FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第八十一章・裏:おにさんどちら

 ――同じ景色。

 

 稲妻で身体を焼かれ、一瞬、傾ぐカラダ。それは、前回アサシンが相手の雷を受け倒れた、その時を再現したかの様な景色で――

 

 違うのは、二つ。

 

 黄金の稲妻を放ち、アサシンを焼いたのは頼光だが……しかし、敵を切り裂いたはずその顔に余裕はまるでない。額に脂汗を浮かべながら、まるで苦し紛れの様に、その『黄金』の稲妻を纏った斬撃は放たれた。

その一撃を受けてグラついた――のではなく、喰らっても尚、自分から『前』に傾いだアサシンは、そのまま、撃った直後の僅かな間に入り込んで、頼光の首を掴み取った。

 

確かに雷は彼女の肌を焼いたが……しかし、それはほんの肌一枚だけ。ギリギリの所で、彼女は自分の傷と引き換えに、頼光の懐に踏み込んだのだ。

 

 ギリ、と首が締め上げられる微かな音が聞こえる。ほんの僅かな音ではあるが、しかしながら、そこには確かに強い『敵意』が込められているのが分かった。

 

「ぐぅっ……!?」

「アンタ、何処でそれを手に入れたん。牛女。それ、アンタのもんとちゃうやろ。なぁ聞いとるん?」

 

 ……もう一度同じことを、先ほどよりも冷たい声で、彼女は繰り返し――首を締め上げたまま、彼女の体を持ち上げた。

 

「な、何の話を……金時が、なんだと……?」

「知らん? ふぅん? やっぱ、とぼけとるのとも、ちゃうか。頭ん中弄られとるんやろうか……ねぇ!」

「うぁっ……!? がふっ!?」

 

 アサシンの動きに容赦はない。

首を締め上げられて持ち上げられた頼光はそのまま……振り下ろされるアサシンの手に引きずられ、思い切り地面に叩きつけられた。

圧倒的な強さを持つ英傑だとしても、状況が悪い。完全に動揺を抑えきれないまま、踏ん張りの利かない空中に持ち上げられて、そこから流れるような追撃。

 

頼光は強いのだと、俺でも分かる。

如何なる局面にも対応できるよう、実戦で鍛えられた強い武士だと思う。しかしながら自分より小柄な者に首を締め上げられながら持ち上げられる、なんていうレアな状況を一体、どれだけ想像して訓練できるだろうか。

 

そもそも、一度もあるかどうかわからない。

 

無意識の内に対処できるようになるまで、地面に手すらついていない状態で剣を振れるようになるまで、どれだけかかるだろう。

頼光がそれが出来ない訳ではないのは当然だが、しかし、アレだけ煽られ、そして『坂田金時』と『四天王』の名を出され、明らかに動揺している処で、無意識に剣を振れるのは最早人間ではなく『機械』だろう。

 

俺は……頼光が、まだ『そこ』まで行っているようには見えない。

 

 一瞬の心の隙、そこに付け込んで、ダーティプレイと力業を叩き込んで捻じ伏せたその姿は正に『怪物』。背筋が冷える。俺はこんなサーヴァントと特異点を越えて来たのか。頼もしいと同時に、最早恐ろしい程の手際だ。

 

 そして……隙を見つけた慧眼にも、改めて恐れ入る。

 いくら生前の頼光を知っているにせよ、俺では全く気付く事すらなかった違和感に気づき、そして頼光を潰す為の『勝ち筋』を見つけられたのだから。

 

「っ……」

「まぁでも何となく想像つくわなぁ」

 

 とはいえ、流石に殺し切れる訳ではなかったようだ。事前の手筈では、やれるなら首を取るいう話だったが、十中八九無理ではあるとの事だったので、そこは良い。

 

「一つ、聞いてみよか。なぁ、源氏の大将はん。自慢の四天王は、どこ行ったん?」

「な、なに……?」

「ここが『京』で、アンタが『源氏の大将』やっとるなら、小僧も、他の三人も、来ると思うてたんや……やのに、ぜぇんぜん。顔も見ぃひんのやけど?」

 

 ……そう。正直、無理な話なのだ。

 真っ向から、真っ当に勝てるならそれが一番いいだろう。良いのだが、しかしながら此方は今回、単騎なのである。

マシュという鋼の城にも匹敵するタンク、リリィというアサシンと並ぶアタッカー、二人を欠いた状態で、単騎でアルテラクラスの化け物を狩らなければいけない。

 

