FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第六十七章・裏:エルメロイの帰還

「――では、改めて自己紹介させてもらう」

 

 ……自ら口にされなければ、自己紹介を始めようとは思っているとは分からない物凄いしかめ面です。

 

「ロード・エルメロイ二世だ。しがない魔術師……ではあるのだが、現在は一応、サーヴァント諸葛孔明でもある。とはいえ、蜀の大軍師の名で呼ばれるのは些かと面はゆいし見合っていないのは明白だ。ただエルメロイ二世と呼んでもらいたい」

 

 さて、その自己紹介が正しいものなのか、と言えば……違う気がいたします。

 カルデアで知った事なのですが。ロード、というのは西洋の魔術師においての一つの到達点を示す称号である、との事で。右大臣や左大臣に当たる地位と言われると、目の前のお方を言われた通り『ただの魔術師』とは言えないのは間違いなく。

 そのロードと呼ばれるお方をただの魔術師、等と呼んでいい訳も無いかと思います。絶対に。

 

「ライネスの……書類上の義兄、そしてレディ・グレイの師をさせてもらっている」

「成程、即ちはハーレム野郎と。爆ぜろロード・エルメロイ」

「誰がハーレム野郎かそこのオタク海賊。グレイにそんな下卑た感情など向けようもないし、ライネスに至っては……そんな隙を見せようものならとって食らわれて終わりだ。というか、分かってて言っているな貴様」

「んー? 何のことですかなー?」

 

 そのようにロードと呼ばれる程のお方なのに。

 私から見ると、何処かマスターと似通った部分がある気がするのです。その厳正にして冷静と言った表情の彼から出てくるとは到底思えない『ハーレム野郎』だの『オタク海賊』だのと言った語彙には、何処か、いい慣れている節がありました。

 

「ん。あぁ、すまないね。ミズ・式部。君の様な貴人……特に、言葉を貴ぶ貴女のような方に聞かせるような会話ではないな。余りにも低俗過ぎた」

「いいえ。お気になさらずとも……」

 

 魔術師、と申しますのは。まぁ割と人離れした方も多く。

多い、というか殆どが人間性が些かと、その、可笑しなことになっていると申しますかハイ。わ、私が良く知っている例はお二方だけなのですが、しかしそのお二方とも、魔術師……というより陰陽師としては頂点に位置するお二方。

 

 そして……比較的まともな性格をされていたお方よりも、私の師は実力は上でして。そしてその上で凄まじい人格破綻者と申しますか。で、何方かと言えばその、真面な性格をされていた方は、陰陽寮では逸れモノとして……

 

 私の経験で言うのであれば。人間として些かと……ちょっと、どうなんでしょう、的な人が、優秀な気がしないでも……いえ、そうではなくて。

 兎も角。目の前の魔術師は、人としての『温もり』のようなモノを、他の魔術師よりも残しているように見えて。

 

「おやおや、随分と険しい顔じゃないか。何時もならもう少し愛想良くしていたように思うのだが?」

「それをする余裕があるのであればしている。だが現状はソレをする必要も無い緊急事態の真っただ中だろう」

「まぁ確かにそうではあると思うがね。しかし、どんな状況であれ最初の挨拶は実に大切だ。礼を尽くすに越した事はないんじゃないか、と思ったのだけどね?」

「……まぁ、それはそうだが」

 

 一方。その傍らに立つライネスさんの笑顔は、いつも以上に輝いている、というか生き生きしている気がします。更に言えばお肌が、ちょっとツヤツヤとしている気がします。

 

多分ロード――ロード自体が敬称なので様は要らない、筈だと思うのですが――の自己紹介には全く問題は無く、寧ろ丁寧な物だったと思いますが

 しかし、恐らくライネス様はそういう事を本当に気にしているのではなく。単純になんでしょう。

 

「って、そうではない。今は私の最低限の紹介が必要だっただけでしただけで、それ以上は必要ない」

「ちぇ、無駄に猫を被る兄上が見れると思ったのだが」

「おい貴様ライネス。取り敢えず座っていろ……全く」

 

 ライネス様は……揶揄っているのではないでしょうか。何処か生真面目で、若干苦労人気質のあるロードを。

 あぁ、そうです。私の師、晴明様をライネス様、ロードにその件の陰陽師様を当てはめると、あんな感じになる気がします。都にて、人でなしの晴明様とその方は、仲がいいのか悪いのか……そんなやり取りとしていたような。

 

 そんな事を思い出す目の前で、ロードは一つ。ため息を挟んで。些か、というか大分疲れたような顔で、天を見上げました。

 

「はぁぁ……すまないレディ。紅茶を淹れてもらえるかね。少し喉が……って、ここでは紅茶もクソも無いか」

「はい、師匠。もう用意は出来ています!」

「……あったのかね」

「はい!」

「……すまない。ありがたく頂こう」

 

