FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第七十三章・裏:塔に秘されしモノ 弐

 腕を、足を、首を。そして胴体に至るまで……何本もの鎖で幾重にも幾重にも、厳重に拘束されたその姿は……私たちが知っている方によく似ているからこそ、私の目にはより痛々しく見えてしまっています。

 ですが私が、あの女性が誰なのか、そして、どうしてこんな所に吊り下げられているのかと考えている間に――既にマスターは通信の礼装を起動させ、ダ・ヴィンチ様に連絡を取っていました。

 

「確認するけど、敵性反応は?」

『――ない、というか気絶して縛られて、吊り下げられている女性にそこまで警戒するのもちょっと可笑しな話だと思うけど』

「一応って奴さ……ならいいか。ゴルゴーンさん、やっちゃって。受け止めるから」

「ちっ、便利に使いおって」

 

 些か早すぎる程に出される、ゴルゴーン様への指示。直ぐに二回ほど魔力の光が閃いてから、マスターの手の中にその女性は落ちてきて。黒い鎖は、ゴルゴーン様の一撃で砕けた後、塵となって消えていきました。

 

「……マジでそっくりだなぁオイ。体型から何まで」

 

 マスターの手の中の女性は、長い濃いブラウンの髪を広げてくたり、となってマスターの腕の中で全く動く気配を見せません。そして……どう見ても、その女性は我々のサポートをカルデアから行ってくださっている、サーヴァント、レオナルド・ダ・ヴィンチ様その人にそっくりなのです。

 

「意識は?」

「……無さそうだな。ロード、治療って……魔術で出来んの?」

「まぁ、本当に簡単なモノであれば私も出来るが」

「じゃあ頼む。ケガは……そんな意外とないな。単純に弱ってるだけか?」

 

 取り敢えず既にこと切れていた……という訳ではなかった模様で。

 

「ふむふむ……一応聞くけどダ・ヴィンチちゃん、心当たりは?」

『んー。ありすぎて困るかな』

「おっと予想外の返事だなオイ」

 

 ありすぎて困るのは寧ろ此方が困るのですけれども。寧ろ『幾ら天才でもとんと見当がつかない』というお返事を期待してマスターも聞いたと思うのですけれども、物凄い冷静にそう言われてしまうと……反応に困ると申しますか。

 

「自分とそっくりのナニカを生み出した心当たりがあり過ぎてとか変態のそれだろ。聞きたくも無かった……」

『褒めてもらってありがたいが、何れの心当たりもここになんでいるかの説明にはならないから、役には立たないと思うけどね』

「そうかい……生きてる人?」

『んー……人間の反応ではない、とだけは言っておこうかな。少なくとも』

「はえー。スゲェ分かりやすく怪しいなぁ。こんな有様じゃなけりゃ。どうするのが正解かねぇ、コレ」

 

 ダ・ヴィンチ様の心当たりかどうかも分かりませんが。

 正体も全く以て詳しくは分からず、しかし、目の前の彼女は見た目通りの存在では決してないようで。ここまで来てしまうと、露骨に過ぎます。しかし、こんな意識も無い、最初から何の抵抗も出来ず晒されて吊り下げられていた、そんな女性に一体何を警戒しろというのでしょうか。

 

「この中に居たからなんかここについて知ってるとかねぇかな」

「いやーでもこの人、捕まってお楽しみタイム一歩寸前だったんでしょ? ないんじゃないですかねー流石に」

「成程なぁー……何がお楽しみタイムじゃぶち殺すぞセクハラ髭おやじ」

「は?」

「ア?」

「くだらない事で争っている場合か、周りを警戒しろ!」

 

 まぁ、こんな風に言い争えている時点で、そこまで警戒をする必要も無いのかもしれなませんけれども……ライネスさんの言う通りではあります。ここは敵地の最深部ですし警戒してし過ぎるという事はないと……思います。多分ですけれど。

 

「まったく……そんなに気になるなら起きてもらおうか? ちょっと無理にでも」

「吊り下げられて気絶してた女性相手に? 一応世界を救う組織なのにちょっと極悪過ぎないか?」

「ここは敵地の最深部だよ? 気を使ってる余裕はあるのかい?」

「いやーだからってなー……一応、仲間の姿してるしなぁ」

 

