FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第七十三章・裏:塔に秘されしモノ 壱

「へ~。じゃああの結界、式部さんも手伝ったんだ」

「はい。呪詛のやり取りに関しては、一応……宮廷時代は、本当に、本当に良く目にしていたので」

「あっ(察し)」

 

 マスターの、若干、こう憐れむような……苦笑い交じりの視線に晒されて私が即座に顔を反らしてしまいました。恥ずかしいです。私は、そんなはしたない事はしていないのです。ただ晴明様からお話を聞いたことがあっただけです。

 『私だったら恥ずかしくてとても人様に晒せない稚拙な呪いを見てると、宮廷だという事を忘れて大爆笑しそうになる』とか言いながら、人様が物凄い練り上げた呪詛を肴にお酒を飲んだりしていたのを聞いたので、呪詛についてそこそこ詳しくなったとかは……ちょっとは、ありますが。そんな、あの、大層な物じゃありません。

 

「じゃあアレか、例のあの人にもちょっとおまじない位で……小指とかタンスにぶつけろーとか、可愛い奴感じで呪っちゃったりとか?」

「やってません!!!!!」

「あ、うん。ホントゴメン。もう二度と言わない。クズでゴメン。うん、普通なそんな怖い事しないよね。うん。本当に申し訳ない」

 

 しません。絶対しません。いえ、日記を見た晴明様に『そんなに気になるならおまじないしてみる? 一回顔を合わせるきっかけを作るおまじない』と言われた事はございますが……物凄い葛藤の末、断ったのです。ハイ。

 

「……そんな事言っていて、マスターの方は本当に大丈夫なんですか? 呪詛は」

 

 そうやって話題を逸らしたのは、そんな昔日の若干思い出したくない赤裸々な思い出等を思わず口にしてしまいそうで――というのもほんのちょっとだけありますが。最も大きな理由は目の前にあります。

 

「人形が呪いで粉砕されて行っている時は、私、正直生きた心地がしなくて」

「あーそれは大丈夫だよ。ピンピンしてる」

「本当ですか? 無理とか、してらっしゃいませんか?」

「ナイナイ。大丈夫……まぁ最悪ピンピンしてなくても、弱音は吐けなかったけどナ~。目の前がこれだし」

 

 そう言って指さしたその先に聳え立つのは……大きく形を変えた『ロンゴミニアド』。周りを囲っていた外殻が、着物の合わせを開くが如く大きく口を開けて、その内に入る道筋を作っているのです。

入る入り口など何処にも見えなかった『ロンゴミニアド』は、今、底の見えない闇を腹に宿して、此方を待ち構えているのです。そんな特異点の中心の奥には、聖杯らしき反応も確認できたと、ダ・ヴィンチ様はおっしゃっていました。

 

「なんだろうなぁ、俺だってここからは脱出したいと思うけど、ここまであけすけに『こちらへどうぞ!!』されると行きたくも無くなるよなぁ……色んな意味で」

「何もなくそのまま帰れる……訳は無いですよね」

 

 そして恐らくは聖杯だけが置いてある訳も無いと思われます。ここへわざわざ誘導されたのだから、それなりの『理由』が中にある筈なのです。

 

「そこまで温い相手なら、ここまで苦労はしていない」

「ゴルゴーンさんが苦労したのって狭い建物とかでしょ」

「――ちょうどいい、今日の餌はお前だマスター」

「あっ、やっべ」

 

 その割には……緊張感が若干、というか大分足りません。今も目の前でマスターとゴルゴーン様が追いかけっこ始めちゃってますし。

 

「そこまでにしたまえ。あまりじゃれ合っていると、再び巨大亡霊が押し寄せて来ても不思議ではないぞ」

「いや、俺だって割と命がけで……それに、自分から入り口を開けておいて、もう流石にそれは無いんじゃない?」

「罠の目の前でいつまでもじりじりと動かない獲物を、猟銃を鳴らして追い込む猟師も居るだろう。銃声の代わりに呪詛が飛んできたら洒落にもならん」

「うひぇ、ゾッとしねぇ……」

 

 結局逃げ切れずゴルゴーン様に指先でつままれてますし。私的には、ここまで来ていつも通りなマスターの様子が、逆にぞっとしませんけど……肝が据わっている、と言っていいのでしょうかここまで来てしまうと。

 

