FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
「――生きてるか、アサシン」
「んー……何とか、やな」
……アサシンの有様は酷いもんだった。
全身に渡り大きな帯のように伸びる、爛れた様な跡が残ってしまっている。ケロイド状のその肌は、目を逸らしたくなる程に、痛々しい。
当然だ。頼光が放ってきた必殺の雷電をモロに浴びたのだから。
『――四天王などほれこの通り……!!』
昨日から降らしていた雷なんぞ、ただのお遊びにしか見えない――大蛇の如く、地面を喰らい、そしてこちらへ迫る一条の雷の斬撃。正直な話、『いつも通り』前線で戦ってたら……俺も消し炭になっていた。
アサシンの動きについていけないのは分かっていても、今までは出来るだけ近くにいる事で、アサシンのスペックを最大まで引き出せるように努力はしていた。しかし、この特異点においては、本来のマスターとサーヴァントと同じ、アサシンに前線を張って貰っている。
……いや、正直に言おう。
あの景色を見た後、俺はマトモに『力』を使えちゃいない。アレが『一族』が追い求めた力だと、改めて再認識させられた今、この時……意識するのもきついくらいで。
お陰で、彼女を連れ出すのも、キツイ程だった。
『全く……洒落にもならへんわぁ、一旦引かせてもらうで』
『逃がすと思っているのですか!』
『まぁ追いかけてもええけど……アンタ、門からそんなに離れてええん?』
『――っ!』
『追うんなら、自分のお仕事、放りだしてくるんやね。ほな――』
しかしそんな状況下でも何とか彼女を連れ出せたのは、まだまだ底知れないアサシンの生命力の賜物。大きな傷を受けても尚、一足飛びで門から離れるだけの余力を、彼女は残していたのだ。
離れた後は、俺が抱えて逃げ切る事になったが。それでもアサシンが稼いでくれた一歩が無かったら、多分俺たちは砕け散っていたと思われる。全くもって……向こうも化け物だが、こっちもこっちで怪物であることに間違いない。
……俺はこんな奴と今まで一緒に『前線』張ってた、のだが。どうしてそんな事が出来たんだろう、と思う。もっと『接近戦に向いていない』相方だったら、俺みたいなトーシロでも、ある程度は壁くらいにはなれるのだけれども。
いや、今更考えても仕方ない。兎も角、今までの俺は無茶ばっかりする大馬鹿者ってだけの話なのだから。兎も角、今気にするべきは……アサシンの調子の方だろう。
「……治りそうか」
一応、確認代わりに問うては見る。アサシンの底知れない生命力ならワンチャンスであればあるかもしれない……と
だが。アサシンは、やっぱり首を横に振った。
「ちょぉっと……時間かかりそうやね」
「分かった、ちょっと待ってろ。お前にやられたら、こっちも困る」
であれば。許可はもらえてないがしかし、今使い時だろう。
生き残っているのであれば。その体を修復するくらいの働きを持つ、切り札を俺は持っているんだから、と右手の紋章に視線をやった。
そこにあるのは――サーヴァントへの絶対命令権……ではないが、しかし膨大な魔力リソースを秘めた紋様。
「――令呪を使う。それでなら回復行けるだろ」
「ふふっ……使ってえぇの? 大事なもんなんやろ?」
「お前は、俺のサーヴァントだからな。使ったって誰も文句は言わねぇだろうよ」
三画しか存在しない、切り札中の切り札だ。サーヴァントの霊基の修復、魔力の装填や攻撃のブーストなどに転用できるのだが……サーヴァントの霊基修復に利用したのはコレが初めてかもしれない。
「――『令呪を持って命ずる! 万全と成れ、サーヴァント・アサシン!』」
……兎も角、アサシンの傷が消える事をイメージして、出来るだけ威厳を込めて言い放つ。そっちの方が効果が出るか、とか思ったからで。
唱え終えた後、手の甲から何かが消えるような感触がする。間違いなく発動はした。後は……目の前のアサシンに視線を向ける。
「――ん……」