 そう言って、視線を向けたその時……マスターの腕の中の女性が、小さく呻き声を上げました。

 

「――おい、アンタ、気が付いたか?」

「う……ぁ……あ?」

「弱ってるところ申し訳ないが、アンタ、自分の名前、分かるか? ちょっと今面倒な事になっててな……取り敢えず、名前だけでも先ず知りたいんだが」

 

 そう問われ、女性は暫し、所在なさげに周りを見回してから……改めて、マスターの方を見つめてから、はっとなったように体を震わせ。

 突如としてマスターの両肩に掴みかかりました。

 

「おぉっ!?」

 

 その一瞬、全員が殺気立ち……しかし、マスターがそれを制するように掌を私の方に向けて。それで一旦全員の動きは――黒髭殿だけはゴルゴーン様に小突かれるまで拳銃を下ろそうとはしませんでしたが――落ち着きました。

 

「――カルデアのマスター、ですね」

「あぁそうだが……アンタは?」

「自己紹介などしている場合ではありません。今すぐここから退避を――いえ、特異点の形を考えれば、それも不可能……」

 

 彼女は……マスターを傷つけようと殺意を向けている訳、でもなく。しかしそう錯覚してしまう程の、勢い。仮面で隠れていても分かる程の、鬼気迫る声色、表情。思考が冷静に回っているかどうか、疑わしい状態ではあるのですが、しかし。それでも真剣さだけは彼女の態度全体からあふれ出している、そんな。

 

「お願いです、この先に進むのであれば、気を、気を強く保ってください。分かる筈ですこの先に、何が待っているか」

「――」

「レオナルド・ダ・ヴィンチ。貴方も聞いているはず。お願いです、せめて、せめて彼の精神保護を徹底的に……!」

『――君は、まさか』

 

 

 ――その、直後の事でした。

 

 広い空間に響き渡る甲高い、噴き出す様な音。

 

「っ!?」

「なんだ!?」

 

 その音と共に、周りから噴き出して、そして満ちていく白い靄。しかし、外の霧とは違うこの――濃密な魔力を纏っているこれは、まるでマスターが彼女と接触し、彼女が目覚めるのを狙っていたかのようで……!

 とっさに術を使い、靄を払いのけようとしますが、しかし、それよりも周りに漂い始めた靄の動きは実に早く――

 

「ダ・ヴィンチ様!」

『毒性はない!』

「落ち付きたまえ! 狙いはあくまでもカルデアのマスターだ! 殺す事はしない! それにこの、この魔力は――!」

 

 全員が完全に混乱しているその最中、白い靄は……我々を中心として、渦巻き、そして一点へと集おうとしています。マスターを中心として――!

 

「マスター!?」

 

 とっさに走り出そうとしたその一瞬、しかし、その手はロードに捕まれて……振りほどこうとしますが、強く掴まれてそれも容易くはなく。

 必死になって、腕振ろうとしましたが、しかしそれよりも早く。

 

「ええぃ、間に合えよ――『石兵八陣(かえらずのじん)』!」

 

 直後に靄の中で巻き起こる、巨大な魔力の渦。

 それは恐らく――諸葛孔明としての宝具!

 

 展開された中華風の陣が広がって、この空間の中心にいたマスター――には、一歩届かず、しかしそれ以外の面々はその内に巻き込んでいます。白い霧は、この内においては、どうやら力を発揮できるものではないらしく。何処かへと散って消えてしまっています。

 

「本来はこういう使い方ではないのだが……! 本造院!」

「――なんだ」

「殺されはしない! だから……存分に()()! ()()()()! ()()()()! 私から言える事は……それだけだ!」

 

 その中から、靄に包まれて見えなくなる寸前のマスターに向けて、ロードは声を張り上げて。そして。

 

 マスターはその声に……重苦しそうに、頷くばかりでした。

 




間に合いませんでした(後悔)
キツイのじゃ……

次の投稿は……多分ですが、四月からの再開になると思います。もしかしたらこの章だけ完成させるために三月に再開するかもしれません。その時はよろしくお願いします。
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