FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「しかし、本当に君もまぁ、馬鹿だと思うよ」
私が、少し嘲笑う様な声で言ってしまうのも、仕方ないくらいには、ね。
『ンンン……馬鹿、とは、随分な言われようです事で! もしやご自身の現状を分かっておられない?』
「いいや? 今、目の前に厄介な化け物が現れているのは分かっているとも」
だって、目の前にその原因が堂々と聳え立っているのだから、嫌だって理解させられるというもので。
我々を容易に呪い殺しかねない巨大な怨霊。まぁ確かに我々は先ほど、アレとの正面衝突を避けて戦っていた。それを覚えていない訳ではない。当然、それを意識させるため、威圧の為に、不意を打つでもなく、こんな堂々と目の前に出しているんだろう。
――最後の最後に現れて、全てを搔っ攫う、的な黒幕ムーブをしておいて、余りにもやり方が脳筋過ぎる気もするが、それはまぁ今はいい。
『その割には――先ほどの発言といい、今の態度といい、随分と余裕そうですなぁ、お二方とも。今、急いで結界を張って防御を硬め、カルデアのマスターと共に時間稼ぎしている割には』
「あぁ、コレはただの時間稼ぎだ――レディが覚悟を決めるまでの、な」
「彼女は幽霊にとても弱くてね。それは体質的なモノだ。震えを抑える位の時間はくれたって良いんじゃないかな?」
実際、向こうから見れば、圧倒的に不利に見えるのは間違いないだろう。こちらはアレからの呪詛を凌ぎ、死ぬまでの時間を伸ばしている様にしか見えないのは、確かに間違いないとは思う。
「――式部さん、大丈夫そう?」
「正直、アレだけの怪物を相手に何時までも持つモノでは……」
「そう……んじゃ、ゴルゴーンさんとそこの船長の時間稼ぎ次第って事か……はっ、随分とまぁクソみたいな追い込まれ方だ事。囮作戦でもやる~?」
「するな。邪魔だ。愚か者」
「あー、すみません。余計なこと言って」
陰陽術を元にした結界を、しゃがみこんだ紫式部と共に維持しつつ呪詛を凌ぎ。
その間にゴルゴーンの光線、両手に構えた黒髭の拳銃で何とか敵の大振りな一撃をけん制している。あくまで時間稼ぎ、そんな風に向こうからは見えている、だろう。
「――それに関してはっ! 拙者も同意見なんですけど!? 完全に拙者達ってチェスで言う所のチェックメイトにハマってらっしゃらない!? 大丈夫!?」
『ンンン、流石黒髭殿! 拙僧と全く同じ意見とは……どうです? 今からでももう一度程裏切って見ませぬか?』
「おにゃのこいねーから却下じゃボケェ!」
『左様で――ふんっ! 呪詛ッ!』
「狙い撃つなぁっ!?」
……しかしながら別に、今も男同士の間抜けな漫才をしている様な、あの術師が見ている程に、我々の現状が苦しい訳ではないのだ。それは、私と義兄上の共通の意見だろう。何故ならば、この中でも最も信頼できる彼女が、今なら全力を発揮できる。
「んで? 実際の所、こうやって悪あがきしてると勝てんの? お二人さん」
「「あぁ」」
「――あっそ。なら精々、無駄にじたばたしてみようかな。どうせ俺に何ともできないなら、灰色の奇跡を信じてみるのも、まぁ一興でしょ」
本造院が、そう言って視線を向ける先には――グレイがいる。
目を閉じて、胸に手を当てて……何度も、繰り返して深呼吸しながら、気持ちを落ち着けているグレイの姿が。
ただでさえ、少々と自分への信頼感のない彼女だ。そして特上の霊感体質も相まって目の前の化け物は――吐き気がするほど、きつい筈だ。
先程、彼女があの化け物相手に、遠距離から援護に徹していたのは……その為だ。物理的な距離を取らねば、彼女はあの化け物染みた敵を相手に、戦える状態ではなかったと思われる。
実際のところ彼女が対霊戦闘を得意としている事を加味してもそれがマイナスになって、近場で戦わせてもただ無意味にグレイを失っていただけだ――だが、だ。
「どうだいグレイ――改めて聞くけど、やれるかい?」
「無理はしなくていい。不可能であるならば、他に方法は幾らでも――」
見開いた彼女のその目には、何時もの弱気さなんて。
何処にも存在してなんかいなかったのです――なんて、言えればよかったけど。やはり残っている。少しだけ心配そうな揺らぎ。それでも。
「……いいえ、アッドも、やれる、と言ってくれました」
「へへへっ、どれだけの影響を及ぼすかは知らねぇがな!? まぁ普段よりは、マシなんじゃねぇかってなぁ!!」