「どうだ?」
「んふふ、ええ感じや……」
その言葉に嘘偽りはなかった。
一瞬だった。まるで、そこだけを『塗りつぶす』かのように、焼けて酷い状態になっていた肌が、美しい、疵一つない肌へとすり替わっていく。
まるで、ペテンを見ているようですらある。本当にさっきまでの酷い有様を頭に刻んでいなければ、『上質なマジックだ』と言ってしまっていたかもしれない。
現実からかけ離れた光景。しかしながら、コレがサーヴァント、コレが令呪というモノなのだと、改めてこの掌の切り札について、震えが止まらなくなる。良く今まで、こうして治療に使わなかったものだ。
アサシンは最前衛、怪我をする事などいくらでもあったと思うのだが。
「
「そうか……やっぱ初めてか」
「まぁ、うちもそんな、何度も死にかけるくらい、ぬるい訳ちゃうし?」
それでも。アサシンは『無かった』というのだ。だから本当になかった、のだろうが。
「……」
「どないしたん?」
「いや。なんでもない。しかし、エライ出力だったなぁ、さっきはマジで」
――その一瞬の違和感から、目を逸らし。
思い返すのは、あの頼光の圧倒的な攻勢だろう。文字通り雷電を纏った本気の一撃に完全に気圧されてしまった。単純明快で『強いから強いんだよ』と言わんばかりの、実直で真っ直ぐな一撃で、こっちは壊滅しかけた。
今までの比ではない。
正に『剛』の剣で……いけると思っていた所から、最早此方に勝ち目があるのかもギリギリな所だと悟ってしまった。
「どうするかね、アレを突破するには」
「真正面からは無理やろうねぇ」
「……お前が自分でそう言うとは思わなかった」
「うちそんな『強さ』に誇りもつ方ちゃうで?」
いや、だからと言って自分から言う方でもない気がするが……兎も角。アサシンがそういうのであれば、俺が『厳しい』と思ったのは間違いないのだろう。
アサシンが決して弱い訳ではない。しかしながら、兵器の王、天下一の名槍を一本持っていたとして、相手が重戦車では流石に太刀打ちも厳しい。
……真正面から戦えば、の話だけれども。
「不意打ちか? やるとして……通じると思う?」
「まぁ無理やね。下手な不意打ちしたら、それこそ餌やし」
「だよなぁ」
如何に彼女とて、人間だ。強い技とて、出す暇も無く首を掻っ切ってしまえば、勝てるだろう。理論上は。一瞬の隙を突いて……一撃で首を狩る。
要するに誇り高い武人相手に誉もクソも無いやり方を打つという事なのだけれども。
しかしながら、果たして彼女に対して不意打ちなんぞ通用するのか。俺が見ていた限りでは、以前見ていたアサシンと彼女の死闘は……文字通り隙なんぞ無かったように思う。
四方八方を飛び回り、爪牙と手に構えた大剣を無秩序に振り回して攻勢を仕掛けるアサシンに対し、一切動かずしてそれらを冷静に迎撃していた。
今日見せていたのは、更なる技術というよりは……それに上乗せされた『剛』の力だ。その力を見せずとも、此方の迎撃を成し遂げていた辺り、彼女の『技』は力なんて関係もないくらいの怪物級であろう。
「……せやけど、今やったらいけるかもしれへんで?」
「何?」
「んふふふ。あの女、いくら何でも強くなりすぎや……うちかて、流石に『ホントはアレくらい強かったんちゃう?』なんて呆けた事言えへんよ」
しかし。
それを踏まえても尚……アサシンは笑った。
「ま、自分で目ェを潰して、みたくないもんから逸らして『自分は守ってる』なんてほざいてる女相手には、ええ気付けになるんちゃう? うちも――流石に気に入らんし」
しかしその笑顔は余りにも牙をむき出しにした――人を喰らうかのような、そんな笑顔である。先程――『
おや? アサシンの様子が……?
今回の更新はここまで、次回の更新は六月からになりそうです。取り敢えず、前回の章程は今回の章は伸びなさそうなので、次回の更新で終わると思います。多分。
それでは。次回の更新もお時間があれば、ご覧になっていただければ幸いです。それでは。