FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第七十七章・裏:『相方』

 ……目の前のサーヴァントに、ほんのわずかな違和感がある、気がする。

 

 激動の記憶を辿り確認する。俺が召喚したサーヴァントは、確かに『日本』の出身だったし、『反英霊』であった。何処か落ち着いた印象だった。

 彼女である、っていうのは疑う余地はない。

 第一特異点、第二特異点、第三特異点、そして第四特異点も……目の前のアサシンと駆け抜けて来た。非常にコミュニケーションが難しい、コミュニケーション強者と。

 

 アホ程強いサーヴァントだ。それでいて、教養もある。雅という文化を解するだけの落ち着きもある。マシュの防御、リリィの攻撃、それらを『越える程』の凶暴性を持ち合わせてずっと前衛を張っている。

 だけどまぁ。頼りになる相棒……と、どうしても呼べない。

 

 いや、この状況で、二人とも物陰に隠れてやり過ごしてるから、とかそういう理由ではないのだけれども。

 

「――っ……なぁおいアサシン、アレ生前のお知り合いなんだろう!?」

「せやねぇ」

「だったら説得とかできないか!? もうちょっと、こう……降らせる雷の量に手心加えるとか! 雷と雨じゃなくて『雷が雨』だぞこりゃあもう!!」

「むりむり。うちとあの女、目ぇ合ったら殺し合う仲やで?」

 

 それじゃあ多分、この一切の容赦のない攻勢は、目の前のこの『鬼』が居るせいで攻撃が激しくなってるんじゃねぇかな、って思ってしまうんだが? その辺りどうなんだろうかお嬢さん、と。

 

 とはいえ……目の前のコイツに迂闊な態度を取るとマズいのは『良く知ってる』。コイツは酷く気まぐれで、そもそも真名すら『気まぐれで明かしもしない』と来た。お陰でここにくるまで非常に苦労した部分も多々ある。

 ……もうちょっと、どこか真面目な部分があった気もするんだが。それも気のせいだろうか――いや、それを考えている暇は、今はないか。

 

「ったく、ここを守護するって……周りの塀だとかも破壊してんじゃねぇか」

「門の向こう以外はどうでもええんちゃう? あの牛女、京というかそこにいる帝を守るのが仕事やさかい」

「はっ、滅茶苦茶な理屈だ事」

 

 俺たちが、こうして塀の裏に隠れ、こそこそと様子を伺っているのは……周りに降り注いでいる雷の所為だ。

 

この特異点を解決する為に、俺たちはこの、古い日本の都、『平安京』と思われる場所にやって来た。。

その為にはあの朱色のデッカイデッカイ……それこそ、巨人の為に作られたんじゃねぇか、っていうサイズの『門』を破壊する必要があり。そしてあの門を守っている……護衛を討ち果たす必要がある訳だが。

 

 門の上、瓦屋根の部分を見つめる。

 そこに立っているのは腰を越えてくるぶし辺りまで伸びる黒髪の美しい、女性が一人。ラバースーツっぽい装束に甲冑とかいう、青少年には目の毒でしかない格好なのだが……その殺気は毒どころの騒ぎではない。

 

『――』

「ったくよぉ……だったらどうすんだよ。あの門の上のべっぴんさんは」

「取り敢えず落ち着くの待ってればええんやないの?」

「あのな、癇癪おこしてんじゃねぇんだぞ」

 

 その護衛が、門の上からまぁビカビカビカビカ、さっきから絶え間なく降らせてんのがこの……とんでもない量の雷だ。

 ぴしゃぁん、という音が、先ほどよりそこかしこから聞こえてくると言えば、それだけで異常性が分かるだろう。そもそも雷なんて物は、そんな数が降る訳がないってのに。

 

「ただの癇癪みたいなもんやろ。こーんな見るものぜぇんぶ消し炭にするみたいな、雅さの欠片もありゃせぇへん。ピカピカ喧しいし、雷様にでもなったつもりではしゃいでるって言うのもありそうやねぇ?」

「アレは雷様でも駄々こねてる子供でもねぇ。アサシン、お前が言ったんだろうが。アレはマジモンの『武将』だってよ」

 

 まぁ、俺は当たったら間違いなく一発で黒炭になっておじゃんになる、位の威力はあるだろうか……そんなもんを、この数降らしている。

 

 流石は源氏の総大将、『源頼光』……と言っていいのだろうか。

 

 本当に幸運だったと言える。

 アレだけの威容を誇る強大な敵がいきなり現れて。こっちはなんも出来ないまま、隠れるしか出来なくなってしまった。

 

