FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第七十六章・裏:平安の時へ

「――では、特異点の概要を説明するけど……今回は、というか今回も、君一人での特異点攻略となる。本造院君」

「ま~、藤丸がああだったからなぁ。因みに回復するまで待つっていうのは?」

「……些かと厳しい、かもしれない」

 

 マスターに問われ……すまない、と言葉を結んだロマニ様。その浮かべた表情は、非常に険しいものでした。

 藤丸様は、今、先の一件にてダメージを残しており……流石に病み上がりの彼を戦われるのは些か以上に危険という判断が下されています。そして。藤丸様が動けない、という状況でなお、カルデアはこの決断を下しました。

 

「そっか……専門的な理由がおありで?」

「色々と、ね。説明がいるかい?」

「いや、いらん。どうせ行かにゃならんのなら聞く必要もないでしょ」

 

 第四特異点にて遭遇した、この人理焼却の黒幕――魔術王ソロモン。余りにも強大な敵の正体に、些かと暗い空気になったカルデア内。そこから続いて起こった、敵側からの呪詛による藤丸様の昏倒。

 ただでさえ、士気が下がり、そして多少の混乱が見られた我々に対し、畳みかけるようにして、問題の特異点は姿を現しました。

 

 ロマニ様が、些かと憔悴しているのは、艶の無くなっている肌で、想像がつきます。それほどまでに……此度の一件は大きな衝撃となったのでしょう。

 此度、マスターと、その契約しているサーヴァントのみによる単独攻略が計画されたのです。

 

「それにまぁ、唐突に表れた特異点にひっくり返らんばかりの大騒ぎで、皆さんお疲れでしょうからね。それの解消に一役買えるならやる気も出るってもんよ」

「そう言ってもらえると助かる。ありがとう」

 

 冗談めかしてマスターは言っていますが……実際、突然として現れた脅威ですから、この状況であっても、対処を我々に命じたのです。

 

「それで――場所は何処だ。それなりに古い時代、とは聞いているが」

「それなんだけど……君にも馴染みがある場所だよ、本造院君」

「馴染みがある場所? って事は、まさか……」

「うん。君、それに君のサーヴァントである、紫式部さんの生まれ故郷、日本。そこから特異点の反応があった」

 

 マスターと私が目を合わせます。

 日本。海洋に囲まれた島国であり、唐の様な大国に比べれば小さな国。しかしその後は大きく成長しつづけ、今や世界有数の国の一つとまで呼ばれるまでになった、私とマスターの出身国。

 

「えーでも、日本で特異点、って。そんな世界の転換点、的なところあったか?」

「い、いえ。私は特に思いつきませんけれども……」

「だよなぁ、極東の山猿の国だしなぁ。ゴルゴーンさんはなんか思いつく?」

「思いつくわけないだろう。貴様、私の出身が何処だと思っている。外様も外様だぞ」

 

 しかしながらマスターがおっしゃる通り。日本が、人類史に与える影響がそこまで大きいとは、正直思えません。実際の所、我々の出身の国、日本は極東の島国に過ぎないのは間違いないのです。

 

 サーヴァントとして召喚されれば、私などよりもよほど特異点において武勇を誇られるであろう『源氏武者』の方々もいらっしゃいますがしかし……

 

「……そこになんか、あからさまに特異点っぽい反応?」

「うん」

「おかしくない?」

「そうなんだよねぇ……あからさまに罠なんだよねぇ」

 

 人理に致命的な一打を与える訳でも無い位置に、急に出現した謎の特異点。寧ろコレが罠で無ければ何が罠なのか。

 

「藤丸が、あぁいう事になった。でもって、次は俺たちがカルデアやっている以上は見逃せない歴史のシミを作ってる」

「……こういう時、僕らの不利を実感するよね」

「向こうは好き勝手やればいい。俺たちはその尻ぬぐいに回らざるを得ないっていう」

 

 せめて、此方も全力で立ち向かえればまだいいのですけれども。しかし藤丸様は倒れマシュ様、セイバー様は行動不能……戦力は半減のまま戦わざるを得ません。明らかに不利に不利を重ねていると言わざるを得ず。

 

「まぁ、一応俺たちの地元、って言うのが唯一の救いになるか?」

 

