FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得 作:秋の自由研究
……なんだろう。コイツがあんな顔したのも、何となく分かった気がする。
「ほんま、初心でおもろい反応してなぁ……おかしくって仕方なかったわぁ」
「そうかぁ。あの、途中で顔引きつってたりした?」
「してたねぇ」
「そっかぁ……うん、まぁお前なら気にしないかそのあたり」
アサシンは、人外だ。それも、鬼だ。決して人間とは相いれぬ種だ。そして本人はその事をしっかりと分かっている。決して相互理解を求めるタイプではない。
しかし……それでも尚、人間とつるむのをやめる事はしない。別に鬼は鬼のまま、人は人のままで。分かりあえずとも、酒の一つくらいは飲み交わせる。それ位に気軽にも、考えている。
イイ女、というのはこういう奴の事を言うんじゃないだろうか。
そんなアサシンが、こんなにも――ともすれば、マジで惚れてるんじゃないか、と勘違いしかねない位に話す相手だ。坂田金時、という男は。
それがまぁ、気に入らない相手に『食われた』となれば……そりゃあまぁ、コイツでも顔に出ても不思議じゃない、気がする。
「でもその後、すーぐあの女がこっち来て……見つかる前に逃げぇ、なんて言うたんやで小僧。ほんま、惜しかったわぁ」
「……頼光にとっても、坂田金時は重要なファクターだった訳だな。話を聞いてると」
しかしながら、それは源氏の総大将にとっても同じ事だったらしい。直接話は聞いていないが……まぁ、めっちゃ大事にされているのは何となく分かる。そんな人物を自分が食いつぶした、という事を言われたのだから洒落にもならないだろう。
そして心乱れたその影響で、自分の中の危険な血が目覚めた訳だ。言ってる事だけ切り取ってると完全に中二病のそれなのだが……しかしそんな言葉で茶化せる様なもんじゃないアレは。
「小僧の事だけやったら、まぁ直ぐに立て直したかもしれんけどなぁ」
「それに加えて、意志が揺らいだその間隙を突くみたいに、彼女の血の中に眠る『魔性』が目覚めて、立て直すどころじゃなくなったって訳か」
「ま、そういう事やねぇ……」
鋼の意思も千々に乱れ。
暴れまわる血に振り回されて、今は源氏の大将としての真っ当な判断も出来ない。すなわち……戦力の限られている俺らでも十分与しやすし、という事になる。
成程。素人でも分かるくらいの大チャンスな訳か。笑える。
「って言うより、アレが馴染んでしもたらもう勝てへんね」
「馴染む……?」
「今のアレは、人として我を忘れて……自分の中にある物を抑えられなくなっただけ。せやけど、自分の中にある物が、完全にあの女を、染めたら? どない?」
……完全な魔性が完成する。
さしづめ、本物の『鬼神』が出てくるって所か。
元から強化されて強かったあの源氏の大将が、いよいよ本物の荒ぶ神となって、顕現する訳だ。第三特異点のヘラクレスと同等か、それ以上の難敵として。
そうなりゃあ……あぁ、確かに戦力も何も不足しているこっちに、最早勝ち目は一切ないだろうとは、流石に分かる。
「やるなら今が好機」
「せやねぇ」
「それは、分かる……分かるんだが、だがなぁ……」
こういう時、カルデアと連絡が取れないのが、とことんキツイ。あの状態の頼光が何処まで耐えられるか。正確な時間も分からん。
ナイナイ尽くしの中で……決断をしなけりゃならん。
今、速攻で攻め込むのが本当に正しいのか。それでも多少のリスクを覚悟で、もう少し体勢を整えるなりなんなりしてからの方が良いのか……正確な判断がつかない。
例えば、こっちのコンディション。
アサシンは先ず問題ない。だが俺は貧弱な人間だ。昼間の戦闘で消耗している状態でここで攻め入り、アサシンの足を引っ張る形で共にお陀仏、なんてのだけは避けないと。
……自分の中の『血』を隆起させられたなら、まだその辺りも何とかなるかもしれないが。しかし今はそれも厳しい……厳しい。うん。