「何時もの拙より――少しだけでもマシなら、頑張って、見ようと思います」
そこには確かな『戦う』意思が一本、大きな柱の様に、堂々と立っているのが見えた。それならば、もう後は彼女に任せても良いだろう。ああ本当に。
寄りにもよって、この塔に我々を閉じ込めて勝負を仕掛けるとは。確かにやり方自体はそう間違っていないが――しかしながら、それでも私は致命的に間違いだったと酷評するしかないのだ。
『その様な、僅かな輝きでこの『大呪霊』の闇を払えるとでも――!!』
「ここは形だけとはいえ、何を模しているのか……コレを態々構築したのは君達なんだけども、それは分かっているのかな?」
『――えぇ、えぇ。当然! 世界を繋ぐ楔! とある島国にて裏切り者を突き刺した誇り高き騎士の王の持ち物。あの『人工知能』の記憶から作り上げし『偽物』の『贋作』ですがしかしながら。それでも! この強度!』
そうだ。ここは、ロンゴミアントの内部。それがどれだけ偽物でも。その姿を真似しているというのは――どれだけの意味を持つか。魔術……否、ありとあらゆるこの世の事象において、『模倣』というモノが大きな意味を持つのか、知らない訳でも無いだろう。
だというのに。
「所で――彼女は、一体どんな武器を有しているのか。知らない訳じゃないよね?」
『えぇ、それはもう。魔力を食らい、そして神秘を払う、十三の――あっ?』
「そうか、知っているのか。それなら話は早い筈なんだけれどもねぇ。まぁ、このキツイ一発は講義代だと思って貰えれば」
「アッド……お願いッ!」
「ギャハハハハハッ! コイツぁお祭り騒ぎだッ! 『偽物』と『本物』のコラボレーションとくりゃあ――特大の花火を打ち上げるしかねぇわなァ!!」
結界の中で、天に掲げられた彼女の掌の上で『グレイの相棒』が起動する。
本物のロンゴミニアド。そして偽物のロンゴミニアド。二つの大槍は同じものだ。その輝きはこの中でだけは更に――輝きを増す。
ここは、本物を似せて作られた巨大な塔の中。それは最早、『神殿』と呼んでも構わない程に、彼女にとっては『相性のいい場』となる。
「凶悪な大呪霊――如何にグレイの渾身の一撃でも、一発で倒せなければ、という不安が付きまとう程の大物だ。それはお見事だよ。だがね?」
「レディの力は、ここではさらに跳ね上がる。その可能性を考えていなかったのが最大の失態だと知れ。アイツを追い詰めたあの騎士の力は――伊達ではない」
「「今度は、ワンパンチで沈めてくるぞ」」
「───疑似人格停止。魔力の収集率、規定値を突破。第二段階限定解除を開始」
その手の中で『匣』が輝き――その中に秘められた輝きが、今一度隆起する。
否、その輝きは、更に強く、今まで以上に、この塔の中を黄金の光で満たしていく。眩しい程の黄金の光に照らされて、暗い巨影がたじろいだ。
分かるのだろう。あの輝きの強さが、自分を消し去る事が出来るだけの、強大な出力を持っているのだと――
直後、黒い斬撃か、それとも打撃か。何れかが巨大な大呪霊の量の腕に寄って叩きつけられたが、しかしながら。時間稼ぎ用に無駄に硬く作ってあるのだから、そうそう突破も無理だろう。そう思うと、ちょっと笑えてくる。
「――
『ンンン――十三の拘束を解除しないその状態で』
「
『最早コレは、神霊級の……!』
『
……恐らくはそんな事は無いのだと思う。しかしながら。
これは、利用され尽くされながらも、それでも足掻いた『ムネーモシュネー』の、最後の抵抗だったのかもしれない。
輝きは一点に集い、渦を巻き……そして、一つの形を成す。
それは最早、槍ではない。強固な外壁に包まれた槍の如きエネルギー塊。それは最早『砲』と呼ぶべき程の威容を誇っていた。
「聖槍、抜錨」
『……ンン、ンンン……! 宜しい、今回は、今回ばかりは、拙僧も負けを認めましょうぞカルデアの皆様。えぇ! えぇ!』
「『
解き放たれた輝ける大槍が、此方の結界を叩き割り――真っすぐに、暗い影へと直進する。それを必死に阻む為か、ヘドロの様に煮詰められた呪詛がその両手から叩きつけられるが――しかしながら壁にすらならない。
呪いの沼を一瞬に縦に二つに突き割り、干上がらせて。
それでも尚勢いは衰えぬままに一直線に向かっていって、そのままに――目の前の影に大穴を、こじ開けた
似ているってだけでもエライ意味を持つ型月世界。じゃあアンタ、元から似せに行ってるデカい塔なんてもうそりゃあ『神殿』みたいなもんやろ(暴論)