FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第六十三章・裏:特異点考察

 雷光の名を持つ彼は、とある島の王子なのだという。

 

『怪物? いいや? アステリオスとして顕現した彼は、いわゆる童顔系のイケメンだったとも。私個人として、是非とも絵をかかせてほしいくらいにはね』

 

 見た目も良し。とある女怪曰く理不尽の塊のような女神を当然の様に助け、壁となる程には心優しく、そしてかの半神たるヘラクレスと互角に戦う程に力も強く、そして生命力は死ぬ程の重傷を負ってなおそれでも笑って守る者を励ませる。

 二物どころか、怪物として放逐したことを愚行と笑い飛ばせるレベルには、彼はありとあらゆるものを持って生れて来た。選ばれし者だ。

 

 そんな彼が、生涯を過ごしたのが、ラビリンスという迷宮。迷い込んだものをけっして外には出さぬ呪われた石造りの構造物。何処までも果てが無い様な広い広い迷宮の中に解き放たれた無数の魔物に阻まれ、彼の元に辿り着けるかどうかも怪しい。

 ミノタウロスという存在がラビリンスを脅威にしているのではない。迷い込んだ獲物を食らうラビリンスというそのものも、独立して十分な脅威である。

 

「ミノタウロスではなく、迷宮、ですか?」

「あぁ、我々が真っ先に攻略するべきは、シャドウサーヴァントではない。このラビリンスの方だと思われる――君たちの辿って来た歩みから見出した結論だ」

 

 彼――司馬懿殿が見抜いたのは、アステリオスと、影となったミノタウロスの強さとの差異だった。と言っても単純な話だが、シャドウサーヴァントであるアレの先ほどの強さは、明らかにオリジナルを越えている。

 だがあり得ないのだ。シャドウがオリジナルを越えるなど、普通では。しかも文字通りどうしようもない程に無敵性を獲得するなど。

 

「あのシャドウサーヴァントという存在は、確かに脅威ではある。だが伝え聞いているアステリオスとはあまりにも違い過ぎる。アレは真っ当に強い、というよりは『無敵』と呼ぶ類の強さだ」

「ほんまチートみたいな強さでしたけど……その心は?」

「絡繰りがある。強さの質が前者であれば俺の宝具とは相性が悪いが……恐らくあの強さは、俺で対処できる類」

 

 司馬懿殿が、私の魔術の知識、そして特異点でカルデアが獲得したアステリオスという存在の情報、そしてここで獲得したこの場所での経験。材料は大いにそろっていた。そこから司馬懿殿が考え出した、考えうる限り最も合理的に、かつやり易い強化方法は……環境と楔を利用した結界の構築である。

 

 結界。

 自分の領域を作り出し、その中で圧倒的な有利を約束する。この広大な迷宮はミノタウロスの牙城を再現している。シャドウサーヴァントであるミノタウロスとて、影響を受けないという事は無いだろう。

 さらに言えば、ここ全体を利用した結界ならば、普通よりも大きな効果の付与が期待できる。

 

「結界内では無敵に等しい恩恵を受けている、という事ですか。ライネスさ……あ、いえ。し、司馬懿さん」

「その通りだグレイ嬢。しかし、得てして単純な策こそ、破り難く、厄介だが」

「んでー? その結界ってどうやって破壊するんですぅ?」

 

 さて、ごちゃごちゃと話しているが。実際黒髭の言う通りだ。それを突破する事が出来なければ、解析しても何の意味もない。が。

 

「俺は魔術の事は分からん。分からんが、しかしどんなものにも共通するのは……基礎を破壊すればあっという間に崩壊する」

「楔を破壊する、という事でしょうか?」

「あぁ、そして楔が何かはもう分かっている――さて後は、そこを先んじて破壊する為にミノタウロスを出し抜くだけだ」

「とはいえ、楔など、そう簡単に破壊できるとは……」

 

 紫式部のいう事も間違いではない。彼女も、魔術師としてはメディアと同格レベルの存在に師事をした女性だ。その辺りは当然気にするだろう。

 だがしかし。

 

「心配するな。どんな物が楔なのか、位置も凡そ把握できている」

「えっ!?」

「とはいえ、分かりやすい方だとは思うが」

 

 司馬懿殿とて、それを理解せず核を破壊する、等とは言わない。

 破壊できると判断したからこそ、そこを叩くという結論に至った――否、砕く、というよりそれを排除するやり方も、凡そは分かっているのだ。

 まるでそうするように誘導されているかのように。

 