「……」
考える。考える。考える。
他にやれる事はあるか? 早めに攻めるリスクとメリットは? 残る令呪を『何画』切るべきか? 一つ一つ……細かくかみ砕いて。
多分だが、ここが『分水嶺』だ。ここでしくじったら、俺はカルデアに帰還する事は愚か、ここら辺に転がるしゃれこうべの仲間になって終わるだろう。
だが考えれば考える程、まだまだ乏しい俺の経験則で出来る判断は……結局の所、たった一つに絞られていく。
「……今夜叩く。それしかねぇか」
結局の所、頼光が完全に覚醒したらどうしようもないって言うのは、凡そ間違いない事実だ。そして、完全に我を忘れた頼光が、完全覚醒したその後の頼光よりも弱いとは到底思えないのも、間違いない。
不確定要素が多い。賭けの部分も確かにある。
しかしそれでも……それでも尚、この現状で勝負を仕掛けるのが一番勝率が高いというのが想像できてしまった。
ギリッギリの賭けになるのは正直否定できないが、しかしながら、そのギリギリを攻めなければまず突破できない。それほどの難敵だ、頼光は。
よしんばダメそうでも、早めに撤退すればいい……兎も角、一回仕掛ける事は決して無駄にならない。
「アサシン、今なら首を取れる……って言い切れるか?」
後は……アサシン次第な所はあるのだが……いや。
「んー、それはまぁ無理やけど。旦那はんが『やれ』って言うんなら……ウチは旦那はんのサーヴァントやし? やるしかないわなぁ?」
あったというべきか? ちらりと見みてみたその顔は……困っているどころか、寧ろ口の端を大きく吊り上げて、愉快愉快、と顔に描いているあるみたいに……笑っていやがるんだ。
思わずこっちまで、釣られて笑ってしまう……普通に笑う、というよりは。背筋が冷えてしまって、漏れ出でてしまった苦笑いだが。
これから、とんでもない難敵に挑むって言うのに。ケラケラと声が聞こえてきそうな位気軽に笑う……強敵に臨み、それでも尚、強きに笑うのとは、まるで根っこから違うだろう。アサシンのその笑いは、危険ですら『愉しむ』笑いだった。
……ならもう。『やる』以外の事は考えなくてもいい、か。
「……はっ、頼もしいこと言ってくれるじゃねぇか。流石は俺のサーヴァント、って言った方が良いか?」
「んー? それ本気で言うてるぅ?」
「あぁ。お前は『鬼』だけど……マスターとして、サーヴァントとして、ここにいるアサシンは誰よりも信じてるさ。うん」
……その笑いも、一発で鳴りを潜めたけれども。
この特異点に来て、始めてこんなきょとんした顔を見せた気がする。俺の前ではいっつも、こう……余裕と含みを持たせたような笑顔とか、すこしとぼけた様な困り顔とか。何処か一枚、薄皮を隔てた様な。そんな感じがしていた。
その薄皮の向こうにある物を、若干不意打ち気味に覗けた、そんな感じがして。今度はこっちがにやりと笑ってしまった。
「警戒は、してるさ。してないと首もっていかれそうだ」
「……」
「でも警戒だけじゃどうしようもねぇだろ……まだ付き合いもそこまでじゃねぇが、少なくともこっちがしっかり見てる分には、お前はちゃんとサーヴァントとして振舞ってくれるんだからな」
……正直、
でも今はそんな事を気にするよりも、難敵に共に挑む相棒として。事が終わるまでは信じようと、もうとっくに覚悟は決まってる……つもりだ。
サーヴァントに首は預けた。今から突っ込むのは地獄の底。コンディションは、取り敢えず戦えない訳じゃない、位で。
酷い状況だ。
でも……不思議と、気持ちは落ち着いている。
なんでだろうな。あんまりにも必死にやらないといけない状況だから、逆に何も考えずに、集中できて入りからだろうか。
「決着つけるぞ、アサシン。いい加減、雷模様の空にも飽きた――晴らしてやろうぜ。この曇天をよ」
「――カッコつけて。ま、ええよ。付き合ったるわ」
全然関係ないけど頼光マッマの魔性スマイルクッソエロい。