 打開の手立てすら思い浮かばない、こりゃあ相当厳しいか……と思っていた所、『カルデアと通信の繋がらないこの状況』において、アサシンが偶然『あのサーヴァントについての情報』を持っていた。

 まぁその情報が今の所、何か役に立っているかと言えば話は別なのだが。しかし何も無いよりは、マシだ。今現状、藤丸もいない、味方は隣のアサシンだけ。枯れ枝だってあるだけありがたい状況だから。

 

「……ったく……アサシン、アンタだけでもどうにか掻い潜れないか?」

 

 少なくとも、ここを打開した先に、戦うだけの余地がある、という希望を繋ぐくらいの効果はある。という事で。まぁ頑張ってその希望に縋りつつここら辺で必死に耐えている訳なのだが……何時までもここにのんびり耐えていても仕方ない。という事で、取り敢えず打開のために深い仲のサーヴァントに頼る事にする。

 

「やって見てもええけど。ウチが傍から離れたらあの女、旦那はんの首に一直線やと思うわ。ほんま、遊びもなんもない大将様やし」

「はぇ~こっわぁ」

「行くんなら、旦那はんも一緒にあの中駆け抜けるのが、よさそやねぇ?」

 

 ……結局は俺も危ない橋を渡らなきゃいけないらしい。下手に俺が一緒だとアサシンの足手まといになるかとも思ったのだが、寧ろ見えているクソ雑魚な弱点を放置する方が危険との事。全く以てそうとしか言えん。

 

「じゃあしゃーねー……行くか」

「あら早い」

「アンタが言うならそれ以外に道もねぇんだろ? 自分のサーヴァントのこと疑う程マスターとして腐っちゃいねぇよ」

 

 だったらせめて手の届く範囲に。っていうのは間違いないだろう。

 それに、今更だ。命惜しんで何になるって話。死地にでも踏み込めば他の事も考えなくてもいいかもしれない。

 見せつけられて、思い出して……それからずっと纏わりついてくる影を、振り切れるかもしれないんだ。

 

「――ほーんま、えぇ顔しはるわぁ……旦那はん」

「アンタから言われても素直に褒められてる気はしねぇなぁ。アサシン」

 

 何処までも素直じゃないのがこの『鬼』だ。揶揄うのも、本気で褒めているのも、くるくるくるくる表も裏も、直ぐに入れ替わる。人間とは異なるもの――コイツの血を自分が引いている、と思うと。

 

「……ふふ、なぁに? うちの事考えてくれてはるん?」

「――分かるもんか?」

「そりゃあもう……はらわた、ぐちゃぐちゃにされたみたいな顔やもの」

 

 ……あぁ。全く。似合いの主従じゃねぇか。俺らは。

 

「あぁ、大当たりだよ馬鹿野郎……行くぞっ!!」

「はぁい――」

 

 一瞬。

 影から飛び出して、一歩を踏み出し――ばしゃん、と水の弾ける音にも近い、何らかの音が耳に届く。ちらり、と見たその先に、紫色の光が弾けているのを見て。アサシンがその手に持った大太刀を持って、雷を切り払ったのだと察した。

 

「……雷切とは、やるぅ」

「褒めるような事でもないわぁ。だってぇ――」

 

 さらにもう一筋――次に振って来た雷電は、その爪の先であっさりと散り散りに引き裂いてしまった。

 

「ただの猿真似やし」

「何の猿真似だよ……」

 

 足は、止まらない。何も考えず、門に向けて走って行ける。

 隣のアサシンを見つめる。源氏の大将が降らせて来ている凄まじい火力の雷を、まるで蠅でも払うかのように剣で、手で、打ち払って先へ進んでいっている。

 先ず人間業じゃないのは前提、しかしながら、その『格』というモノも、並大抵のそれでないのは間違いない。

 

「ふふっ……♪ えぇねぇ。こういうのをなんていうんやろ」

「『ノって来た』とかじゃねぇ?」

「――それ。ノって来たわぁ……ふふ、たーのし」

 

 雷の雨の中。アサシンは地獄の如きその景色を縫うように駆け抜けて――笑う。心底愉快そうに。それこそが、彼女の本性。全てを悉く『愉しみ』尽くす、魔性の精神。まるでこっちが悪者にも見えて来てしまう。

 

 そして。

 

「――蟲風情が……!」

 

 此方を、厳しく、そして真っ直ぐな視線で見つめる黒髪の彼女の方が……此方を誅する為の正義の刃にも、見えなくも無いのだ。

 




おかしい。式部さんを相棒にしていた時よりも筆が進む……
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