 ……ちらり、と私をマスターが見てきますがしかし、それも首を横に振らざるを得ません。そもそも、私が知名度による力を得たとしても、たかが知れているでしょう。

 とある『特殊』な聖杯戦争では、自らの祖国に召喚されたサーヴァントが、自分に向けられた『信仰』にも近い知名度の力を受け、神代のそれにも匹敵するような恐るべき大力を発揮して見せた、という例もあったそうですが。

 

 私には無理です。多分。

 それだけの力を発揮するとなると……やはり怪異殺しの大英傑たる『俵藤太』または『藤原秀郷』様か、藤太様が討ち果たしたかの新皇『平将門』公か。

恐らくはお二方であれば、神仏ですら討ち果たす程の豪傑となって、日ノ本の大地に屹立すると思われますが。

 

「ん……そうだな。向こうで味方になってくれそうな人は、まぁ探しやすいだろうし。同じ日本人だしなぁ、俺も式部さんも。怪しまれない、って言うのもデケェな!」

「そう、ですね」

 

 とはいえ日本であれば、日本人である我々は怪しまれずにその中に馴染む事も出来るでしょう。決して恩恵がない、というわけではないです。

 しかし……我々が日本人だとしても、もう一つ気になるのは……一体、何時にそれが発生したのか。

 

「んでロマニ、特異点は何時に発生したんだ?」

「うん。それに関してだけど幸運、と言っていいのか。今回向かう先は……君のサーヴァント、紫式部が活躍していた時代なんだ」

「――それは」

 

「そう、『平安時代』になる」

 

 それは……私には聞き覚えは無い言葉ではありますが。しかし、私にはとても、なじみ深い言葉でした。

 

「平安時代、って……生前の式部さんが居るじゃねぇか!?」

「そうなるね」

「えっ、連れてって良いのか? 対消滅とかしない?」

「君は特異点とサーヴァントをなんだと思ってるんだい!? 別に特異点内の本人と顔を合わせた所で、お互いに悪影響も何も無いよ。あくまでサーヴァントは本人の影法師なんだから」

 

 千年の都、平安京が栄えた時代。

 そう。私が生きていた時代でもあり、そして。何よりも……日本に神秘が余りにも強く残っていた時代でもあります。

 京の外には神代のそれと見紛うような大妖が悠々と闊歩し。時折ふらりと京に紛れ込んでくる。そしてそれらを討ち取るは京が誇る剛の者、『源氏武者』達。

 彼らが苦戦した『鬼』もまた……

 

「……マスター」

「ん?」

「ま、マスターのお家も、確か……」

 

 そこまで思い出し。マスターに視線を向けました。私が生きた時代から続くマスターのご実家が、存在しているはず、なのです。マスターのご実家の伝承が本当なのであればですが。

 マスターも、何も気にせず、という事も――と思っていたのですけれども。マスターはきょとん、と。私が思うような、重苦しい顔をしていませんでした。寧ろ、今言われて気が付いた、と言わんばかりで……

 

「――あ、そっち。あーそうだね。それもそうだろうけど……まぁうん。アレだ。気にしないでいいっしょ。うん。そんな重要なもんでもねぇし?」

「ですけど……」

「今は特異点解決が先決! おっけい?」

「は、はい」

 

 そう言って、彼はロマニ様の方を見ます。嫌なモノから目を逸らしている――という風にも見えません。そして、どうしてでしょうか。

 先のマスターの表情が、何処か……どこか酷く、無機質なものに見えてしまって。無表情、ではなく。無感情、でもなく。その感情が酷く、温もりや、冷たさ、と言ったような命の通ったものを宿しておらず。

 陶器で出来た、仮面を被ったかのような――

 

「――本造院君。今回の一件は、解決を急いで貰うために君一人を派遣する事になったけれども。本当に厳しい様なら、一旦引き返してくれて構わない。君の命を失うなら、どうなるか分からないパンドラの箱を静観する方が、まだマシだ」

「そう無理な事はないから安心してくれやロマニ。最近は、寧ろ調子がいいくらいなんだよ。気持ちの問題かねぇ」

 

 言いようのない不安。

 あの特異点から戻って来てから。マスターは……何処か、変わってしまった様にも、見えているのです。

 




急に特異点生えてきて『ファッ!?』とならない方が可笑しいので、なんか爆弾抱えてるとはいえ直ぐに起爆するもんでもないだろうから取り敢えずオナシャス! という命令を下さざるを得ないロマニ。憔悴してるのは特異点っていうより『ホモ君ごめんなさい……式部さんごめんなさい……僕を死刑にしてください……』っていう自戒の方がデカいです。
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