「――単純だ。今までと同じように触れてしまえば崩壊するとも」

「触れてしまえば、ってもしかして」

「その通り。此度の結界の核は――あの紙片。それに間違い無いだろう」

 

 そこに、収束していくのだ。

 ずっと、ずっと、それが何者なのか分からない。向こうが設置したあからさまな罠。まるで迷路の解法を目の前に垂らしておくかのように。

 分かってしまえば余りにも、今まで通り。もう少し時間をかけてじっくりと想像すれば意外にも、辿り着けたやもしれないくらいの分かりやすい答え。

 

 私も、司馬懿殿も。これに気が付いた時には、当然というか、分かりやすく顔を顰めていた。いや、私は内側に引っ込んでいたので、そんな感じの感情になった、という感じなのだけれども。

 

「触れれば紙片は力を失う。それは今までと同様だろう。魔力を失えば核としての役割は果たせなくなる。流石に何の魔力も無い紙で結界を維持する事は難しい、だろうと俺は判しているのだが」

「……それは、えぇ。間違いないと思われます」

「間違っていないのであればありがたい。後は君が触れるだけで解決だ」

 

 一回目、二回目よりも明らかに明確な意思を感じる。触れて突破しなければここでゲームオーバーになりかねない程の完全包囲。ここに入って紙片を発見した時点で、あの紙片を回収しなければ詰む様に、念入りに念入りに、作り込んである。

 ヘラクレスではなく、ミノタウロスを選んだのも、それが理由だろうというのは分かりやすかった。

 

 ……ここまで、三つの特異点をモチーフにした都を巡って来た。

 そして、ここもそうだ。彼らが第三特異点で踏み込んだという迷宮。最後まで、その傾向は曲がらなかった。

 意味がある。そして、その想像は凡そ出来る。

 彼が紙片に触れると、体に影響が出る。しかし紙自体に何かしら特筆するような仕掛けがある様な訳でも無い。ただの微弱な魔力の塊。

 そこから、一つの思考を導き出す。

 

「はいはい。もう覚悟はできてますよーっと」

 

 やる気のなさそうな少年を見つめる。

 もう既に、彼が、この特異点に入った時点で……何かしらの細工を受けている可能性もある。であれば紙に細工は要らない、のだろうが。それをカルデアのバイタルチェックが見逃す、とは思えない。

 となると、他に考えうる可能性は?

 

 ないでもない。だが、それは今言った考えなど及びもつかない程に……正直、妄想にも近い仮説だ。そもそも、そうだったとして、なぜこのようなまだるっこしい手を取る必要があるというのか。

 

「方法は簡単だ。グレイ、黒髭、ゴルゴーン、紫式部……この四人は別動隊だ。出来るだけ迷宮の魔獣とミノタウロスの目を引きつけつつ逃げる」

「別動隊って事ですな。いんやー、でもでーじょぶなんですぅ?」

「何がだ?」

「要するにそっちのマスターとライネスちゃんだけでその核、だったかをぶっ潰しに行くわけっしょ? リスクガン上げじゃな~い? 拙者、余りにも紳士故いたいけな美少女にリスク負わせんのアレなんですが……代わりましょか?」

 

 ……などと、考えても考えても、回答は出ない。

 目の前の黒髭があまりにも情報を持っていなかったのが大きい。もう少し彼からの情報があれば、仮説に一つの輪郭という物を持たせることが出来たかもしれないのだが……

 

「冗談だろう? 戦闘力はそちらの方が上だ。別動隊は囮役、そちらに潤沢に戦力を割かずして本隊が動ける訳も無い。それに」

「なんです?」

「貴様の様な野獣の様な男を、アキレス腱と一緒にする訳がない」

「――言いますなぁ、拙者の女神の如きライネスちゃんの中に居なけりゃ、引き裂いてましたぞインテリ野郎」

 

 ともかく。司馬懿殿の言う通り。今回は私と本造院が作戦のカギだ。ここでキッチリと紙片を回収できれば、全てが好転する機。逃がすわけにもいかない。それに……

 私は見逃す訳にはいかない。彼が紙片に触れる瞬間。ダ・ヴィンチという観測者と意思疎通が取れない現状、その一瞬をこの目で見て観測するのは、必要な事だ。

 

「では、派手に頼むぞ――反撃開始だ」

 




秋の自由研究はカッコいい黒髭を応援しています。
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