FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

191 / 373
第八十二章・裏:それでもマシに

「なぁ、アサシン」

「なぁに?」

「知ってて、話さなかったのか?」

「さぁて、どうやろうね」

 

 ――例えば。

 昔の商品をリデザインしたバッグと。昔の商品のデザインを引き継いだバッグ。

 その二つに、一体どれだけの差という物があるだろうか。少なくとも、同じものを祖として血脈を継ぐ。本質自体は、決して違わない。

 

俺は人にありながら先祖の鬼の血が目覚めた存在……らしい。そして、俺の中に息衝く血は、あの時の……雷電と共に、ゆらりと立ち上がった頼光さんに、何か……シンパシーの様な物を感じていた。

慣れて……いる、アサシンのモノとは違う。確かに感じる『同族』の血を。

 

 アサシンは、自分を殺した雷を、感覚で感じ取った。

 それと同じように……俺は、自分の血と同じ……否、それよりも更に濃い、混血の血を感じ取った。アサシンの言う言葉が、何となく理解出来た気がする。

 似た者同士の感覚派なのか。なんて、どうでも良い事は頭からいったん追い出して。

 

「……不思議な話だ。どんな物よりも、先ず俺の血が反応するとはな」

「近しいもんやしねぇ。そりゃあ共鳴位するんちゃう?」

「でもあの人は『神』との混血なんだろ? 『鬼』とは違うじゃねぇか」

 

 事実を確認する――彼女が混血である事実を。

 

「確かに、アレは神さんとの混ざりもんらしいけどねぇ……言うてちゃーんと『鬼』やさかい。安心してええよ」

「……安心できねぇよ。俺の血が無駄に有能なのがバレちまうじゃねぇか」

 

 アサシンも詳しくは知らない……らしいが。頼光はとある神格の血を引く『半神』なのだという。だがその本質は、聖なるものではなく、魔性としてのモノだったようで。

 実際……暴走して見えた頼光からあふれ出したモノは、神々しいものでもなく、荒々しく、そして何処か禍々しい力だった。

 

 そして、俺に近しいモノだった、と思う。

 

「……だとしたら、だ。あの人は、妖の類を大層嫌ってるんだろ……だったら自分の中の血は、嫌っていなかったのか?」

「嫌で嫌でたまらんのとちゃう? そこはよう知らんけど……まぁ、あの女なら、自分の中の『鬼』を殺そうと位はしても不思議やないなぁ?」

「こーわ、平安時代」

 

 そこまで行くと、自殺ではないか、と思わないでもないけど。

その気持ちが分かる……とは言わずとも、ほんの僅かに、思い至るくらいは出来なくもない。俺だって、そりゃあ、俺の中にある血を好ましく思えるわけがない。

 寧ろ、俺自身、自分で……あぁ、そんな事を思わなかった、なんて言えない。

 何度もこの血の事をクソッたれと思ったし。そして、どれだけ自分が『底辺』にいるのを、嫌って言う程に自覚してきた。

 

「……あぁ……そやねぇ。もしかしたら、そんな顔して、自分の中の『モノ』を殺そうとしてたんと違う?」

 

 思い出せば、顔も余計に歪み。

 そんな俺の隣で、鬼が嗤っている。俺の顔を見てコロコロと涼やかな声で笑っている。今の俺がどんな顔しているかは知らないが、しかし、余程お気に召す様な顔をしているんだろう。

 

「……ええ顔してはるねぇ、旦那はん?」

「お前はイイ性格してるよ。アサシン」

「そんな褒められても、照れるわぁ」

「照れるな。褒めてない……」

 

 ……仕方ないんだ、と言いたい。正直。

 

 自分の一肌剥いたその中に、腐った肉から零れ出す様な汚水が詰まっていると、想像した事があるか?

