FGO DLC実績『鬼血の継承者』獲得   作:秋の自由研究

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第八十五章・裏:語らずとも

 人って本当に吹っ飛ぶんだなー……と。金時君が目の前で敵さんを吹き飛ばしているとふと思う。

いや、そりゃあマシュやリリィの暴れっぷりを見なかったのかっている話ではあるんだけれども。それでも、こんな天高く飛んで行く哀れな黒い影法師を見ていると……人間って小枝とか、塵とか、埃とかの親戚だった気がしてくる。

 

 いやー……星空が綺麗だなー……あぁ、黒い影が黒い夜空に滲んで見えなくなるな~わっはっはっはっ……あー、うん。えっと。イヤー力強さが大変ゴールデンなこと。

 

「っしゃぁ! 大将、見えて来たぜ!」

「あ、うん。ありがとうございます……」

「どうした? なんか元気ねぇぞ」

「いや何といいますか……圧倒的な暴力の前で人はこうなるっていうか……うん」

「……?」

 

 そして当人は一切自覚していないという。

いやー、まさか配置されていたシャドウサーヴァントの群れを、突撃しながら真っ向から切り裂いてどんどん先に進んでいくとか乱世乱世とかそういう問題じゃないレベルの暴れっぷりだよ。

 というか、体重を乗せた縦振りなら兎も角、軽くぶん回しただけの斧の一撃で、シャドウサーヴァントが受けるどころか押しつぶされてるんだもんなぁ。

 

「っし……抜けたぞ!」

 

 ……とか思ってたらもう敵陣突破かよ。すっごい良いテンポだなぁ。そして中心を割って最短距離で突っ切っていた筈なのに、シャドウサーヴァントの群が完全に崩壊しているんですけれども?

 えっ、もしかして通常攻撃が全体攻撃だったりする? このマッシヴメン。

 

 いやそんなふざけてる場合じゃねぇか。向こうの術師の最後の足掻き、シャドウサーヴァントを抜けて、ここに来たんだ。ここに居なけりゃ嘘だって話だ、が。

 

「抜けた、は良いんだが……」

「……何処にもいねぇな」

 

 俺とアサシンが幾度も立った巨大な門の前。

昨日からの頼光の暴走でかなりボロボロになっているが、それでもなお『健在』と言える辺り、俺をこの中に閉じ込めようって言う強い意志を感じる。

 そして……この門の前で、アサシンと別れた。そして。アイツが待っているとしたら俺たちが最も戦ったここ以外は考えられない。

 

 しかし、見回した限り、彼女の姿はない。正直、シャドウサーヴァントの死体を積み上げてまっている、くらいは想像していたのだが……それすらも無いという。

 意を決し、大きく息を吸ってから――声を張り上げる。

 

「アサシン! 来たぞ! 何処だぁ!」

「――ここやで。ここ、ここ」

 

 その声は、拍子抜けするほどに気軽に上から降って来た。

 上を見上げれば……屋根の端から垂れる白く細い足と、そして手に掲げた、その白い肌に映える朱色の盃。その中の酒をを飲み干して、風に袖を靡かせる――いなせで風雅、都会派な鬼が一匹。

 居た。まるで昨日と変わらない、俺のサーヴァントの姿が。

 

「アサシン」

「待っとったで? 旦那はん……なーんや、ええオマケも連れて来てるみたいやけど」

「酒吞……!!」

 

 金時が、思わずと言った様子で一歩前に出た。

 

「なんや小僧、あの女に食われて消えたもんやと思てたけどなぁ? 生きてたん?」

「……その頼光サンの最後の送りもんって奴だよ」

「ふぅん。まぁええわ。今日の相手はアンタとちゃうの。飴ちゃんこうたるさかい、今日は早う帰り?」

「笑えねぇ冗談だな、オイ」

 

 さっきまでの暴れようを見ていただろうに。強い戦士ではなく、子供の様に扱うあたりは流石にアサシンと言える。とんでもない肝の据わりぶりだ。

 金時も……そんな彼女の様子に馬鹿にされた、と思うでもなく、寧ろ落ち着いて返す辺りは、長い付き合いゆえだろうか。

 

「えぇ? 嫌やわぁ、冗談ちゃうんやけど」

「……大将置いて帰ると思うか? 酒吞、アンタを目の前に」

「いややわぁ、皆してウチを怖い鬼みたいに言うて。今は普通の娘と変わらへんよ?」

 

 その言葉に……ちら、と金時と視線を合わせる。

 金時は俺の視線に。ほんの少しだけ、頷いて見せた。

 

「――そんな訳ねぇだろ、ったく……あん? いや、酒吞、お前、ちょっと待て」

「あぁ。旦那はんの魔力なら、もう貰ってへんよ。今、ここにおるのは……まぁ、ただの意地みたいなもんやねぇ?」

 