「んじゃゴメンゴルゴーンさん、そろそろ乗り込むので二、三回くらい噛むので許してちょーだい……頭かみ砕くとかは、まぁ……やってもいいけど」

「ちっ、仕方ない」

「い、いえあの……早く向かった方が良いのでは?」

「まぁまぁ、マスターとサーヴァントのじゃれ合いなんだから、その辺りは見逃してあげようじゃないか、グレイ」

「頭かみ砕くのはじゃれ合い……でしょうか」

 

 ……多分、じゃれ合いの範疇だと思います。ギリギリ。

 

 

 

 足の裏から伝わる感触は――硬質、そのもの。霧の都の石畳よりも、更に硬くそして重たい感触が下には有ります。

 

「……コレが、ロンゴミニアドの、中身……?」

「ほへー、めっちゃくちゃパンクですなー。こりゃあ」

「機械仕掛けの巨塔、といった感じだが、コレは……」

 

 それも当然といえば当然で。

 外壁や床は、奇妙な『機械』の様な部品で構成されていて。そして

 

「ひどい有様だね。外はアレだけ立派だったというのに」

「中はグチャグチャボロボロ……ぐふふ、なんか燃えるシチュですな。鉄壁の装甲の内側は柔らかいとか」

「黙っていろ。食われたいか」

「おひぇっ」

 

そのどれもが多少壊れていたり、ボロボロになっていたりと『壊れかけている』というのが、最初に私が抱いた印象でした。

外の何れの場所とも類似しない奇妙な……とても奇妙な中身の機械群は、ギリ、ギリと重い耳障りな音を立てて動き、しかし、削れ、歪んだ部品は正常に動かず。バキリ、と時折砕ける音も混ざります。

 

 まるで……もうこの中で既に戦いが起きた後のような、そんな有様でした。

 

「ちょっとロード、俺たちがぶっ壊さなくても、元からボロボロじゃないのこの塔」

「……正直想定はしていなかった。この有様は」

「もしかして、ここにも侵入してたとか?」

「馬鹿をいえ。だとしたらもう少しこの塔について調べているに決まってるだろう……正直あまり調べられなかったのが不満だったんだ」

 

 そう言って見下ろす先には……砕けた歯車が転がっています。それを持ち上げれば……それだけで、ビキリとひびが入って、半分ほどが欠けて、地面に落ちて転がっていきました。マスターが、それを目で追いかけて、一つ息を吐いています。

 

「おーおーほんとボロボロ。ここ、俺の記憶から構成したんなら、この有様だと俺とっくに死んでても不思議じゃなくねぇかな」

「いや、死ぬという事は無いと思うが」

「それにしてもダメージは少ないね。珍しく義兄上の推測が外れたかな?」

「ここがキミの記憶から形成された特異点、というのは間違いない。そこは間違いないのだが……であれば、コレだけが……?」

『――お考え中の所悪いね。この先に感アリ。気を付けて進んでくれ』

 

 しかし、周辺に気を配れていたのも、そこまでで。ダ・ヴィンチ様の一言で、皆様が歩いていく先を見つめます。

暗い通路の奥へと向かう我々の視線……そこに、僅かに周りと違う『明かり』らしきものを見つけられました。

 

 何も言わず、ゴルゴーン様が先頭、グレイ様がその後に続き……黒髭殿が殿を務めながらゆっくりと奥へ。奥へと。少しずつ、明かりが大きく、はっきりと見えてきて、そしてそれが目の前まで迫り――

 

 通路ではなく、開けた空間に、辿り着きました。

 同じ意匠の空間……ですが、ここが最も傷が深く、壁一面に斬撃、爆破、その他諸々の傷が幾つも走っています。

 

「ダヴィンチちゃん、どう?」

『聖杯らしき反応は……ここじゃないね。でも別のナニカが――』

「あの皆さん、アレ!」

 

 そんな部屋の有様から――グレイ様が上げた声に従い、その指の先へ。

 彼女が見つけたのは……天上から吊り下げられた『女性』でした。

 

 黒い鎖の様な何かにぐるぐると巻かれて、動く事すら出来そうにない彼女は……長い髪も、青い手袋も、洗練された衣装も。

 頭に装着された絡繰り染みた仮面以外は、その全てが。

 

「――ダ・ヴィンチ様!?」

「落ち着け式部さん……ダ・ヴィンチちゃん、見えてる?」

『……あぁ、見えてるよ。予想以上に可笑しなモノが出て来たねコレは』

 

 ダ・ヴィンチ様に、酷似していたのです。

 




今月中にこの章を完結させたかったけど無理そう(震え声)
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