 想像だけではない。実際に匂いが鼻に付く。喉の奥に入り込んで無理矢理に臓物を引きずりだす……自分と絶対に相いれない、そんな匂いがするんだ。

 

 あぁ……実際、肌の下の匂いなんざ、分かる訳ない。きっと幻覚だ。そんなのは分かってる。分かり切ってる事なんだ。だがそれで納得なんて、できやしない。出来るならこの事で苦しんだりなんざしない。

 

「なぁに? もしかして、あの女に同情とかしてはるん?」

「……んなバカな」

 

 そんな生易しい事は出来ねぇ。

 俺も苦しい、『から』同じ彼女もきっと同じだなんて、口が裂けても言えない。俺だってそんな無神経な発言をされたら、言った奴を殴り殺したくなる……自分の地獄は、結局自分だけしか理解できない。

 

 勝手に理解した気になって、大変だったね、なんて……いえる訳がない。

 俺みたいに気楽な学生じゃない。責任のある立場でもある。話す相手だっていなかったのではないか。俺なんかよりよっぽど苦しい筈だ。

 そんな中でも、自分の配下を纏めた源氏の大将をやってたなんて。

 

「同情なんか、出来ねぇよ」

 

 ……想像しちまったら。アサシンを喜ばせるような顔にもなるだろう。

 彼女は、俺の先輩なんだ。自分以上に苦しんできただろう、大先輩だ。

 

 想像だにしない苦難をきっと、頑張って乗り越えて来たであろう先達に、一体何を思うかっていやぁ。

 

「寧ろ、尊敬する」

「尊敬?」

「あの人は最後には、立派に源氏の大将やってたんだろ。それが、例えどんな形だとしても……スゲェとは思うよ。正直、憧れる」

 

 ……オマエはどうだ、本造院康友。

 昔のトラウマ一つで無駄に傷ついて、立ち直れるかすら微妙な所と来てる。藤丸も、マシュも、リリィも、ダ・ヴィンチちゃんも、ドクターも……俺の、サーヴァント達も。

 誰もが必死になって世界を救うって言う凄い目標に走り続けてるって言うのによ。たった一つ、俺だけが……トラウマに怯える事を、やめられていない。

 

「……話を聞いてみたかった。どうやったら、そんな強くあれたんですか、って」

「ふぅん?」

 

 もういい加減、そんな最底辺で、ロクでもない意気地なしの俺にも、慣れている。だから他の人が羨ましいとかは、思わない。

 俺は決して藤丸の様にも、マシュの様にも、リリィの様にも、ドクターの様にも、ダ・ヴィンチちゃんの様にも……

 

 平安の貴婦人の様にも、神話の大化生の様にも、強くなれない。そんなのは分かり切ってる事だから。

 

「……それでも足掻く事だけはやめられないんだよ。どうしても……」

「――マシになりたい、諦めきれへんのやろ」

「あぁ。少しずつでも俺は――あっ?」

 

 ……ちらりとアサシンの顔を見てみる。

 スッゲ―にやにやしてる。口の端からちょっとだけ牙が覗いてる。特異点に来てから多分一番のスッゴイいい顔をしてる。悪い笑み、というよりは……悪戯っ子ぽい、ちょっとイラっとする感じの……

 ちょっと待とうアサシン。一旦その笑顔ひっこめよう。嫌な予感がする。

 

「……あの」

「なぁに?」

「もしかしてだけど……もしかしてだけどさ……漏れてたり?」

「何の事ぉ? うーん、せやけど嬉しいわぁ。ウチの事、平安の貴婦人だの、大化生だの褒めてくれて。旦那はんウチにべた惚れなんちゃうん?」

「うごぁああああああああ!?」

 

 漏れてた!!! めっちゃモノローグ漏れてた!!! こ、こんなっ……ああクソ顔が熱いッ! 恥っず!! めっちゃ恥ずいんだが!? なんだコレは!? 地獄か!? ああクソこれから先が地獄ではあった!!!

 

「あははっ、おっかしいわぁ。そんなおっかない顔で、七面相して。おもろい入道様やねぇ」

「し、七面相だってするってんだこんなもん……! って誰がハゲだゴラ」

 

 ……ああくそっ、だめだッ。このままじゃダメだ。ズルズル流されてはいけない。いやもう寧ろ、このおかしなテンションのまま突っ込め!

 どうせこの後、もっとひどい事が待ってるんだ! なんというか、いくら俺でもアサシンにいきなり突っ込んだことを聞くのは躊躇われたけど、このテンションとその事実を合わせて遠慮をぶっ壊す! ヨシ!!

 

「――平安の貴婦人なら、平安の武人について色々知ってんだろ。宮中の噂とかはお好きか、ご婦人方」

「……さぁて。噂は兎も角、まだ知ってる事も、あるかもねぇ?」

「だったら知ってる事、ここで全部教えろ。出し惜しみはもう無しで行こうぜ」

 




コンディションは最悪だけど、それでもマシにはなりたいハゲチンピラ。人相だけが主人公してねぇ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。