 そう言って……まるで、『あぁ疲れた』とでも言いたげに、彼女はこてん、と屋根の上に体を横たえて見せる。恐らくは本当だろう。必要とあれば嘘もつくが、しかし今回ばかりは嘘を吐く理由が無い。

 ……何となく分かる。それを明かして誘っているのは、同情ではない。そんな真似をアサシンはしないだろうとは思うし。流石に死線を越えて、協力した仲だ。短い間でもある程度はアイツは分かった。

 

「せやからね、ねぇ……」

「待てアサシン」

 

 それでも最後に一つ。確認しておきたい事はある。大事な事だ。アイツとここで分かれるのであれば、絶対に確認しておかないといけない。

 

「元マスターとしてのよしみだ。最後に聞かせろ。大切な事なんだ」

「ん? どしたん?」

「お前と協力して俺を捕らえようとした術師の名前は、なんだ」

「……」

 

 恐らくはリンボ……なんだろう。しかし確信を得ておかないといけない。こういう小さなところで間違いがあったら偉いことになってしまう。推理小説でよくある奴じゃないか小さなすれ違いから云々って言うのは。

 

 だから大切な事なのは間違いんだけども。

ものっそいアサシンに凄い残念そうな顔をされた。『やれやれ……』という声が聞こえてきそうな位に、凄いこう、アレな顔をされた。どうしたんだろうアサシン。俺ってなんか可笑しなこと言ったかな?

 うーん……ダメだ、普通に黒幕の名前を聞いただけなのに。おかしなところは見当たらない気がする。

 

「……旦那はん、ウチに会いに来てくれたんよねぇ」

「あぁ。お前と決着付けに来た」

「それで最後がそれって。ちょっとあんまりやない?」

 

 ……ちらりと金時を見る。金時も首をかしげる。そっかぁ、ゴールデンなお武家様でも分からんかぁ。だったらしがない農民のオラに分かる訳ねぇだなぁ。

 そんな顔で改めてアサシンを見つめ直すと、心底残念なモノを見るような顔をされてしまった。うーん哀れまれている気すらする。

 

「こういう時って、なんで裏切ったー、とか。ウチはよう知らんけどそう言う湿っぽい話になるところちゃうん?」

「えっ、そんな愁嘆場をお望み?」

 

 いや、アサシンだったらそう言うのもお好みそうではあるんだけどもさ。

 どうしような。だとしたら期待には応えられそうにもねぇぞ……そう言う方向にもっていくのは、流石に趣味ではないと言いますか。

大体。そんな事を聞く意味あるか?

 

「こっからはお前と俺のサシだからな。余計な言葉はいるか? アサシン」

「――」

 

 そう言って――拳を構える。所詮素人のケンカ殺法。上手な戦い方なんざ出来ないだろう。山の獣相手に鍛えた反射神経がどれだけ役立つか……いや獣とは格の違うとんでもない怪物なんだけれども。

 まぁ……その驚いた顔を見るに、その始まりを切る舌戦においてなら、ラッキーパンチは上手く行ったらしいが。

 

「……やあねぇ。気ぃ付いてたん?」

「そりゃあなぁ。マスターとサーヴァントだ。何時の間にか切れてたのは分かった。それで改めてやろうと言ったんだから。会って話の一つ……じゃ済まねぇだろ。その辺り、妙に律儀じゃねぇか、お前」

「そんなんちゃうよ。ウチかて、一緒に血ィ見た相手を、上からすり潰すんは雅とちゃうなって思っただけやし」

 

 だが……うん。ダメだな。そのラッキーパンチで、余計なモンまで目覚めさせちまったみたいだこりゃあ。相手の弱体化とか望むべくもない。

 

「――金時、後ろは任せる。横やり入れさせてくれるなや」

「おうよ大将――『マスターとして、サーヴァントととのケリは自分で付ける』……ゴールデンに言い切ったんだ、歯ァ食いしばってやり遂げなぁ!」

「いいわぁ今日は……ええ日、ええ日――さて、もうええやろ? やりあおうやない。ねぇ、旦那はん……ウチ、もう我慢できそうにないわぁ」

 

 今までで、一番うれしそうに……牙を剥き出して笑ってるアサシンを見るに。

 寧ろ、弱体化なんてしているようには全然見えない気がするんだよなぁ。彼女の元マスターとしては……!

 




どうしてこっちの味方に付いたのか。どうして裏切ったのか。知らねぇ!!! やりあおうや!!!

どうしてこんな脳筋な結論になってしまうのか……




という事で、今回の投稿はここまで。
次回投稿は八月からでしょうか。次の投稿も、お暇があれば見てくだされば幸いでございます。それでは。
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