 そんなロードの周りで、先ほどから何処かそわそわとしていたのが、グレイ様でした。今は、紅茶のカップを両手に持って、とっても楽しそうにしています。

 我々と一緒にいた時よりも、些か以上に活き活きしているのは、ライネス様と似通っているのですが。しかし、彼女は純粋にロードと一緒にいる事に喜んでいるようで……

 

『揶揄い甲斐のある相手が来てエンジンがかかって来た、と思うライネスなのであった』

『頼りになる師匠が来て、なんだか勇気が沸いて来るグレイなのであった』

 

 因みに、何がとは言いませんが。上がライネス様。下がグレイ様のモノです。なんでしょうか。ストレスと癒しとが混ざってちょうどいい感じになる……のでしょうか。とてもそうは思えないのですが。

 その癒しの方のグレイさんは、紅茶を入れ終えたと同時に、ロードの髪を少し弄り始めました。弄る、というより整えていると言った感じですが。

 

 内弟子、とは言ってらっしゃいますが。師の世話を甲斐甲斐しく焼く姿は弟子というよりはまるで、母親の様で。しかし、そんな彼女を見つめるロードの視線にもまた、慈愛の色が混ざっているのも、間違いなく。

 そんな風に見ているロードが、はたと何かに気が付いたような表情を見せたのは、本当にその直後でした。

 

「……そういえば、レディに施した『それ』も解除しなければいけないか」

「え?」

「……まぁ、暗示の様なものだ。彼女の感受性は、優れたものではある。しかし、時にはその優れ過ぎる感性が仇になる事もある……と思ってね」

 

 ゆっくりと歩き出したロードが向かった先は……グレイさんの目の前。キョトンとしている彼女の額に、トン、と指を当てて。ぱちぱちと瞳を何度か瞬かせると。グレイさんはそのまま、ストンと膝を突いてしまいました……ロードの髪を握りしめて

 

「あだだだだだグレイッ、グレイッ、髪を、髪を放してくれっ!」

「ぐ、グレイ様!? どうなさったのですか!?」

「……(ぷるぷるぷるぷる)」

『髪ひっつかんで動かなくなっちゃったんだけど……これは?』

「ぐ、グレイはっ亡霊への感受性が……高っいだいいだいっ! それをっ、どうにか、抑えないとっ! 特異点など、突破できないと、思っていだだだだだっ!?」

『あー、耳が良すぎて大声で怒鳴られたら倒れるみたいなものかな?』

「まぁそんな感じだぁっ!?」

 

 ……しばらくして、漸く落ち着いたグレイ様に髪を放してもらってから。ロードは改めて説明に入りました。

 

 こうなってしまったのは先ほどの巨大な亡霊から本来感じる感覚を、思い出したからだろう、との事で。

 グレイ様は、曰く、対霊の専門家であると同時に……その霊的存在を感じる感覚が鋭すぎて、逆にゴースト……というより亡霊が大の苦手なのだと。今まではそうとは思えなかったのですが。

 

 しかし、何時もの感覚が戻った今、先ほどのゴーストの事を思い出し、本当に立てなくなってしまったようで。アレがどれだけの怪物なのか。彼女が一番、実感できているのでしょうか。

 

「んー……もしやサーヴァントになった際、その辺りも克服できたのかと思っていたがそうではないようだな」

「当たり前だ。彼女の霊的感受性の高さをそう簡単に上手い事制御出来れば、彼女はここまで困っていない。無理矢理鈍くするような力業で、今回は何とかしたが……彼女の長所を潰す様なこんなやり方は、好むところではない」

『……で、対霊の専門家がこの調子で、勝てる相手なのかい?』

 

 そんな中で。ロードは……しかし、それでもニヤリと笑って見せました。

 

「あぁ、無理ではない。というより、その為にこれだけ遅れて参陣したのだからね」

『ほう?』

「これより、あの怪物の対策を立てる。そして……あの巨大な塔に関しても、聞きたい事も多いだろうしな」

 

 自信に溢れ、口の端に浮かんだ笑みには確信の色が溢れています。

 それは、確かにグレイ様が頼りにしている、というその言葉を裏付けるような。『知恵者』の表情に違いありませんでした。

 

 

 

「……で、私はいつまで体を縮こまらせておけばいい、マスター」

「ごめんもうちょっと……あ、こっちはお気になさらず、どうぞ続けて」

 

 ……最後に物凄いいたたまれない空気になったのは、大変申し訳なく思います。

 




グレイちゃんが対霊の感受性が高いという設定がすっぽり頭から抜けてた……ので二人の距離を書くついでにコミカルにその辺りを補足したろ! なお上手くいったかは分からない模様。
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