔面偏差値落第点、本造院康友だ」

「する前にマスターが話の腰を折ったのではないですか……えっと、紫式部、と申します。少しマスターはその……ひょうげた所がございまして。お気になさらないでいただけると」

 

 そんな彼に、片割れの東洋の女性――紫式部さんは、とてもピッタリだと思えました。藤丸とマシュの様に、純真で、互いを生かし合う様なコンビとは違い、一癖も二癖もある様なマスターと、それを補佐できる落ち着いた教養人。互いの弱点を綺麗に埋める、本当に良く出来たペアの様に、見えたのです。

 

 

 

「――ふーん。その御大層な竜の魔女様は自分より弱い者だけに照準絞った虐めがご趣味と……ほー、そりゃあ御身の身の丈に合ったご高尚なご趣味だ事で」

「ま、マスター!?」

「いやー憧れちゃうなースッゴイなー真似したいな~^^」

 

 ……一癖どころか癖しかないのかもしれません。

 何者かの襲撃によって、地獄のるつぼと化したラ・シャリテ。そこでの惨状を治める為に戦っていた私の前に現れた、黒い私。

 自らを裏切ったフランスを燃やす私。こうして戦う私を愚かな小娘と笑い、自らの削ぎ落した残滓に、最早未練はないと威を示す私。

 狂えるサーヴァントを引き連れた『竜の魔女』。

 

 その恐るべき怪物相手に……速攻でした。本当に。彼女が朗々と語り終わったのを、聞き終えて。全て聞き終えて。そこを狙ったかのように。

 本当に。敬意の欠片も無い。心の底から、嘲りの感情しか見えない、そんな声色で。しかもニッコニコの笑顔で。マスター・本造院は。そう、言いました。

 

 間違いありません。煽ってます。

 

「――なんですって?」

「いやー得るものが沢山あるんだろうなー教えて欲しいなーひゅーひゅー」

『ちょっ!? 本造院君何言ってんの!? あ、あのスイマセン、ウチの子ちょっと、ちょっとだけあの……ポンで!』

「本造院さん!? 急にどうなさったんですか!?」

 

 黒い私に向けて、満面のニッコリとした笑みを浮かべて。

 明らかに向こうの表情が変わってます。ニッコニコの彼とは正反対に、張り詰めた空気が漂っているのを見て、急いで式部さんが制止しようとして……

 

「いけません、マスター! きけ――」

「周りの皆様もねぇ、さぞ楽しんでたんでしょう? 堂々とおいでなすったからねぇそりゃあもうさぞ、さぞ!! それしか目に入らない位!!」

 

 ふと、何かに気が付いたようにその動きを止めて、ゆっくりと下がり始めました。一歩、また一歩と……まるで、彼から離れる様に。しかし、黒い私と、彼女が率いるサーヴァント達からは目を離さぬままに。

 それに気づいてか気付かないか。彼は言葉を止めません。

 

「やりたい事やったんでしょ! ねぇ、麗しの竜の魔女様!! お返事くれませんかー!」

「……サーヴァント共、先ずはそのハゲからです。私の元に、四肢を引き千切って連れて来なさい。あの枢機卿よりも惨めで悍ましく殺してやります」

「あらこっわ。そんな急に怒らないでよー……ホールドアップでもするからさ!」

 

 ばっと、両手を上げたその瞬間。

 黒い弾丸が、式部さんが下がった方向から、計五発……正直、度肝を抜かれたのは間違いありません。私の頭の上を飛び越えて飛んでいくそれは、味方の私ですら想定していなかった弾丸。

 

「「っ!?」」

「「「――!!」」」

 

 当然ながら……敵である相手にとっては、それ以上。驚いた顔をした黒い私と、銀髪の女性の二人の反応は、当然と言えるでしょう。完全な不意打ち。しかし残る三人は、その事に驚くよりも先に飛びのく構えを見せました。

 間違いなく、その三人は手練れなのでしょう。

 