もう一人、または現地の協力者がいればまだマシだったのだが……残念ながら、何故か俺のサーヴァントは一人だけ。現地の協力者らしいサーヴァントも居ないと来た。

 ……幸運が乗ればなんとかなる、かもしれないが。一か八かの勝負に乗って、勝てると驕れる程、俺だって馬鹿じゃない。

 

『――あぁ、成程。合点が行ったわぁ』

 

 悩んでいた。どうすれば勝ち目を作れるのか。

 アサシンが気づいたことを口にしたのは、その時だった。

 

 特異点にカウンターとして呼ばれているサーヴァントもいない、と口にした……その辺りで、アサシンはにやり、と何かに気が付いたように笑ったのだ。

 

『――ちょっと試してみたい事あるんやけど』

『ふふ……まぁまぁ、どうせ真っ当にやっても勝てへんのやから、色々試してみてみるのも悪ぅないんとちゃう?』

『ウチも、あの女に首刎ねられるんは、ちょっと……ううん? 大分願い下げやし……付き合ってくれへん?』

 

 ……自分のサーヴァントの提案に対して、時には否、時には是、それを判断するのはマスターの役目だ。まぁ令呪に強制力もないカルデアのマスターに、どうしてアサシンみたいなやつが粛々と従ってるのかは分からないけれども。

 

 俺は……コイツを信じてみる事にした。どうするか、その詳しい内容は聞かなかった。無駄に疑うのは趣味じゃない。

 故に、俺はアサシンが、何の話をしているのか。その仔細は分からない。俺が分かっているのは、どういう風に戦うのか位なもので。

 

「……金時たちは、他の、門の、守りを……任せている、だけです」

「へぇ。京を脅かす鬼が来たんに……随分悠長になったんやねぇ? 小僧も」

 

 そして今、アサシンの顔を見ていると、やはり無駄に聞かなくて正解だったと思わないでもない……口元だけは笑ってはいる。だがしかし、その瞳はまるで笑っていない。

 特に、繰り返し口にする『小僧』という相手にどれだけの思いを抱いているのか……想像もつかない。

 

「昔やったら、そやなぁ。小僧は当たり前に自分ですっ飛んでくるやろし、あの堅物も連れて来て、アンタと三人で首狙う位はするんちゃう?」

「……なにが、言いたいのです」

 

「なぁ、ほんまは()()()のと違う。アンタ以外」

 

 ぐぃ、と顔を近づけるアサシン。

 ここまで話を聞いていると……ふと、アサシンが笑みを浮かべた、その時に俺が何を言っていたかを思い出す。

 『カウンターとしてのサーヴァント』、という言葉を聞いた時に、彼女は何かに思い当たったようであった。

 

 頼光の異様な強さ。そして『お前のモノじゃない』というアサシンの言葉。

 

「……まさか」

 

 ここまでの言葉を繋げ合わせて行けば、アサシンの真意を聞きはせずとも、ある程度想像が出来てくる。つまりは、そういう事なのか。

 

「――」

「ここまで揃って、想像も出来なったら、そっちの方が阿呆かもねぇ……開きもせん門に様子の分からん京、アンタ以外見えもしない源氏武者」

「……やめなさい、やめて」

「あの大振り、思い出すわぁ……小僧の『鉞捌き』の真似っ子とちゃうん? 猿真似、って言うた方が良いくらいの酷い出来やったけど」

 

 アサシンに組み伏せられた頼光からは、とっくに威圧感は消え失せている。力で圧し潰されて、負けを認めたからか?

 否、そうではない。アサシンの言葉を聞く度に、顔から色が分かりやすい程に抜けていっているんだ。今は、死人の様な酷い顔色と、生気の抜けた瞳が、痛々しい。

 

 アレは、『理解』して、思い出しているからこそ、心が軋んでいるのだ。アサシンの言葉を。

 

「なぁ、もういっぺんだけ聞くわ……」

 

「アンタ、自慢の四天王を()()()()()()()?」

「――」

 

 そんな所に叩きつけられた一言は、彼女の中の『何か』が決壊する、最後の切っ掛けだった。

 

 ばちり、と再び空気が震えた。その出所は……空ではない。頼光の――

 

 とっさに声をかけるよりも早く、礼装をアサシンに向けて使ったのは、集中力を研ぎ澄ませることで、少しでも早く離れられるように……自分で異変に早く気が付いてもらうのが、最も早く逃げ出せるだろう、と。

 

「――っ!?」

 

 瞬間、首根っこを押さえていた手を振り払うようにして、アサシンが飛び下がった――僅かに一瞬の後。

 まるで弾けるように、紫電の稲妻が四方八方に向けてあふれ出した。

 




あーあー、頼光ママないちゃったじゃーん
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