「――藤丸! マシュちゃんに防御任せる! 撤退だ!! 急げ!!」

 

 しかし、その三人が反応したのに被せる様に声が響きます。

 その声に真っ先に反応したのは、声を掛けられたマスター・藤丸。近場に居たマシュの肩を叩き、下がっていた式部さん、そして、急いでその位置から逃げ出して来たマスター・本造院が自分達の後ろに下がるのを待って、私に首肯して見せました。

 

「くっ、舐めた真似……ってあぁっ!?」

 

 そして、黒い私が気が付いたのでしょうが……既に私達は、大きく距離を取っています。マスター・藤丸はマシュさんに抱えられて、そして……そして、本当に、本当に信じられないのですが……マスター・本造院がシキブさんを抱えてマシュさんに並走しています。

 

『――まって!? 君本当に人間!?』

「どうやら混血みたいですけどォ!?」

『あぁそうだね……って違うそうじゃない!』

「山丸ごと一つ管理する為にはこれくらいの足は必要だったんだよ! 我が山は広さだけはそこそこあって一人で管理するには健康な足腰が必須なんだ! 人間舐めんな!!」

 

 ……マシュさんが、特別素早いサーヴァントではないではない。というのは間違いありません。それにしたとしても、とんでもない健脚。しかし、本人はそうは思っていない模様で明らかに『余裕』という物を投げ捨てた声を張り上げました。

 

「つっても全力も全力で後先考えてないからこの後間違いなく死ぬからその辺りは加味して頂けると非常にありがたいです!!」

「ご、ごめんなさい私の所為で!」

「式部さんは関係ないわ寧ろ羽のように軽いからご安心を!」

「えっ、あ……ありがとうございます……」

 

 その割には軽薄なやり取りなさってる、とは思いましたが……その横顔を見て、その考えは投げ捨てました。

目が血走り、歯を全力で剥いて脂汗を吹き出しながら、決死の形相で駆けるその姿に……その、余裕、とか見るのは、失礼とか、もうそういう次元じゃないです。正直に言わせてもらうと若干、ヒきました。凄い失礼だとは、思うんですけど。

 多分、会話で気を紛らわせないと……切れてしまうんでしょう。今、この速度を保つのに必要な何かが。きっと。

 

「だ、大丈夫か本造院!? あ、あの! 終わったら回復礼装使う?」

「ぜ ひ お 願 い し ま す!!」

「う、うん! 分かった!」

 

 後ろをちら、と確認しますが、今の所……誰かが追ってきている、という様子はなさそうで。完全に隙を突いて逃げ出す事には成功したようです。

 

「どうやら振り切った模様です!」

「ドクターッ! 後何キロォッ!?」

『そ、そんなに必要ないよ! もうちょっとだけ! もうちょっとだけ頑張って!』

「オーライその言葉を待ってたあと十秒と持たないからその辺りシルブプレ!!」

『う、ウイマダム!!』

 

 ――その後。

 本当に十秒ほどで限界を迎えたマスター・本造院は物凄い勢いで地面へと倒れ伏してしまい。後は私が担いでいく事になったのですが……その時の彼の表情は、本当に死んでいるかのように見えた、とだけ。

 

 

 

「……」

「凄かったわね、今の殿方!」

「うん。(顔が)凄かったね。出来ればマリアに近づけたくない位には」

「あら、どうして? ああやってとても頑張る人、私は好きよ! それに周りの人達も」

「それにしたって、あんな鬼みたいな顔してる人を君に近づけたくないよ」

「でもきっと、このフランスを助けようとやって来てくれた人たちよ?」

「……まぁ、君が言い出したら聞かないのは知っていたけどね。分かったよ。行こうじゃないか。その代わり、あの禿げ頭にはあんまり近寄らない様に」

「もう、アマデウスったら。心配性なんだから……」

 




へいへーい! 黒ジャンヌ様びびってるぅ!

どんな感じのキャラか、こうやって書いていく事でちょっとずつ掴んでいこうと思います。はい。
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